技術の種の探索から実装まで担う。「g-Methanol™」で描く持続可能な社会
──まずは「次世代技術開拓部」のミッションについて教えてください。
花光:当部署は2019年に創設された比較的新しい組織です。「TOYOの主要事業に加えるべき商品分野の技術を絶えず開拓すること」をミッションに掲げています。
具体的には、新しい技術の種を探索するところから始まり、それを商品として成立させるべく技術開発を行っています。さらに商品化された技術を社会実装に向けてプロモーションし、市場に認知してもらうところまでも担っています。単に技術を生み出すだけでなく、実際に世の中で使われる状態にまで導くことが私たちの役割です。
左:化学品の原料や燃料などに使われる化学物質メタノールは、これまで天然ガスや石炭などの化石燃料から製造されるのが一般的でした。それに対して、バイオマス由来など環境に配慮した方法で作られるメタノールを「グリーンメタノール」と呼びます。
その中の1つが、再生可能エネルギーで作った水素と工場や発電所などから回収したCO₂を使って合成する「e-メタノール」です。再エネ由来の電気(electricity)から生まれることに由来しています。
花光:TOYOは40年ほど前から独自のメタノール合成技術を保有していました。それを近年の脱炭素を目指す社会のニーズに対応するため、e-メタノールの製造方法として新たに開発したのが「g-Methanol™」です。「g」は「グリーン」を意味します。CO₂を再利用する「カーボンリサイクル」技術として注目されており、製造から消費までのプロセス全体でCO₂排出量を大幅に減らすことができます。
左:メタノールは非常に汎用性の高い化学物質です。プラスチックや接着剤、塗料、衣料繊維といった身近な製品の原料になるだけでなく、近年では次世代の船舶燃料や自動車燃料としても注目されています。
これらを化石燃料由来ではなく、g-Methanol™で製造したe-メタノールに置き換えることができれば、大気中のCO₂を増やさないカーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献できます。
TOYOの独自技術「MRF-Z™」リアクターを武器に、中国メタノール市場に挑む
──「g-Methanol™」事業におけるTOYOの優位性はどこにありますか?
左:原料を合成してメタノールを製造する際に使用する「MRF-Z™」という反応器はTOYOの独自技術です。メタノールの製造プロセス自体は技術的に手法が確立されていますが、各社の技術の独自性が最も顕著に表れるのが、反応器の部分と言えます。
MRF-Z™ リアクターは合成反応における触媒の使用量を最適化でき、より高効率に反応を進めることができます。これがコスト競争力やプラントの信頼性に直結しており、市場での優位性を確立する大きな武器となっています。
──左さんは現在、中国のメタノール市場の開拓を担当していますが、具体的な業務内容を教えてください。
左:中国は巨大なマーケットであり、TOYOとしてはg-Methanol™を武器に、約20年ぶりに本格的に市場参入を目指しています。現地パートナーと協力しながら潜在的なプロジェクトを探し出し、TOYOの技術を提案しています。
また、展示会や学会に積極的に参加し、TOYOのメタノール製造技術の認知度を上げる活動も地道に行っています。潜在的なお客さまに、まずはTOYOの技術を知ってもらい、検討のテーブルに乗せることが、市場開拓における最初の一歩だからです。
営業活動にとどまらず、技術面での重要なミッションも担っています。これまでは日本メーカーの製品を採用してきましたが、コスト競争力を高めるために中国から調達できないか、社内の技術部門の専門家とも連携し、現地メーカーの工場視察や技術評価など詳細な確認作業を行っています。それを踏まえ、品質とコストのバランスを見極め社内に説明し、商品としての競争力を高めていくことが私の役割です。
──花光さんは次世代技術開拓部の部長として、どのようにチームをマネジメントしていますか?
花光:現在、約13名のメンバーで、10以上の新規事業開発プログラムが同時に進行しています。メンバーはそれぞれ異なる部署での経験を持っており、得意分野も多様です。
私の役割は、個々の強みを活かせるアサイメントを行い、開発が滞らないようサポートすることです。予算の確保や他部署との調整、顧客とのコミュニケーション支援など、メンバーが120%の力を発揮できる環境を整えることに注力しています。また、お互いの業務内容を共有し、誰もが意見を発しやすい、心理的安全性のあるチーム作りを心がけています。
キャリアを経て得た価値観。正解なき領域で「全体最適」の視点から提案する
──TOYOに入社した経緯を教えてください。
花光:大学で化学工学を専攻中、TOYOの社員からエンジニアリング会社の仕事について講義を受ける機会がありました。世界を舞台にした巨大なプロジェクトの話を聞き、自分の専門分野を通して、グローバルに技術を社会実装していくことに貢献できるんだと魅力を感じたのが、入社のきっかけです。
左:世代は異なりますが、私も花光さんと同じ大学で国際開発工学を専攻していました。国際開発工学の「技術で社会課題に向き合う」というテーマにTOYOの事業は非常にマッチしていると感じたこと、
また、私は中国出身で、日本や中国をはじめグローバルに活躍したいという想いが強かったことから、若手のうちから海外で経験を積めるチャンスが多いTOYOを選びました。
──これまでのキャリアの中で、仕事に対する価値観が変わった、学びになった経験はありますか?
花光:私は次世代技術開拓部に異動するまで、入社以来プロセスエンジニアリング部でプロセス設計に従事していました。そこでの仕事は、プロフェッショナルとしてお客さまが求めるものを高品質にきちんと納めることでした。
一方で現在は、お客さま自身も正解を持たない新しい領域に対して、ともに考え解決策を提案することが仕事となっています。新たなミッションに挑戦するためには、思い切った発想の切り替えが必要でした。
大切にしているのは「Win-Win」の視点です。私たちの「売りたい」という想いだけでなく、お客さまがそれを買う理由、つまりお客さまにとってのWinは何なのかを、日々の生活での出来事もヒントに、徹底的に考えるようにしています。
左:私の学びになった経験は、2022年に担当した、チリでの事業性調査の案件です。具体的にはグリーンアンモニア(再エネ由来の水素と窒素を合成して製造するもので、燃焼時にCO₂を排出しない次世代燃料として期待されている) 事業が技術的・経済的に成り立つか、採算が取れるかの調査でした。政府の補助金獲得のための申請資料の作成や、現地企業との複雑な技術調整などで非常に苦労しました。現地まで足を運び、粘り強く調査を重ねたものの、最終的には採算性の観点から事業化には至りませんでした。
それまではプロセスエンジニアリング部やマーケティング部で、技術的にどうすれば実現できるかを徹底的に考えてきました。しかし、この時の経験を通して、技術的に可能であっても、コストや制度設計の壁を越えられなければ事業にはならないのだと痛感しました。技術単体ではなく、市場性、コスト、環境性、サプライチェーンを含めた「全体最適」の視点でビジネスを考える。これは現在の中国のメタノール市場開拓においても強く意識しています。
──左さんは産休・育休を経て復職したということですが、現在の働き方はどうですか?
左:2024年から1年間、産休・育休を取得し、2025年6月に復職しました。時短勤務制度やリモートワークなどの制度が整っているため、スムーズに業務に戻れましたし、花光さんをはじめチームの手厚いサポートもあり、安心して働くことができています。
花光:復職後も技術フォーラムでの発表のために中国に出張するなど、持ち前のバイタリティで活躍してくれています。入社当時のプロセスエンジニアリング部時代を知っているだけに、その成長ぶりには目を見張るものがあります。
地球環境全体に貢献するやりがい。変革期の追い風を力に変えて世界で活躍する
──あらためて、この仕事のやりがいを聞かせてください。
花光:新たな製品やサービスの開発を通して、未来を自らの手で切り拓いている実感が得られることです。難しいのは、将来が不確定な中で、技術の価値について会社やお客さまをどう説得し投資してもらうか。予測データだけでなく、情熱やロジックを組み合わせて推進していくバランス感覚が求められます。
左:g-Methanol™の普及は、世界中で排出されるCO₂の削減に直結します。会社への貢献はもとより、日本、中国、ひいては地球規模での課題解決に貢献できることに大きなやりがいを感じます。新しい技術で市場を開拓することは簡単ではありませんが、だからこそ挑戦する価値があると信じています。
──次世代技術開拓部で活躍する上で、どのようなマインドやスキルが求められますか?
花光:新しいものを生み出すには、過去の知識を学ぶことが大切です。一方で、それにとらわれすぎず、過去のバイアスを外してゼロベースで考える思考を持つことも大切です。この相反する思考をうまく使い分けることが、イノベーションには不可欠です。
また、グローバル展開や新規事業においては、異なる背景を持つ人々と協働するため、相手へのリスペクトを持ち多様性を受け入れる姿勢も重要です。
左:私は「常に新しいことを学び続ける姿勢」を挙げたいです。入社後も、部署ごとの業務の流れや、組織として動くための社内ルールは現場で一つひとつ身につけていかなければなりません。
また、やはり英語力は大事です。TOYOのプロジェクトの大半は海外案件で、業務で使用する資料や図面は基本的に英語です。社内でのコミュニケーションは主に日本語ですが、外国人社員とは英語を使います。 私自身、大学時代に多国籍なクラスメイトと過ごした経験が、今に活きていると感じます。
──最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。
左:TOYOは若手のうちから海外で活躍するチャンスが多い会社です。私も入社後の早い段階から、世界各地の現場を経験することができました。ぜひ一緒に、TOYOの技術を通して世界に貢献するというビジョンを実現させましょう。
花光:TOYOは今、従来のビジネスモデルから新しい業態へ進化しようとする変革期にあります。だからこそ新規事業への注目度は高く、追い風が吹いています。「こんなことに挑戦したい」という強い想いを持つ方であれば、若手でも活躍できます。ぜひその熱意をTOYOで活かしてほしいと思います。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです

