観光バス事業向け自社プロダクト。業務効率化とデータ利活用を同時に実現
──まず、busmaのシステム概要を教えてください。
busmaは、観光バス事業向けのSaaS型サービスであり、紙や手作業が多い観光バスの運行業務のDXを実現します。
busmaの機能は、見積、予約、配車、運行管理、請求、業務分析と分かれています。
例えば、見積業務の場合、これまでは営業担当者が地図アプリで距離を測定し、Excelに手入力して料金を計算していました。しかし、busmaの見積機能を活用すれば、行程から見積金額が自動計算されるため、営業時間の創出や見積金額誤りの撲滅につながります。
また、請求業務で言えば、従来は銀行の明細を一件ずつ目視することで入金を確認し、消込処理も手作業で実施するために、労力がかかる上にミスも発生しやすい業務フローとなっていました。この煩雑な業務についても、busmaの請求機能で請求書作成と入金後の消込処理が自動化されるため、経理部門の大幅な効率化を実現可能です。
さらに、busma導入時の業務効率化のポイントとして、機能間のデータ連携により、見積業務と予約業務のそれぞれで顧客情報や運行情報を重複入力するようなムダがなくなる点も挙げられます。
──busmaではデータの利活用も実現できると聞きました。
はい、積み上げたデータを可視化し、分析結果を経営判断に活用できることがbusma導入のもう一つのメリットです。
一般的な観光バス事業の業務フローにおいて、見積書は営業担当者の手作業で作成され、旅行代理店やお客様に送付した見積書の写しは書面で保管されていることが多いです。このように各種情報がデータベース化されていないため、経営状況をリアルタイムに把握できず、稼働状況や失注率等の指標を分析することもできません。
busmaには、見積データや運行データをはじめとする各種データをダッシュボードで可視化し、分析レポートを自動作成する機能を搭載しています。データの利活用により、経営判断の精度が上がるとともに、社員の目標意識の向上も期待できます。
DXで観光バス業界をより良い方向に。自社プロダクト開発に込めた想い
──ここからはbusmaの開発が始まった経緯を教えてください。
busmaの開発は、観光バス業界全体を良いものにしようという想いからスタートしています。
当社の代表である宮本の家業が東都観光バスという大手の観光バス会社であり、宮本が当該企業を引き継ぐにあたり、最も課題に感じた点が属人的で非効率な業務フローでした。
観光バス業界を見渡すと、東都観光バスに限らず、昔ながらの業務システムを利用し続けている会社が多いことがわかりました。変わっていく関係法令や制度に対応するために、その業務システムをアップデートしたくても難しく、結果として、手作業等で補完せざるを得ない状況に陥っていました。
そこで、以前から東都観光バスの業務改善を目的としたWEBシステム開発の話が挙がっていたのですが、本格的に開発を進めていくのであれば、観光バス業界全体で使ってもらえるものにしようということで、2021年8月にbusmaの開発プロジェクトが発足しました。
プロダクトの外販によって売上を増やしたいというより、同じような状況に苦慮している会社に利用してもらうことで、観光バス業界全体をDXしたいという気持ちで開発を進めています。
──プロジェクト発足後はどのように開発を進めてきたのでしょうか?
後続業務は既存システムを利用する前提で、最初は見積機能の開発から着手しました。ユーザーとなる東都観光バスの方々と協議しながら進めて、見積機能は半年強でリリースできました。
その後、他の観光バス会社に利用してもらうことを考えると、他の業務に関する機能も追加した方がよいという話が挙がり、予約機能、配車機能、運行管理機能、請求機能、業務分析機能と順次開発を進めてきました。
──プロジェクトメンバーはどのように選出したのでしょうか?
プロジェクトメンバーは社内で公募しました。メンバー選定時にはもちろんスキルや経験も見ましたが、あえて精鋭メンバーばかりを選ぶのではなく、人材育成の観点で中途入社直後の社員や新卒1年目の社員にも参画してもらいました。ケアリッツでは「誰と働くかにこだわる」ことを大切にしており、面白いと思えるメンバーと開発に取り組みたいと考えていましたね。
システム導入の目的とは何か。ユーザーと共に業務効率化を進めていく
──開発過程においてユーザーとはどのように関わっていくのでしょうか?
busmaの開発では、機能検討や要件整理のフェーズだけでなく、リリース後も東都観光バスの方々にご協力いただいています。完成した機能から段階的にリリースし、実際に利用する中で発見した課題や要望をフィードバックしてもらうことで、システムの改善につなげています。
既存システムから一斉に切り替えることも考えましたが、大幅な業務フローの修正とともにシステム導入を行うのであれば、段階的にリリースした方がスムーズに進められるという結論に至りました。段階的な対応となるために負担が増えている面もありますが、前向きにご協力いただいていて、大変ありがたく感じています。
──ユーザー内での周知や教育の進め方を教えてください。
まず、各部門の責任者の方々とbusma導入の目的について目線を合わせました。システム刷新が目的ではなく、「どのようにシステムを活用し、どのように業務フローを改善するか」が重要であることを理解いただき、現場の課題を把握する責任者の方々としっかり連携できる体制を整えました。
その次のステップとして、現場の担当者の方々に対し、busmaについて説明し、実際に触れていただく機会を頻繁に設けています。既存システムに慣れた方から抵抗感を示されることもありますが、責任者の方々から現状打破の必要性を粘り強く説明いただくことで、東都観光バス全体で改善に向けた機運を高めていただいています。
これはbusmaに限った話ではなく、業務フローを変える努力をせずに、システムが何とかしてくれるという考えに陥ってしまうと、システム導入そのものが目的となり、業務効率化を実現できなくなってしまいます。
私もユーザー側の立場で同じ経験をした反省を踏まえ、システム開発を進める際は、システムはあくまでも業務効率化の手段に過ぎないことをお客様に必ず伝えています。システム導入の前提として、まず業務の断捨離が必要であり、お客様に主体的に取り組んでいただけるように支援しています。
自社プロダクト開発ならではの醍醐味。付加価値を創造する責任を前向きに楽しむ
──自社プロダクト開発のやりがいを教えてください。
開発するプロダクトの価値を自分で形作れる醍醐味があることです。
私は、busmaの開発において、技術選定の面でも大きな裁量をもらえたため、「どうすればユーザーに快適に使ってもらえるか」という観点で、会社として利用実績の少ない技術を活用したり、アジャイル開発を取り入れたりしました。このベストを探究し続ける過程が非常に楽しいですね。
また、自社プロダクトの開発では、仕様や技術選定だけでなく、強みやコンセプト、マーケティングまで自分たちで幅広く考える必要があります。「本当に良いもの、本当に必要なものとは何なのか」を作り手として体感できることが一番のやりがいだと考えています。
──最後に、どのような人と自社プロダクト開発に取り組みたいですか?
仕事の全体像を俯瞰できる、責任感の強い方が自社プロダクト開発に向いていると思います。
「自社プロダクト開発は社内でスケジュール調整できるから楽」という話をよく聞きますが、それは大きな誤解です。自社プロダクトの開発期間は売上や利益を生み出さず、会社が投資している状態であるため、一層のスピード感を持って開発を進める必要があります。
また、プロダクトの機能を全て完成させてリリースしたとしても、ユーザーに満足して利用されなければ失敗と言えます。どんなに美しいコードを書き、モダンな技術を使ったとしても、ユーザーの満足や改善につながらなければ、そのプロダクトに価値や意味はないのです。このような考えから、busmaの開発メンバーには、プロダクトと自身の仕事の価値をできるだけ自分の言葉で説明できるように求めています。
先程の魅力の話は、裏を返せば、ユーザーに使ってもらうという結果が重視されるシビアな世界ということでもあります。そういった責任を背負う勇気と覚悟がある方であれば、自社プロダクト開発を通じて代え難い経験を得られるはずです。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです

