結果を出すだけじゃない。経験と、考え抜くことで安全なクルマづくりにつなげる
衝突解析とは、車が壁や他の車に衝突した際の変形や衝撃を、コンピューター上で再現・分析する技術のこと。大塚と尾上は、CAE(コンピューターを用いたシミュレーション技術)解析や実車試験を通じて、事故の際に搭乗者を守るための安全なクルマづくりを支えています。
大塚: コンピューター上で車の衝突を再現して、車体の変形や力のかかり方を確認します。その結果を分析し、原因とともにお客様に報告するのが主な仕事です。
また、解析で予測した通りの結果になるのか、実車による衝突試験にも立ち会います。
実車の衝突試験は、わずか0.1秒程度で終わってしまうんです。その瞬間に何が起きているのかを、試験だけで細かく把握することは簡単ではありません。その一方で、コンピューター上の解析では、試験だけではわからない現象を詳しく分析することができます。
単に解析結果を出すだけではなく、「安全な車づくり」のプロセス全体に関わりながら、設計担当者と協力して製品開発を進めていると、大塚は話します。
大塚:設計担当者には、同じ性能を維持しながら、できるだけ車体を軽く、コストを抑えて設計することが求められています。
その中で私たちは、コンピューター上での解析結果と実車試験の結果を照らし合わせながら、衝突によって変形してもよい部分と、そうでない部分を見極め、構造の変更や改善策を検討しています。設計担当者と必要な対策を考え、お互いに納得感を持ちながら、よりよい車づくりを進めています。
こうした仕事に取り組むうえで、大塚が大切にしているのは、事前準備と経験の積み重ねです。
大塚:もともと慎重な性格なので、仕事では事前準備を大切にしています。会議で解析結果や数値を求められたときにすぐ対応できるよう、目的や進め方、必要な情報をあらかじめ整理し、振り返りができるように記録を残すことが欠かせません。
もう一つ意識しているのが、とにかく経験を増やすこと。解析ではさまざまな機材やツールを扱うため、実際に触れて使い方を身につけ、必要なときに対応できるようにしています。
一方で、尾上が仕事で大切にしていることは、「妥協しないこと」です。
尾上:解析業務には、「これが正解」という明確な答えがありません。「これでいいだろう」と結論を出してしまえば、そのまま進めることもできてしまう。でも、そうした妥協を重ねていては、本当に良い車づくりにはつながりません。限られた時間の中で結論を出さなければならない場面も多いのですが、自分が納得し、自信をもって「これで大丈夫です」といえるような仕事をしていくことが大事だと思っています。
そのために欠かせないのが、知識を深めることと、視野を広げることです。
尾上:知識が浅いと、疑問をもつことすらできません。上司やお客様がそう言うから正しい、と考えてしまえばそこで思考が止まってしまいます。自分で考え、判断するためにも、知識を身につけることを大切にしています。
また、解析では一つひとつの部品だけでなく、周辺部品との関係性や車両全体への影響まで視野を広げて考えるようにしています。そして設計部門や試験部門など、さまざまな方と関わる仕事なので、相手へのリスペクトを持ち、積極的なコミュニケーションを大切にしています。実際に「開拓活動」として部署や所属を越えた交流の場を自分からつくるようにもしています。仕事の話だけでなく、プライベートな話も交えながら関係性を築くことで、新しい情報や視点を得ることにもつながってますね。
任される責任、周囲からの刺激。経験を通じて磨かれた、エンジニアとしての姿勢
現在は同じプロジェクトに参加する2人ですが、入社のきっかけや歩んできた道のりはそれぞれ異なります。
学生時代からCAEについて学んでいた大塚。就職活動中にアビストの社員から会社説明を受けたことが、入社のきっかけになりました。
大塚: 当時は、CAEに携わる人材もまだ少なかったんです。社員の方から、アビストがCAE分野に力を入れていくという話を聞き、自動車に関わる仕事ができることにおもしろさを感じました。地元にいながら、そうした仕事に携われることも魅力でしたね。
一方の尾上は、就職活動では幅広い業界を見ていましたが、学生時代からバイクが好きだったこともあり、自動車の部品設計開発を強みとするアビストに興味を持ち、入社しました。
尾上:はじめは、設計開発を仕事にしたいと考えていましたが、入社後の面談で「CAEは今後必ず重宝される仕事だよ」と聞き、それなら自分も挑戦してみようかなと思い、この道に進むことにしたんです。
入社後、2人は同じ自動車メーカーのお客様先でCAEエンジニアとして働き、それぞれ異なる部署で経験を重ねてきました。
大塚にとって大きな転機となったのが、ある車種の性能担当を任されたことでした。
大塚: それまでは解析結果を報告することが主な役割でしたが、担当を持ってからは「この結果から何が言えるのか」「実際の車ではどんな影響があるのか」まで、自分の責任で考えることが求められるようになりました。
判断の難しさも、たくさん経験しましたね。結果をすぐに伝えるべきか、一度考えてから伝えるべきか。開発全体のスケジュールや影響する範囲まで考えなければなりませんでした。
そんな経験から、今では「この判断をすると、その先で何が起きるのか」を意識するようになりました。それが、事前準備を大切にすることにもつながっていると思います。
一方、尾上は入社後、お客様先でゼロからCAE解析を学び始めました。当時は、CAE解析の経験がないメンバーが集まり、互いに助け合いながら試行錯誤を重ねる日々。そんな中、尾上の仕事への向き合い方を大きく変えたのが、同じチームで働いていた同期の存在でした。
尾上: 仲の良かった同期にとても優秀な人がいて、わからないことがあれば遠慮せずに先輩や周囲に聞き、教えてもらったことはすぐに実践していました。その同期がどんどん成長しているのをみて、自分も謙虚に、常に学ぶ姿勢で仕事に向き合おうと思いました。
経験を重ね、後輩を指導する立場になった今も、その姿勢は大切にしています。仕事を頼まれたときは、そのまま返すのではなく、少しでもプラスアルファを加えて返す。そうした工夫が、自分自身の知識やスキルの成長にもつながっていると感じています。
慣れ親しんだ現場を離れて。挑戦を支えたアビストの環境
昨年からスタートした「拠点横断育成プロジェクト」。複数の拠点からメンバーが期間限定で一つの拠点に集まり、新しい業務や環境を経験しながらスキルアップをめざす取り組みです。大塚と尾上もこのプロジェクトに参加し、これまでとは違う自動車メーカーの開発現場で業務に取り組んでいます。
大塚:転勤については、もともといつかは違うお客様先で働くことになるだろうと思っていました。だから驚きはありませんでしたし、今回そのタイミングが来たのかな、という感覚でしたね。
一方の尾上は、新しい環境への期待や関心を抱いていたと振り返ります。
尾上:ありがたいことに、前の職場では長く同じ部署で仕事をさせてもらっていました。そのまま仕事を続けることもできたと思いますが、新しい知識や経験を身に付けたいという思いもあったんです。他のお客様先ではどんな仕事を担当するのか、どんな人たちが働いているのかにも興味がありました。
新たな開発現場では、これまでとの仕事の進め方や職場文化の違いを感じることもあったといいます。
大塚:異動前は、多少時間をかけても100%に近い答えを出すことが求められていましたが、今は限られた時間の中で最善の答えを出さなければいけません。
また、企業によって考え方や仕事の進め方も異なるので、その文化の理解には時間がかかりました。今の職場は、とにかく周囲との会話を大切にする文化があります。最初は戸惑いましたが、誰に何を相談するべきかを考えながらコミュニケーションを重ねることで、少しずつ環境になじんでいくことができました。
尾上もまた、新しい環境で周囲を頼りながら業務に少しずつ慣れていったと話します。
尾上:本当に新人に戻ったような感覚でしたね。自分ができない仕事を大塚さんにお願いすることもありました。でも、わからないことはわからないと素直に伝えて、自分ができることとできないことを周りに話しながら、少しずつ仕事を覚えました。以前は実車に触れる機会はほとんどありませんでしたが、触れる機会が増えたことで、業務の幅もとても広がったなと思いますね。
こうした環境の変化に挑戦できた背景には、アビストのサポート体制や日頃のコミュニケーションの取りやすさもあったと2人は話します。
尾上: アビストは、支店長や係長など、立場に関係なくコミュニケーションが取りやすい環境だと感じています。普段はお客様先で働いていますが、ちょっとした悩みや不安を口にすると、時間をつくって話を聞いてくれたり、フォローしてくれたりするんです。今回のプロジェクトによる転勤も、会社がバックアップしてくれるだろうという安心感がありました。そうした信頼関係があったからこそ、新しい環境にも前向きに飛び込むことができたと思います。
大塚も、会社とのコミュニケーションについてこう話します。
大塚: 一方的に会社の方針を伝えられるのではなく、こちらの考えも聞いてもらえているという実感がありますね。今回のプロジェクトについても、会社から提案を受けた上で、私たちの考えを尊重しながら話を進めてもらいました。環境が変わるうえでの安心感につながったなと思いますね。
知れば知るほど、奥が深い。CAE解析のおもしろさと、2人がめざすこれから
新たな環境で経験を重ねる大塚と尾上。今後はそれぞれ新たな役割にも挑戦していきたいと話します。大塚は、個人の技術力を高めるだけでなく、会社として仕事を広げていくための力も身に付けていきたいと考えています。
大塚:これまでは、自分自身で仕事をこなせるようになることを目指してきましたが、今回のプロジェクトでは、得た経験を自分の所属する拠点にどう持ち帰り、活かしていくかを考える必要があります。
そのためには、エンジニアとしての知識や経験を深めることだけでなく、お客様と会社として話を進める力や、複数のメンバーで協力して仕事を進める力も必要になります。これまであまり経験してこなかった部分なので、今後はマネジメントやリーダーシップの力も身に付けていきたいですね。
一方、主任として後輩の育成にも携わる尾上は、これまで培ってきた経験を次の世代へ伝えていくことをめざしています。
尾上: 今後3年、5年先を考えたときに、まずは人を育てられる人間になりたいと思っています。CAE解析ができる人材はまだ多くありません。だからこそ、これからCAEを学ぶ人や新入社員に対して、自分の経験や、仕事に向き合うための考え方を伝えていきたいんです。現場で仕事をしていると、「もっとこうした方がいいのでは」と感じることもあります。ただ、不満を持つだけでは何も変わりません。だったら自分が上の立場になって、チームを良くしていきたいと思うようになりました。
今はエンジニアとして最前線で仕事をしていますが、その経験も自分の強みになると思っています。将来的には、チームをまとめる立場として、働きやすい環境づくりや人材育成にも携わっていきたいですね。
それぞれのめざす目標を語る2人。長年携わってきたCAE解析の仕事には、今も新たな発見やおもしろさがあるといいます。
尾上:CAE解析のおもしろさは、自分が予測したことを目で見て確認できるところだと思います。実車試験には大きなコストがかかりますが、解析であればコンピューター上で何度も検証できますし、車がどのように変形するのかをアニメーションで確認することもできます。自分が考えた通りの結果が出たり、逆に予想外の現象が起きたりするので、それを考察していくのがおもしろいですね。
また、この仕事は本当に奥が深いんです。何年やっていてもわからないことが出てきますし、突き詰めようと思えばどこまでも追求できます。それだけ考える余地があるので、何かを深く掘り下げることが好きな人には向いている仕事だと思います。
そして、CAE解析は自動車業界に限らず、さまざまなモノづくりの現場で欠かせない技術です。設計したものが本当に成立するのか、どんな現象が起きるのかを確認するためには必ず必要になります。今後も必要とされる技術だと思いますし、専門性を高めながら長く活躍できる仕事だと思っています。
大塚:最初から十分な知識がなくてもいいと思っています。技術を追求するおもしろさに加え、さまざまな人と協力しながら、一つの製品をつくり上げていくことに、楽しさややりがいを感じられる人には、向いているんじゃないかと思います。
大切なのは、目の前の結果だけを見るのではなく、「この先どうなるのか」というゴールを想像しながら考えることです。今起きていることから、その先にどんな影響があるのかを考え、周囲の人と話しながら、必要に応じて考えを修正していく。そうした姿勢が大切だと思います。
経験を重ねてもなお、新たな発見があるCAE解析の仕事。その奥深さやおもしろさを語る2人の言葉からは、仕事への情熱と、エンジニアとしての誇りが感じられました。
これからも技術を磨き、新たな役割に挑もうとする大塚と、自身の経験を次の世代へつなぎ、より良いチームづくりをめざす尾上。アビストは、そんな一人ひとりの想いを大切にしながら、それぞれがめざすエンジニア像に近づけるよう、その挑戦と成長を支えていきます。
※記載内容は2026年10月時点のものです。
