子どもの受験を控えながら、「女性支店長」という新たなロールモデルに挑戦。
横浜銀行では、多様化・高度化する地域社会・お客さまのニーズに応えるために、マネジメント層の多様性確保および女性活躍推進を重要な経営課題のひとつとして捉えています。
その一環として、次世代の経営を担う人財の多様性の強化を目的とした女性活躍推進「TSUBAKIプロジェクト」を実施するなど、育成施策を展開。グループ全体の女性管理役職者比率を、2023年度の17.7%から2027年度には25.0%へと引き上げることをめざし、女性管理役職者を積極的に育成・登用しています。
2022年に課長に昇進した田中も、そんな女性管理職として活躍する行員のひとりで、現在、いずみ野支店で支店長を務めています。
「私の主な業務は、行員やパートタイムのメンバーのマネジメントです。労務や総務、営業上の数字などの管理を行うと共に、支店の円滑な運営を担っています。
現在、いずみ野支店は私を含めた行員数名と、ロビー業務や入出金振込の窓口での店頭事務を主に担当するパートタイム勤務の方、計10名程度で構成されています。
ほかの小規模店舗と同様、ベテラン揃いで、今は私が最年少。メンバーのうち半分近くは、私よりも長くいずみ野支店に在籍しています」
田中がいずみ野支店長となったのは2024年2月。彼女にとって思いがけない出来事でした。
「支店長への昇進を知らされた際、正直なところ戸惑いがありました。というのも、翌年に子どもの中学受験を控え、重い職責との両立に不安を感じたからです。
一方で、育児をしながら第一線で働く女性支店長というロールモデルへの期待に応えたいという使命感もありました」
田中が銀行員として着実にキャリアを築いてこられたのは、周囲の支援があってこそ。支店長のポジションを引き受けた背景には、これまで彼女を支えてきた上司や先輩行員への深い感謝の念、そして組織に恩返しがしたいという強い意志がありました。
「仕事上の課題に直面するたびに、支店の枠を超えて、新人時代からお世話になっている先輩や上司に相談し、助けていただいています。ときには、『田中が悩んでいるから励ましてやってくれ』と、第三者を介して声をかけてくださったり、直接会いに来てくださったりしたこともありました。
現在の私があるのは、上司、先輩、同僚の皆さんからの指導の賜物です。温かい目で見守り育てていただいたことへの感謝の気持ちを込めて、すでに退職された方々も含め、昇格の際には必ず報告し、感謝の気持ちをお伝えしてきました。
支店長となり、ようやく私がこれまでに受けてきた支援を後輩たちに還元できる立場となりました。積極的に相談してほしいと思っていますし、力になれることを非常にうれしく思っています」
限られた時間での効率的な仕事ぶりで課長代理に。ダイバーシティ推進への大きな一歩
過去2012年に第一子出産にともない産育休を取得した田中。当時、大きな不安なくスムーズに職場復帰できたのも、周囲の理解と支えがあったからでした。
「職場復帰直後から、同僚や上司の温かいサポートがありました。想像以上にスムーズに職場環境に適応できたことを鮮明に覚えています。
とくに印象に残っているのは、『そろそろ帰る時間ではないですか』と上司のほうから積極的に声をかけてくださったことです。私自身が意識する以上に、周囲が配慮してくれたおかげで、心理的な負担なく、時間通りに退社することができていました。互いを思いやる当行の企業文化に助けられてきたと実感しています。
一方で、私自身も周囲に過度の負担をかけないよう努めてきました。業務上の責任を確実に果たすことはもちろん、育児や家庭の事情を仕事に持ち込まないよう、メリハリをつけることを心がけていた記憶があります。こうした姿勢が、周囲の理解と支援につながったのかもしれません」
復帰後、田中が担当したのは産育休取得前と同じ個人顧客向け営業。適職とも言える仕事に大きなやりがいを感じ、持ち味を存分に発揮してきました。
「復職前に、どの業務で産育休明けのキャリアを積みたいか希望を申請しますが、私は人と話すのが好きで、それぞれのお客さまから多くを学べることにも意義を感じていましたので、従前から携わっていた個人営業への復職を希望しました。提案したサービスや商品をお客さまが気に入ってくださり、成約につながったときの達成感は格別です。それが私の仕事への原動力になっていました。
その希望が叶い、復帰直後は窓口で来店誘致型の個人顧客向け営業を担当し、課長代理への昇格にともない外回りが中心となる渉外業務に携わりました。2020年からは、窓口担当者をサポートする店頭サービス部門の事務管理担当に。いわゆる「ダブル成人式」と言われる40歳を機に、自身の業務領域を拡げる新たなキャリアパスを希望していた私の意向を上司が汲み取って実現した配置転換でした。
子育てのために、残業などせずに短時間で効率よく勤務してきた田中が課長代理に昇進。当時、これは行内で画期的な出来事でした」
今ではフレックスタイム制が導入されたことで、自身の環境に合わせて出退勤時間を調整し、家庭と仕事の両立を図る行員も増えてきたという。
「子育てとキャリアを両立していくのが難しかった当時、そのロールモデルとして先陣を切るきっかけとなったのが、当時の支店長の計らいです。勤務時間にかかわらず、私の成績を正当に評価し推薦してくださった結果、2018年に課長代理への昇格を果たすことができました。
この経験を通じて痛感したのは、キャリアを継続することの重要性です。子育て中の後輩たちには、仕事をあきらめずに成長していこうと励ましの言葉をかけ続けています」
一方、課長昇進後はこんな苦労も。
「管理職となったことで朝7時前には家を出なければならなくなり、娘との時間が大幅に減少しました。夫も早く出社するため、娘は朝ひとりで過ごさなくてはなりません。まだ幼い子に『鍵をしっかり締めて出かけてね』と言い残して毎朝出勤するのは、胸が締めつけられる思いでした。バス停でバスを待つ私に、ベランダから手を振ってくれていた娘の姿がいまも脳裏に焼きついています。
でも案外、親よりも子どもの方がすぐにその環境に慣れて一人の時間を楽しんでいたので、救われましたね」
仕事と育児の両立を支えたのは、家族の存在。性別を超えた働き方の実現に向けて
いずみ野支店長就任にともない、田中の生活は一変。新たな挑戦を支え続けてきたのは、家族の存在でした。
「朝5時に起床し、7時前には家を出発します。帰宅は19時前後。すぐに夕食の準備に取り掛かり、20時30分ごろには子どもの習い事のお迎えに出かけ、21時から家族で夕食を取って23時には就寝するという毎日です。
このような状況下でも仕事を続けられているのは、家族のおかげ。夫は常々、仕事と家庭の両立のために支援してくれていますし、子どもも『スーツを着て働くママがかっこいいから、仕事を続けてほしい』と励ましてくれています」
産育休から復帰するに当たって、子育てを中心に据えた働き方をすることを会社に対して宣言したと言う田中。仕事と育児を両立する上で、決して譲れないことがありました。
「夫の仕事が多忙なため、実質的にはワンオペ育児の状況でしたが、食事の準備だけは絶対に妥協しないと決めていました。食育の観点から、子どもには手づくりの食事を提供することを徹底しています。
この考え方の原点となったのは、大学時代に受講した家庭医学の講演です。そこで手づくりの食事が子どもの健全な発育に好影響を与えることを知って以来、それを頑なに守り続けています。
子どもからは『ママの料理がおいしかった。仕事頑張ってね』と書かれた手紙をもらうことも多く、努力してきた甲斐があったと感じています」
田中の昇進と並行して、横浜銀行では多くの女性管理職が誕生しました。女性の活躍が進むに従い、性別に関係なく働きやすい環境が醸成されていると田中は言います。
「最近では、子育てに積極的に関与する男性社員が増加しています。たとえば、『今日は子どもの送迎があるため早退します』『毎週水曜日は早めに退社しています』と話す男性支店長も珍しくなくなりました。性別による働き方の違いがなくなりつつあると実感しています」
経験を活かし、未知の領域に挑む。支店長として新たな挑戦を通じてさらなる成長を
同僚たちに支えられた働きやすい職場環境の中で、ときには新たな前例を打ち立てながら、20年以上にわたって自分らしいキャリアパスを築いてきた田中。しかし、彼女の挑戦はまだ終わっていません。
「私はいわゆる就職氷河期世代です。数多くのエントリーシートを提出し、苦心の末に入行した当行への深い感謝と責任感を胸に、これまでキャリアを積み重ねてきました。
支店長の職務は、そんな私にとって銀行員としての集大成であると同時に、これまでの経験を役立てつつ、新たな課題に挑戦する非常に刺激的な立場だと考えています。
たとえば、私には法人営業の経験がないため、新規お客さま開拓に向けて日々学習中です。人員が限られているため、現時点で渉外活動はできていませんが、積極的に店頭に立ち、新しいお客さまと対話するところから始めています。
これまで培ってきた知見を最大限に活用し、さらなる成長と貢献をめざして邁進していきたいですね」
※ 記載内容は2024年8月時点のものです
