考えることから始まった、ものづくりの原点
大学院では機械工学を専攻し、形状記憶合金の挙動をシミュレーションで解析する研究に取り組んでいました。変形した金属が熱によって元に戻る現象をパソコン上で再現し、その仕組みを理論的に説明していく研究です。目に見える結果の裏側にある仕組みを分解し、一つずつ考えていく姿勢は、今の仕事にも通じていると感じています。
学生時代に研究と同じくらい力を入れたのが英語でした。もともと得意ではなく、TOEICも400点台からのスタートでしたが、大学4年生から大学院にかけて、単語帳を使いながら毎日少しずつ勉強を続けました。NBA観戦や海外ドラマをきっかけに「内容が分かるようになりたい」という思いが芽生え、続けるうちに少しずつ理解できる範囲が広がっていきました。この経験から、積み重ねることの大切さを学びました。
就職活動では、車載部品分野でものづくりに関われることを重視していました。完成車メーカーよりも、どの部分をどんな技術で支えているのかが見えやすい車載部品メーカーのほうが自分に合っていると感じたからです。その中でアルプスアルパインは、幅広い車載製品を手がけており、技術者として経験を積める環境だと感じ、入社を決めました。
考え続けた先で、自分に合う立ち位置が見えてきた
入社後はメカ設計を行う部署に配属され、約8年間にわたり車載部品の設計を担当しました。ウインカーやワイパー操作部、ステアリングスイッチなど、ドライバーが日常的に触れる部品が中心です。操作性や耐久性はもちろん、万が一の事態にも直結するため、安全性への責任は常に重く感じていました。
設計の現場では、スピードと精度の両立が求められます。納期や仕様が厳しい中、考えた内容をすぐに形にし、試し、また考える。その繰り返しの中で判断を積み重ねていく日々でした。プレッシャーを感じる場面も多くありましたが、自分が関わった製品が形となり、世の中に出ていく過程を間近で見られることは、設計ならではのやりがいでもありました。
一方で、設計業務を続けるうちに、次第に別の視点が芽生えてきました。目の前の設計をまとめるだけでなく、「この開発全体は無理のない進み方をしているのか」「安全の観点で見落としはないか」といった、より俯瞰した立場からものづくりに関わってみたいと感じるようになったのです。スピード感のある設計業務よりも、立ち止まって考え、全体を整理しながら進めていくほうが自分には向いているのではないか――そんな思いを抱くようになりました。
ちょうどその頃、上司から声をかけてもらい、安全保証部へ異動することになりました。設計で培ってきた現場感覚を活かしながら、別の立場で開発を支える。そうした新しい役割への挑戦が、ここから始まりました。
プロジェクトチームとともに、安全を保証するという専門性
現在は安全保証部に所属し、セーフティマネージャーおよびサイバーセキュリティマネージャーとして業務に携わっています。安全保証部は、機能安全やサイバーセキュリティ、ソフトウェア品質などの観点から、製品が十分に安全な状態で世に出せるかを担保する部署です。完成後の確認だけでなく、開発初期から安全に関わる活動を計画、推進し、設計や開発が正しいプロセスで進んでいるかを継続的に管理するのが、セーフティマネージャーおよびサイバーセキュリティマネージャーの役割です。
設計者やプロジェクトリーダーは多忙な中で判断を重ねており、どうしても安全の観点で抜け漏れが生じることや活動が先送りにされることがあります。そうした場面で「できていません」と指摘するのではなく、「どうすれば開発を止めずに、安全を確保したまま前に進められるか」を一緒に考えることを大切にしています。設計現場を経験してきたからこそ、現実的な視点で対話できることが強みだと感じています。
印象に残っているのは、海外の協力会社と連携して進めた開発のプロジェクトです。このプロジェクトは、地理的に離れた複数の拠点やメンバーが、同じ製品・システムを協力して開発する分散開発という手法で行いました。言語や文化、開発プロセスの違いから、意図が思うように伝わらない場面が多くありました。例えば、「ラーメンが食べたい」と伝えたとき、こちらは醤油ラーメンを想像していても、相手からは味噌ラーメンが出てくるような感覚です。どちらも間違いではありませんが、前提が共有されていないことでズレが生じてしまいます。
この経験を通じて、背景や意図まで含めて言葉にする重要性を実感しました。「なぜ必要なのか」「どこまでを想定しているのか」を丁寧に伝える。その積み重ねが、分散開発における品質や安全につながっていきました。学生時代から続けてきた英語学習が、実務の中で生きた瞬間でもあります。
安全を保証する仕事は、開発を止めるためのものではありません。関係者と認識をすり合わせ、リスクを整理しながら、より良い形で前に進めていく。その積み重ねこそが、製品の安全を支えていると考えています。
よく働き、よく学び、よく遊ぶ。そのバランスが私の仕事力
仕事をするうえで大切にしているのは、「よく働き、よく学び、よく遊ぶこと」です。どれか一つだけでは続かず、バランスが取れてこそ良い仕事につながると感じています。
安全保証部では専門性や判断力が求められ、責任のある場面も少なくありません。だからこそ業務に真摯に向き合い、同時に学び続ける姿勢を欠かさないようにしています。一方で、仕事から離れてリフレッシュする時間も大切にしています。休日はサーフィンや筋トレ、料理を楽しみ、特に海に入る時間が気持ちの切り替えになっています。フレックスやテレワークといった自分で働き方を調整できる制度も、この仕事を続ける上では役立っています。
今後は、機能安全とサイバーセキュリティの専門性をさらに高め、海外とも関わりながら安全を支える仕事に挑戦していきたいと考えています。設計経験を土台に、学び続け、仕事に誠実に向き合い、そして自分の時間も大切にする。その積み重ねを、これからも大事にしていきたいと思います。
※記事内容は2026年4月時点のものです
