「食」がつないだ、フィールドからキッチンへの道
佐々木のキャリアの原点は、学生時代から続けてきたサッカーにあります。都道府県リーグでプレーするほど熱中した日々の中で彼が気づいたのは、体をつくる上で「食」がいかに重要かということでした。「どんな栄養素が必要なのか、自分で分析していた」という。飲食店のキッチンでアルバイトを始めた佐々木は、やがて外食レストラン業界でその専門性を深めていくことになります。
ほかにもスポーツトレーナーや映像関係の会社などさまざまな職を経験してきた中で、レストランの仕事をおもしろいと思ったきっかけは「働くことへの考え方」だと佐々木は語ります。
「お給料をもらえるから、お金を払ってくれているから、仕事を頑張るというのは自分の中では少し違うなと。たどり着いた答えが“身内びいき”でした」
これは、身内にだけ特別サービスをするという意味ではありません。誰しも自分の大切な人たちには「その人のために何ができるか」を考えて最高のおもてなしをするもの。「目の前にいるお客さまが自分の友人・家族だと想定し、その人たちが喜ぶ環境をつくる」。この考え方が仕事への原動力やクオリティ向上につながると佐々木は続けます。
「自分が働く場所は友達・家族が呼べるようなところで、来てくれた人が僕の身内でよかったなと思ってもらえるような場所で働く、それが自分にとって本気で働ける場所だなと思いました。
そして、ウェルカムを紹介してもらったときに横川さん(ウェルカムグループ代表)が同じような考えを言っているのを聴いて、この会社おもしろいなって思ったんです。
そう考えて仕事をしているからこそ、周りの人たちにも、外食のお店選びに困ったら自分が働いているお店に来てほしいと胸を張って言えますし、自分の仕事に誇りが持てます。席が知り合いですべて埋まることがあったっていい。そんなお店にできたら、僕たちにとってもお客さまにとっても幸福度が高いですよね」
「自由度」が育む、ウェルカムのユニークな文化
現在、佐々木が身を置くウェルカムの外食レストラン事業(通称:ARH)は、「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」や「酒食堂虎ノ門蒸留所」など都内を中心に11店舗を展開しています。
2018年に入社した佐々木ですが、ウェルカムとの出会いはさらに遡り10年以上前。「DEAN & DELUCA」でのアルバイトだったと言います。
「紹介でDEAN & DELUCAでケータリングチームを立ち上げる時に声をかけてもらったのが最初です。一度離れて、チェーン展開もするような大きな外食企業でシェフマネージャーを経験しましたが、その後、GOOD CHEESE GOOD PIZZAを立ち上げるタイミングで再び声をかけてもらったんです」
当時、DEAN & DELUCAなど中食をしていたウェルカムがこれからARH事業を立ち上げ本格的に外食事業を始める時でした。
「その頃ちょうど前職の飲食店で、マネージャーから今後エリアマネージャーとステップアップしていくことは今の自分にとって楽しいのだろうかと考えていた時でした。
自分の身内を呼べるようなお店をつくる、という考えでおもしろい店を自由につくれる、その信念をもって、ルールを含めて自由におもしろいものをつくれる、という社風と規模感がいいなと思いました」
佐々木が「こんな外食の会社はなかなかない」と驚くほど、ARH事業はユニークな存在です。とくに「自由度が高い」ことが最大の魅力だと話します。
「ARHのチームは例えるなら野球部、チームスポーツのような構造だと思っています。スペシャルな選手がいてその人を立てるという戦略もできますし、チームで個が集まってスターチームを戦術で圧倒することもできます。戦術と魅力づけでできることの選択肢が大きく広がります。
そして、外食は身体を使って表現する仕事。食とお酒は嗜好品なので、ただお腹を満たすだけの食事ではなく、外食をする喜びや魅力を伝える方法は、料理・お酒・空間・サービス…と色々あって。それぞれの表現をもっている人たち全員主役になりうるんです」
ウェルカムには、「ミッションである“感性の共鳴”を具現化する」という大きな軸があります。そして一人ひとりのメンバーに意思決定の主体を“渡す”文化が根付いていると佐々木は言います。
「ウェルカム代表の横川さんとARH代表の後藤さんとトップ2人がいて、その2人推進力とパワーがありながらも、あえてメンバーに意思決定の役割を解放してくれます。
それによって、現場の意見を尊重しながら迅速で柔軟な決断ができる、独自の体験と環境が生まれるんです。だからこそメンバーそれぞれが自身の考えを持つことが大切にされています。裁量があり、意思を持って何かしたいと考える人にとって、ウェルカムのARH事業はまさに理想的なフィールドだと思います」
ウェルカムの事業開発チームとARH事業が共同で開発を手がけた、「sequence MIYASHITA PARK」や「三井ガーデンホテル京都三条プレミア」のホテル事業、「虎ノ門横丁」。
これらの大規模プロジェクトから生まれた「TWELVE ON THE PARK BAR & GRILL」や「curd」、「虎ノ門蒸留所」で提供するクラフトジンやフレッシュチーズは、すべて社内のメンバーが製造を行っています。
「チーズやジンといったニッチな分野でも、社内から新たな事業が次々と生まれます。一般的に考えると、外部から専門家を呼んでくる、事業を買い取って始める、出向してもらうなどの方法を採りそうなものですが、社内で挑戦したい人を募って始める会社はなかなかないですよね」
外食レストランは「ライブ」だ──偽りのない「表現」が生まれる場所
「外食レストランの仕事は家に持ち帰って食べる『中食』とは少し違います。お店に来てくれた方に、どんな空間で、どんな料理やサービスを届けるか考えることが重要です。
音楽に例えると、配信音楽の魅力が家で何度でも楽しめることに対して、ライブの魅力はその場限りの空間で生まれる熱量と一体感。外食レストランもまた、一期一会の『ライブパフォーマンス』だと思うんです。
レストランでは料理の味はもちろん、提供される空間、サービス、そしてそこにいる人々の空気感すべてが融合し、二度と同じ体験は生まれません。お客さまが家に帰って思い出すのは、味だけでなく、その空間で見たもの、感じた余韻です。
そして、その余韻を大切に持ち帰り『また来たい』『誰かに伝えたい』と思ってもらうところまで自分たちでつくり上げられる。それこそがこの仕事の醍醐味ですね」
その時にしか生まれない空間をつくるからこそ、「仕事に対しては嘘をついてはいけない」「隠し事をしたらこの仕事はメッキが剥がれてしまう」と佐々木は語ります。仕事にこそ嘘はつけないという価値観は、佐々木の生き方にもつながります。
「食空間全体をつくり上げるARH事業の仕事では、知り合う方も、飲食をやっている方からデザイン関係、空間設計のお仕事をしている方などさまざまです。
仕事のつながりで紹介していただいたお店には、プライベートも含め足を運ぶことにしています。仕事とプライベートの境目はほとんどないかもしれません。
そこから、すてきなお店を知ることができたり、出会った方と一緒にイベントを開催したり、うちのジンを取り扱ってもらうことになったり……新たな出会いがさらなる仕事に結びつくこともあります」
“理由のある”仕事が自信になり、チームをまとめ『身内を呼べるお店』につながる
「感じるこころ、理由があること、なんでも自分事、変わることに前向きなこと、結果にこだわる」。ウェルカムメンバーが「感性の共鳴」を体現していくために、働く上で大切にしている行動指針「WELCOME SHIPS」です。佐々木に一番大切にしているWELCOME SHIPSはどれか聞きました。
「僕は『理由があること』です。すべての仕事に理由がないことは一つもありません。メンバーの接客に対して『なぜその方法でやっているの?』と尋ねた時、『上司に言われたからです』という答えが返ってくるのはちょっと違うかなと思います。教えられた知識やスキルだけを身につければいいという訳ではありません。
『これでお客さまは本当にわかるかな?』と問い返し、メンバー自身が不足している部分を完全に理解し、納得するまで、丁寧に説明します。『すべてのお客さまに受け入れられるような接客をすること』をマインドセットして臨むことが重要です」
佐々木が常に問いかけるのは、「お客さまに“理由のない”接客をして、はたしてお客さまに心から満足してもらえるだろうか?」ということ。自分自身が「良い」と思える接客こそが、身内を呼べるお店の「良い仕事」だと強調します。
「“格好良い”“お洒落”というのは、見た目のことではなく生き方です。たとえ仕事の結果が良くなかったとしても、仕事への姿勢は根拠があり、胸を張れる内容であってほしいと思っています」
自分自身が「良い」と信じ、格好良い仕事をする。その姿勢が、チームの士気を高め、お客さまへのサービス品質を向上させます。
「一人ひとりのメンバーが自立し、互いをリスペクトし、『自分の身内を呼べるお店をつくる』という共通の目標に向かって動いてほしい。皆がその考えを自然に広めていけたら、最高の環境が作られていくと信じています」
佐々木がめざすのは、単なる売上達成や効率化だけではなく、自身も、共に働く仲間も、そしてお客さまも、誰もが「嘘偽りなく、ありのままの自分を表現できる場所」をつくること。
スポーツという体と食の関係から始まり、個性と自由を尊ぶ企業文化の中で育まれた彼の考えは、今日も「自分の身内を呼びたくなるお店」を創るために現場で輝き続けています。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです

