作り手とお客さまの架け橋に──小さなエンターテイメントを作り出す
外食の世界に入ったのは学生時代。シェフやサービススタッフではなく、「空間プロデュース」に携わる企業で飲食店の立ち上げをする事業のアルバイトでした。
「『外食業だけど、食を通して空間を作り上げる』ようなお仕事です。アルバイトを通してさまざまなお店のオープニングに携わり、このレストランを誰のために、どんなお店を作っていくのかを考えることの大切さを学びました」
お店の人だけではなく、デザイナーや編集の方などさまざまな方面の人との仕事は、とても刺激的だったと言います。外食産業に携わる人の多くは、料理人やサービス業を経験して魅了されその世界に入る人が多い中、後藤は「空間デザイン」という別の扉からこの仕事に就きました。
「もちろん、食べることは好きですよ。『1日の出来事の中で何が一番楽しいですか?』と聞かれたら『食べながらお話をすることです』と答えます。
食事を外でするのであれば、そこにはヒトがいてコミュニケーションが生まれる。その空間や雰囲気が良ければ食事の時間はさらに楽しくなりますよね。そういった日常の中にある『小さなエンターテイメント』を自分たちのお店で創り出すことができたらすごく楽しいし、やりがいがあると思い外食産業に携わろうと思いました」
その後、同じ志を持った仲間たちとお店を立ち上げることに。
「お店を作る上で、業態設定はとても大切です。たとえば、イタリアンを食べたいと思ったら思い浮かぶお店はありますか?『ここのパスタおいしいから食べに行きたいよね』、『あそこのピザが好きだから行きたいよね』と考えますよね。お客さまが一体、何を食べて何をしたら喜んでくれるのかを当時からずっと考えていました。
トレンドや、流行りのライフスタイルを知るために海外の雑誌やインテリア・ライフスタイルの本などをとにかく読み漁って情報を得ていました。年に5、6回はNYに足を運び勉強をしに行くことも。飲食店でおいしいものを提供するのは当たり前であって、その場所でどんなものを提供し体験してもらうか、人々のライフスタイルに合わせて一過性にならないものにしているのかを見て勉強していました」
仕事の幅を広げていく中で、後藤は自身のお店を丸の内に構えていたことをきっかけにDEAN & DELUCAに出会います。
「DEAN & DELUCAは日本にできたばかりで、丸の内店は日本1号店でした。じつは、最初は仕事としてDEAN & DELUCAと取引をしており、NYから上陸したドーナツを卸していました」
その後、もともと行っていた事業を手放しコンサルティング事業を行っていた後藤のもとへ知り合いからある相談がやってきます。
「『今、ある立ち行かない酪農家さんを支援しているんだけど、そこの生乳を使って何かビジネスに展開できませんか?』と言われました。そこの酪農は、牛舎を設けておらず牛にストレスを与えないようにしていました。搾乳も1日1回でその分味が濃くとてもおいしいんです。
酪農家さんの強いこだわりに共感し、それを使ってチーズやケーキに加工し販売することを考え、『DEAN & DELUCAで売ってもらえませんか?』とウェルカムの代表である横川さんに持ちかけました」
その当時は残念ながらチーズ販売に至りませんでしたが、後藤の中で新たな目標が生まれました。
「日本は生産自給率も低く、作り手さんたちも非常に厳しいのが現状です。『自分が作り手さんとお客さまをつなぐ役割として、生乳からチーズを作り、出来たてのチーズをお客さまに提供したい!そのチーズを使ったピザを販売したらいいんじゃないか』と思いつきました。
出来たてのおいしさは格別ですよ。そのおいしさを知ってもらい、成功すれば酪農家さんたちの力にもなれる。そんなビジネスをしたいと横川さんに相談したところ『僕もそんなビジネスをしたいと思っていたんだ!一緒にやりましょう!』と言っていただき、2016年にウェルカムに入社をしました。
地元生産者の方の想いを乗せて、ローカル食材をすぐ近くで販売する……それで叶ったのが2018年にオープンしたチーズ工房併設のピッツァダイニング『GOOD CHEESE GOOD PIZZA』です」
飲食を通じたライフスタイルブランドとは
「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」を始めとするウェルカムの外食レストラングループは、現在9店舗にまで成長し、メディアやSNSでも話題を呼びウェルカムで今もっとも勢いのあるグループとなりました。その外食レストラングループのコンセプトである「飲食を通じたライフスタイル」とは一体何なのか。後藤はこう話します。
「ライフスタイルって一人ひとり違った形があり、多様性に溢れています。だから、生活の中で『これを大切にしたい』『こんな風に生活を送りたい』という考えにもそれぞれ違いがありますよね。その考えに対して、食を通じて僕たちはどんなヒトに、どんなモノを、どんな手段で伝えることができるのかということが、僕たちの行っているライフスタイルブランドです。
『これでいい、より、これがいい』。この考えは、食べ物に対してだけでなく何に対してもそうだと思います。食べ物って、『おいしい』という味に対してが半分、もう半分はその食べ物の背景にあるストーリーを一緒に食することが大切だと考えています。
たとえば、目の前にイチゴが2つあって1つは何も言わずに食べる。もう1つは『僕が今朝採ってきた朝摘みのイチゴなんですよ』って聞いてから食べる。そうすると、その『ストーリー』を伝えることによってもっとおいしく感じると思います。そういった背景をお客さまに伝えることが僕たちの役目です」
だからこそ、外食レストラングループのメンバーはお客さまへその背景、込められた想いを届けるために、自ら作り手さんの元へ足を運ぶことも多いと言います。
「出会ってきた方、皆さんものすごい熱量でお仕事をされていました。ある酪農家さんは、牛の餌を自ら作っていました。牛を育てるっていうだけでも大変な仕事量じゃないですか。牧場に牛たちのためだけに畑を作るなんて牛に対する情熱がないとできないことです。
他にも、焼酎を作るために芋・麦の栽培からすべて自分たちでする作り手さんもいます。そういった、ものを作ることに対しての情熱が高い人と一緒に仕事をしてものを作ると、僕たちも負けないくらい熱量を入れないと負けてしまうし、温度を下げずに伝えるとお客さまにもその熱量は伝わります」
こだわり抜いた食材を選ぶためには、味だけではなく生産者の想いまでを知る必要がありました。
「たとえば、虎ノ門のジンをプロデュースする背景では、自分たちで調べ、『この人に会いたい!』と思った作り手さんの元へ訪れました。もちろん人からの紹介もありますが、誰かの紹介だから良いではなく、自分たちがいいなと思ったものを届けたいからこそ自分たちで探すことにも時間を惜しみません。
2021年に森ビルとの共同プロジェクトから生まれたのが、虎ノ門ヒルズ3階に東京の名店を一堂に揃えた『虎ノ門横丁』。その一角に、ウェルカムとして初の居酒屋業態として誕生したのが、東京の島焼酎を使用して店内の蒸留所で作ったクラフトジンが楽しめる『酒食堂虎ノ門蒸留所』です」
虎ノ門蒸留所では、東京をはじめ各産地のボタニカルを使用したシーズナルジンを作っています。
「ジンに使う食材も、じつは自分たちで探し採りに行っているんですよ。チームメンバーの地元のイチゴや東京近郊の金木犀など。自分たちで採ってきた、体験したことって誰かに話したくなりますよね。こういった体験がお客さまへの伝える熱量・サービスの質となりそれを感じるお客さまの反応もグンと変わってきます。
だからこそ、メンバーには実際に作り手や現地に行って体験してもらうことを大切にしています」
グループとしてもう1つ大切にしていることは、スピード感を持って行動すること。学びをすぐに仕事に活かし、そこにブレーキはかけないと後藤は言います。
「今年の2月には、メンバーたちがアメリカNYへ出張に行っていました。1日10軒以上のお店を回り、メニューのヒントはもちろん、サービスのマインドや、エンターテイメント性についてもしっかり学ぶことが目的でした。お客さまにいかに料理を楽しんでもらうか、笑顔になっていただくために何をしているのか、自分たちの店にどう活かせるのかを学びお店に持って帰ってきてもらいました。
得てきた知識から次にチャレンジすることを見出し、3カ月後にはメニューとしてお店に還元することが決まっています」
外食レストラングループとしてめざす場所
「僕たちのやっているお店は、決してどの層にもマッチするワイドな事業ではないと思っています。広くはないけれど、言うなればビルのような縦に長い作り。深い作りになっているからこそ、どこかの階でアクションが起こるとビル全体で揺れが伝わって広がっていくような仕事がしたいんです。
狭い層に刺されば良いという考えではありません。一つひとつ仕事を丁寧にしていき、その想いの深さ故に周りにどんどん広がっていく、そんなすてきな広がり方が僕たちのやっている仕事だと思います」
2018年に1号店として日比谷店がオープンし、GOOD CHEESE GOOD PIZZAは現在4店舗。さらなる目標について後藤はこう語ります。
「おかげさまで、お客さまにもたいへんご好評いただいております。
今は、モッツァレラやブッラータチーズなどのフレッシュチーズを作っていますが、チーズのバリエーションをもっと増やしていきたいと考えています。『ここなら間違いないよね、ここじゃなきゃ食べられないよね』と思ってもらえるように、ローカルプロダクトとローカルコミュニティを通してメンバー・作り手さんと創り上げていきます」
後藤は、ウェルカムの外食レストラングループの仕事の魅力を「シンプルに楽しい。人ができないことを僕たちはできるから」と言います。
「他の会社に比べて、あまり縦の職位を増やしていないんです。だから、誰が何をするかよりは『やりたい!』とメンバー自ら手を挙げてくれるんです。 メニュー開発や販促もお店ごとに任せています。そんな中、メンバーの1人が『自分でグループ全体の販促を行いたい!』と言ってくれました。そのメンバーにとっても、販促の経験もなく新たなチャレンジ。それでも、自分からやりたいと声を上げてくれたので、お店の運営もしながらこれから担当として育ってもらう環境を作ります」
やりたいことをどんどん挙げてくれるメンバーが多くいる中、その大多数は現場に立ちながら挑戦したいと手を挙げると言います。
「エリアマネージャーたちは、とくにそうです。通常現場を離れて本社機能のような仕事をするのが一般的に多いと思いますが、今4名いるエリアマネージャーが全員現場所属なんです。
その理由は、『現場が大好きだから』。お客さまやメンバーと話すのが大好きなんですよ。現場を離れてしまうと、メンバーの温度感やお客さまの求めるサービスが何かわからなくなることと、一緒にお店を作り上げている感覚や目標を達成した時に一緒にやってきたからこそ喜びが共有できる。その体験が好きだから、エリアマネージャーたちでさえ現場を離れるのが嫌だと言ってくれるんです」
現場にいるからこそできるサービスができ、やりたいことを誰でも具現化することができます。
「やりたいことができ、お客さまが喜んでくれて、それがリピートにつながります。だって、新しいことをやろうと提案すれば3カ月後には実現するメンバーが揃っているんですから。それが、僕たち外食レストラングループの仕事の魅力だと思いますね」
一人ひとりがお店のマネージャー
2023年12月には「sequence MIYASHITA PARK」に季節の食材を活かしたアメリカンイタリアン料理を提供する「TWELVE ON THE PARK BAR&GRILL」がオープンしました。
自分たちにできる最大のサービスを届け新たな挑戦をし続ける中で、メンバーたちには何事に対しても自分ごととして考えてほしいと考えます。
「一人ひとりのオーナーズマインドが高いチームでありたいです。なんとなく雇われているから働くのではなく、どのメンバーも自分がこの店の店主だという気持ちで仕事をしてほしい、それがこのチームの方針です。
各店舗で定期ミーティングを行いますが、オーナーズマインドが全員にあるとそのミーティングで発言をしない人はいません。自分が頑張りたいこと、やっていくことがわかっているからやってほしいこと、協力してもらいたいことが自然と出てきます。ある店舗は自分ごとで捉え仕事ができるチームで、僕からは意見もアドバイスも何もしません。それだけ自分たちのお店にこだわりを持っているし、任せて大丈夫だと頼もしく思います。
挑戦をすることは勇気がいりますし、もちろん失敗することも。むしろ失敗することの方が多いんじゃないかな。でも、失敗をしたからといって下を向いていても何も始まりません。たくさん悩んで、それでも立ち上がった人は絶対に勝ちます!そういったお店のために発言し、挑戦できるチームは本当にいいお店になるんです。
恐れずに、たくさん経験をしてほしいですね。お店は生きモノですから、そういった空気があるチームは結果として良いお店になりお客さまに伝わるんです」
週に1度、必ず全店舗を回りメンバーとのコミュニケーションを取る時間を大切にしている後藤は、ウェルカムの行動指針「感じるこころ・理由があること・なんでも自分ごと・変わることに前向きなこと・結果にこだわる」をまさに体現しています。
そんなリーダーが存在する外食レストラングループは、これからも持続可能な新しい価値の創造と新しい外食の在り方を創り出していきます。
※ 記載内容は2024年3月時点のものです

