想定外の異動が「武器」に変わるまで。現場と本部のハイブリッド・キャリア
現在、横浜銀行の人財部DEI推進室で室長を務める大湖。2004年の入行以来、現場と本部を行き来しながら多様なキャリアを積んできました。
「法人渉外として中小企業の経営支援をしたいという志を胸に、入行後は金沢産業センター支店で産業団地の中小企業や町工場を回る日々を送っていました。さまざまなお客さまを支援していることに大きな充実感を得ていましたが、5年目に異動の打診があり、配属先は人財部という予想外の部署。営業の最前線から畑違いの人事への異動でしたので、当初はその背景が理解できず、モチベーションを保つのに苦戦していたことを覚えています。
転機となったのは、新卒採用業務を一人で担当するようになったことです。学生に当行の魅力を伝えるには、自分自身が銀行の役割や業務内容をあらためて深く知る必要がありました。その過程で銀行には非常に多様な仕事が存在していることを再認識しました。
そして、多様な業務を支えるには、多様な人財が不可欠であること、さらに採用や育成が“横浜銀行という組織の未来をつくる根幹”であることを強く意識するようになりました。その頃から人事の仕事への向き合い方が大きく変わり、やりがいをもって取り組めるようになりました」
4年間の人財部経験を経て、大湖は再び希望していた営業の現場へ。配属先の本店営業部では、人事経験が思わぬ形で武器になったと言います。
「ある企業との商談で、財務担当役員が人財確保に悩んでいることを知り、すぐに人財部時代のネットワークを活かして信頼できる人材紹介会社をご紹介しました。
その企業はキャリア採用のノウハウがなかったため、採用プロセスなどについても助言を続けたところ、取り組みを高く評価いただきました。結果、当行の提案金利がメガバンクより高かったにもかかわらず、新規取引につながりました。
お客さまから『こちらの目線で考えてくれる』と言っていただき、人事を経験したことで得られた視点が営業の武器になったと実感しました」
その後は、上海支店、経営企画部、全国地方銀行協会への出向と多様な経験を積んでいきます。そして、2023年。大湖は再び人財部への異動が決まり、DEI推進室の室長として採用、人財育成やDEI推進に注力してきました。
「本音を言えば国際部門への異動を希望していました。しかし、人的資本投資の重要性が再認識される中で、その担い手となる人事部門の役割はますます重要になっていると感じており、いまは大きなやりがいをもって取り組んでいます。
現在、人財部には約100名が所属しており、その中で新卒・キャリア採用、階層別研修、自己啓発支援、女性活躍推進などの業務を統括しています。最近では、キャリアステージや役職に応じたリーダーシップ・マネジメントの育成に加え、幅広い世代のライフキャリアデザインの支援にも注力しています」
多様なキャリアを経験してきた大湖だからこそ、人財育成における「多様性」の重要性を実感しています。
「できる限り前例踏襲で考えないことを意識しています。また、課題に対して評論家にならないよう心がけており、“必ず案件の当事者になってやる”という意識を強く持っています。
その原点にあるのが、上海赴任時の経験です。すでにTOEIC900点を超え、業務でも優秀だった中国人の部下が、帰宅途中にアプリでさらに英語を勉強している姿を見て、大きな衝撃を受けました。このレベルの人たちと働き続けるためには、自分自身も当事者として変化し、挑戦し続けなければならないと強く感じました。
また、上海では多様なバックボーンを持つ人たちが、それぞれの強みを生かしながら混じり合うように働いており、その姿は今も印象に残っています」
人財は、コストではなく「資本」。DEI推進室が担う真のハブ機能
横浜銀行が人財育成で大切にしているのは、変革と挑戦を実現できる人財の育成です。大湖は、その背景にある想いを語ります。
「当行は2023年に、経営戦略と一体となる人財戦略を掲げました。その中で求める人財像として“変革と挑戦”をキーワードに据えています。行員一人ひとりが主体的に挑戦できるよう、銀行として成長の機会を提供することを意識して育成計画を立案しています。
背景には、2020年代に入り注目されている『人的資本投資』の考え方があります。人財をコストではなく“未来をつくる資本”として捉える視点が組織に浸透し、人財育成の裏側に『それは投資なんだ』という文化が少しずつ根付き始めていると感じています」
DEI推進室の室長として新たなミッションに取り組むことになった大湖が、そこであらためて強く意識したのが、銀行全体の育成を統括するハブとしての役割でした。
「人財育成は、思いつきの施策では効果が出ません。どんな人を育て、どんな組織をつくりたいのかという全体像を最上段に置き、階層ごとに求められる人財像を定義する必要があります。その一貫したストーリーの中で研修を設計し、育成施策として形にしていくのが、DEI推進室と金融ビジネススクールの役割です」
とくに大湖が注力しているのが、DEIの考え方を組織の文化として浸透させていくことです。
「DEIは、女性活躍やマイノリティ支援にとどまるものではありません。当行で働く一人ひとりが自身の強みを最大限に発揮し、組織として成果を最大化していくための“戦略”だと考えています。
日本のDEI推進は世界に比べて遅れていると言われますが、地方銀行だから関係ないというわけではありません。むしろ、私たちのお客さまのほうが多様化への対応を進めているように感じます。実際、中小企業の現場では多くの外国籍の方々がすでに活躍されています。背景は企業ごとに違いますが、お客さまが多様性を受け入れ前進しているのに、メインバンクである私たちだけが多様性を尊重できない組織であってよいはずがありません」
他者を排除しないインクルーシブな発想を根付かせ、多様な個性を束ねる高度なマネジメントを実現する。それが“変革と挑戦”を支える最強の基盤になる。大湖はそう信じています。
「底上げ」・「選抜」・「運用」。自律的な成長を促す研修体系
将来の経営を担える人財を計画的に育成することを目的とした、横浜銀行の階層別研修。大湖が重視するのは、各階層やキャリアステージで求められるマネジメントスキルの習得と、成長への気づきを促すことでした。
「上海支店での組織運営に苦労した経験から、マネジメントの型を知ることの重要性を痛感しました。そのため、各ポジションに必要なスキルを“底上げ”する基礎研修を重視しています。同時に、将来の経営を担う人財を早期に選抜し育成する引上げ型の選抜研修、そして育成した人財を適切に配置するポスト運用を連動させ、組織の厚みをつくっています。
若手には、メンター制度の活用や、『自分はこの会社でどうありたいのか』を考えるキャリアデザイン研修を通じて、キャリアオーナーシップを育んでもらっています。一方、中堅・リーダー・マネジメント層には、経験だけに頼らないマネジメント理論の学習機会の拡充や自身の特性を知るアセスメントなどを通じて、視野を広げ視座を高めていく流れをつくっています」
なかでも特徴的なのが、女性活躍推進プログラムを軸にした選抜研修や挑戦を後押しする制度です。
「社員の男女比がほぼ半々である以上、マネジメント層も同じ比率に近づいていくべきだと考えています。意欲ある女性行員が、自らの可能性に蓋をせず挑戦できるよう、強力に支援しています。
また、研修だけでなく、自発的な挑戦を促す仕組みづくりにも注力しています。行内公募制度やFA制度を独自の考え方で運用し、学習機会や報奨金・支援金も拡充しました。たとえばFP1級の資格取得支援を強化した結果、2022年末の300名から2024年には410名へと増加し、地銀の中でもトップクラスに専門人財の厚みが生まれてきたと実感しています」
土台として“安心して挑戦できる環境”を整えた上で、一人ひとりが高い専門性を武器に前へ進む。その積み重ねが、お客さまへの提案力を高め、銀行の競争力の源泉になる。大湖はそう確信しています。
横浜フィナンシャルグループの総合力。「HRDフォーラム」が描く共創の未来
横浜銀行の人財育成の取り組みは、いまグループ全体へと広がりを見せています。2025年夏、大湖が中心となって立ち上げたのが「HRDフォーラム」です。
「フィナンシャルグループでありながら、各社が人財育成を個別に進めている状況に課題を感じていました。営業スキルは会社ごとの特色がありますが、リーダーシップやマネジメント、DEIといった汎用的なスキルはグループ共通で学べるはずです。共同化できる領域を広げることで、グループ全体の生産性を高められると考え、グループ各社に呼びかけ“HRD(Human Resource Development)フォーラム”を立ち上げました」
大湖は自ら横串を刺す役割を担い、各社のニーズを丁寧にヒアリング。 2026年4月からのグループ合同研修の本格スタートに向け準備が進んでいます。
「まずは各社の担当者の顔が見える関係性を創ることが第一歩でした。場ができたことへの反響も上々で、グループ企業同士の課題を共有する中で『採用でも連携できないか』といった新たな議論も生まれ始めています。これがグループの総合力を高めるプラットフォームになればと思っています。
横串を通していく中であらためて感じるのは、横浜フィナンシャルグループの魅力です。人財の多様性に富み、それを活かそうとする文化が根づいていると感じます。だからこそ、仕組みをつくって終わりではなく、行員が意見を出し合いながら常に更新し続ける“自ら進化する組織“でありたい。正解が見えにくい時代だからこそ、育成の枠組みは維持しつつ、中身のコンテンツは常に改善し、多様な意見を取り入れる文化をつくっていきたいと考えています」
最後に、入行を考えている方々にメッセージを送ります。
「横浜銀行には、本当に多様な強みをもつ人財が集まっています。入行を検討されている皆さんも、それぞれに特徴や強みがあるはずです。その一つひとつが、当行なら必ず活かせると確信しています。
そして人財部としては、皆さんが持つ力や可能性を最大限に発揮できるよう、“なりたい自分”を実現するための人づくり・組織づくり・環境づくりをこれからも進めていきます。安心して挑戦し、力を発揮してほしい。ぜひ一緒に未来を築いていきたいですね」
多様な人財一人ひとりの強みを活かし、なりたい姿を実現できる環境をつくる。その決意を胸に、大湖は今日も人財育成の最前線で走り続けています。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです
