EPCの「中枢」を担う電気設計──広大なフィールドを束ねる調整の重み
私は現在、80名規模の組織から成る電計エンジニアリング部の電気システムチームに所属しています。プラント建設の心臓部ともいえる電気系統の設計を取りまとめていく中で、私たちのミッションは、案件ごとに異なるお客様の要求に応えるプラントをつくり上げること。そのために、配電計画から受変電設備、電気機器の選定や購入、そして詳細設計まで一貫したジョブを完結できるよう、技術的な検討を整理しながら業務を進めています。
エンジニアリング企業が担うEPCの全工程において、電気設計はあらゆる部署と密接に関わります。機器の配置を決める「配管チーム」や「機械チーム」、基礎や鉄骨・建屋などの構造物を担う「土建チーム」、そして、これらを調整してプロジェクト全体を統括するプロジェクトマネジメントなど、社内の多様なプロフェッショナルとの連携が不可欠です。
また、社外に目を向ければ私たちが建設するプラントに使われる機器を製作する電気機器メーカーの営業や技術者とコミュニケーションを取り、仕様の整合性を図りながら納品までを監理します。単に頭に図面を描いて指示するだけでなく、膨大なステークホルダーの間に入って何が最適解かを整理し、形にしていく調整業務こそが私たちの仕事の本質です。
設計後の検証作業も重要な業務の一つです。機器を現場に納める前のFAT(工場検査)や、現場に据え付けた後のSAT(試運転検査)にも立ち会います。万が一トラブルが発生すれば、原因を究明し、お客様への説明まで責任を持って対応します。機器選定から製作監理、お客様への納入後の説明まで、長い期間にわたってお客様と伴走していく。そして、プラントという巨大なシステムが、自身の引いた一本の線、選定した一台の機器から動き出すスケール感と責任の重さは、エンジニアにとって他に代えがたい誇りとなります。
私は現在とある国内案件に電気設計のリードアサインエンジニア(LAE)として従事していますが、私が仕事をする上で最も大切にしているのは、「曖昧さを排除し、直接対話すること」です。
当社でも会議はWebでの実施が主流となっていますが、チーム内での意思疎通では、直接会話をして、しっかりと認識を揃えることを重視しています。そのため重要な局面ほど、私は相手の席へ足を運びます。情報の伝達にわずかな齟齬があれば、それが巨大なプラントにおいては致命的な欠陥になりかねません。フリーアドレス制が導入されたTOYOの開放的なオフィス環境を活かし、その場で対話し、共通認識を構築する。この地道な積み重ねが、プロジェクトの品質を担保すると確信しています。
メーカーでの経験を糧に、作る側から統合する側へ移る決断
学生時代は理学部の物理学科に進学し、物性物理学の研究をしていました。当初は教職を志していましたが、大学院で極低温高圧化下での物性物理学を研究する中で、物を作ることへの興味や、より直接的に社会基盤に貢献したいという思いが強まりました。そして、2016年に電気ケーブルメーカーへ入社することを決めました。
前職では工事技術課という部署に所属し、電力会社から依頼を受けてケーブルの張り替え工事を行い、特別高圧ケーブルや接続箱の配置といった施工設計などを担当していました。マンホールや洞道といった地下の現場に潜り、ルートを設計し、最終的な試験まで見届ける。現場に根ざした設計者として、厳格な上司のもとで徹底的に基礎を叩き込まれました。この時期に培った、正しく伝えることやしっかり記録を残すという規律は、今の私を支える根幹となっています。
一方で、入社して3年を過ぎた頃、自らの専門性をより広いフィールドで試したいという思いが芽生えました。メーカーでの設計は、自社製品を最適な形で提供することが役割です。その仕事にやりがいを感じる一方で、それらを組み合わせ一つの巨大なシステムとして成立させる「プラントエンジニアリング」という世界があることを知り、そのダイナミズムに強く惹かれるようになりました。
とくに、前職で経験した大規模な設備トラブルの復旧作業は、私の転換点となりました。社会の大動脈を止めてはならないという極限状態での対応を通じて、インフラを支える重責を再確認すると同時に、より上流のプラント全体をデザインする立場への関心が決定的なものとなりました。
TOYOを選んだ理由は、豊富な実績を持ちながらも、若手やキャリア採用に対しても挑戦の機会が開かれていると感じたからです。面接では、電気設計の専門性だけでなく「電気は好きか」という、技術者としての本質的な姿勢を問われました。この会社なら、メーカーで培ったケーブル設計の知見をベースに、プラント全体の電気・計装システムという、より高次で総合的なエンジニアリングに挑戦できると確信し、2021年に転職を決意しました。
3年に及ぶ「壁」を乗り越えて──TOYOが誇るチームワークの真価
意気揚々と入社した私を待っていたのは、想像以上に奥深いプラントエンジニアリングの世界でした。ケーブルメーカーでの経験で電気設計の知識はある程度自信がありましたが、プラントという巨大な建造物を組み立てる知識やアプローチ、作法などが前職とは根本的に異なっていたのです。
入社後の約3年間、国内バイオマス発電案件に電気設計担当としてアサインされました。キャリア採用かつ経験者という周囲の期待もありましたが、実際の業務では、他部署からのインプットをどう反映させ、次にどうアウトプットしていけば良いのか、そのフローをつかむのに当初はとても苦戦しました。試行錯誤して作成したものも、上司の求めるレベルに届かずにやり直しを求められることもしばしば。そんな日々が続き、苦しい時期だったと振り返って思います。
しかし、その苦境を救ってくれたのは、TOYOに根付く支え合いの文化でした。当時のチームリーダーは、私が立ち止まっていることを察し、サポートメンバーをつけてくれました。さらに、年次の近い先輩や同僚と一緒に仕事をしていく中で、できることを一つずつ増やしていくことができたのです。
プラントの仕事は非常に幅広いからこそ、一人で全てをこなすことは不可能です。「できないことを認め、周りに頼る」。この当たり前でいて難しい教訓を、私はTOYOのチームメイトから学びました。一人孤軍奮闘するのではなく、多様な知見を持つメンバーが補完し合い、一つのゴールを目指す。それがTOYOのエンジニアリングの本質です。
こうしてプロジェクトが完遂を迎えた時、私はかつてない達成感を味わいました。図面で描いたものが実際に動いて運用されるところまで携われたこと。そして、電気設計だけでなく、さらに上流側の仕事の内容を見られたこと。電気設計者としてプラントエンジニアリングに関わる最大の魅力は、その貴重な経験にこそあると思います。自分の中にエンジニアとしての確固たる軸が形成されたように感じました。
この経験があったからこそ、現在はLAEとしてチームを牽引できているのだと思います。大変ではありますが、当初より心にも余裕ができて仕事を楽しめるようになりました。実際に物ができた時の工場検査や、現場が出来上がった様子を見ると、自分が設計したものが形になったという実感が湧きます。この達成感が、日々の大変な業務を乗り越える原動力になっています。
TOYOの電気エンジニアとして──プロフェッショナルを目指し、成長を止めない
TOYOの魅力は、卓越した技術力と年代にこだわらない風通しの良さだけではありません。技術者が一人の人間として、長く、豊かに働き続けられる制度とそれを支える文化が根付いている点にあります。
その象徴が、私の育児休業取得のエピソードです。私は2024年、子どもの誕生に合わせて3カ月間の育児休業を取得しました。当時はプロジェクトの重要な節目であり、リーダーのポジションで穴を開けることや復職への強い不安がありましたが、部長に相談した際に返ってきたのは「3カ月で良いのか?」、「せっかくある制度なんだから、たくさん使ってくれ」といった心強い言葉でした。
制度があるだけでなく、それを活用することを周囲が心から理解し、バックアップしてくれる。この安心感があるからこそ、復職後はより一層の情熱を持って業務に邁進できています。現在は週2回程度の在宅勤務も活用し、家庭と仕事のバランスを保ちながら、集中すべきところにしっかり集中できる働き方ができています。
これからの私の展望は、二つの軸があります。一つは、電気主任技術者試験といった資格の習得です。これまで電気を専門としていなかったので、資格取得を通じた継続的な学習で知識を深めていきたいです。もう一つは、英語です。まだ海外案件の経験はありませんが、今後は海外の拠点や関連会社との協働プロジェクトにも積極的に関わりたいと考えています。TOYOが持つグローバルなネットワークを活かし、世界中の現場で「電気のことは今井に聞けば解決する」と言われる存在を目指しています。
現在、当社で活躍している転職者を見ると、共通しているのは、新しいことに直面してもめげずに頑張りたいという姿勢があることです。皆さん本当に勉強熱心で、そういった姿勢が自らの成長にとって重要なのだと改めて思います。
エンジニアリングの世界は、複雑で、難解で、だからこそ最高に面白いのです。正直なところ、できないことに直面すると恥ずかしくて言えないこともありますし、周りに引け目を感じることもあるかもしれません。
それでも、分からないことを恥じずに一から学ぶ謙虚さを持ち、それをリカバリーする情熱で様々なものを柔軟に吸収していく。そんな方となら、私たちはどんな困難なプロジェクトも乗り越えていけると確信しています。
※ 記載内容は2026年2月時点のものです
