数字は嘘をつかない。だからこそ「フェア」であることにこだわり抜く
大川が所属するのは、ジョイントベンチャーへの投資のような複雑な案件や国をまたぐグローバル案件の営業サポートを専門とするStrategic Solutions Organizationです。その中で大川は、価格や契約条件の設計を行う「Commercial Architect」を担っています。
「形がないビジネスというものの、形を作っていく。とくにコマーシャルの観点、契約的な観点からビジネスを形作っていくのが、Commercial Architectの役割だと考えています」
扱うのは30億円以上の大型案件が中心。プロジェクトの初期段階から関わることもあれば、すでにある大型案件に入札のタイミングで参加することもあります。顧客の営業担当、技術を基軸にサービス内容を作るソリューションアーキテクトや、ファイナンス、法務部門、そして顧客側のIT部門やファイナンス、法務部門、両社の決裁権限をもつリーダー層まで、国内外の数多くの関係者と連携しながら、案件を前に進めていきます。
「大きな案件において、価格はたくさんの複雑な要素で積み上げられています。その数字を分解したり、なぜ価格が変動するのかを説明したり、将来的なリスクやテクノロジーの発展によって価格がどう変わるかの選択肢を示したりします。インフレーションや為替といった外的な要因も含めて、お客さまと価格を固めていくところに私の専門性があります」
数字を扱う上で、大川が大切にしている信条は「間違いをなくすこと」と「フェアな価格付け」です。
「価格は、お客さまと合意して作っていくものです。こちらが強引に作ることも、お客さまの要求に重きを置いて受け入れることもできるかもしれません。
でも、ビジネスとして継続できる価格でなければ会社に弊害がありますし、かといって過剰な価格ではお客さまは離れていってしまいます。だからこそ、きちんと説明がつき、お客さまと私たちがWin-Winの関係を築ける価格を、バランスを見ながら作っていくことをとても大事にしています。
お客さまが本当に求めているのは、安さだけではない場合も多いのです。品質なのか、瞬間的な予算の制限なのか──お客さまが抱える真の課題を汲み取り、最適な提案をすることがWin-Winにつながると考えています」
本場のヨガに魅了され起業。インド文化への探究心とこれまでの経験が導いた新天地
新卒で外資系の化粧品メーカーに入社し、ファイナンスのキャリアをスタートさせた大川。入社後まもなく、企業買収後のシステム統合プロジェクトで、管理会計のシステム統合にユーザー側として関わったことが、大きな転機となりました。
「売上が計上され、在庫が動くと、その情報が会計データに連携されてコストが配分され、各部門の会計に反映されるというお金の流れを、新卒2年目ですべて見ることができたんです。そこで管理会計のおもしろさに目覚めました」
その後、管理会計の専門性を深めるためにコンサルティング会社へ転職。アジアパシフィック地域全体の案件を担当するチームに所属し、約12年間、主に価格戦略の仕事に従事しました。シンガポールに駐在し、グローバル案件を扱う中で、国ごとに異なる文化やビジネス慣習に触れながら、多様な案件の契約を作り上げていった経験は、大川の仕事の礎となっています。
そんな大川の経歴でユニークなのが、ヨガスタジオの起業です。
「コンサル時代から、インドはITのハブとして注目されていました。『次世代のリーダーはインドを知らないとIT業界で生きていけない』と言われており、私も研修や出張で頻繁にインドを訪れていました。
その間の週末にヨガを始めたところ、他国で体験するヨガとはまったく違いました。頭の中が休まることの心地良さを初めて経験し、身体を大切にすることで人生がどれほど軽やかになるかを実感。忙しい仕事を支えるには本場のインドのヨガが日常に必要だと感じるようになりました。
そこで、コロナ禍で世界がスローダウンしたのを機に、一度会社を離れ、インドから先生を招いてヨガスタジオを設立しました」
法人設立、外国人入国への厳しい制限がある中での就労ビザの取得、事業計画の策定など、すべてを大川自身で手がけました。
「携わったことのあるジョイントベンチャー設立やM&Aの業務で学んだことを、実際に小さい規模で自分で試したいと思ったんです。国境を越えたビジネスを作るおもしろさをあらためて実感しましたね。
また同時に、インドのIT業界で働く多忙な人々は、キャリアを追求しながらヨガをどう取り入れているのか、インド文化自体への興味も深まっていきました」
そのタイミングで、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(以下、日本TCS)に転職した前職の先輩から声をかけられ、大川は入社を決意します。
「インドは国をあげて経済発展しており、熱気があって人もパワフル。そんなインドの中でも、日本TCSの親会社であるタタグループはブランド力がある大きい会社です。
そこで自身が培ってきた価格戦略の領域でビジネスに関わりながら、個人的にも興味のあるインド文化に触れられるという、またとない好機に恵まれたと思い入社を決めました」
「相手に逃げ道を」。インドの思想が息づく、長期的で友好的なビジネスの現場
日本TCSで最も達成感を覚えた仕事として、大川はグローバル企業のITベンダーを一本化するプロジェクトを挙げます。5年間にわたる大規模案件で、交渉はすべて英語。日本支社のCIOもインド出身という環境の中、これまでの経験を総動員して案件を成功に導きました。
そんな大川は、「古き良き豊かなインド文化とグローバルビジネスの世界最先端の交差点で、毎日学びと発見を楽しんでいます」と語ります。これを深く実感したのが、ある価格交渉の場面でした。
「これまで私がいた世界では、勝つか負けるか、どちらかが折れるか、という交渉が多かったんです。でも日本TCSで働く中ですてきだなと思ったのは、『われわれはタタグループとして、相手を傷つけず、配慮する』という文化が根づいていることです」
ある時、セールスの担当者からかけられた言葉が、今でも強く心に残っていると言います。
「『相手にも逃げ道を用意しないと苦しいから、そこまで詰めなくていい』と言われたんです。お客さまに逃げ道を残すことを常に意識する営業の姿勢に、本当に驚きました。
社長からも『目の前のことだけではなく、その先にある大きなものを見て考えないと、ビジネスが小さくなってしまう。友好的で大きなつながりを築いていこう』とアドバイスをいただくことがあり、とても新鮮で興味深いです」
この思想の背景には、インドの哲学があると大川は感じています。
「西洋では『人生は一度きりだから、思いっきりやろう』とよく言われますが、インドの神話では『生まれ変わり』が前提にあります。『失敗しても次の人生でうまくいけばいい』と。すべてにおいて、捉えるスパンが長いんです。
日本TCSで働いていると、5年や10年ではなく、何十年も続く良い関係を築き、結果的に大きなものを共に作ろうという、スケールの大きさを感じます」
短期的な利益ではなく、長期的な信頼関係を重んじる──インドならではのビジネスへの向き合い方が、日本TCSの強さを支えているのです。
世界最先端のビジネスデザインを日本で。アジアの熱気と共に価値を創造していく
Commercial Architectという仕事の最大の魅力は、自らが関わった仕事の価値を数字で実感できることだと大川は語ります。
「日本TCSが提供しているサービスは、世の中に大きなインパクトを与えるものだと信じています。それを数字に置き換え、お客さまに書面で合意していただく。契約が締結され、最終的な価格を見た時に、『私たちはこれだけすごい価値を世の中に出しているんだ』と認識できるんです。その金額に至るまでの過程を一番理解している立場なので、社会に貢献できていると強く感じます」
世界中に拠点を持つ日本TCSだからこそ、グローバルなビジネスに深く関われることも大きな魅力です。
「世界で今何が起こっていて、それがビジネスにどう直結し、ITでどう解決していくかという議論が常にされています。世界の一員であることを強く感じる瞬間がたくさんあり、それは日本TCSのグローバルネットワークのおかげだと考えています」
今後の目標は、世界で生まれる新しいビジネスの形に対応できる契約形態をデザインできるようになることです。
「クラウドやAIなど新しいテクノロジーが出てくると、昔の契約形態ではうまくいかないことがあります。人の稼働をベースにした契約から、自動化が進んだサービスに対応する契約へ。世界中の事例を参考に、日本TCSでも世界最先端の形で契約を作っていけるよう、常にインプットを続けていきたいです」
これからの日本TCSを共に創っていく仲間には、何を求めるのでしょうか。
「今まではグローバルといえば欧米という価値観が強かったかもしれませんが、今はインドを含め、アジアが凄まじい熱量で成長しています。この経済発展の熱気を『楽しい』と思える方、新しいことにワクワクする方には、今の日本TCSはすごくフィットするのではないでしょうか」
転職は、慣れない文化に戸惑うこともあるかもしれません。それでも、と大川は言葉を続けます。
「そこを『おもしろい』と思うことができれば、だんだんと居心地が良くなって、自分のホームになっていくはずです。インドの倫理観にもつながりますが、何事も長い目で見て目の前の事に真摯に向き合うことで、楽しいキャリアにつながっていくのではないかと思います」
ぶれない軸を持ち、長期的な視点で物事を捉える──インドの思想に源流を持つその価値観は、日本TCSのカルチャーそのものです。その中で大川は、新しい未来を形作っていきます。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです

