外勤営業として東北4県を担当。橋渡し役として相手目線のコミュニケーションを徹底
稲田が所属するのは仙台工場 販売第一部 仙台販売課。食品用缶詰のための容器販売を手がける部署です。
「食品缶の拡売が当部署のミッションです。受注の獲得から納品まですべての工程をフォローするほか、最近は材料費の高騰を受けての価格交渉なども行っています。
メンバーは課長・係長と担当6名を合わせた8名。うち50代が5名、20代が3名という構成です」
中でも稲田が担当するのは外勤営業。青森・秋田・宮城・山形の4県の顧客に向けた販売活動を行っています。
「青森や宮城では魚介類用、山形では果物用という具合に、幅広いエリアの缶詰メーカーさんを担当させて頂いております。対面営業が中心なので、1日に訪問できるお客様は2、3社ほどです。
社内の他部署との連携も欠かせません。製品を納品するところまで責任を持って担当するため、生産管理部門と生産スケジュールを調整したり、物流部門と製品の出荷管理をしたりしながら業務を進めています」
また、2023年から新入社員のメンターも務める稲田。若手のモチベーション向上にも取り組んでいます。
「マンツーマンで指導するというより、工場内の各部門の同年代の社員たちと協力しながら10名ほどの新入社員をサポートしています。こちらから助言することもありますが、私が大切にしているのは、彼ら彼女らの困り事や悩み・言葉に耳を傾けること。社歴の長い社員には到底思いつかないような斬新なアイデアのヒントをもらうこともあり、とても貴重な経験ができています」
若手を含む社内のメンバーとやりとりする上で稲田が大切にしているのが、相手目線に立つこと。あらゆる場面で橋渡し役としての役割を果たしてきました。
「たとえば、生産管理には生産管理の事情があり、彼ら彼女らなりの枠組みの中で仕事をしています。『この日までに納品してほしい』と一方的に営業側の要求を押し付けるのではなく、お客様と社内とをつなぐ仲介役として、双方にとってなるべく良いかたちを模索するよう心がけています。
また、ベテラン社員と若手のあいだを取り持つのもわれわれ中堅社員の役目。若い人たちはシステムに詳しい一方、社会人としてまだまだ未熟な面があります。でも、同じ工場で働く以上、最終的なゴールは同じ。全員が足並みを揃えて同じ方向に向かって行けるよう、それぞれの言葉を翻訳しながら相互理解の促進に努めています」
人の魅力に惹かれ、東洋製罐へ。新人時代に学んだ営業としてのあるべき姿
就活時、生活に身近な商材を扱うメーカーを探す中で東洋製罐と出会い、食品から生活用品まで、さまざまな容器を幅広く扱う点に惹かれたと言う稲田。選考の際に訪れた洗練された本社の存在感に圧倒されると同時に、組織風土に魅力を感じたことが入社の決め手になりました。
「役員面接で志望動機などについてひと通り聞かれたあと、当時の営業トップの方から、『飲み会に参加して、二次会でカラオケに行きたいと僕が言ったら君は来てくれるかな?』と質問されたんです。カラオケは学生時代によく行っていたので、『どこまでもついていきます』と返したところ、『いいね、君は営業で決まりだ』と言われました(笑)。
超高層の本社ビルの上層階にある一室に呼ばれて緊張する中、大企業の役員の方が気さくに話しかけてくださったことがとてもうれしくて。ひとりの人間として見てくれる会社だと感じ、入社を決めました」
2017年の入社後、稲田が配属されたのは仙台工場。見知らぬ東北の地で内勤営業と外勤営業を経験しますが、仕事以外の学びも多かったと振り返ります。
「東日本大震災が起きたのは私が高校生のとき。当時、福岡に住んでいた自分にとって遠い出来事のように思っていましたが、真新しい建物が立ち並ぶどこか不自然な景色を目にしたり、大切な人を亡くされた方の経験談を聞いたりする中で、震災の存在を身近に感じることができました。
中には、すべて流された後に工場を建て直し再稼働させた経営者の方も。日本人として知っておくべきことを知れた気がしていて、東北に来たことは私の人生にとってプラスになったと思っています」
一方、豪快で芯の強い人が多いと言われる福岡出身の稲田にとって、東北はまったく異質な文化圏。当初は戸惑いもありましたが、周囲に支えられながら営業スキルを磨いてきました。
「東北にはおとなしい性格の方が多く、初対面で深く立ち入ろうとすると嫌われてしまうため、順序立てて関係性を構築することを心がけています。『今回だけ、特別に安くしておきます』といった変化球は東北では通用しません。お客様から聞いた話をメモして記憶し、次に会ったときにその話をまた持ち出すなど、ビジネス的な関係ではなく、人対人の関係を重んじる正攻法の営業スタイルを貫いてきました。
また、こちらは半人前でも、お客様からはプロとして見られます。たとえば、缶の蓋を閉める工程について質問されるときなど、その機械を見たことすらない中で助言しなくてはなりません。煙たがられるくらい先輩に質問するなど、周囲を巻き込みながら仕事を覚えていきました」
当時、稲田が先輩からかけられた言葉の中で、とくに印象に残っているものがあります。初めて新製品の立ち上げに関わったときのことでした。
「お客様から受注を獲得し、自分の手を離れたと思っていたところ、『納品するまで伴走するのが営業の務めだ』と先輩から諭されました。新しい仕様やスペックを登録する品質部門、それを製造現場に伝える生産管理部門など、その後の仕事の流れを追いかけ、責任を持ってお客様に届けるのが営業の仕事。当事者意識を持ってすべての工程に関与することの大切さを教えてもらいました。
また、東北エリアにはゴルフを楽しまれるお客様が少なくありません。ゴルフを覚えるように言われたことも記憶に残っています」
不具合解決に向けて奔走。大きな課題に立ち向かった27歳の足跡
約4年半にわたって外勤営業を担当する中でさまざまなことを経験してきた稲田。ひときわ大きな成長を実感した出来事がありました。
「食品用缶の製造工程で原因不明の不具合が起きたことがありました。当初は工場内で対応していましたが、やがて想像以上に大きな問題らしいことがわかり、本社部門や技術部門の中枢をなすテクニカルセンターの方と膝を突き合わせながら、解決に向けて奔走。足掛け2年にわたってさまざまな角度から調査を進めた結果、不具合を解消することができました。
当時の私は若干27歳。役員レベルの社員が決裁するような大きな事象でしたが、『当事者意識を持ち、すべてを自分事に』という先輩からもらった言葉を胸に、必ず自分が最後までやり切るという気持ちで向き合いました。
無事に落着したのは本社部門やテクニカルセンターの方たちの献身的な協力があったからですが、納品までの予定を組んだり、お客様に進捗状況を伝えるための報告書を定期的に作成したりと、自分が旗振り役となって解決に向けて取り組んだことが大きな自信になっています」
仙台工場ゆえの成長機会も多いと話す稲田。現在の仕事のやりがいについてこう続けます。
「東洋製罐にとって主軸は飲料用容器。私が担当する缶は売上全体の1/10に満たないニッチな製品です。そのため、若輩者であるにもかかわらず、食品工場の社長さんや工場長さんクラスの方と仕事をさせていただく機会があります。
皆さんが業界をどう捉え、どんな考えや想いを持って会社を経営しているのかを知れるのはとても刺激的です。貴重な経験をさせてもらっていると思っています」
一方、東北エリアで営業するからこそのこんな楽しみも。
「入社するまで私には缶詰を食べる習慣があまりありませんでしたが、仙台工場に来てから、農産物や海産物の旬がわかるようになりました。山形や岩手では、8月のいままさに桃の缶詰の生産がピークを迎えていますし、10月になればサンマやイワシの水揚げが始まります。季節感のある食生活を楽しむなど、人生が豊かになったと感じます」
どんな環境でも花を咲かせる力を身につけ、東洋製罐の未来を拓く
これまで食品用缶の営業一筋のキャリアを歩んできた稲田。今後はさまざまな仕事にチャレンジしたいと意欲を見せます。
「私は営業の観点からしか東洋製罐を見たことがありません。品質部門や生産管理部門、総務や経理などさまざまな角度から容器と向き合いたい気持ちがあります。
東洋製罐独自の高い技術を駆使して社会貢献できるよう、時代や環境の変化に合わせた容器の新しいあり方を考えていけたらと思っています。10年後にはいまとはまったく違う、思いもよらないビジネスを当社が手がけているかもしれませんしね。
他工場でも本社でも、あるいはグループ会社に出向することも含め、チャンスさえあればいろいろなことに前向きに取り組んでいくつもりです」
稲田がそう考えるのには理由があります。かつて先輩からこんな言葉をかけられたことがありました。
「仙台工場の他部門の先輩が、『本当に優秀な人材はどんな環境でも花を咲かせるもの。本質を見極めるという点ではどの部門にいても同じだ』とおっしゃったんです。その言葉がいまも私の中でこだましています」
仙台工場には優しい人が多く、ここまでやってこれたのは良き先輩社員に恵まれたからこそだと話す稲田。中堅社員となったいま、めざす姿があります。
「私が入社したとき、先輩社員たちがとてもかっこよくてキラキラして見えたのを覚えています。いつか自分もそうなりたいと思ったものでしたが、気がつけば私も当時の先輩たちの年次に。後輩たちから憧れられる存在でありたいとの想いが、仕事へのモチベーションになっています」
自分の後ろには誰もいない「ラストマン(最終責任者)」の覚悟で、稲田はこれからも目の前の壁に挑み続けます──東洋製罐にとって、また社会にとって明るい未来を拓くために。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです
