高周波技術を活用したキックセンサー開発。技術とコミュニケーションがモノを言う
私が所属する部署では、高周波技術を活用した製品開発を行っています。その中で、私はキックセンサーの設計を担当しています。キックセンサーは、車のバックドア付近に搭載され、足で蹴る動きを検知することで、手を使わずにバックドアを開けることができる装置です。
私はキックセンサーの設計全般に携わっていますが、とくに筐体の樹脂部分や、内部のプリント基板など、キックセンサーを構成する部品の形状設計を中心に担当しています。車室外に搭載される部品は非常に厳しい環境に耐える必要があります。運転中は常に振動にさらされていますし、エンジン負荷状態での排気管発熱により非常に高温になります。そうした過酷な環境でもセンサーが正しく機能するように適切な取り付け方法を考案するのも私たちの仕事です。
私の仕事の最大の難しさであり、同時にやりがいを感じるのは「コミュニケーション」です。
製品開発の過程では必ず課題が生じます。そして、その解決策は複数考えられるものです。その中から最適解を見つけ出すには、顧客や関連部門との密なコミュニケーションが不可欠です。
どれだけ正しい情報を顧客から引き出せるか、そして自分たちの考えをどれだけ適格に伝えることができるかが、成功のカギを握っています。その過程で、顧客やチームが密なコミュニケーションを通して気持ちが1つとなり、同じ目標に向かって進んでいると感じられる瞬間に、大きな達成感を得ることができます。
開発者として日本で歩むという決断。憧れ、戸惑い、そして気づき
私はアルプスアルパインに、IAP(International Associates Program)という外国籍の新卒者が日本オフィスで契約社員として2年間働ける制度を利用して入社しました。現在はその期間を終え、正社員として働いています。
生まれも育ちもアメリカである私は、学生時代にはアメリカで働く未来を想像していました。しかし、転機となったのは、ミシガン州の大学在学中に交換留学制度を利用して8カ月間日本に留学したことでした。
祖母が日本人であることから、留学してみたいと思うくらいには日本にもともと興味がありましたが、日本で暮らす中で、コンビニの利便性やアメリカよりも格段に発達した公共交通機関など、生活の便利さを実感。その経験を通じて、日本で働きたいという気持ちが強く芽生えました。
大学にはIAPを提供する多くの日本企業からのオファーがありました。正直に言うと、オファーがあった企業の中でアルプスアルパインの知名度は高くありませんでした。しかし、多くの企業が短期間の滞在を条件とする中、2年間の日本勤務が保証されていたアルプスアルパインに魅力を感じ、入社を決めました。
入社前には、アルプスアルパインのアメリカ拠点で数カ月間インターンシップを経験しました。アメリカの職場では、それぞれの席はパーテーションで仕切られ、仕事は個人で完結するスタイルが一般的。自分から話しかけなければ、1日中誰とも話さないことも珍しくありませんでした。私は1人でじっくり考えて自分なりの答えを見つけ出すことに喜びを感じる性格なので、あまり干渉されないアメリカの働き方は合っているように感じました。
ところが、日本での勤務が始まると、席はオープンで人と話しながら仕事を進めていくスタイルだったんです。アメリカの職場との違いに驚き戸惑いもありましたが、日本で生まれたホウレンソウ(報告連絡相談)という仕事文化など、素晴らしいと感じるところがしだいに増えていきました。
1人で課題と向き合いたい時もありますが、周囲と連携をとる大切さも理解した今では、バランスをとりながら仕事を進めています。
成功を重ねることで自信を身につけてきた過去。今後は「失敗」を増やしたい
日本とアメリカの違いとして感じるのは、日本は仕組みや基礎となる考え方がしっかりしている反面、そこから外れる考え方が受け入れられにくく、考え方が堅いと思える部分があることです。アメリカよりも「今までやってきたから」や「ベテランの知見」が重視されるように思います。もしかしたら国というより会社や部署にもよるのかもしれません。
品質を守る上では重要なことだと理解していますが、新しい発想が求められる場面では、「今までと同じ」と「新しい考え」が調和したやり方がベストですよね。
実は私には「大失敗」の経験がありません。それは先輩たちが、今までの経験から失敗しそうな道を嗅ぎ分け、私をそこから遠ざけてくれたおかげです。そうした先輩たちが今のアルプスアルパインの品質やお客様からの信頼の高さを築き上げてくれたのだと感じると同時に、私も周囲に恵まれ、幸せな環境で仕事をしてこられたと感謝しています。
しかし、成功経験ばかりでは、何が成功の要因だったかわからなくなってしまうことがあります。これからは自分の新しいアイデアを積極的に試し、大失敗を経験し、そこから学ぶという経験をもっと積んでいきたいです。もちろん、お客様に迷惑はかけない範囲で。
一方で、嬉しかった経験はたくさんあります。
たとえば、4~5年前にある部署に配属されて間もない頃、海外のお客様に製品説明をする機会がありました。配属直後に重要な仕事を任されたことを嬉しく思いつつも、まだ十分な知識がないことへの不安がありましたし、当時の私は今よりも内向的だったため非常に緊張していました。
しかし大学時代に自動車メーカー向けの試作品を作り、実際にプレゼンをするという経験をしていたため、本番は想像以上にうまくいきました。その時に説明した製品こそ、現在開発を担当しているキックセンサーです。当時の努力が今につながっていると思うと、過去の自分を誇らしく思います。
異なる意見とも真摯に向き合い、文化の違いを糧に、自分らしい仕事で貢献する
将来的に管理職になることにはあまり興味がありません。エンジニアとして技術にずっと向き合っていきたい、今後は新規技術に関わっていけたらよいと思います。もっと勉強して自分のアイデアを形にして、主担当として製品開発の中心で活躍することが理想です。
勉強というと技術面の向上を連想されがちですが、それだけではありません。私が重視しているのは視野を広げることです。
「自分の考えだけが正しい」と思った瞬間に他のあらゆる可能性は閉ざされます。そこで、自分の意見が批判された時にもとにかく意見を聞くように心がけています。納得できない意見でも、そういう視点があると認識するだけでも勉強になります。人の話は貴重な財産です。それを自分の中に蓄積することで、いつか役立つ日が来ると信じています。
私のモットーは「自分らしい仕事をすること」です。
日本での生活も5年が過ぎましたが、いまだに生まれ育ったアメリカとの文化や考え方の違いに戸惑うことがあります。しかし、それは自分のバックグラウンドがあるからこそ得られる特別な刺激だと思っています。それを仕事にも生かし、自分だからこそ持つことのできる視点やアイデアを提供することで、会社や社会に新たな価値を生み出していきたいと考えています。
趣味はたくさんあるのですが、今一番はまっているのは天然酵母パンづくりです。小麦粉と水を混ぜて数週間置くと空気中の酵母菌が混じり発酵し、パン生地ができ上がります。普通のパン作りは子どもと一緒に楽しめますが、天然酵母のパン生地はべたべたで、子どもに触らせるわけにはいかないので、私だけの楽しみです(笑)。
今のところアメリカに戻ることは考えていません。日本に大事な家族もできたので、当分は日本で家族と技術、そして天然酵母パン作りと向き合いながら、充実した日々を送りたいと思っています。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです
