教える難しさを感じながらも、新たな発見を得る日々
──現在の業務について教えてください。
技術企画室には、研究開発のための大学との窓口としての役割があります。開発部門が必要としている技術に対して、外部調査をしたり、大学の教授を紹介したりします。現在私は東北大学 大学院工学研究科に常駐しながら、当社と東北大学のつなぎ役になっています。
当社は長きにわたって東北大学と産学連携の関係にあり、2023年3月には「アルプスアルパイン×東北大学 つながる価値共創研究所」を大学内に設置しました。つながる価値共創研究所では感動・安全・環境の3つのテーマで研究しています。たとえば安全運転を実現するためのドライバーのイライラ検知や、車内での感動を生むための車室内音の研究に取り組んでいます。
東北大学のAIE卓越大学院プログラムで、半期15コマ分の講義を担当しています。私はAIを用いた画像認識の講義を通じて、企業における社会課題と製品開発テーマのつながりなどについて学生たちに教えています。もともと私の専門は高分子化学なのですが、専門外のAIを研究する教授や学生と関わる機会が多く、新たな発見や学びを得られるのでやりがいを感じます。
講義を担当するようになったきっかけは、共に共創研究所を運営する教授からのお誘いです。「良い研究者(技術者)と良い教育者はまったくの別物ですが、谷口さんは教えるスキルがあるのでぜひ講義をやりませんか」とお誘いを受けました。
学会発表や講演会は一方向に伝えることが多いですが、講義は相手の理解度によって教え方を変える必要があります。自信はなかったですし、今も学生に教える難しさに悩みつつ、自分なりに講義をしています。
今があるのは学生時代の研究があるから。専門分野で道を拓く
──現在までの経緯を教えてください。
学生時代、大学3年生までは学園祭の実行委員として、イベント企画・運営に力を入れていました。4年生になり、卒業後は大学院に進学せず就職することを決意。京都にあるデパートへの就職を希望していて、最終面接まで残っていました。もともとデパ地下が好きで、京都の特産品などの品揃えの良さに惹かれていたためです。
しかし当時所属していた高分子化学の研究室の先生から勧められ、大学院に進学することを決めました。研究室での1年間と大学院での2年間は必死で研究に取り組みました。この3年間があったからこそ今があると思います。
そして、卒業後にアルプスアルパインへの就職を決めました。当社を知ったのは、大学で受講していた集中講義がきっかけです。その講義は当社の社員が担当しており、その担当者とは今でも良い関係を築いています。
入社後は生産技術部門や開発部門などで、専門分野である接着・接合技術の開発に携わりました。高機能樹脂は撥水性が高く従来の接着剤が使えないため、当時は各社が対応に苦戦。しかしある特殊な化学構造が接着に大きく寄与していることが判明し、接着技術を確立できました。
当時私は京都大学の教授と、接着剤を使わず接着する技術についての共同研究に取り組んでいました。教授は、深紫外線をつかい物質の表面の性質を変える表面改質の研究をされている方でした。教授と共に高分子学会でよく発表したことを覚えています。
技術に注目されがちですが、確立した技術を製品化につなげるには、長い期間と多大な労力を必要とします。今も別のメンバーが製品化にむけた取り組みを続けています。製品化に取り組んでいるメンバーには感謝していますし、今も続いている開発テーマに携われたことを嬉しく思います。
その後、防水機能を持ったタクトスイッチ®の開発などや新規テーマの探索に携わってから、前任者からの引き継ぎで東北大学との産学連携担当を務めることになりました。
大学との連携をさらに広く深く
──達成感を覚えた出来事はありますか?
つながる価値共創研究所を東北大学内に設置できたことです。これからどのように活用していくかが重要ですが、東北大学との連携を一歩前に進めたことは達成感を覚えました。
つながる価値共創研究所を設置したことで変化した点は、機械系・化学系・電気情報系など幅広い専門の教授の方々との連携を深められたことです。研究室に呼んでいただき、実験をさせていただくなど、社員にとっては貴重な学びの体験となっています。学生にとっても社員と共に研究に取り組むことで、良い刺激になっています。
──仕事で大切にしていることはありますか?
相手の事情も含めて考えることです。同僚だけでなく大学の教授や学生とも関わるので、立場を主張するのではなく、できるだけお互いが歩み寄るような形で仕事を進めていくことを心がけています。それぞれの価値観や経歴を持つ人として、相手の立場を尊重しています。
──休日の過ごし方を教えてください。
趣味はランニングとサッカー観戦です。ランニングは同僚からの誘いで始めました。毎年仙台国際ハーフマラソンに参加しているので、今年も走りたいと思います。いつかはベルリンマラソンやホノルルマラソンを走ってみたいですね。
サッカー観戦では、地元が新潟なのでアルビレックス新潟を応援しています。テレビで観戦したり、現地に試合を見に行ったりすることも多いです。子どもと遊ぶことも週末の楽しみです。
社員が大学の応用研究に、より興味を持てるように
──今後の目標を教えてください。
来年度以降さらに当社の若手社員がより大学の応用研究に興味を持てるような仕組みをつくることです。別の拠点にも大学との窓口を増やし、若手社員が1年間大学の研究室で研究に取り組める制度や環境をつくりたいと考えます。
私自身、大学で応用研究に取り組む中で、自分の勉強不足を痛感することが多いです。適性を知った上で、自身のスキル向上につなげてもらえればと思います。
目標を達成するために、私自身の今の業務も継続し発展させたいと考えます。私の恩師である教授から、「自分の持ち場で必死にやりなさい」ということを卒業時に言われました。私を学術の世界に引き込んでくれた教授なので、いただいた言葉を大切にし続けていきたいと思います。
私は学生時代の研究がこれまでの経歴の礎になっています。これからも若手社員に研究の場を提供することで、学びのチャンスを与えられる会社でありたいと思いますね。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
