戦略から実装まで。顧客体験を起点に事業を横断するCEOデザインオフィス
──最初に所属部署の概要について教えてください。
私が所属するCEOデザインオフィスは、顧客体験を起点にブランド・事業・プロダクト・組織を横断的につなぎ、一貫した体験価値を設計・推進する組織です。
チームには、UI/UXデザイナー、UXリサーチャー、サービスデザイナー、アートディレクター、グラフィックデザイナーなどの専門職に加え、当社の事業領域に精通したメンバーも在籍しています。
──どのような領域のデザインを担っているのでしょうか?
デザインと聞くと、ビジュアル表現を想像される方が多いかもしれません。それも重要な領域ですが、私たちはサービス・事業・ブランドの戦略や構想を含む、広義のデザインも担っています。顧客体験とブランドを軸に、事業が成長し続ける仕組みを設計・実装することも私たちの役割です。
──MORIさんご自身は、どのような業務を担当されていますか?
主にサービスの顧客体験設計を担当しています。具体的には、ユーザーリサーチで利用文脈や本質的な要求を捉えたうえで顧客体験を描き、「誰の、どんな課題や機会に対し、どんな価値を提供するか」を明らかにしながら、ユーザーと事業の両面からサービスのコンセプトや要件などを具体化していきます。特にパートナー企業と協業してサービスをつくる機会が多く、ワークショップの設計やファシリテーションを通じて、共創や合意形成を担うことも多いです。
あわせて、デザイン組織の採用ブランディングやチームビルディングといった組織づくりも担当しています。
金融のイメージを覆す人の温かさ。主体性と支え合いの中で営業として成長
──三井住友カードに入社した経緯を教えてください。
就職活動では「日常を潤す新しい価値を生み出したい」という軸がありました。暮らしの中でふと嬉しくなる瞬間や、使い続けるほどに意味が増していくものに惹かれ、そうした価値を生活の中に自然と残せる仕事がしたいと思っていました。
当初は金融業界に関心がなかったのですが、会社説明会で考えが変わりました。
一つは、「まだ手つかずの市場だ」と感じたこと。当時のキャッシュレス比率がわずか15%程度と知り、決済が社会に深く入り込む余地の大きさに驚きました。
もう一つは、決済は「最も日常に近い金融」だと気づいたこと。金融は、日常の外側で大きな意思決定を支える印象でしたが、決済はその逆で、いかに自然に使われるかが問われる「生活のど真ん中」にあるビジネスだと感じました。
日常に深く入り込む「しくみ」をつくれること、そして未開拓の余地が大きいこと。この二つが自分の軸と重なり、入社を決めました。
──入社後は、どのようなキャリアを歩んでこられましたか?
最初の2年間は請求運用や顧客対応に携わり、「当たり前に見える体験」の裏で動く複雑な仕組みや、それを支える人の判断の重みを実感しました。
その後10年間は法人営業を担当し、パートナー企業への会員獲得施策の提案から、企業・自治体への決済導入、データ活用によるマーケティング支援など、多様なお客さまの事業課題に向き合ってきました。他社カード会社向けの業務・システム開発受託の営業も担当したことで、カードビジネス全体の事業構造やシステム・オペレーションを含めた全体像を捉える視点も広がりました。
──入社してから、会社に対する印象は変わりましたか?
金融は扱う商材からどこか冷たいイメージがあったのですが、実際には人が温かかった。これまで7部署経験しましたが、どこで誰と仕事をしても、部や立場の垣根を越えて自然と助け合う文化があり、何度も救われました。その温かさは取引先のお客さまにも感じる場面が多く、この会社の財産だと感じています。
また、若手の頃から「自分はどう考え、どうしたいのか」と問われる機会が多く、主体的に働ける環境でもあります。個人の主体性と支え合いが共存するところが、この会社らしさだと思います。
UXを経験して気づいた営業との共通点。「人が決断し、行動できる状態」を設計する
──これまでのキャリアで、とくに印象に残っていることはありますか?
営業時代に担当した、学校法人の公的研究費の精算体制を見直すプロジェクトです。全教職員への法人カード導入を機に、利用者・管理者双方の業務フロー全体を再設計する取り組みでした。
約1年かけて提案を進め、最終的に3社のコンペとなり、要求仕様は80項目にのぼりました。難しい要件も多く、関係部署を一つひとつ訪ねて検討を重ねた結果、要件だけでなく将来像まで見据えた提案にまとめ、実装までお客さまに伴走しました。
立場や専門性が異なる人たちが本気で関わることで、成果は想像以上に大きくなる。ただそれは、それぞれの納得と共感をつくれてこそだと初めて気づいた経験として、印象に残っています。
──営業で経験を積んだ後、公募でUXデザインの領域に異動したのはなぜだったのでしょうか?
営業では経済合理性で最終決定がなされる場面がどうしてもありました。それがとても悔しかった。もっと別の角度からも価値をつくれるように、まったく新しい領域に挑戦したいと思うようになりました。
IT戦略部の公募に手を挙げたところ、UI/UXデザインのチームに配属され、そこで初めてUXデザインと出会いました。当時のチームはキャリア採用の経験者のみで、私だけが未経験。これはまずいと思い、すぐに外部のデザインスクールに10カ月間通い、体系的に学びました。
偶然出会った領域なのに、知れば知るほど面白かった。人の認知や感情も含めた体験を起点に価値をつくる仕事があったのかと驚き、これがやりたかったことなんだと気づきました。こうした好奇心からの出会いや刺激こそが、仕事の挑戦から得られる報酬なのだと感じます。
──営業時代の経験が、現在の業務に活かされていると感じることはありますか?
事業を構造的に理解する視点と、お客さまや関係者の反応を予測する感覚です。営業の現場では、事業と人を背景まで含めて捉えなければ、相手は決断も行動もできない現実を何度も見てきました。
それはUXにも通じるものがあります。どちらも「人が決断し、動ける状態を設計する」仕事だからです。専門性やアウトプットは違っても、相手の立場に立ち、意思決定が生まれる条件を見極め、行動できる状態をつくるという点では、重なる部分があると感じています。
──UXデザインの領域で、印象深い経験はありますか?
パートナー企業と新しいサービスを立ち上げるプロジェクトが印象に残っています。両社での合意形成が難航する中で相談を受け、顧客起点で理想体験を描くワークショップを設計し、全員で取り組みました。
そこで得た内容をもとにターゲットを整理し、コンセプトを提案したところ、双方で目指す方向への合意が生まれ、そこから両社の議論も顧客起点へと変わっていくのを感じました。
顧客体験という共通の土台があれば、立場の異なる関係者も自然と同じ方向へ向かっていける。その可能性と手応えを実感した経験でした。
新しい価値をつくりたい。長く選ばれる体験価値をめざして
──仕事と向き合う中で、大切にしていることは何ですか?
仕事の成果として数字はもちろんですが、人や事業が長く続く状態や関係性まで大切にしたいと思っています。そのために、表に見えていることだけでなく「なぜ今こうなっているのか」を考えるようにしています。
同じ事実を前にしても、人や立場によって見えている景色は異なります。だからこそ相手の「ものさし」にも目を向けながら、正解を探すより、前に進める判断と行動を選ぶようにしています。
──現在の仕事で、やりがいを感じるのはどのようなときですか?
まだ整理されていない状況の中で、ユーザーのインサイトから本当に向き合うべき課題が見つかり、そこからサービスのコンセプトや要件が定まっていく。その変化の起点を担えることに、やりがいと責任を感じています。
現在はリリース前の案件が中心ですが、今後はお客さまの反応や数値での結果を出すところも含め、きちんとやり遂げたいです。
──今後は、どういうことに挑戦したいですか?
まだ世の中にない新しい金融・決済の体験価値を生み出し、人の認識や選択の中に価値として残り続けるものを設計していきたいです。
そのためには共創が欠かせないと感じています。顧客体験を専門性に閉じず、立場や専門性の異なる仲間とともに価値をつくり、育てていくプロセスまでデザインしていきたいです。
※記載内容は2026年1月時点のものです。
