未経験からエンジニアの世界へ。官公庁系システム開発の現場で得たものとは
大学で法学を学びながらも、多くの同期が選んだメガバンクや証券会社、官公庁という進路ではなく、システムエンジニア(SE)の道を選んだという仁田脇。
「就職活動していた当時はバブル真っ只中。でも、『お金』を動かすよりも『モノ』を動かす、生み出す仕事をしたいと思っていたんですね。そこで文系にも門戸を開いていた富士通に入社しました。入社したのは平成元年。今のように誰もがパソコンを持っている時代ではないので、そもそもキーボードを触ったことがないところからのスタートでした。
プロジェクトでは数多くのプログラムを作る必要があり、私としてもかなりの本数を任されていました。プログラミングの基礎を身につけることができましたし、自分が作ったものが結合テストを通して動くようになるのはおもしろかったですね」
官公庁系のシステム担当プログラマーとしてキャリアを歩み出した仁田脇は、入社から4年後に別の官庁のシステム開発を行う部署に異動します。国の骨幹を担う重要なシステムの刷新を富士通に託す、まさにそんなタイミングだったと振り返ります。
「当時そのシステムは汎用機と呼ばれる古い大型コンピュータで動いていました。それをUNIXやワークステーションなど、新しいコンピュータの仕組みに置き換えること。それに加え、より視覚的に状況を把握できるようなシステムにするというプロジェクトに入りました」
複雑な環境で運用されるシステムの開発を通じて、仁田脇はSEとしての仕事の流儀を学びます。
「お客様の事務所内に常駐し、お客様と緊密なコミュニケーションを取りながら業務を進めることで、業務の本質を理解していきました。
ただそれだけではなく、お客様がその業務をどうしたいのか、どんなシステムを作ればお客様に喜んでもらえるのかという心や気持ちを理解できるようになってきて。その期待に応えることの大切さを学ぶことができました」
また、仕事に対するお客様の高い意識から得たものも大きかったと続けます。
「お客様が扱うのは社会全体を支える国の重要システムです。お客様からは時には厳しいご指導をいただくこともあり、国を支えるシステムの重要性とそれを任されている富士通、さらに私に対する期待と信頼を強く感じました」
自身のスタイルを築き上げる。責任と緊張感の中で充実感を得る
官公庁系システムを長らく担当してきた仁田脇。2005年からはプロジェクト全体を任される立場になったと言います。
「プロジェクトマネージャーとなったことで、プロジェクトの予算や、参画メンバー、協力会社の選定といったプロジェクトの計画立案など、自分が任される範囲が非常に広くなりました。
中でも、協力会社の選定にはこだわりました。大きなシステム、プロジェクトになればなるほど、協力会社なしには成り立たなくなります。協力会社とのコミュニケーションを重視し、各社の専門性や強みや弱みをしっかりと確認しました。
これまでもたくさんの会社とお付き合いしてきましたので、その会社の能力や特徴、仕事に対する姿勢も見てきたわけです。それらもあわせて構築するシステムに最も適した企業を選定しました」
お客様によりよいシステムを提供するために、プロジェクト体制を一から吟味する。まさに仁田脇流を象徴する出来事です。その後についてこう続けます。
「プロジェクトマネージャーとなってからは、自分がやったこと、決断したことがそのままお客様にも反映しますので、その責任と緊張感は大きく、当時は苦労しかなかったというのが本音です。
ただ、自分自身がプロジェクトマネージャーであるという自覚と責任のもと、誰よりもお客様と真摯に向き合い、会話をすることを徹底しました。自分が直接聞いた話をもとに策を考え、意思決定を行い、実行に向けてお客様と調整していく。私にとっては、この経験が成長の機会となり、また、とても充実感を持って仕事していたなと思います」
自分の目で見て、意思決定を行い、物事を進めていく。苦労の裏に充実感あふれる仁田脇は、次のステップでもこのスタイルを続けていきます。
不意に訪れたキャリアの分岐点。「フジトラ」により加速する、新たな挑戦
長年担当していたプロジェクトの終わりが見えてきた2011年。ある異変が仁田脇を襲います。
「張りつめていたものが切れたのか、体調を崩してしまいまして入院することになったんですね。気持ち的にも少し落ち込んだこともあって、いったん現場を離れることになったんです。でも、これをきっかけにキャリアが思わぬ方向に進んでいくことになるんですね。
その頃、私はグループ会社に出向していたのですが、当時の上司から『自社開発してきた社内業務システムが立ち行かなくなっている。これまでの経験を活かして立て直してくれないか』との話を受けました」
一貫してお客様向けのシステム開発に関わってきた仁田脇。それが一変して、社内システムを見ることになります。
「社内システムの面倒を見るということで、会社の全社方針や事業を管理する部門に籍を移しました。これまでとは違い、全社目線でいろいろと活動に参加していったのですが、問題を抱えているのはシステムだけではないということもわかってきました」
そんな中、富士通では2019年に時田社長が就任。翌年には、全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」が始まります。
「富士通のカルチャーがガラッと変わったと思いますね。それに、富士通のさまざまな取り組みやそれに関する情報がグループ会社にもより届くようになった印象です。その中の1つにフジトラがあって。フジトラでやろうとしているのは、単なる改善活動やITシステムの切り替えではない。組織文化や働き方、ビジネスモデルなど会社全体を変革する取り組みだということがわかりました。
今まで私が問題認識を持っていたこと、やってみたい取り組みがまさに『フジトラ』と合致している。これは、フジトラをうまく使うよりほかはないと確信しました」
社内業務システムが立ち行かなかった原因をあらためて分析した結果、関係者間のコミュニケーションが決定的に不足していたことを再認識した仁田脇。社内のカルチャー変革から着手したと言います。
「1つの会社の中にまったく違う働き方をする部門がいくつも並んでいるのですが、まるで別の会社のように互いの交流がとても少なかったんですね。ここをなんとかしたかった。そこで、全社的に導入されていたコミュニケーションツールのYammer(現:Viva Engage)を活用して、社内のプライベートコミュニティ、情報交流の場を作ることにしたんです。
当時、多くの社員にとって馴染みがなったものですから、ネガティブな意見もありました。ネット掲示板のようによくないことを書き込まれるのではないかとも考えましたが、そこを含めてスタディなんです。上司にはコミュニティの効果を説明し、だめだったら閉じればいいのでとりあえずやってみようということで、始めさせてもらいました」
とにかく、仕事以外のことも含めて、自ら率先して書き込みを行ったという仁田脇。その姿をみて、しだいに社員が書き込むようになり、部門を超えてコミュニティの輪が広がっていったと言います。
ハッカソン優勝をきっかけに生成AIの社内浸透をリード。挑戦を続ける秘訣とは
部門横断の交流の場づくりだけではなく、あるイベントをきっかけに、社内の生成AIの活用にも取り組みはじめたという仁田脇。
「2023年に生成AIとローコードを用いたハッカソンが富士通社内で開催され、社内SNSでつながった仲間たちと出場したところ、最優秀賞をいただきました。その様子を上司がみていたようで、『社内の生成AI活用をリードしてもらえないか』とのお話をいただいたんです」
すぐに生成AIの勉強会を開催したり、DX推進の勉強会などを立ち上げた仁田脇。さらには、その半年後に生成AIを使ったプロンプトソンを開催したと言います。
「プロンプトソンを企画したのは、生成AIに触れる、自分が作ったプロンプトを投げてみるという体験をまずは社員みんなでしてみるということが大事だと思ったからです。
勉強会では一方的になってしまいがちですが、プロンプトソンにしたことで、イベントへの参加意識が高まり、多数の社員に参加してもらうことができて、社内活動として大いに盛り上がりました」
常駐SE、プロジェクトマネージャーを経て、現在は社内のDX推進のけん引役として活動する仁田脇。そんな仁田脇が大切にしているものとは。
「相手のことを一番に考えるということです。SE時代も含め、自分起点でいろんなことをやってきましたが、それは相手の理解あってのこと。会社にとって必要だから、こうした方がいいから、ではなく、相手にとってどんなメリットがあってどんな課題を解決できるかを考え、相手に伝える事が大事だと思っています」
ただ、社内にはDX活動への参画をためらう声がまだまだ多いのも実情だという仁田脇。インタビューの締めくくりとして、そんな方にはこうアドバイスを送りたいと続けます。
「1つは『チャレンジは即行動』です。5秒経つと脳が『やらない言い訳』を始めるので、その前に動き始めるんです。たとえば、社内SNSでおもしろそうな記事があったとします。もう少し詳細を聞きたいなと思ったら、すぐにその人にメッセージを送ります。こんなこと聞いたらとか、私なんかがなんてことは考えません。もし、仮にダメだったとしたら『すみません』で終わるだけの話。次に目を向ければいいんです。
もう1つは、好きなことを見つけてやってみることです。私はモノづくりがしたくて富士通に入社しました。いまは生成AIがおもしろく、プライベートで生成AIのサブスクリクションを契約して、いろいろと試してみています。そこで覚えたスキルが仕事に役立ったりもするんですね。
また、会社にはさまざまな仕事があります。何か1つを極めるのもいいですが、いろんな立場で仕事をして世界を広げ、楽しんでほしいとも思います。気になる何かを見つけた皆さんは、5秒経つ前に心の実行ボタンを押すことからはじめたらどうでしょうか?」
※ 記載内容は2025年6月時点のものです
