情報科学の研究から、計画業務のシステムコンサルタントへ。その訳とは
2023年7月現在、クロスインダストリーソリューション事業本部 Sustainable Manufacturing)Manufacturing CoE 事業部にて、製造業向けの計画ソリューションの企画、拡販業務を担当している柳。学生時代の研究テーマは人工生命で、主にAIや遺伝的アルゴリズム(GA)について学んでいたと言います。
「人工生命とは、あたかも生命体かのように、コンピュータ自身に自立的に学習させることで、どう変化していくかを調査研究する学問です。研究では、コンピュータに繰り返しシミュレーションさせるのですが、その中でAIやGAといった最先端技術を勉強していました。
私自身はそれがおもしろくて研究を続けていましたが、いま使っている技術やこの研究が社会の何の役に立つのだろうかと疑問に思うこともあって。それが知りたく、ICTで幅広い業界をカバーする富士通に入社しました」
2011年に入社後、柳が担当したのは「Fujitsu Supply Chain Planning Solutions(旧名称:FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart PROFOURS)」という製造業向けの統合計画管理ソリューションの開発でした。
「私が配属されたのは、Fujitsu Supply Chain Planning Solutionsが販売開始されたばかりの頃です。主に、先輩が設計した追加機能のプログラミングを担当していました。SEとして仕事を覚える上で良い経験でしたが、学生時代と同じような疑問が沸いてきました。『私が作ったこの機能は、お客様やその業務にどう役立っているのだろうか』と。
追加機能は、ご利用いただくお客様からの要望や意見をもとに開発していますが、私自身が直接お客様から聞いたわけではありません。また、実際にお客様がどう使っているかもわからないです。そんな状況でプログラミングしていると、設計通りに作っているつもりでも、設計意図と微妙に異なる部分が出てきてしまうことがありました。私としてはモヤモヤしたものを感じていました」
このままでは良くないと思った柳は、上司に相談します。
「お客様の業務を知り、その課題やニーズに自ら触れない限り、このまま開発を続けても、良いものは作れないと思って。お客様へのシステム導入を担当するチームへ異動させてもらいました」
その後、お客様への提案、導入からシステム稼働後の運用保守までを経験。その経験から、新バージョンのソリューション企画を担当することになった柳。そして、学生時代の疑問を解消する時がきます。
「販売開始から8年が経過し、ただ機能追加するのではなく、ソリューションそのものやソリューションを取り巻くビジネスの形を見直すことになりました。そのひとつとして、新バージョンではAIやGAといった技術の活用を検討することになりました。ようやく、『私が勉強していたことが、どう世の中の役に立つか』ということがわかって。まだ道半ばではありますが、それは嬉しかったです」
ある課題を解消するために企画したハッカソン。その結果とは
新機能を企画する中で、ある課題を抱えていたという柳。
「お客様業務の課題を解決するために製品のレベルアップは進めていますが、どうしても自社製品だけでは届かない範囲があって。そんな時に、同じく計画業務ソリューションを手掛けるAnaplan社からパートナーシップ締結の打診があったんです。
自社製品であるFujitsu Supply Chain Planning Solutionsは、工場など現場系の計画に特化したソリューションで、複雑な製造制約を考慮した詳細計画を立案することができます。一方、Anaplanは複数企業や部門をまたがる幅広い計画業務をカバーするプラットフォームで、サプライチェーン領域ではS&OP(販売事業計画) やサプライヤコラボレーション等の業務に適用が可能です。
2つのソリューションを組み合わせることで、サプライチェーン全体の計画業務をカバーできるようになると考えました。ただ、私の部署では、他社のソリューションを担いでビジネスを進めることにあまり慣れていなくて。正直、この打診に対し後ろ向きな意見もありました」
その後、社内での検討を経て、Anaplan社とパートナー契約を締結することに。しかし、その推進にあたって大きな壁に直面します。
「当時、Anaplanを知っている社員がほとんどいませんでした。そんな状態では、パートナーシップといっても形だけになってしまう。そこで、まずは社内での認知度向上に注力することにし、さまざまな部署向けに勉強会を開催しました。
ただ、Anaplanは優れたソリューションではあるものの、特定業務だけに特化したものではないため、具体的な利用イメージが掴みにくい印象がありました。そこで、Anaplanのハッカソンを開催し、実際に触れることでその良さを理解してもらおうと考えました」
開催に向け、準備を進めていた柳。ハッカソンへの参加者を増やすために、工夫した点を次のように語ります。
「ただ『Anaplanのハッカソンをやります』と言っても、Anaplanを知らない社員には響きません。とにかくわかりやすく、参加しやすいものにしないとダメだと思いました。そこで、関係者と議論の上、ハッカソンのお題を『計画業務』ではなく、『脱Excel化したい業務』とし、参加のハードルをぐっと下げるようにしました」
準備期間はたったの2か月。Anaplan社や社内の関連部署との調整には苦労したという柳ですが、その苦労が報われます。
「出場チームとしては4チームのエントリーがあり、観客含め200名以上が参加してくれました。イベント終了後に行ったアンケートでは満足度が高く、『Anaplanがどういうものかがわかった』や『うちの部署でも使ってみたい』などの声もいただきました。
ただ、1回やって終わりにはしたくないですし、社外の方に対し、富士通がAnaplanを扱っていることについてもっと認知してもらわないといけません。そのため、現在、社外の方も交えたハッカソンを企画中です」
Anaplan社イベントに登壇。Why Fujitsu?を探す日々
Anaplan社とのパートナー契約を締結した富士通。Anaplan社が開催している年次イベント「Anaplan Connect」に参加することとなります。
「Anaplan社のパートナー企業が集まる大規模なグローバルイベントで、東京を含むさまざまな都市で開催されています。パートナー企業同士のネットワーキングやお客様への導入事例などを共有する場になっているのですが、富士通はこれまで2回招待いただきました。
また、招待にあわせ事例講演する時間もいただきまして。社外に発信するいい機会ということでお引き受けしたのですが、何を話すかは相当悩みました。Anaplanはすでにあらゆる業種、業務での導入事例があります。ただ導入事例を話したところで、他社の参考にならないですし、当社のプレゼンスも高まりません。『Why Fujitsu?』がとても大事なんです」
講演では、自身も登壇者として話す時間があるということで、入念に準備を進めた柳。関係者との打ち合わせは、繰り返すこと30回。また、納得がいくまで原稿の修正を続けたと言います。
「当社のケイパビリティは、製造業のお客様に対する豊富な導入実績と、その中で蓄積してきたノウハウ、価値に合わせたソリューション提供が可能な点です。そのため、ただただAnaplanをどう活用したか、という話ではなく、当社のコンサル力と複数ソリューションの組み合わせにより、サプライチェーンの迅速化・最適化が実現できる点をアピールしました」
イベント登壇後、大きな反響があったと話す柳。
「イベントを機に認知が広まり、Fujitsu Supply Chain Planning Solutionsを採用いただいているお客様から、『Anaplanも扱っているんですね』とお声がけいただくようになりました。以前に比べ、その商談数は格段に増えていて、対外アピールとしては成功だったと思います」
また、イベントでの登壇は、Anaplan社との関係性にも良い影響を与えたと言います。
「製造業はAnaplan社としても今後伸ばしていきたい領域。今後、さらなる密な連携をしていきましょうということで、ただの一パートナーから一歩進んだ関係になれたと思います」
取り組み続けた結果の功績。今後に見据えるビジネス拡大と自身のキャリア
これまで、ハッカソンの企画運営やAnaplan社主催イベントでの登壇と、社内外での認知浸透を目的に、精力的に活動してきた柳。
「2021年にAnaplan社とのパートナー契約を締結しましたが、私たちの活動の効果が数字としても見えるようになってきて。昨年は、商談の引き合いは前年比で約4倍、受注金額では約7倍にまでなりました」
また昨年は、別の嬉しい知らせが柳のもとに届いたと言います。
「Anaplan社のパートナー企業の中で、最もビジネス成長したパートナーに贈られる『Japan Growth Partner of the Year 2022』を受賞させていただきました。パートナー契約締結から1年ちょっとでの受賞に正直びっくりしましたが、これまでの活動が評価されたことはとても嬉しかったです。
もちろん、私だけではなく仲間がいてこその受賞です。活動開始当初は、そのビジネス連携に懐疑的な声もありましたが、それでも一緒に取り組んでくれた仲間には、この場を借りて感謝を伝えたいです」
3年目となる今年は、さらなるビジネス拡大に向け、準備を進めているという柳。
「ソリューションとしてFujitsu Supply Chain Planning SolutionsとAnaplanの2つがあります、ではなく、お客様の課題に合わせてカスタマイズし、それぞれの特長が活きる形に仕立てていきたいです。また、ビジネス範囲を国内だけではなくグローバルに広げられる活動を推進していきたいです。もちろん、お客様を巻き込んだハッカソンの件は準備を進めています」
インタビューの最後に、今後のキャリアについてこのように語ります。
「いま、主に2つのソリューションを扱っていますが、特定のソリューションの専門家になりたいわけではなく、計画業務全体のプロフェッショナルとして、お客様の本質的な課題解決を支援していきたいと考えています。ソリューションに対する知識や経験は、そうなるための武器のひとつだと思っていますし、その武器は今後も増やしていきたいです。
また、プロフェッショナルとして取り組むべきは、お客様の経営課題であったり、ひいては社会課題だったりすると思っています。でも、私としては、目の前の人の困りごとを解消したり、幸せになってもらうことも大事だと思っています。どちらか一方ではなく双方に目を向ける。そんなバランス感覚を持ったプロフェッショナルになりたいです」
※ 記載内容は2023年7月時点のものです
