自分のお店を持ちたい─夢を追いかけDEAN & DELUCAへ
高知県出身の野本は、海の幸や山の幸に囲まれて育ちました。高知県には「おきゃく」と呼ばれる文化があり、さまざまな人々が集い、酒を飲み交わしながら交流する場を設けるのが一般的でした。野本の実家でもよく宴会が開かれていたと言います。
「『食とお酒』の文化は、まさに高知県民性の一部であり身近なものでした。両親が食べることが大好きで釣った魚を家で捌いて食べたり、週末は外食に行ったりすることが多かったですね。大型連休も県外に足を運び、家族みんなでおいしいものを食べて楽しむ時間を大切にしていました」
地元や家族の影響で、野本は「食」に強い興味を抱くようになり、「いつか自身でお店を持ちたい」と考えるようになりました。そこで、彼女は高校・大学と栄養士の資格を取得できる学校に進学しました。
「高校では家庭科を専攻し、服飾や食について学びました。専門性の高い学校だったため、先生との授業時間も多く、学校生活がとても好きでした。その後は両親の勧めもあり、栄養士の資格が取得できる短期大学に進学しました」
卒業後、地元で働き始めましたが、「自分の視野を広げたい」と、22歳の時に上京することを決意しました。
「実は、栄養士の勉強をしていたものの、調理師やパティシエになりたいという夢がありました。その夢を叶えるために、渋谷にあるフランス菓子店でアルバイトとして働き始めたんです。」
パティシエの専門学校に通いながら、フランス菓子店で約2年働き、野本は24歳の時に
DEAN & DELUCA 八重洲店にアルバイトとして入社します。
「バリスタとしてアルバイトを始めました。勉強の一環として各スイーツ店を回る中、スイーツとコーヒーの組み合わせに魅了され、自身でコーヒーも淹れられるようになることが夢へとつながる一つのすべだと考えたんです」
八重洲店は東京駅内の店舗ということもあり、常にお客さまがひっきりなしの状態。仕事をこなすことに必死だったと言います。同時期に同い年のメンバーが入社し、2人で切磋琢磨しながら働いていました。
「アルバイトとして3年目を迎えるころ、『正社員採用試験を受けないか』と声をかけてもらいました。実は当時、退職して地元に帰ることを考えていたんです。でも、せっかく声をかけてもらったので『まずは受けてみようかな』と採用試験を受けることにしました」
しかし、やりたいことについて面接でうまく伝えられず、結果として不採用に。
それでも野本は2回目の採用試験を受けることにしました。その心境の変化には、働く仲間たちが大きな影響を与えたのです。
「これまで正社員として働いた経験がなく、不安を感じていました。でも、DEAN & DELUCAで働くメンバーたちって本当に『食』に博識な人が多くて、まさに『食オタク』。
そんなメンバーたちと話すことが楽しかったですし、会社としての雰囲気も好きでした。初めての正社員となっても、ここなら安心して働くことができると思いました」
周りのメンバーからのサポートもあり、2度目の採用試験に合格。2012年にアルバイトから正社員へと転身した野本は、DEAN & DELUCAでの新たなスタートを切りました。
正社員として取り組んだ店舗改善とメンバーの関係性構築。経験を積みマネージャーへ成長
正社員になってすぐに品川店に配属された野本。それまで慣れ親しんだ場所を離れ、正社員としてのスタートに不安を抱えていました。
「社員として初めて配属された品川店にはとくに思い入れがあります。当時、品川店には多くの社員が在籍していて、『ここで自分ができることは何だろう?本当に私がここに必要なのか?』と、自身の存在意義に悩んだ時期がありました」
そんな不安な気持ちをマネージャーに打ち明けたところ、返ってきた言葉が野本にとって大きな転機となりました。
「『忙しさの中で社員同士のコミュニケーションが薄れてきていて困っているんだ。関係性の再構築をめざし、一緒にお店をさらに良くしていきたいんだ』と言われたんです。これまで自身の夢に向かって努力してきましたが、マネージャーの言葉を受けて、メンバーや会社のためにお店を良くしたいという気持ちが芽生えました」
こうして野本は、品川店での目標を見つけ、メンバー同士の関係性構築と店舗の成長に向けて動き出しました。
DEAN & DELUCAは店舗内の商品ごとにカテゴリー(部門)に分けています。メンバーそれぞれに担当カテゴリーがあり、専門知識をつけ日々お客さまに商品の提案を行っています。野本はエスプレッソバー(ドリンク)カテゴリーのリーダーになっただけでなく、スイーツカテゴリー担当メンバーと共に競合店対策のイベント企画を進めました。
「とくに印象に残っているのは、企画の運営です。メンバーたちと企画を立て、どうすればお客さまにより喜んでもらえるのか、メンバーの達成感につなげられるかを大切にしていました。
企画を練っては平井さんに何度もプレゼンをして、カフェ店舗で今は定番になっている『モーニングメニュー』のスタートや、限定販売の商品にアプローチをかけたフェアなど新しい試みを行ってきました」
リーダー経験を経た野本は、その後、新店の立ち上げに携わり、さらなる経験を積みました。そして、DEAN & DELUCA カフェ羽田空港店のマネージャーの昇進が決まりました。空港内の店舗では、商品の提供スピードが重要ですが、どんなに早く提供できても品質が落ちてしまえば意味がありません。
「提供スピードは上げても、同じクオリティーを保つ。いつ訪れても『DEAN & DELUCA の商品っておいしいよね』と言ってもらえるように。これは八重洲店時代にどんなに忙しくても必ずラテアートを描き、おいしいコーヒーを提供していたアルバイトメンバーから学んだことでした。私もその人を見習い、おいしい商品を提供することを意識していました」
一人のメンバーとしてお客さまに真摯に向き合ってきた野本。マネージャーに昇格した時は、正社員になった時以上に、責任感がグッと上がったと語ります。
「アルバイトメンバーに新しい仕事を任せて気づかないうちに負担になったり、何か事故が起こったりしないかと心配ばかりしていました。マネージャーとして仕事をこなす達成感もありましたが、自身に負荷をかけるだけでは終わらない仕事へのもどかしさも正直感じていました。
でも、メンバーのお手本である私が楽しく働いていないといけないなって。私も含め、全員が成長すれば店舗運営も安定し楽しく働けると考え、メンバー育成に着目するようになりました」
コロナ禍で見つけた新しい使命。POP UP STOREで全国に想いを直接届ける喜び
順調に店舗運営が進み始めた矢先、コロナ禍が訪れ、店舗は約1カ月の休業となりました。
多くのメンバーが自宅待機となり、野本も今後の見通しがつかず、不安を感じていました。
「世の中っていつ何が起こるのかわからないと多くの方が感じたと思います。私もその一人で、自分の人生を見つめ直し、やりたいことが目の前に現れたときは悔いなく挑戦しようと思ったんです」
世の中の店舗運営が制限される中、2019年以降に本格化したDEAN & DELUCA のPOP UP STOREの運営メンバーの募集が社内で始まりました。コロナ禍で旅行ができないお客さまのために、世界各国・全国各地のおいしいものを集めたDEAN & DELUCAが百貨店に期間限定で出店するという、平井城治率いるブランド営業部が始めた新プロジェクトです。
「オンラインサイトの普及により、店舗に行かずとも商品を購入できるようになりましたが、実際に商品を手に取りたいお客さまも多いです。このPOP UP STOREなら、『全国を旅しながらDEAN & DELUCA をまだ知らない方へブランドの魅力を直接届けることができる!』と感じ、運営メンバーとして手を挙げました」
POP UP STOREは、2023年に26会期開催。日本百貨店協会内でも話題となり、2024年現在でも全国からの開催依頼の問い合わせが絶えない人気プロジェクトとなりました。定番商品から期間限定商品をそろえ、調理設備が整う会場ではベーカリーやキッシュ・ラザニアなどの人気デリを製造し販売。期間限定店舗とはいえ、常設店舗と変わらぬ売り場を徹底しています。
「私はその会期ごとのMD(マーチャンダイジング)と販促物(商品POPやポスターなど)を担当しています。会場では自分たちで一から棚を作るんです。DEAN & DELUCA の世界観を会場に合わせて表現するために開催の3カ月前から本社のMDチームと売り場作りを始めています。
場所や地域が違えば、広さはもちろん、お客さまが求めるものも違ってきて。お客さまに合わせてどんな商品を置くのか、どうすれば喜んでいただけるのかを大切に、毎回気合いを入れています」
月に平均2カ所の会場を回る中、これまで何度も開催する地域もあり、そのたびに楽しみにしてくれるお客さまも多くいます。7月には今年で5回目となる札幌での開催がありました。
「札幌にはDEAN & DELUCA ファンのお客さまが多く、期待値もとても高いです。私たちチームもこれまでとは違うプロモーションをつくろうと新しい試みをすることに。ボウルや包丁、リネンなどキッチンツールなどのこれまでPOP UP STOREでは販売していなかった商品を展開しました。
また酒井 杏子さんと共に新商品を開発し、季節の果物をふんだんに使用したPOP UP STORE限定の『焼き立てフルーツベイクドパイ』の販売を開始しました!」
キッチンツールは完売が相次ぎ、フルーツベイクドパイは1日に150個以上販売し、新企画は大成功。運営チームに異動し、約3年。店舗運営からPOP UP STOREという期間限定店舗のプロジェクトに移り、その違いを肌で感じたと言います。
「これまで在籍していた店舗はいつもそこにあり、お客さまの日常にある存在です。しかし、POP UP STOREにはDEAN & DELUCAが来ることを待っているお客さまがいます。店頭に立っていると『開催してくれて嬉しい!』『楽しみにしていました!』と以前よりもお客さまとの密な会話が増えました。
また店舗での常連さまがPOP UP STOREに足を運んでくださることも少なくありません。普段からDEAN & DELUCA の店舗を愛用してくださっているお客さまが『また今度、東京の店舗にも行きますね!』とPOP UP STOREにも買いに来てくださることが何よりも嬉しいんです」
また全国を飛び回るからこそ、 DEAN & DELUCA で取り扱いのある商品の作り手さんのもとへ行き、つながりを大切にしています。
「いつも販売している商品が、どんな場所で、作り手さんのどんな想いが込められて作られているのかを学ぶために、個人でもワイナリーや牧場などの生産地へ訪れるようにしています。私たちは食のプロとして、作り手とお客さまの橋渡し役となる必要があります。作り手さんから学んだことをPOP UP STOREでイベントとして企画し、お客さまへ伝えていきたいと考えています」
時代とともに前向きに変化していく──POP UP STOREを通じて広がる新たな夢
「感じるこころ、理由があること、何でも自分事、変わることに前向きなこと、結果にこだわる」。ウェルカムメンバーが「感性の共鳴」を体現していくために、働く上で大切にしている行動指針「WELCOME SHIPS」です。入社して12年。野本にとって一番心がけている行動指針はどれか聞きました。
「『変わることに前向きなこと』です。これまで全国各地、約40都道府県を回ってきました。お客さまが求めることも、時代によって始めた当初とは変化していくものです。だからこそPOP UP STOREは今が変環期です。ここからどう変化し、成長していくのか、私としてもチームとしても大事な時期だと思っています」
なんでも変えたらいいというわけではなく、DEAN & DELUCA として変わらない存在であり続けるために、時代の変化とともに成長していくことが必要。そう考える野本に、チームとして、個人としてどんな成長を遂げていきたいのか聞きました。
「一つめは、社内メンバーの学びの場としての成長です。POP UP STORE開催中には運営メンバー以外に店舗メンバーにもヘルプとして参加してもらっています。普段と違う場所・メンバーで働くことで新しい視点から学びを得ることもあります。店舗業務がある中ですが、入社したばかりのメンバーも参加しやすいようにプログラム構成を考えています。
二つめは、企画イベントの促進です。POP UP STOREの成長として、企画イベントを促進させていきます。つながりのある作り手さんを招待し、試食販売はもちろん、マルシェを開催したいと考えています。こういったイベントを活発化させ、さらに既存店舗と変わらない体験をお客さまに提供していきたいと思っています。
日本中の皆さんにDEAN & DELUCA の魅力を発信していきたいですし、日本のみならず海外へも発信していけたらなと。ニューヨークで生まれたブランドが、私たちにしかできない『DEAN & DELUCA JAPAN』として成長を続けてきました。いつかこのPOP UP STOREを海外へも届けることができたらすてきですよね。そして、この会社での学びを活かし、自分のお店を持つことが今の私の夢です」
野本はDEAN & DELUCA でのキャリアを通じて、「食」が持つ力を実感し、それを多くの人々と共有できることに喜びを感じてきました。「単に商品を販売するだけではなく、地域やお客さまとの新しいつながりを築くことができる魅力的な仕事だ」と語り、「食」を通じて人々を幸せにできる場を作る野本の今後の活躍に目が離せません。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです

