成功の秘訣となったのは、社内一貫の開発体制
アジア航測では、ドローンを活用した「砂防施設点検におけるデータプラットフォーム」の開発に取り組んでいます。このプロジェクトには、地域も専門性も異なるメンバーが携わっています。
佐藤:もともとは、山間地に整備された砂防堰堤を人が現場を回って点検していたものを、ドローンを活用して効率的かつ安全に実施するという検討から始まりました。
管理技術者である私は九州支社から参画し、西日本支社からは砂防調査の専門家である上杉さん、新百合本社からはシステム開発の要として神馬さんが加わるなど、多種多様なメンバーでプロジェクトを推進しています。
2022年には、近畿地方整備局大規模土砂災害対策センターと共同で「砂防設備の維持管理における高度化に向けた取り組み」を実施しました。
上杉:この取り組みの特徴は、ドローンを用いて現場を点検するだけでなく、取得したデータをいかに効率的に管理し、施設の損傷評価まで高度化できるかという点にも着目していたこと。
私は現場側に立って、システム開発のメンバーと連携を取っていきましたが、乗り越えるべきさまざまな壁がありました。
神馬:現場が求める理想的な機能と、ドローンで実現可能な範囲をどうすり合わせるかが大きな課題でしたね。通常なら段階的に進むデジタル化を、一気に自動化まで進めるという急発展な取り組みだったため、トライアンドエラーな部分が多かったです。
そうした課題を乗り越えられた要因には、アジア航測ならではの体制がありました。
神馬:当社では、現場を熟知した技術者とシステムの技術者との連携によって開発が行われています。また一貫して社内で開発をしているため、細かなすり合わせをしながら、スピード感を持って進めることができるんです。
上杉:お互いの専門性が異なるため、用語がわからなかったり、イメージができなかったりすることもありますが、社内だからこそ「ちょっと待って」と率直に声をあげることができます。
プロジェクトを進める中でも、わかるまで何度も質問をさせてもらい、同じ社内だからこそのメリットを感じました。
佐藤:風通しの良さも関係しているかもしれませんね。部署や地域は違えど「本当にいいものを作ろう」という想いは一致しています。ときには意見が合わないこともありますが、それを含めて言い合えることが、当社らしさだと感じています。
そして2024年1月。このプロジェクトは、日本国内の社会資本のメンテナンスに係る優れた取り組みや技術開発を表彰する「インフラメンテナンス大賞」で特別賞を受賞しました。
佐藤:国土交通省から特別賞をいただき、社外からも大きな反響を得ることができました。プロジェクトに携わったメンバー一同、記憶に残る案件になったと思います。
それぞれの分野を極めながらも、軸にあるのは顧客視点
システム開発を担った神馬は、プロジェクトの前身から携わっていたと振り返ります。
神馬:私はもともと3Dのシステム開発経験が長く、中途採用でアジア航測に入社しました。機械や住宅といった分野では3Dが当たり前に活用される中、砂防の分野ではまだまだ発展途上であると感じ、貢献ができればと考えたんです。
入社後は、砂防、河川、道路、環境や都市計画などの分野の開発に携わってきました。今回のシステムのベースとなった「α-Flumen3D」は、2020年に河川管理に三次元データを活用するために開発したシステムで、その技術を活用し、新たな分野にも広げていくという取り組みは感慨深く、とても嬉しかったですね。
一方、上杉は学生時代から砂防に関する知識と経験を積んできました。
上杉:大学時代から砂防工学の研究室に入っていて、そのままアジア航測に入社し、砂防事業に携わってきました。神馬さんの言う通り3Dが発展していなかったので、当時は立体的なイメージがつかめずに苦労しましたね。
たとえば、砂防堰堤を設計するとき、山を削って堰堤を配置するのですが、削られた山の形状がどうなるか、いまいちわからなかったんです。「だったら再現してみよう」と上司に言われ、粘土と発泡スチロールを買ってきて、自分の手で作ったこともありました(笑)。今は本当に便利な時代になったと思います。
そんな上杉は、国土交通省への出向経験も持っています。
上杉:合計8年間、現場技術員として勤務しました。それまではお客さまを雲の上のような存在だと感じていましたが、一緒に働く中でさまざまな悩みを抱えていることを知りました。そこから、フラットな姿勢で向き合うようになったんです。
今回のプロジェクトでも、できることやできないことを明確にしながら、お客さまと同じ目線に立ってゴールをめざしていきました。
神馬もまた、別の観点から「顧客目線」をポリシーにしていると話します。
神馬:開発者目線でシステムを作ると、どうしても技術にばかり意識が向きわかりにくいものになってしまいます。大切なのは、システムに詳しくない方の目線。お客さまやエンドユーザーにとって一番使いやすい形を心がけています。
業界の発展に貢献したい。現場とデジタルを掛け合わせていく
管理技術者である佐藤は、3年半前にアジア航測に再入社したという経歴の持ち主です。
佐藤:1996年にアジア航測に入社し、約9年間農業土木に携わった後、砂防分野を担当していました。今回のプロジェクトにも関連する「山に人が入って施設を点検する」という業務を経験していたため、安全性や効率について考える機会も多かったです。
その後、地域と連携しながら砂防施設の設計を続けた佐藤。2019年に退職し、他社で経験を積んだ後にアジア航測へと戻ってきました。
佐藤:一度外に出ることで、さまざまな先進的な取り組みを知ることができました。アジア航測の中でもDX化を進めなければという思いで、今回のプロジェクトを含め、さまざまな施策に取り組んでいます。
社外活動の一環として、建設コンサルタンツ協会の委員も務める佐藤は、業界全体の発展も視野に入れています。
佐藤:ただ単に新しいものではなく、使い勝手がよく、業務が効率化するものをきちんと作りたいと思っています。それをできるだけ早く対外的に発表し、アジア航測の技術を伝えるとともに、周囲にも使っていただけるようにしたいですね。
そして、自分たちは次の段階に進んでいけば良いと思います。この業界にどう貢献し、盛り上げていくべきかをいつも考えています。
上杉と神馬もその思いに共感しつつ、それぞれの立場からこう続けます。
上杉:少子高齢化によって技術者も減っていくからこそ、積極的にDX化を進めていきたいですね。一方で、最初からすべてドローンで把握するとなると見えない部分が出てくるため、現場の基礎を知ってほしいという思いもあります。実情を知っているからこそ、新たな発想が生まれる部分もあると感じています。
神馬:システム側としても、現場を知る方々の生の声を大切にしたいです。技術が進化を続ける中で、システムへの反映を続けることが陳腐化しないポイントになります。各分野の専門家の話を聞きながら、アップデートをし続けていきたいです。
個性あふれる技術者の情熱と、自由な社風が生む可能性
それぞれの経験をもとにプロジェクトに向き合ってきた3人。今後の展望を語ります。
佐藤:ひとつの区切りはつきましたが、これで終わりというわけではなく、まだまだ発展途上であり、次のゴールがまた見えてくると思っています。今回は砂防で取り組みましたが、他の分野や地域でも活用できるようにしていきたいですね。
上杉:そうですね。また、いいものを作っても使われなかったら意味がありません。短期的な取り組みではなく、長期的に使い続けていただけるような提案をしながら、幅広いお客さまに活用いただきたいです。
神馬:お二人の言う通り、システムというのは作って終わりではなく、育てていくもの。私の役割で言えばむしろここからが正念場であり、腕の見せ所だと思っています。
熱意を持って未来を描く技術者の面々。あらためて、アジア航測で働く魅力について聞きました。
佐藤:空間情報を自分たちで計測し、そのデータを活用できることが大きな武器だと思っています。また、プロジェクトを組んでさまざまな仕事をするときに、自由度が高いことも魅力です。他社を経験したからこそ感じることですが、アジア航測にはチャレンジを後押ししてくれる風土があります。
神馬:私はやはりシステム会社ではないのに、自社内で開発が行えることですね。昨今では、システムの内製化を進めようという動きが増えてきましたが、アジア航測はずっと前から取り組んでいます。社内に技術が蓄積されることでの循環ができていて、会社としての強みにもなっています。
上杉は、専門性の高い人材が集まる環境を挙げます。
上杉:幅広い分野の専門家がいますし、相談しやすい環境です。今回のプロジェクトでもそうですが、一度も顔を合わせたことがない地域のメンバーでも「〇〇の専門と聞いたんですが、教えてもらえますか」と声をかけると、快く対応をしてくれます。皆さんがそれぞれの強みを生かして働いている印象です。
佐藤:アジア航測に入社した当初「同じ人間は複数いなくていい」と言われ、驚いたことを思い出しました(笑)。それぞれの個性があるからこそ、いろいろな視点で物事を考え、新たな発見もあるという価値観が当社に根付いていますよね。
今回のプロジェクトもさまざまな技術者が連携したことで、シナジーが発揮できたと感じています。マネジメントを担う人材として、今後もそうした強みを引き出せるようなチームを作りながら、若手メンバーの個性も伸ばせるよう、育成に力を入れていきたいです。
※ 記載内容は2025年5月時点のものです
