定年間際の転換点。きっかけとなった、涙が止まらないほどの衝撃的な出来事とは
1984年、富士通に入社した竹田は、ネットワーク機器の開発、技術支援に従事し、これまでネットワーク領域のSEとして活躍してきました。また、ネットワーク技術に関するセミナーの講師も多数経験し、人前で話すことに楽しさを感じていたと言います。
そんな竹田に定年退職が近づき、今後のキャリアについて悩んでいたころ、転機となる「ある出会い」が訪れます。
「2020年のことですね。当時、富士通のグループ会社に所属していたのですが、Purpose Carving(パーパスカービング)というものがあるので、それを受けてくれという話がありました。Purpose Carvingとはどういうもので、それを経営層自らが実践していて、全社員を対象に展開するのだと説明されまして。
当時、入社36年目でしたが、それは初めて聞く言葉であり、その内容も過去一度も経験したことのないもので、まさに衝撃でしたね」
Purpose Carvingとは、これまで歩んできた道のりを振り返りながら、自身の価値観や情熱、人生の目的(パーパス)を掘り下げ、言葉にする対話型プログラム。このプログラムを受ける中で、とくに印象的な出来事があったと竹田は語ります。
「Purpose Carvingでは、自身の幼少期から最近のことまでを振り返るライフリフレクションというパートがあるのですが、私は小学校時代のエピソードが何も思いつかなかったのです。中学生以降にやり遂げたこと、乗り越えたことは出てくるのに、それだけは出てこない。同じグループで体験していた若手社員から『なぜ、ないんですかね?』と質問されたんです」
その瞬間、なぜか涙があふれてきたと振り返る竹田
「質問をされた方には時に深い意味や意図はなく、単純に『なぜ』と質問してくれただけだと思うんです。また、Purpose Carvingのプログラムとしても、本人が言いたくないことについて発言を強制するものでもないです。でも、何か引っかかるものがありまして。その『なぜ』を頭の中で何度も反芻するうちに、幼少期に経験した苦く、暗い思い出が心の奥底に潜んでいたことに気づいたんです。
私は気が弱く、いじめられることがあり、当時は学校に行くのも嫌だったんですね。ただ、中学、高校、大学と進学するにあわせ、楽しかった思い出がたくさんありましたので、誰にも言うこともなく自然とふたをしていたんだと思います」
社員の新たな一面を発見。赤裸々トークが心の扉を開く鍵
人によっては、思い出したくない記憶。でも、Purpose Carvingはその封印を解く、いいきっかけになったと竹田は言います。
「あらためて、自分自身の人生を振りかえってみたんですね。すると、上司から言われたことは、なんとかこなしてきた一方で、上司や会社に対して自分の本音を伝えることや、ノーと言うことができない自分がいて、自分の意思で何かに挑戦することにためらってしまうことが多々あったなと。そうか、あの時の自分は、いまの自分に大いに影響を与えているんだなと気づかされたんです」
竹田が体験したPurpose Carvingは、当時在籍していたグループ会社の全社員にも実施されることになります。竹田はオーガナイザーの1人として、その展開に関わります。
「管理職から順番に実施していったのですが、なにかしっくりこないなと感じていました。私が感じた『衝撃』や『感動』を目の前にいる社員たちは味わっているのだろうか、どうしたらそれを体験できるのだろうかと考えるようになりました」
その後も試行錯誤を続けた竹田。一般社員を対象としたある回で、その違和感を吹き飛ばすひとつの答えを見つけます。
「パーパスとは何かとか、どう掘り出してくかよりも、自身の経験を赤裸々に話してみることにしたんです。小学校でのつらかった経験、でも高校、大学ではこんなことに夢中になっていて、いまは仕事以外にもこんな活動していて、だから私のパーパスはこれなんですよと」
すると、その後のワークの中で出てくるエピソードが変わったと言います。
「これまでとは打って変わって、仕事以外のものばかり。実は地域でこんな活動をしているだとか、書道の先生やヨガのインストラクターの資格を持っているだとか、災害ボランティアをやっているとか、実に多種多様でした。
参加者の中には、仕事を通して付き合いのある社員もいましたが、普段とは全然違う側面が見えてきて。『こういう人なんだろうな』と勝手に思い込んでいたのだと気づかされたとともに、その方が語る話にワクワクしたんです」
富士通だけが変わっても仕方ない。その想いから新しいキャリアを切り開く
各社員の個性がキラキラと輝くのを目の当たりにした竹田にある疑問が浮かびます。
「みんなが嬉々として話していたような、本当にやりたいと心から思うことや好きなことは一人ひとりにあるはず。なのに、普段の仕事では必ずしもそれができているわけではないし、互いにそれが何かを知ることもない。今の仕事に目がいきがちになっているように感じられて。果たして、それでいいんだろうかと。そして、それは他の会社で働く人たちにも言えるのではないかと考えるようになったんです」
その後、定年退職し、富士通ラーニングメディア(以下、FLM)のグループ会社に契約社員として再就職することとなった竹田。それは、ある考えによるものだと語ります。
「オーガナイザーとして活動していく中で、一つの組織に閉じないで、もっと大きな枠で活動していかないとダメなのではと思うようになっていました。もちろん、自分自身のパーパスを掘り出すことに意義がありますが、お客様と一緒にこれまでの人生や経験を振り返り、それぞれが大切にしている価値観を共有することが大事なんじゃないかなと思ったんですね。
たとえば、お客様と難しいプロジェクトを推進、またはトラブルが発生した際のことを思い浮かべてください。深いところで互いのことを知らないままですと、難局を乗り越える大事な時に、同じ方向を向いて課題解決にあたるのは難しいと思うんです。どうしても『仕事だからやってください』『仕事なのでやります』になってしまい、うまく進まない。でも、Purpose Carvingをやった仲であれば、またその対応も変わってくると思うんです」
業務の一部として取り組みはじめたPurpose Carvingにどんどんと魅了されていった竹田。
「これからの人生では、心からやりたいと思える仕事を中心にやりたいと思ったんです。私にとって、それはお客様とのPurpose Carvingだったわけです。では、それが実現できそうな場所はどこか。そんな中で見つけたのが、当時、お客様向けの研修プログラムとして、Purpose CarvingをやりはじめていたFLMでした」
希望が叶い、現在、研修講師として活動する竹田。実施する際に、お客様に伝えていることがあると言います。
「会社のパーパスやビジョンをあまり意識せずに、まずは自分自身が本当にやりたいこと、自分らしいパーパスを考えてみてくださいと伝えています。その上で、会社のパーパスと自分のパーパスが近いものであったら、そんないいことないですよねと。
もし、そうでなくても、会社のパーパスに共感できる部分や自身との接点となる部分はきっとあるはずなので、一緒に見つけていきましょうと。そういう話をすると、結構びっくりされるんですけど、Purpose Carvingとは本来そうであるべきだと思うんです」
未来への希望を灯す。自身のパーパス実現のために、取り組んでいることとは
社会貢献活動にも積極的に参加している竹田。ある日、その活動の中で小中学生向けに活動している川崎市のNPO法人「キーパーソン21」と出会います。
「そのNPO法人では、小中学生向けに『わくわくエンジン®』というプログラムを展開していて、将来の仕事や夢について考える機会を提供しています。言うなれば、子ども向けのPurpose Carving。その取り組みにとても共感し、すぐさま入会を決め、川崎市内の小中学校向けの活動に参加するようになりました。
将来を考える機会といっても、子どもたちにいきなり仕事について聞いても、親の仕事かどこかで聞いたことのある職業しかでてこないんです。それこそ、将来就きたい職業ランキングみたいなもので上位にあがってくるものばかりですね。なので、どんなことが好きか、ワクワクするかを聞くことからはじめています」
その「好き」や「ワクワク」から、将来の仕事や夢を紡ぐには大人のサポートが欠かせないと言います。
「たとえば、飛行機が好きという生徒がいたとします。『じゃあ、飛行機の周りにはどんな仕事があるかな?』と聞くと、たいてい出てくるのはパイロットや客室乗務員。もちろん、素晴らしい夢ではありますが、誰もがなれるわけではないですし、それ以外にもたくさん選択肢はあります。そこで大人の出番になるわけです。
飛行機が安全に飛ぶためには整備士さんがいて、乗客や荷物を安全に機内に案内するためにカウンター業務をする人、荷物を検査したり運んだりする人がいる。また飛行機を設計する人や組み立てる人、飛行機で使うエンジンや部品を作っている人もいるよねと。その『ワクワク』の周りには、さまざまな仕事が存在していることを教えてあげるんです」
子どもたちが自分の可能性に気づき、ワクワクするような未来を創造していく。そんな手伝いをしたいと語る竹田のパーパスとは。
「私のパーパスは『一人ひとりが自分らしく生きられる未来を創る』です。その背景は、これまでお話ししてきた通り。そして、そのパーパスを実現するための手段のひとつとしてPurpose Carvingがあると思っています。これからも日本中の企業や子供たちに、私が体験した『感動』や『衝撃』を感じられるような、そしてそこから次の一歩が踏み出せるようなPurpose Carvingを届けていきたいですし、参加してくれた方の何かを変える、変わるきっかけになると嬉しいですね」
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
