ブラジルを拠点にトップサイドデリバリーマネージャーとしてFPSO案件をリード
私はOFS(Offshore Frontier Solutions)本部に所属しています。これは、海洋開発を手がける三井海洋開発さんとTOYOの共同出資による合弁会社を運営するために立ち上げられた部署。同社はシンガポールを拠点に、FPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)のEPCI(設計から機器購入、モジュールおよび船体の建造、それらの船体への据付までの一括工事)事業を展開しており、TOYOからは現在50名程度が参加しています。
中でも私が携わっているのが、BM-C-33というプロジェクト。ブラジルのサンパウロに駐在し、リオデジャネイロ沖合約200kmのところにある海洋油田の開発に投入されるFPSOの新造を進めていて、エンジニアリングからFPSOの竣工に至る工程の責任を担っています。
BM-C-33のメンバーはOFSのエンジニアリングチームとプロジェクトチームをあわせて約300名。協力会社の方を含めると1万人以上が参加する大規模なプロジェクトです。
現在、OFS本部では石油やガスの高い需要に応じてFPSOに特化していますが、その名前が示す通り、ブルーアンモニアや海洋風力発電など、今後は海洋開発の他分野にも手を広げていく予定です。
BM-C-33プロジェクトでの私の立ち位置は、TOYO側の責任者。プロジェクト全体を統括するPMのもと、新造される船上に設置される合計で4万トンにも及ぶ各モジュールのうち、ブラジルトップサイドデリバリーマネージャーとして、ブラジルで製造されるモジュールの設計から調達、工事に至る全工程を指揮しています。
PMとしてもっとも重要な業務はチームを導く大方針を決めること。どんな目的があり、どんなクオリティが求められていて、そのためにどの協力会社さんの力を借りる必要があるのかなど、戦略を練りあげコストやスケジュールを明確にした上で、それを現場で実作業してくれるメンバーと共有します。
また、各部門にとっての最適が全体にとっての最適とは限らないため、プロジェクトの過程では部門間に衝突が起きることが少なくありません。設計上の課題をいち早く拾い上げ、プロジェクト全体を俯瞰する観点から判断を下し、進むべき方向性を示すこともPMの重要な役割です。
プロジェクトの進捗状況には常に目を光らせています。スケジュールやコストなどの理由で大方針を変更せざるを得ないようなケースでは、ただちに関係者を召集して会議を開催し軌道修正を行います。
最初にレールを敷くだけでなく、レールに不具合があったときに修理してそのまま進み続けるのか、それとも新しく敷き直して別の方向へ進むのかを決めるのもPMの仕事。そこにプロジェクトマネジメントの醍醐味があると感じています。
計装エンジニアからPMへ。困難なプロジェクトに参加したことが転機に
学生時代は電気工学を専攻して強電を学び、大学院では超電導限流器の研究をしていました。高電圧を制御する機器はどちらかというと計装設計のカテゴリーに入ることから、入社時は計装設計を担う部署に配属されています。
PMになりたいと思うようになったのは、4年目に海外顧客の日本進出案件でリード計装エンジニアを担当したことがきっかけでした。私は計装設計を担当し、電気チームと共に客先から評価を頂きましたが、プロジェクト全体が本当の意味で成功したとは言えず、全体としてのお客様の満足度が高くはなかったのです。
それまでは自分の所掌範囲の業務を遂行することに全身全霊を注いでいましたが、プロジェクト全体がうまくいかなければ次につながらないと悟り、プロジェクト全体を統括する立場になりたいと思うように。6年目に自ら希望して海外進出プロジェクト部に異動しました。
異動後、最初にPMを担当したのが、香料の製造販売を手がける国内企業の海外進出案件です。ただ、当時の私はまだ31歳で、この業界においては若手の位置付けです。
「こんな若手をよこしてきたのか」と思われないよう、徹底してお客様の目線に立ち、TOYOのネットワークを駆使しながら新しい技術を積極的に紹介するなど、お客様の想像を超える提案を心がけました。結果的にお客様にはとても喜んでいただき、PMの仕事のおもしろさを知ることができた案件です。
2012年にインフラ事業本部に移って大規模なプロジェクトに関わるようになり、2014年に初めてFPSO案件に携わりました。任されたのはいわゆる火消し役。問題があるところに飛びついて、原因を解析し必要なメンバーを巻き込み、それらを解決することが私に課された役割でした。
火消し役というだけあって問題が起きなければ仕事はないのですが、その気になって探せば問題はいくらでも見つかるもの。小さなことにも積極的に干渉して次々に解決していくうちに顔を覚えていただき、人脈が広がっていきました。
その後、FPSO案件からいったん離れて太陽光発電、バイオマス発電等の国内案件に従事しますが、2019年からふたたびFPSO案件の担当に。以前の実績が買われ、エンジニアリングマネージャーとしてエンジニアリング全般を統括しました。
そして2022年、OFSの発足と同時に異動して現在に至っています。
プロジェクト全体を俯瞰し、意思決定権を持って顧客と向き合えることがPMの醍醐味
プロジェクトを進めていく上で何より重要なのが、人と人との関わりです。お客様だけでなく、同僚や先輩後輩、協力会社さんを含むすべての関係性がものを言います。ひとりたりとも軽んじることはできません。それぞれの強みを活かし、弱点をカバーし合う。それがプロジェクトを成功させる秘訣だと思っています。
良好な人間関係を構築するために、私はとくに対面して相手の顔色を見ながら話すことを大切にしてきました。海外の人とコミュニケーションを取る機会も多いので、異文化を理解し、相手を否定しないことも心がけています。
正直であること、決してごまかすことなく責任を取ることも重要です。仮に仕事を依頼した相手が失敗したとしても、その人を採用したのが自分である以上、最終的には私が責任を取るべきだと考えています。
また、プロジェクトに失敗はつきものですが、どんな転び方をするかが大事です。ごまかしながら進めて失敗するのと、懸命に努力して失敗するのとではその後のリカバリーも含めて大きく違います。そのことを常に意識していることが、責任感を養うことにつながっているのかもしれません。
一方、これまでさまざまなプロジェクトに関わってきましたが、案件規模によって意識が変わると感じています。最初に担当したプロジェクトでは目の前にいるお客様のお役に立てることがモチベーションにつながっていましたが、FPSOのような大きな案件になると、実際に対面する相手はいても、依頼主であるお客様の姿は見えません。
そこで今は、たとえばブラジルの案件であれば、「プロジェクトが成功すればブラジル国民全体がハッピーになる」という具合に、別の視点でプロジェクトの意義を見出すようにしています。
規模に関係なくプロジェクトにはそれぞれおもしろさがありますが、大規模プロジェクトの魅力は、さまざまな国の方と関われることです。日本人同士で意見が対立すると感情が先立ってしまいがちですが、海外の方が相手なら、文化の違いから考え方が違って当たり前。おかしなことを言われたとしても、「この人はこういう人だから接し方を変えよう」と、プロとして戦略的に対応することができます。そういった点に大規模プロジェクトならではの醍醐味を感じています。
いずれにしても、PMとしてプロジェクトに関わる魅力は、設計から調達、工事に至るすべての工程に関わり、お客様にコミットできること。プロジェクト全体を見渡しながら意思決定し、責任者としてお客様に直接提案できるところにやりがいを感じています。
TOYOのPMとしてこれからも、信頼される存在であり続けるために
プロジェクトは例え同じ商品であっても運用の内容は毎回大きく違うので、案件ごとに違った刺激があります。規模にかかわらず、プロジェクトに貢献できることに喜びを感じているので、今後も引き続きPMとしてキャリアを重ねていくつもりです。
私が今まで経験したプロジェクトは、合成ゴム、太陽光パネルの仕上げに吹き付けるための特殊ガス、食品香料、太陽光発電、バイオマス発電、そしてFPSO。プロジェクトの商品が多岐にわたることがTOYOでPMとして働く最大の魅力。案件ごとにさまざまな業界の人とつながれて、いつも新しいことを学ぶことができています。
若手のうちから責任ある仕事をまかせてもらえること、海外の人間が周囲に当たり前にいて、グローバルな環境で働けるのも、TOYOならではだと思います。
PMとしてめざすのは、客先、弊社、協力会社を問わずプロジェクトを共に経験した方から、「清水とまた一緒に仕事がしたい」と思ってもらえるような存在になること。プロジェクトでは、TOYO社員、協力会社さんを問わず、メンバーに無茶をお願いすることも少なくありません。それでも、プロジェクト後にまた声をかけたときに、「任せてください。もちろんやりますよ」と言ってもらえるように、仕事にもメンバーにも誠実でありたいと考えています。
また、PMと聞くと、「プロジェクトを仕切る偉い人」とみなされがちですが、私はそうは思いません。実際にプロジェクトを動かしているのは、現場で手を動かしてくれているメンバーたちです。現場のメンバーがきちんと仕事を進められるようにしっかり道を作ること、現場の声を聞きそこに何ができるか、何をすべきかを考えるのがPMの本来あるべき姿、というのが私の持論です。
たとえば、指示がないために前に進めないことがないよう、メンバーがその日の作業で動き出すタイミングに先んじてメール等での指示は終わらせておくことを心がけています。そうした日々の小さな行動の積み重ねが、行く行くはプロジェクトの成功を左右すると思っています。
※ 記載内容は2023年10月時点のものです

