多様な技術を組み合わせ、新たな価値を創る会社に魅かれて
大学では理学部で物理学を専攻していました。数学や物理は、一見すると専門性が高い分野ですが、物事を分解し構造的に捉え、さまざまな領域に応用できる力が身に付く学問でもあります。「あれもこれもやってみたい」という自身の性格にも合っていると感じていました。
そんな私の志望業界が、企業向けに技術を提供するBtoBの分野であるとはっきりし始めたのは、就職活動が本格化する直前。最終製品として目に見える華やかさよりも、技術そのものが価値となり、その積み重ねで新しい機能や役割が生まれていく——そんなBtoBの世界に魅力を感じるようになりました。
中でも、幅広いコア技術を持ち、それらを用途やニーズに応じて組み合わせることで価値を創出するアルプスアルパインの仕事には、素直に「おもしろそうだな」と感じたことを覚えています。また、「苛烈な競争」よりも「協調」を重んじ、チームワークを大切にする風土も自分の価値観に合っていると感じ、入社を決めました。
品質保証で鍛えられた、「なぜ」を掘り下げ改善する力
最初に配属されたのは品質保証部でした。主な業務は、製品の不具合の原因を突き止めること。お客さまから指摘を受けた事象を再現し、X線で内部を確認したり、部品を分解したりしながら、「なぜ起きたのか」「なぜ検査で防げず、顧客に届いてしまったのか」を徹底的に調査・分析し、対策を講じました。
品質保証で求められるのは、感覚ではなく原理原則に基づいた判断です。目の前の事実を一つひとつ積み重ね、因果関係を丁寧にたどりながら「なぜ」を掘り下げる。こうした経験を通じて、「現象を構造として捉える」「答えが出るまで考え抜く」という姿勢が自然と身に付いたと感じています。
また当時は、品質本部でデジタルツールを活用し、製造工程や品質状況を可視化する取り組みにも関わっていました。その中で芽生えたのが、「データを部門横断で活かせば、問題が起きる前に不具合を防げるのではないか」という想いです。しかし、部門ごとに業務の進め方やデータ管理方法が異なる中、共通の仕組みとして横展開することは容易ではありません。結果として、仕組みは自分の担当領域に留まり、「やり切れなかった」という感覚が残りました。その悔しさが、次のキャリアへ踏み出す原動力になったのだと思います。
全社視点で仕組みづくりに挑む——社内公募でDX推進室へ
アルプスアルパインには、入社後も自身の意志で新たな領域に挑戦できる「社内公募制度」があります。2023年7月、私はこの制度を利用してDX推進室へ異動しました。デジタルツールの活用に可能性を感じながらも、部門の枠を越えて広げられなかった過去の悔しさをバネに、「全社視点で、より良い仕組みをつくりたい」と考え、挑戦しました。
現在は、データドリブン経営の実現を目指し、DX推進活動に携わっています。データドリブン経営とは、データを意思決定の判断材料として活用し、より良い選択につなげていく考え方です。その実現に向け、「データを扱える環境」と「それを使いこなせる人」の両方を充実させることが私の役割。具体的には、Power BI(データを可視化するツール)をはじめとしたツールの活用推進に加え、「どの数字を見るべきか」「それをどう業務判断につなげるか」について、現場の担当者と一緒に考えています。また、社内コミュニティの運営やDXポータルサイトでの発信を通じて、データ活用のきっかけや学びの場を広げています。
さらに、品質保証部時代の経験を活かし、過去の品質トラブル情報を、製品や部品、工程の枠を越えて集約。必要な人が必要なタイミングで参照できるデータベース構築にも参画しています。
全社視点で仕組みづくりに関われることが、DX推進の面白さ。部署ごとの違いを理解しながら、共通のデータ基盤や活用方法を模索することは簡単ではありませんが、大きなやりがいを感じています。
「できる」「楽しい!」 心を動かすDXで、組織と会社を変えていく
今後の目標は、データを使った判断や行動が、特別なことではなく「当たり前」として社内に根付く状態をつくること。DXは、一つのツールやプロジェクトだけで完結するものではありません。人や組織の動き方が少しずつ変わり、その変化が積み重なることで、初めて意味を持ちます。
そのため、まずはDXやデータ活用に対する心理的なハードルを下げ、気軽に相談できる環境をつくっています。例えば新入社員向けにPower BIの研修を行っていますが、「意外と簡単にできる」「楽しい!」と感じてもらうことを大切にしています。中長期的には、部署や職種を越え、「全社が同じ目線でデータを見ながら議論できる仕組みづくり」に関わりたいですね。
学生時代に培った「構造を読み解く力」と、品質保証で培った「なぜを突き詰め、課題解決する力」は、DXの仕事においても「この数字は何を意味しているのか」「次の判断にどうつながるか」を考える視点として活きています。また、最近のマイブームは街づくりのシミュレーションゲームをすることですが、人の動きや構造を考えながら調整することで都市全体が変わっていくプロセスは、データを起点に業務や組織を変えていく今の仕事とも重なります。
人が変わり、組織が動く。そのきっかけづくりを、これからも続けていきたいです。
※記事内容は2026年2月時点のものです
