広大な製鉄所内に張り巡らされた線路。24時間365日、重量物を運ぶ線路を守る
建設事業部鹿島建設センター土木グループに所属する黒岩。現在は日本製鉄の東日本製鉄所鹿島地区で、おもに線路の整備工事を担当しています。製鉄所の敷地面積は約1,000万㎡。その広大なプラント内は線路が張り巡らされ、工場から工場へ資材が運ばれます。
「この総延長約43kmの資材運搬用線路を管理しています。山手線の総延長が約35kmなので、それよりも長い線路です。歩くとかなり大変で、その長い線路を日々管理するのが私たちの仕事。この線路は鉄の原料や溶鋼など、重量のあるものを運びます。たとえば鉄を溶かした超高温の溶鋼を運ぶトーピードカーは、フルに詰まっている場合、500〜600トンほどの重量になることも。
重量物を運ぶのでレールは摩耗しやすく、どうしても交換が必要となります。そのため、枕木とレールを含めて、緊急性の高いところから順番に交換していきます。このような保線工事に加えて、線路に付随する基礎工事や、線路の安全柵設置なども行っています」
チームは全員で4名。線路には常時5班の協力会社とともに、毎日18名ほどで作業をしています。協力会社が動きやすいよう、こまめなコミュニケーションを取ることを心がけていると黒岩は語ります。
「前もって現場を確認し、やり方や手順を定めています。きちんと調整を重ねた上で作業するので、当日、私たちは確認作業が中心になります」
最近は2つの新しい業務にも着手しています。ひとつが枕木の刷新に向けた性能検証。もうひとつは、カメラを利用した線路点検の導入です。
「現在製鉄所構内で使用しているコンクリート製の枕木は、新規の製造を行っていないため、今後使用を取りやめることが決定しています。そこで合成樹脂製の枕木を検証中。超高温の溶鋼を運んだりするので、熱に耐えられるかなどを確認しているところです。
また、線路内のカメラ点検についても導入に向けて検討中です。保全のためには、レールの摩耗具合や歪みなどを全面的にチェックする必要がありますが、人の手で43kmもある線路を点検するとなるととても時間がかかります。カメラでスムーズに全貌を把握できるよう、ぜひ導入したいと思っています」
工場は休みなく稼働するため、24時間365日走行。一般的な電車と違って始発・終電がないので、保全活動の時間をとるのにも一苦労です。
「運転側と調整し、『ここの線路を補修するから止めてほしい』などと働きかけます。年間を通してスケジュールを計画調整していく難しさがありますね」
大規模プロジェクトに従事。大勢をとりまとめ、チームで成し遂げる達成感を味わう
高校時代から、建設業に漠然とした憧れを抱いていたという黒岩。設計も施工も両方やりたいという思いで、企業を探しました。そこで2012年、出会ったのが日鉄テックスエンジの前身となる会社でした。
「実際に入社してみて感じたのは、イメージ通り幅広い仕事に関わるということ。最初は兵庫県にある、瀬戸内製鉄所広畑地区に配属され、ダストリサイクル乾燥機の基礎工事や道路の舗装工事に従事しました」
それから鹿島共同火力発電所のボイラ基礎工事をきっかけに、鹿島地区へ。ここでの工事の経験は大きな糧になったと黒岩は語ります。
「燃料転換対策でボイラ基礎の工事を行ったのですが、コンクリートを全体で1万5000㎥くらい打ったんです。コンクリートは、頑張って打っても1日最大で800〜1,400㎥が限界という中で、チームで割り振りながら着実に作業を進めていきました。協力会社の方々を含め1日に60人くらいが作業し、ピーク時の動員数は1日120~130人に。
一つの工区を任されたのですが、他の工区と連携を取りながら、作業工程を考えていったり、たくさんの関係者を動かしていったり。まだまだ経験が浅かった当時の私にとって、大勢をとりまとめるというのは、大変貴重な経験でした。チームで連携し、大規模な工事を成し遂げることができ、たくさんのことを学びましたね」
鹿島地区では、この他にも機械基礎・舗装や躯体補修工事、製鉄所内区画整理工事など、幅広い案件に従事し、黒岩はたくさんの気づきと学びの中で成長していきました。
チームの気持ちを鼓舞。一体感を醸成し、若手メンバーとも心をひとつに
多くの案件の中でも印象に残っている出来事の一つとして、黒岩は名古屋製鉄所の高炉の改修へ、応援に駆け付けたことを挙げます。
「2020年、名古屋製鉄所第3高炉の改修が行われました。高炉は製鉄所の心臓部とも言える重要な設備。私を含め、土木だけでも10人近いメンバーが応援に行ったと記憶しています。現場には当社だけでなく他の会社も10数社集まり、大規模なチームを構成することになりました。
当時とくに意識していたのは、強固な人間関係を築くこと。私は普段のチームでは後輩の面倒を見る機会がなかったのですが、その案件には大学を卒業したばかりの20代のメンバーが何人も参加していました。一丸となって大きなプロジェクトに立ち向かえるよう、それぞれの役割分担を明確にし、『いつまでにこれをやるぞ』と鼓舞しながら気持ちをひとつにしました」
プロジェクトの規模が大きい分、いかに協力できるかが重要となります。
「どんなに有能な人がいても、一人で最後まで完結することはできません。上の人も下の人も、みんなが協力する必要があります。私は1から10までみっちり教えるというよりは、背中を見せながら後輩のモチベーションを高めていくスタイルをここで身につけました」
ハードルの高い仕事に積極的にトライすることで、成長を実現してきた黒岩。しかし一方で、壁にぶつかることも当然あります。
「30歳のころの話ですが、工場のライン改造の仕事で、前に出過ぎて怒られたことがありました。普段から土木建築側のお客様とは密になって話すようにしているのですが、その案件は建設事業部だけでなく、機械や電気をはじめ、当社の全部署が関わる工事。お客様である工場のご意見はもちろんのこと、機械や電気などの他部署の意見を汲み取りきれずに、突っ走ってしまったんです。結果、『方向性が違う』と工場からご意見をもらうことに。
そこで、各方面の関係者とお話をして、丁重に説明しました。さらに『お客様である工場や他部署と話す時間が少なすぎるから、今後は定例会をやらせてください』ともお願いしました。これを機に毎週の定例会議が開かれるようになり、お客様と日鉄テックスエンジ全体含めて、一堂に会する場が設けられるように。おかげでより一体感をもってスクラムを組める環境が整いました。まさに、失敗が糧になった経験です」
難しい仕事を乗り越え工事が完了した瞬間は、心からやりがいを感じられます。
「一つのものが図面通りにできあがったとき、無事に完成したときには、報われる思いがします。現在の保全の仕事では、お客様や運転側との調整もあります。たとえばお客様は線路を100%健全にしておきたいと希望されますが、『この期間で整備できるのはこの区間まで』と事前に整理して提示します。
また、脱線をゼロにしたいというお客様からの要望もあり、日々の点検で劣化箇所を把握し、緊急性の高いところから一つひとつ補修していますが、重量物を運搬する線路のため、1年間は起こらなくても数年間続けてゼロにするのは難しい。このような状況を丁寧に説明し、数々の条件を詰めて、実現に近づけていく作業はやりがいがあります」
多種多様な経験をしたい、好奇心旺盛な人こそぜひチャレンジしてほしい
現在は工事責任者として、発言の重みが増したと黒岩は言います。発する言葉一つひとつが誤って解釈されないように、受け手の気持ちを考えながら、指示を出すようにしています。そんな黒岩が見据える、今後のビジョンとは。こう続けます。
「これまでさまざまなことに関われてきて、それぞれの業務の良さを味わってきたため、会社にはとても感謝しています。
その中でも私がとくにおもしろいと感じているのは、現在担当している線路の仕事。4年ほど従事してきましたが、まだまだ勉強中の身。鉄道部門の技術士の資格をとろうと今年から勉強をしているのですが、ほとんど歯が立たない。線路の知識の奥深さを知りましたね。
それに線路の仕事を20年間務めたマネジャーと比べると、知識や経験に大きな差があるのを痛感します。マネジャーとのギャップを埋めること、いずれは超えることを目標に頑張っていきたいです。いつかは線路のスペシャリストになりたいですね」
これからいっしょに働く人も、いろいろなことに挑戦していってほしいと黒岩は言います。
「当社の魅力は広大な製鉄所の中で、どんなことにもチャレンジできること。私が実際に多種多様な工事を経験してきたように、学生の皆さんも、入ってからいろんな経験ができるはず。ひとつ専門を作りたいというよりは、さまざまなことに挑戦したい、自分にフィットするものを見つけたい、なんにでも手を出したいという好奇心旺盛な方に来ていただければうれしいです。
高炉という、ものすごく背が高く巨大な設備をはじめとして、ダイナミックな仕事に直接関われるのでおもしろいと思いますよ」
働きやすい環境も当社の魅力だと、黒岩は熱を込めて語ります。
「最近は、建設業も働きやすさが重視されて、環境が変わってきています。とくに当社に関しては、そのイメージを率先的に変えていると感じます。たとえば人気のゲームの大会やサッカー大会、マラソン大会、ソフトボール大会など、社内イベントがたくさんあるんです。いろんな試みで、社員一人ひとりが働きやすい環境を追い求めていますよ。
また、製鉄所を拠点にする仕事なので、製鉄所がある都市に根ざして生活が安定するのも強み。結婚したり、子どもができたり、ライフステージが変わっても、ワークライフバランスを保ちやすいです。育休を取得する技術系の社員も増えてきましたし、実際、私自身にも2人の息子がいますが、生まれたばかりのころは職場の人々に助けてもらいました」
鉄づくりを支える生命線ともいえる、資材運搬用の線路。安心安全な運用を実現するために、黒岩はこれからも真摯な姿勢で、目の前の業務に向き合います。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです
