介護の“か”の字も知らない経済学生が介護の道へ
大学では経済学部経済学科に在籍していました。就職活動を迎えたとき、同じ学科の人たちは金融業界などの営業職を希望する人が多かったのですが、自分のやりたいことは違うなと思っていました。というのも目標として数字を追うのがあまり好きではなかったんです。
今思えば、当時の個人的なイメージだったと思いますが、営業職や販売職には利益を得るための目標があり、それを達成しなければならない、という先入観が強くありました。
しかし、私はそういった数字目標など気にせず、自分ができる精一杯のサービスを提供したいと思っていました。
初めは手探り状態でした。パソコンやゲームが趣味のため、システムエンジニアやゲーム業界を見たり、子どもが好きなため、保育関係を探したりしていました。また、大学時代にインターンで公務員の仕事に携わった経験から、公務員も考えました。とにかくさまざまな業界の説明会に参加しましたね。
就職活動をしていく中で、現在仕事をしている東急イーライフデザイン同様に、介護住宅を提供している会社に出会いました。その会社は説明会や面接が丁寧で、「人財」を大切にしているのが伝わってきたことから、入社を決意しました。
しかし、大学時代は介護の“か”の字も触れたことがありませんでした。内定をいただいてからホームヘルパー2級の資格を取得したくらいです。介護より、会社自体にほれたんです。
私は、もともと誰かのために行動してその人に喜んでもらうのが好きな性格です。それは普段から意識していることではあるのですが、「誰かのために」という意味では、東日本大震災後に石巻へボランティアに行った経験が印象に残っています。
震災の2カ月後に、ツアー会社に料金を支払う形式のボランティアに参加しました。その当時インターネットでは「ツアー会社にお金を払うのではなく、寄付した方がいいのでは?」という意見を見かけることがあったのですが、いざ現地に足を運んでみると現地では人手が足りていない状況でした。
そこでは津波で押し寄せたヘドロが側溝にたまり、排水ができなくなってしまっていたので、側溝のふたを開けてヘドロを掻き出しトラックに積むという活動をしました。
インターネットでの意見や人から聞いたことと、自分が現地で目撃したものはまったく違ったので、知りたいことがあれば自分で行動をして知るのが大事だなと感じましたし、やはりそこで現地の方々に感謝された、喜んでもらえたのが何より嬉しかったです。
信頼が得られない──若きリーダーになったからこその悩み
入社して3年間は、通常の介護職としてご入居者様の身の回りのお世話をしていました。
一般的な介護職の業務に加えて、当時の住宅ではいろいろと仕事を任せていただいていました。大変だったのはやっぱり夜勤ですね。最初は体が慣れず、仕事をしている最中から眠かったですし、家に帰ったら玄関で寝てしまったこともありました。徐々に慣れていき、体もついていくようになりました。
また、住宅ごとに感染委員会や防災委員会などのチームを設け、住宅のルールを決めて、足並みをそろえる活動をしていました。その中で私は感染委員会を務め、感染症を未然に防げるよう、取り組んでいました。今も感染委員会に所属しており、昨今の感染症対策に、過去の経験が生きていると実感しています。
責任ある仕事を任せてもらえた経験がある一方で、私が新卒の若い男性で、経験が浅いため、ご入居者様から厳しいご意見をいただくこともありました。
当時、とある高齢のご夫婦がご入居されており、奥様が寝たきりの状態でした。夜勤だとひとりで対応しないといけないのですが、ご主人に「あなたではダメだ」と言われてしまったことがありました……。
別のスタッフと一緒でないと関わることができない時期がございました。
2年が経ち、私に後輩ができたころ、「あんたも人に教えるようになったのか」と、ようやく一人前として見ていただき、ひとりでも担当させていただけるようになりました。しかし、しばらくして奥様がお亡くなりになり、ご主人様も転倒や入院が相次ぎ認知症が進行。私のこともほとんど認識されなくなってしまいました。そして、ほどなく危篤状態になってしまい、天国に旅立たれてしまいました。
私自身は後輩ができても、まだご主人様に本当に認められているとは思えていなかったんです。だから、もっと自分が努力していたら、知識や経験があったら、もっと早く信頼していただけたのだろうか、関係性を変えることができたのだろうか……と今でも心残りになっています。
その後、新卒4年目にして配属住宅のサービスリーダーに昇進しました。誰から見ても、若いリーダー。私より年齢を重ねた方がいる中でホーム長に指名してもらい、戸惑いながらも1年間、サービスリーダーを務めました。
一緒に働いているスタッフは、私のことをよく理解してくれていました。しかし、ご入居者様のご家族からは「リーダーがこんなに若いの?」という視線を感じることが少なくなかったんです。
そのままリーダーを続けて、乗り越えることもできたかもしれません。しかし私は、もう一度普通の介護職に戻り、他の会社も見て視野を広く持ちたい、知識や経験を積んで自他共に認められるようになってから、リーダーになりたいという想いが芽生え、転職を決意しました。
個性あふれる東急イーライフデザインで、自分なりの仕事をする
転職するにあたって、新しくできた住宅に携わりたいと思っていました。というのも、福祉サービスでは老人ホームの他にも、デイサービスや訪問型などいろいろな仕事ができますが、新規立ち上げはなかなかできる経験ではないからです。いろいろ調べていると、東急イーライフデザインが新規立ち上げ住宅のオープニングスタッフを募集しているという情報を見つけました。
求人に応募をしたところ、すぐに面接の日程が決まり、面接の後もすぐに採用の連絡をいただき、とんとん拍子で入社が決まりました。
前職では新卒採用に力を入れており、研修で介護技術を学ぶので、スタッフみんなが統一された介護技術を持っていました。そのため、基本的な部分はすごく充実していて、仕事しやすい環境でした。
一方、当時の東急イーライフデザインは中途採用が中心だったので、前職では知ることができなかった知識や技術を持っている、多種多様な経験がある方々ばかりでした。膨大な知識や技術が集まっているのが、東急イーライフデザインなのです。
しかし、この良さがマイナスになることもあります。それぞれが持っている経験や知識がバラバラなので、なかなか意見が統一できないんです。ひとつの住宅で意見がまとまったとしても、他の住宅には共有されづらいので、またそこで違いが生まれてしまうのが課題だと感じています。
それも裏を返せば、常に新しい意見が入ってくるので、日々学べる環境ですし、個性を生かしやすい環境でもあります。会社も住宅もまだ未完成なので、みんなが日々新しいことを吸収し、考え、進化をしているのです。
私自身は自分にできることを日々精一杯やって、もらった仕事は120%で返すという気持ちで働いています。ただ、自分の“個性”はあまり思いつきません。
周りから見えている自分はある程度想像できています。みんなが迷っているときに、最終的にまとめたり決断したりと、リーダーシップを取ることが多いんです。なので、私は個性がない分、みんなの意見を聞きながら全体の最適を考えて、前に進めるのが得意なのかもしれません。現場でフロアリーダーを任されているのですが、そういう部分が任せてもらえている理由なのかなと、自分では解釈しています。
今はまだ10%、自他共に認められるリーダーになるために
私は職場のスタッフや入居者様、友達や家族など、自分に関わる人すべてを笑顔にしたいと考えています。
しかし、私ひとりで何かを成したところでたかがしれているので、私の想いをメンバーに伝えて、メンバーと一緒に取り組んでいきたいと思います。
ちょうど今年の目標のひとつに環境整備があります。入居者様が心地良く感じ、ここで過ごしたいと思うには、スタッフもそう感じている必要があると思います。環境整備の取り組みは毎月少しずつ取り組んでいます。その際は“日常を疑う”ようにしています。私たちが便利で働きやすいと思っていた環境は、もしかしたらご入居者様にとっては過ごしやすい環境ではない可能性があるからです。
たとえば、トイレ。私たちが使いやすい位置にオムツやおしりふきが置いてあったとします。しかし、入居者様にとっては他の人のものですから、目に見える位置にあると嫌だなと思うかもしれません。一つひとつをきれいにすることを心がければ、心もきれいになっていったり、日頃の忙しさから解放され気持ちが明るくなったりすると思います。
これも自分ひとりで取り組むのではなく、メンバーから意見を出してもらい、ご入居者様の目線を大切にしながら進めています。
前職で年齢を理由に一般の介護職に戻りたいといったものの、2020年現在はフロアリーダーを務めています。2019年の12月に上司の異動が重なったこともあり、私に声がかかったのですが、最初は断りました。
もちろん、数あるスタッフの中から自分に声をかけていただき嬉しかったです。しかし、前職での苦い経験もあり、リーダーになるのは30代後半くらいがいいと思っていました。きっとそのころには、知識も経験も介護技術も。自分が思い描く通りに成熟し、みんなに認められた上でフロアリーダーを務められると思ったからです。
なので、まだ自分の思い描くフロアリーダーにはなれていません。経験は積み重ねているものの、まだまだ実力が足りていないと思うんです。思い描いていたリーダーを100%とすると、今はまだ10%くらいですね。それでも務められているのは、周りのフォローのおかげだと日々思っています。
5年後、35歳になるころには、思い描いていたリーダー像になっていたいと考えています。フロアリーダーの上を目指す前に、まずは自他共に認められるリーダーになりたいんです。
だからまだ10年後の未来は考えられていないというのが本音です。今後働いていく中で、ケアマネージャーや相談員になる選択肢もあると思っています。まずは理想のフロアリーダーになってから、さらに上を目指すのか、他の道を選ぶのかを考えたいですね。
最後に、介護の仕事をしていると周りに話した際に「すごいね」とか「大変だね」とよく言われます。しかし、いつか自分も誰かのお世話になるだろうと思っているので大変な仕事ではなく、必要な仕事だと感じています。そうした仕事を必要としてくれている人に対して、自分が少しでも助けになれればいいなと思っています。
