美容師の夢から一転、飲食業にのめり込んだ「おもしろいお店」との出会い
実家が商売を営んでいた関。幼い頃から、家に帰ると職人や商売人が働いているのが当たり前の光景だったため、自然と接客業の道を歩むようになりました。当初、関がめざしていたのは美容師だったと言います。
「美容師の仕事が人気で、私もその影響を受けて美容師をめざして大阪に出たんです。しかし『カフェ』にも興味を持っていました。当時、喫茶店・レストランとはまったく違う存在として『カフェ』が現れたばかりで、『新しいカルチャーが生まれる場所』として注目されていました。カフェでアルバイトをしたその店舗はグループ内でも売上全国2位を誇る人気店で、そこでの経験が『飲食業っておもしろいかも』と思うきっかけになりました」
1年間のアルバイトをしながら美容師の夢を追い、東京へ。しかし、そこで出会った店舗が、関が飲食業界にのめり込む転機となりました。
「友人に『おもしろいお店があるよ』と誘われて、当時のカフェブームの火付け役となった有名カフェを訪れたんです。働く人、お客さま、カフェというその場所の世界観に強く引き込まれました。この空間にいるだけで特別な空間を味わえるような感覚です。すぐさま『ここで働きたい』と思い、アルバイトスタッフになりました。
毎日、多くの感度の高いお客さまに出会い、周りのモデルや俳優の仕事をしながらも、このお店のバイトだけは譲れないと情熱をもって働く人たちばかりで、すごく刺激を受けましたね。仕事がどんどん楽しくなり、仕事が好きになりました。本当に『どっぷりハマった』という感じでした」
外食業に魅了された関は、やがてそのカフェで社員として働き始めます。その後、ウェルカムの代表取締役である横川 正紀に出会います。
「横川さんとはもう20年来の知り合いです。当時、私は別の会社にいましたが、ウェルカムのカフェ『ask a giraffe京都/Table Modern Service 国立/Table Modern Service 自由が丘』(※)の立ち上げを手伝った縁で出会い、その後2018年にウェルカムに入社しました」
※ 現在は業態変更
入社前に「GOOD CHEESE」のチーズを初めて食べた時のことを、今でもよく覚えていると懐かしむ関。
「ここのチーズを食べた時、『おいしい!』と感動したのはもちろん、『このお店、おもしろい!』と強く感じました。当時、フレッシュチーズのブッラータなどは日本では珍しく、ほとんど出回っていませんでした。日本の生乳でこんなにおいしいチーズをつくりたてで提供しているんだ、と本当にワクワクしましたね」
スタッフと共に、仕事を進化させる。現場に立ち続けるブランド統括
ウェルカムが運営する外食レストランカンパニーの「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」で約5年間、店舗マネージャーとして経験を積んだ関。現在はブランド統括として、店舗運営全体をサポートしながらも、現場に立ち続けています。
今も店舗に立つ理由の1つは、スタッフや店舗のことをより深く理解するため。でも、一番の理由は、みんなと一緒に喜ぶことが好きだからと関は話します。
「店舗として目標を達成した時、みんなで『頑張ったね!やったね!』と喜びを分かち合う瞬間がとくに嬉しいです。
先日も、当店のチーズクラフトマン(チーズ製造)として活躍する貞光 信哉が、国内最大のチーズ品評会にて、出品数380品の中からGOOD CHEESEとして出品した4つすべてが受賞することができました!しかも、ブッラータは金賞と最優秀部門賞を受賞したんです!
喜びが周囲に伝わって、チーム全体が一丸となって頑張る姿って、部活動みたいで。チームの監督が喜んでくれるからこそ、みんなが勝利をめざす姿と似ていると思うんです。外食業の楽しさの1つです」
現場に立つことで、スタッフと同じ目線で店舗を作り上げることができると話す関。もう1つ、働く上で「憧れる人」を見つけることの大切さを教えてくれました。
「私の人生の中でこの人みたいになりたい。この人以上になりたい。と思える人が3人います。なりたい姿の目標を作ると仕事の向き合い方が見えてくるんです。憧れる存在がいることで『あの人みたいになりたい!』ってモチベーションにもつながります。私もメンバーにとってそんな存在にならないといけないですし、マネージャーたちと一緒にめざしていきたいなと思っています」
店舗作りで大切になるのが、関ならではの感性。その過程ではこれまでのキャリアが大いに役立っています。
「初めて外食業に携わった店舗で、社長に連れられてNYに研修に行ったり、コペンハーゲンで食器の買い付けに同行した時のことです。デザインの知識はないながらも、自身の直感で「イケてる・イケてない」を基準に食器を選びました。最終的にチェックした社長に『これいいじゃん!』と言われた時、自分の感性を尊重してもらえたんだと、とても嬉しかったですね」
それ以来、関は店舗の決定をする際、「イケてる・イケてない」を判断基準にしています。それは「ブランドとして自信を持って発信できるかどうか」という考え方につながっています。
GOOD CHEESE GOOD PIZZAの一号店として人気を絶やさない日比谷店。当時も多くのお客さまが店の外に並び、そのウェイティングの長さが課題となっていました。そこで関はテラスの増席をすることに。
「席数とウェイティング時間を考えた時に圧倒的に席数が足りていないと思い、すぐに増やすことを決めました。設計チームと話しどれだけ増やせるのか、大きさはどうするのか。実は最初にプランで出たテーブルのサイズより小さいものにしました。席数のためではなく、海外のレストランのトレンドを取り入れ小さいサイズのテーブルにしたんです」
ただ席数を増やすことはテーブルを設置するだけでは終わりません。一度に店内へご案内するお客さまが増えることでシフトの組み合わせ・メンバー増員・オペレーションの変更とやらなければいけないことは山積み。1つの変更でお店の運用方法が大きく変わっていくのです。
「本当に大変でした。オペレーション変更後の初日のことはいまだに覚えています。オペレーション確立がきちんとされていないとお店は回りません。お客さまにもメンバーにも迷惑がかかります。そこで新しく『デシャップ』(※)の役割も作りました。全体のシフトを作る上で時間帯のピークの状況を把握しなければいけないと思い、確立するまでは不安で連日出勤していましたね」
※ お客様に料理をスムーズに提供するためキッチンとホールの間に立ち、双方をコントロールする役割のこと
1人ではなくチームとして成功させるという思いがメンバーにも伝染し成功を導きます。テラス席の増設効果、チーム一丸となり取り組んだ結果前年比128%の売り上げとなり日比谷店は「2023年度年間店舗賞銀賞」を受賞しました。
GOOD CHEESE GOOD PIZZA全体で過去最高売り上げを達成し、ブランドのさらなる成長に大きく貢献したことでグループ内満場一致で関が「年間最優秀社員賞」を受賞しました!
「自分が受賞するなんて考えてもいなくて、本当にびっくりしました。でも、チームのみんなが『関さんしかいないでしょ!』と言ってくれて本当に嬉しかったです。日々新しい挑戦を乗り越えられたのは、メンバーの支えがあったから。ピンチの時は何度もメンバーに助けを求めましたし、『大丈夫です。関さんやりましょうよ!』と何度も励ましてもらいました。私1人では絶対にできなかったことが、みんなの力で実現できたんです。
だから、これは私1人じゃなくてメンバーと共に受賞した賞です。メンバーにはいつも本当に感謝しています」
「こうした方が楽しい」「この見せ方がかっこいい」──そうやって“仕事を進化させる”ことが、自身の役割だと関は感じています。外食レストラングループは、メニューだけでなく空間作りにもこだわりを詰め込んでおり、関もベンチマークとなるお店に時間を見つけては足を運んでいます。
「店舗を運営する上で必ず行っているのは『矛盾をなくすこと』です。お店の食器や紙、置くものすべてにこだわりを持っています。このブランドとして違和感のないものを選び抜いているんです。私はクリエイティブな才能はありませんが、後藤さんや貞光さんたち周りの人たちと共にブランドをどう魅せたいのかを学び、それを形にしていくんです。
たとえば、グラスの形やメニューの紙の材質を吟味して選び、棚に置くならこの商品、置いてあるナイフとフォークも、『これが良い』と思えるものを選びました。グラスやシルバーケースひとつに至るまで、さまざまな場所を巡り、業者さんに問い合わせて探してもらっています。でも、お店全体のトーンが整って感性がひとつにまとまる瞬間が楽しいんです」
そこには、関がこれまでに培ってきた経験と、ブランド統括者としての洗練された美意識が垣間見えました。
全員が納得できる料理しか提供しない。「おいしい」を届けるためのチームの情熱
ウェルカムの外食レストラングループの魅力はチーム力だと関は胸を張ります。その一体感を実感できる場面の1つが、メニュー開発のミーティングです。
「特徴的なのは、私たちのブランドには専任の開発チームがなく、現場にいるシェフたちやマネージャー陣がその役割を担っていることです。メニューはシェフ1人が考えるのではなく、ブランドのシェフ・マネージャー全員で決めていきます。みんなで試食しながら、ああでもない、こうでもないと話し合う過程がとても楽しいんですよ。
もちろんどの料理もおいしいですが、『何か足りないね』ということもあるので、ハーブやスパイスを用意しておくんです。柑橘類を使う時もそう。これにはレモンが合うのか、それともカボスなのか、ライムなのか……。時期によって変わってくるのでおもしろいですよ。試食中にスパイスを買いに走るシェフもいるくらいですから(笑)。
そうやって、食材の足し算・引き算を何度も繰り返し、こだわりのメニューができあがっていきます。自分たちが納得し、自信を持って出せるものしかお客さまには出しません。つまり、私たちの『美味しい』が詰まった料理が並ぶ店舗が完成するということです」
現場にいるシェフたちがメニュー開発を行うことは他のメンバーにとっても「商品開発」を身近にみることができます。関は試食会に参加していないメンバーにも休憩時間を利用して新メニューについての感想を聞くようにしています。
しかし、チームで「おいしい!」とこだわり抜いて提供したメニューでも、すべてが爆発的にヒットするわけではないと関は言います。
「スタッフにも人気があった商品が、実際にはなかなか売れなかったという経験もありました。お客さまのニーズに合わなかったのか、もしくは打ち出し方が適切でなかったのか……。そのズレを感じたら、すぐに改善策を考え、実行に移します。
たとえば、ピザメニューのアルピーノ(※) (現在:クワトロフォルマッジ)の注文数が少なかったのですが、そこでメニュー名の下に使用されているチーズの種類を記載することにしました。私たちが作ったチーズと他の作り手さんのチーズを使用している点を強調したのです。その工夫が、お客さまの納得感につながり、注文数がぐっと上がりました。わずかな変化で結果が大きく変わる──これもまた外食業のおもしろさでもありますよね」
※ 「アルピーノ」 フレッシュなモッツァレラと、山岳地方で作られたセミハードなチーズを合わせた1枚
大切な人を連れて来たくなる場所へ──「なんでも自分事」で作る理想の職場
「感じるこころ、理由があること、なんでも自分事、変わることに前向きなこと、結果にこだわる」。ウェルカムメンバーが「感性の共鳴」を体現していくために、働く上で大切にしている行動指針「WELCOME SHIPS」です。入社して6年。関が一番心がけている行動指針はどれか聞きました。
「『なんでも自分事』です。『仲間がピンチのときは助け合い、仲間が成功したら自分が成功したかのように喜ぶ』という意味が込められています。俯瞰的に見る、つまり、客観的に広い視野で物事を捉えることも時には大切かもしれません。
でも私は、『自分だったらどうかな』と気持ちもその人と共有して考えることが大切で、オーナーズマインドにつながる考え方だなと思っています。会社としての考え方ですが、自分の子どもにも伝えたいと思うほど大切にしています」
取材中に何度も「おもしろい、楽しい」と口にしていた関。自身でも、その考えをメンバーに伝染させたいと考えています。
「私たちのチームには嬉しいことにマネージャーになりたいと言ってくれるメンバーがたくさんいます。ブランドや商品が好きで一緒に働いてくれるメンバー全員の活躍できる場所をもっと作っていきたいですね。そんなメンバーたちとみんなの家族や大切な人を呼べる店舗にしたいです。ブランドのことが好きでキラキラ楽しく働けていると、誰かを連れて来たくなると思うんです。極端に言えば、お店を卒業した後も来てほしいんです。
以前、学生アルバイトパートナーさんが、就職が決まってお店を卒業した後に会社の上司を連れて店舗に来てくれたことがありました。『私、ここで働いていたんです』って言ってもらえるのってこんなに嬉しいんだと思いましたね。一緒に働いてくれるメンバーが、ブランドのことを好きになって、楽しんでもらえる環境を作っていくことが私の目標です」
関が追い求める理想の職場は、単なる「働く場所」ではなく、仲間とともに喜びや成長を分かち合える「居場所」です。
ブランド統括として、仲間の成長やチームワークを大切にし、職場をまるで家族のように温かい環境に育て上げてきました。外食レストラングループの統括メンバーの定例会の時間のほとんどはメンバーにまつわる話だと言います。そのため長引くこともあるがそれも一緒に働く仲間のことを考える大切な時間です。
関の「なんでも自分事」という行動指針は、メンバー全員が仕事に誇りを持ち、楽しみを見つけていくための大切な鍵となっています。仲間とともに、いつか大切な人を招待したくなるような、愛され続ける店舗をめざす関の挑戦はこれからも続きます。
※ 記載内容は2024年11月時点のものです

