「IT小売業」をめざして。DXを「当たり前」に変え、カインズ流DX 2.0へ
2019年、カインズは「第3の創業」を掲げ、中期経営計画「PROJECT KINDNESS」をスタートさせました。その核の1つが、「IT小売業」をめざすデジタル戦略です。当時の社内のIT基盤は、店舗従業員が使うモバイル端末でWeb検索もできなかったほど。まさにゼロベースからの改革が始まりました。
それを象徴する事例が、従業員向けの売り場・在庫検索アプリ『Find in CAINZ』です。当時、開発に携わったデジタル開発推進統括部/フォーマット開発事業部 事業本部長の水野 圭基はこう振り返ります。
水野:店舗従業員はお客様から「この商品はどこにありますか?」と聞かれることがとても多いんです。そこで、商品を探す手間を省き業務効率化を図るために、新たなアプリを開発しました。商品名やキーワード、JANコードなどを入力するとその商品の売り場や在庫数などが即時にわかります。
試作段階のアプリを店舗に持っていった当初、「こんなの使わないよ」と評判は芳しくありませんでした。それでも現場の率直な声をもとに短期間で修正を繰り返すアジャイル開発で改善を重ねていきました。すると、3カ月ほど経つと「便利だね」と声が変わり始めたんです。
結果的に、売場案内の接客時間が40%削減され、顧客満足度の向上にもつながるなど、大きな成果が表れました。それ以降も新たな機能を開発し、現在は50以上のアプリが導入されています。
こうして、従業員用アプリの機能を応用したお客様向けの『CAINZアプリ』、オンライン注文の商品をさまざまな方法で受け取れる『CAINZ PickUp』など、カインズならではの「Kindnessな購買体験」につながるサービスが次々と生まれました。
店舗DXの取り組みと並行して、マーケティングオートメーションの導入など、お客様への情報発信を最適化する基幹的な仕組みも整備。
さらに、現場従業員の持つ深い商品知識とデジタルを融合させたコンテンツマーケティングにも注力しました。オウンドメディア『となりのカインズさん』は正式オープンから1年を待たずに月間400万PVを達成したほか、ペット領域に特化した『WanQol(わんクォール)』や、YouTubeチャンネル『カインズTV』なども展開し、大きな反響を得ています。
こうした成功体験の積み重ねが全社的なDX推進の土壌となり、2021年には「IT Japan Award 2021」グランプリを受賞。今やDXは「当たり前」のカルチャーとなり、新たなアイデアが各部署から寄せられる状態です。この勢いを原動力に、カインズはさらなる変革を見据え、「カインズ流DX 2.0」を加速させます。
理想は「商店街のような温かさ」。お客様のくらしを、デジタルでより良くする
基盤構築やオウンドメディアコンテンツの充実といった「素材」がそろいつつある今、これからは、多様なお客様の多様なくらしをより良くするための具体策を講じるフェーズになると、上席執行役員/CMOの石橋 雅史は語ります。
石橋:私たちはすでに「ホームセンター」という枠を超え、単純に商品を売るだけでなく、それらをどのようにくらしの中に取り入れるかに注力しています。めざしているのは「昔ながらの商店街のような姿」。1カ所にいろいろな専門店が集まっているように、カインズなら、ペットやグリーン、工具などそれぞれの専門性を高め、より尖った存在にしていきたい。
そして、店先に立つおしゃべりな店員さんが「今日はこれがおすすめですよ」と教えてくれるように、「良い意味でおせっかいな温かさ」をいかにデジタルで実現するか。これが新たな課題だと考えています。
鍵となるのは、これまで築き上げてきた業界トップクラスの顧客基盤、そしてオウンドメディアやYouTubeなどの豊富なコンテンツを、最適なタイミング、最適な形で、お客様一人ひとりに届けることだと言います。
石橋:お客様の購入パターンから、ライフスタイルや次に欲しい物をAIで予測することができるようになっています。お客様から問い合わせがある前に先回りして、たとえば「観葉植物があるくらしはどうですか?」「こんな商品がおすすめです」と潜在ニーズに合った提案を行うことで、「そうそう、これが欲しかったんだよ」という体験につなげたい。
そうして1鉢買ったお客様が、いつのまにか家の中がグリーンで溢れるくらい観葉植物の世界を愛でるようになっている。そんなくらしの楽しさを私たちがお手伝いできると考えるとワクワクします。
この壮大なビジョンを実現するためには、新たなデジタル人材が必要だと、石橋は強調します。
石橋:複雑化・多様化するニーズを汲み取り、デジタルで「人間味のあるお付き合い」を実現するには、AIの活用が不可欠です。AIやデータ基盤の技術をうまく現場の業務とつなげられる人材を求めています。
重要なのは、スキルよりもむしろ、カインズがめざす「お客様のくらしをより良くしていきたい」というビジョンに共感できるかどうか。さらに、私たちが大事にしている「一人ひとりがコンテンツ」という考え方からも、自身の個性や強みを積極的に発信できる方は大いに活躍できると思います。そんな方にぜひ仲間に加わってほしいですね。
多種多様な属性データを武器に、高難度のCRMに挑むマーケティングの醍醐味
石橋が語ったビジョンを受け、マーケティング領域を牽引するのが、マーケティング本部 本部長の白鳥 好太です。
白鳥:これまでの取り組みを通して、膨大な顧客データを蓄積してきました。これを、同じく充実させてきたコンテンツやオウンドメディアと組み合わせ、顧客接点の強化や顧客育成といったCRM(顧客関係管理)に活かしていくことが、今まさに取り組もうとしている課題です。
めざすのは、顧客、商品、コンテンツ、店舗といったすべてに「属性」を持たせ、それらを掛け合わせてお客様へ最適な提案を行うことだと語ります。
白鳥:カインズは取り扱う商品のカテゴリが非常に多い。だからこそ「自転車を買った人が工具を買っている」「家具を買った人がペットに興味を持っている」など、さまざまな情報を掛け合わせた属性がたくさん生まれます。
これこそが私たちの強みです。この属性を駆使したマーケティングを行いながら、お客様ごとに最適な情報、最適なコンテンツ、心地よい商品を提供していく。商品はもちろん、新たなコンテンツも開発し、その質も高めていくなど、すべてを一気通貫で進めていかなければなりません。
これは小売業の中でも非常に難しい挑戦ですが、その分やりがいのある領域。実現できたときの達成感は格別だと思いますよ。
この挑戦において、技術基盤を担うエンジニアの役割は大きいと、白鳥は続けます。
白鳥:まずは、これまで散らばっていたさまざまな情報を束ね、データ基盤を整えます。そこにAIを取り入れてお客様への提案を量産化・高度化したり、レコメンドエンジンを見直したりなどの先進的な技術やシステムが必要になります。
自身の持つ知見やスキルを駆使して「新たなサービスを作りたい」「顧客を育成していきたい」など、ビジネス領域にも強い想いのあるエンジニアの方は、この仕事にマッチするのではないでしょうか。
これは、カインズがリアル店舗で大切にしてきた「お客様のくらしに寄り添う」というマインドそのもの。それをデジタル上でさらにスケールさせていくために、ビジネス部門と協業しながら、ぜひ皆さんの力を発揮してほしいですね。
AIで「全体最適」を実現。現場との近さとスピード感で直にDXを動かせる開発環境
心地よい顧客体験の提供に加え、カインズ流DX2.0のもう1つの柱となるのが、水野が推進するSCM(サプライチェーン・マネジメント)をはじめとしたバリューチェーン全体の変革です。
水野:カインズ流DX 2.0では、店舗やビジネス全体といった業務領域にも力を入れ、より広範囲でカインズのアップデートを図ります。その中で注力するのがAIを活用した「全体最適」です。小売業の根幹である、商品を仕入れ、輸送し、店内の棚に陳列し、販売して、また仕入れる……というサイクル。
今までも領域ごとにテクノロジーを導入し最適化を進めてきましたが、領域間の連携はできていませんでした。これらを横につなげて一本化し、より効果の高い全体最適化を実現したいんです。
たとえば、どこかの領域だけを最適化しようとすると、連動する別の領域でコストがかさみ、全体で見ればコストが大きくなってしまう……ということがあります。こうした部分最適のジレンマを、AIエージェントを取り入れることで解消しようという構想です。
この基盤が整えば、これまでは難しかった、地域ごとのマーケット特性に合わせた品ぞろえや価格設定なども、スピード感を持って展開できると考えています。
すでに一部の店舗では導入が始まっています。その結果、サプライチェーンのサイクルが円滑に回るようになり、業務の効率化にもつながるなど、従業員の働き方にも効果が表れています。
こうした挑戦を技術面で支えているのが、カインズならではの開発環境です。水野は、部門を超えた「ワイガヤ」なチーム体制と、圧倒的なスピード感が最大の魅力だと語ります。
水野:ビジネス部門が「こういう機能を作りたい」と相談すると、開発部門が技術的な視点で「それはコストに見合った効果が見込めないかもしれません」「このように再考してみては?」と提案します。
さらにビジネス側は「でも、この機能によってこんなことが実現できるんです」と現場の価値を伝えるなど、お互いの知見を持ち寄りながら、本音で議論するんです。
現場のメンバーに裁量が任されているため、プロジェクトは上層部の承認を待つなどの手戻りなく進められます。「ローコストに速く、良いものを作っていこう」というのがカインズ流。試作と検証を繰り返しながら「この方法はうまくいかなかったから、次はこうしてみよう」と毎週のようにシステムをアップデートし、改善策を探っていきます。
今後はAIを活用することで日常業務を効率化し、さらに創造的な領域での活躍も求められることになるでしょう。
そして何より、カインズで働くエンジニアの魅力として、水野は「現場との圧倒的な近さ」を挙げます。
水野:新しいシステムを開発する時は、ビジネス部門・開発部門が共に店舗を訪れ、アルバイトやパートの方に使用感を聞くんです。すると「ここがすごく良いよ」「ちょっと使いづらいんだよね」という生の声をその場でもらえます。熱心なお客様からのお声が、現場を通じてフィードバックされることも。
これは、リアル店舗をメインに取り組むカインズのエンジニアならではの醍醐味です。自分が作ったものの使われ方や現場での本音に興味を持ち、より良いものを作りたいという方には、絶好の環境だと思います。
「新しいことに挑戦したい」「技術をもっと高めていきたい」という熱意のある方は、ぜひここでその想いを実現させていただきたいですね。
「くらしDIY」を企業ブランドに掲げ、お客様のくらしに創意工夫を提案するカインズは、従業員一人ひとりが創意工夫をもって取り組むのが企業カルチャー。お客様、そして店舗従業員のために何ができるか?を第一に、最先端のデータ基盤と現場の熱量で課題解決に情熱を注ぐ。
業界トップクラスのフィールドで、自らの手でDXを推進するおもしろさが、カインズにはあります。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです
