「材料の研究」から「ものづくりへの貢献」へ。トヨタグループへの入社を決めた理由
大学では工学部の応用化学コースを専攻し、機能性材料の合成に関する研究室に所属していました。機能性材料とは、特定の環境や条件下で特別な性質を発揮するよう設計された素材のことです。研究では、目標とする材料特性を実現するために仮説を立て、合成条件を変えながら実験と評価を繰り返す日々でした。思いどおりの結果が得られないことも多くありましたが、そのたびに結果を一つずつ丁寧に分析し、次の実験につなげることを大切にしていました。
この研究を選んだのは、新しい材料の開発を通じて世の中に役立つものを作ることに純粋に魅力を感じていたからです。実験を重ねるうちに、自分が検討した材料や技術が、最終的に製品の性能向上や新しい価値につながるかもしれないという実感を持てるようになりました。その経験が、就職活動においても「ものづくりを通じて社会に貢献できる会社で働きたい」という軸につながっています。
企業を探す際には、大学で学んだ化学や材料の知識を活かせることはもちろん、技術者として幅広い経験を積みながら長期的に成長できる環境があるかどうかをとくに重視していました。学んできたことを単に活かすだけでなく、それをベースにさらに成長し続けられる場所を求めていたのだと思います。
その中で出会ったのが、現在の会社です。トヨタグループの源流企業として、高い技術力と品質へのこだわりを持ち、ものづくりに真面目で堅実に向き合う会社というイメージを最初から持っていました。選考を通じて実際に社員の方々とお話しする機会をいただいたのですが、真面目でありながらも話しやすく、自分の考えを率直に伝えられる雰囲気がとても印象的でした。入社後も周囲と相談しながら仕事を進めていける職場だと、自然と感じることができました。
入社の決め手は複数ありますが、世界トップクラスの製品と高い技術力を持っていること、自動車や物流、繊維機械、電動化といった幅広い事業領域を持っていること、そしてものづくりに真摯に向き合う社風に魅力を感じたことが大きな理由です。また、福利厚生や教育制度が整っており、長期的に成長できる環境があると感じたことも後押しになりました。技術力の高さと、人が育つ環境の両方が揃っていると思えたことが、最終的にこの会社を選んだ理由です。
研究開発から生産技術へ。現場に飛び込んで得た、ものづくりの本質
入社後の研修は、まず社会人としての基礎から始まりました。ビジネスマナーや会社の理念、事業内容、安全・品質に関する考え方を学ぶ全体研修を経て、その後は工場実習へと進みました。製造現場でものづくりがどのように行われているかを肌で感じたこの経験は、今の仕事にも通じる大切な土台になっていると感じています。技術部門の社員は座学研修で技術の基礎も学び、段階的に仕事の全体像をつかんでいきました。
研修を経て最初に配属されたのは、リチウムイオン電池(充放電が可能な二次電池の一種)の電極材料の合成に関わる研究開発部門でした。材料を合成・評価しながら、より性能の高い電池を実現するための技術を追求する日々でした。電池という領域は現在と共通していますが、当時の仕事は研究寄りのアプローチが中心で、ある条件のもとで良好な結果を得ることが一つの成果として評価されていました。
その後、生産技術部門へと異動し、仕事の性質は大きく変わりました。研究開発で得られた技術を、実際の生産工程として成立させることが新たなミッションになったのです。この変化は、自分にとって大きな転換点でした。
研究開発では「この条件なら良い結果が出る」という知見が成果になりますが、生産現場では話が違います。設備ごとのばらつきや材料の変動、作業のしやすさ、安全性、生産性といったさまざまな要素を同時に考慮しながら、安定して同じ品質を量産として実現しなければなりません。最初はその視点の広さに戸惑いを感じました。
苦労を乗り越えるために意識したのは、とにかく製造現場に足を運ぶことでした。実際の設備を見て、作業者の動きを観察し、現場のリアルを自分の目で確かめながら検討を進めることで、生産技術としての考え方が少しずつ身についていきました。
入社前は、各部署がそれぞれの専門領域の中で完結して仕事を進めるものだと思っていました。しかし実際には、一つの製品や工程を成立させるために、研究・設計・生産技術・製造・品質など、多くの部署が緊密に連携していました。縦割りではなく、横断的に課題を解決していくこのスタイルは、入社後に感じた良い意味でのギャップのひとつです。
「なぜその業務を行うのか」を問い続ける、グループ長としての仕事と成長
現在は、リチウムイオン電池の生産技術部門に所属し、活性化工程(組み立てられた電池に初めて充放電を行い、電池を「生きたもの」にするとともに性能や品質を確認する重要な工程)を担当するグループのグループ長を務めています。
グループ長としての主な役割は、工程全体の課題と優先順位を整理し、各テーマの方向性を示すことです。設備の導入・立ち上げから品質改善、生産性向上、新規工法開発まで幅広いテーマを推進しながら、設計部署や製造部署、生産管理など、関係各所との調整も担っています。グループ長がすべての答えを出すのではなく、メンバーそれぞれが専門性を活かして自ら考え、仕事を進められることが大切だと考えているため、日々の対話を通じた育成にも力を入れています。メンバーには単に指示を出すのではなく、「なぜその業務を行うのか」「その業務が何につながるのか」を理解してもらうことを意識しています。
印象に残っている出来事として、活性化工程での新規工法開発を進めるなかで発生した品質課題への対応があります。電池の品質課題は、材料や化学反応だけでなく、設備条件、温度、時間、電気的な制御など、複数の要因が絡み合っていることが多く、真因を特定するのが非常に難しいのです。当時も単一の原因ではなく、複数の要因が重なっていたため、グループ内のメンバーだけでなく、設計や製造などの関係部署とも連携し、仮説を整理しながらデータ分析と検証を繰り返しました。この経験を通じて、問題が発生したときに個人で抱え込むのではなく、お互いの専門性を活かしてチームで取り組むことの重要性を改めて実感しました。課題解決の経験を積むたびに、技術力だけでなくチーム力も着実に向上していると感じています。
一方で、苦い経験もあります。設備検討の場面で、関係部署と目的や前提条件の共有が十分にできておらず、検討の途中で認識のズレが表面化し、作業をやり直すことになったことがありました。品質・性能・生産性・作業性・日程・コストなど、各部署が重視する条件はそれぞれ異なります。それらを最初から共有していなければ、どれだけ技術的に優れた案でも実際の工程には反映できません。この経験から、テーマの初期段階で目的・判断基準・役割分担を明確にし、関係者の認識を揃えることの大切さを学びました。以来、検討の初期段階から関係部署を巻き込むようにし、目的や前提条件をできるだけ明文化して、関係者が同じ方向を向いて議論できるよう心掛けています。
学生時代は、自分一人で仮説を立てて実験し、課題を解決することが中心でした。今は、さまざまな専門性を持つ人を巻き込み、チームとして成果を出すことを自然に考えられるようになりました。また、目の前の課題だけでなく、工程全体や事業への影響、そしてメンバーの成長まで含めて判断する視点を持てるようになったと感じています。この変化こそが、自分自身の大きな成長だと思っています。
「学び続ける姿勢と挑戦する気持ち」が、ものづくりの現場を動かす
短期的には、担当している活性化工程(電池の性能を引き出すための充放電処理工程)の品質と生産性をさらに高めることに注力したいと考えています。具体的には、異常の早期検知や工程変化の見える化を進め、人の経験だけに頼らずデータに基づいて判断できる仕組みを強化していきたいと思っています。現場で起きていることをリアルタイムで捉え、問題が大きくなる前に手を打てる体制をつくることが、目下の目標です。
中長期的には、技術的な専門性とマネジメント力の両方を高めながら、組織全体・事業全体に貢献できる役割を担っていきたいと考えています。自分自身の成長だけではなく、次世代を担う人材の育成にも力を入れていきたいというのが正直な思いです。育成において私が大切にしているのは、すぐに答えを与えないということです。「なぜそう考えるのか」「他の選択肢はないか」を一緒に考えるプロセスを通じて、自分で考える力を育てることが、長い目で見て組織全体の成長につながると信じています。
当社の魅力は、社会を支える製品のものづくりに携わりながら、幅広い技術分野で成長できることだと私は感じています。若手のうちから責任あるテーマを任され、関係部署と協力しながら課題を解決する経験を積めることも、大きな強みです。教育制度が整っているのはもちろんですが、実際の仕事を通じて技術力と人間力の両方を高められる環境があることが、この会社の本当の魅力だと思います。
一緒に働きたい人物像についてお伝えすると、自分の専門性を持ちながら、新しい分野にも好奇心を持って挑戦できる方に加わっていただきたいと考えています。私が担当する活性化工程には、機械・電気・化学・データ分析など、多岐にわたる技術が関係しており、どの分野の経験も活かせる可能性があります。現時点で電池に関するすべての知識を持っている必要はありません。分からないことを自ら学び、周囲に相談しながら成長できる姿勢こそが、何より大切だと思っています。
入社を迷っている方にお伝えしたいのは、最初からすべての知識や経験を持っている必要はないということです。大切なのは、学び続ける姿勢と挑戦する気持ちです。自分の担当範囲だけで考えるのではなく、製品や工程全体を見渡しながら、チームでより良いものづくりを実現したいと考えられる方には、この会社は大きなチャンスをくれる場所だと確信しています。ものづくりを通じて成長したい方のご応募を、心からお待ちしています。

