仕事で扱うのは「音」。プロフェッショナルが集結して生み出す一体感が大事
──現在の仕事内容について教えてください。
スピーカーとアンプの製品開発を係長としてチームをまとめています。
私は音を中心に仕事をしてきたので、音でおもしろいことをやっている会社だと思ってもらえるように新しい開発を続けたいと思っており、お客様にどのような価値が届けられるか意識をしながら技術開発、提案活動をしています。今は会社の将来の成長のためにどのような価値が創出できるか、技術と商品・サービスをどのように結び付けていくかといったロードマップ作りをリーディングしています。
少し前まではドイツに駐在しておりましたが、個人の力の限界を感じる場面が多かったので、戻って来てからは個人の力を合わせてチームとして成果を出す点を大事にしています。チームには多様な役割のメンバーが多くて、スピーカーやアンプ製品の電気設計や機構設計をする人もいれば、筐体のデザインやデモカー作製、そのデモカーで音響チューニングをする人もいます。
若手もいれば、ベテランの人もいますが、それぞれがプロフェッショナルとしての個人の特徴を活かして、チームで成果を出すことにこだわっています。
──「チームで成果を出す」ことについて、チームで成し遂げることの大切さに気づいたエピソードがあれば教えてください。
もともとはレコーディングエンジニアになりたいと思っており、感性を鍛えるために高校生の時からコントラバスという弦楽器を演奏しています。大学生、社会人になってからも継続しており、ドイツ駐在時も地元のオーケストラに入り演奏活動をしていました。
オーケストラにおけるコントラバスの役割は、低音域で全体を支えることですが、コントラバスだけで豊かな音楽を創作することは難しく、さまざまな楽器が加わって初めてコントラバスの存在が活きてきます。このような体験を通じて、チームで一体感を持って仕事に取り組む大切さに気づけたのではないかと思います。
開発担当が担う役割──音の真価を届けられる製品開発のために
──印象に残っている成功体験を教えてください。
もともとスピーカーのエンジニアで、まずは市販製品の開発担当になり、その後欧州自動車メーカー向けにFAS(=Fresh Air Subwoofer)という、世界初となる技術を導入した製品の設計を担当しました。通常より信頼性がとても厳しいものだったので、お客様には試作レベルで承認をもらったとしても、量産化は別次元の品質が要求されます。チャレンジだったのですが、最終的にはチームメンバーとの協力で無事に量産につなげることができ、お客様の評価を得ることができたことが成功体験になりました。
また自分が開発を担当していた市販製品を、知り合いから車に装着してほしいと言われることがありました。対応するととても喜んでくれて、会社のファンになってくれました。開発した担当製品は自分の子どものような感覚があるので、市場に出すまでは大変ですが、やはり開発に携わって良かったなと思いましたね。
──これまでの業務の中で大変なこと、意識していることを教えてください。
大変だと思うことはありますが、挫折したと思ったことはないです。過去には会社の労働委員会の執行部も経験させてもらっています。2019年のアルプス電気とアルパインが経営統合をめざしていた時だったのですが、多くの従業員からさまざまな生の声を聞いて、気持ち的につらい時期はありました。最終的には社員が幸せになるための制度につなげることができたので、大変でしたが、経験して良かったと思います。
アルプスアルパインが扱っている製品にはカーナビなどインフォテインメント機器があり、その先につながっているアンプが出す音声信号をスピーカーが物理現象に変えて、最終的には音として人の耳に届きます。
ですから製品・技術に加えて、人の感覚機能(聴覚)についてもしっかりと考慮することで、より良い状態で音が届けられるようになります。たとえるとオーケストラにおける指揮者の立場で、システムが全部わかって初めてお客様に音楽という価値を届けることができると思っています。
スピーカーやアンプは工業製品ですが、再生される音楽はアーティストが作ったもので、さまざまな思いが込められています。われわれはそれを届けるための一翼を担っていると思っていますので、アーティストが意図した表現をしっかりと伝えることが重要だと考えています。
そのためにできるだけ自分の感性を養うことを心がけています。ドイツ駐在中にもいろいろな演奏を聴くことに加えて著名な絵画の鑑賞、また人が作ったものだけではなく自然を体験することも意識していました。
ドイツ駐在を通して学んだ実体験を重視するという考え方
──ドイツ駐在のエピソードについて詳しくお聞かせください。
やはりドイツに駐在してさまざまなことを体験できたのは、大きいですね。すぐそこに違う国、違う文化があり、違う言葉があるというのは、多様な価値観、まさにダイバーシティを体現していると感じました。演奏会に行ったり、アルプスの山を登ったり、やはり体験してあらためてわかる良さがあるということも感じました。
今後デジタルツールが発展して、仮想空間上でさまざまな疑似体験できるようになるかもしれませんが、その場の空気や香り、音や振動、熱気などは実際に体験しなければわかりません。旅行などの実体験を豊かにする活動は今後の世の中でますます重要になると感じ、だからこそ体験を重要視しようという考えになりました。
ドイツ駐在時のミッションは欧州自動車メーカー向けのビジネス獲得でした。本当は技術展などで生の音をアピールしたかったのですが、コロナ禍で機会が少なかったですね。唯一フランス自動車メーカー向けに、新しい技術を搭載したデモカーを仕立て、実際に音を聴いてもらい、顧客から直接評価の声をいただくことができました。
もう1つの重要なミッションは2019年に資本提携を行ったFaital社のビジネス拡大でした。イタリアでスピーカーの開発・製造を行うFaital社とは、技術的な情報交換に加え、新しいビジネスを獲得することも部分的にはできたのですが、めざしていた目標は達成できませんでした。あとは、現地発の新しい事業創出の取り組みがあり、日本へ帰任した後も継続して取り組んでいるのですが、当時始めたプロジェクトが今は徐々に形になりつつあります。
新しい世界をこの手で広げていく──アルプスアルパインが生み出す新しい価値
──今後の展望について教えてください
チームメンバーと協力してスピーカーやアンプの技術開発、サウンドのチューニング、デモカーを使ったブランディング活動などを進め、ユニークな音のアルパインとしての新しい価値を作っていきたいと思っています。
加えて、昔は音を聴くだけで価値があったと思うのですが、今は音に加えてさまざまな体験ができる時代になっています。アルプスアルパインは多様な技術を持っていて、自動車市場向け、ゲーム市場向けのデバイスなど多くの製品もあります。もちろん音の要素は大事にしますが、ディスプレイ技術や人の感性を追求したHMI技術などを組み合わせることで、五感をフルに活かせる新しい体験価値を作れると考えています。
アルプスアルパインだからこそできることがあると信じていますので、新しい世界をどんどん広げていき、次世代の事業の柱になるような新しい価値の創出にぜひチャレンジしたいと思っています。
※ 記載内容は2024年3月時点のものです

