分断した組織の連携強化に向け、アイデアソンを一体感醸成の糸口に
「製品・サービスによる社会課題解決を通じて持続的に企業価値を拡大する」ことをめざす住友重機械工業。その実現に向けて、ICT本部では「オモイをつなげるDX」をDXミッションに掲げ、変革を進める土台となるDX推進チームづくりに取り組んでいます。
その第一歩として、同本部は2023年10〜11月にかけて、アイデアソン研修を実施。その背後にある狙いについて、DX推進部 ものづくりプロセスグループのYは次のように話します。
Y:当社の企業変革の中核を担うICT本部は、40歳未満の社員の75%以上が社歴3年未満のフレッシュな組織です。その一方で、同本部が全国の事業所に分散していることから、「同じ組織に属しているという実感が薄い」「知らない同僚が多い」という課題がありました。
部門を構成するシステムエンジニアの中には、会話を苦手とするメンバーが少なくありません。そこで、2022年に研修事務局を立ち上げ、部門間のネットワーキングとコミュニケーションを促進しようと企画したのが今回のアイデアソン研修です。
企画を担当した研修事務局メンバーは、YのほかビジネスIT推進部のKとOら4人(後に5人)。それぞれ参加の経緯と当時の想いについてこう振り返ります。
Y:当時はコロナ禍の真っ只中。それまで定期的に実施されていた研修が中止され、メンバー同士が顔を合わせる機会が極端に減少していた時期でした。社歴が浅いメンバーが多いため、名前と顔が一致せず、出社しても「この人は誰?」と感じる場面も。人脈形成が進まないことにもどかしさがありました。
K:ICT本部内で新加入メンバーの自己紹介をする場を設けていますが、業務の関係構築につながらないこともあります。また、ICT本部ではチャットツールを運用していますが、面識のない相手に意見することがはばかれるためか、全社的な活用が進んでいないのが現状です。
こうした状況の中、各拠点からは、「ICT本部の動向が把握しづらい」「新システム導入時の他拠点の状況がわからず、誰に尋ねれば良いのかわからない」といった声が上がっていました。物理的に離れているメンバーが多い上、コロナ禍でコミュニケーションの希薄化が進む中、人材交流の促進が急務だと感じたことから、研修事務局に参画しました。
O:ICT本部は、本社で全社的な取り組みに関わるメンバーと、各拠点で活動するメンバーに大別されます。2021年にキャリア採用された後、私が配属されたのは千葉製造所。Kの話にもあったように、他拠点や全社の取り組みに関する情報がほとんど入ってこない状況でした。
私は事業所内の若手メンバーを先導する立場です。上記のような課題意識から2022年に実施された研修に参加し、取り組みの意義に共感して研修事務局メンバーに立候補することを決めました。
アイデアを共創する楽しさが育む新しいつながり。継続的な関係構築に向けて
研修事務局がめざしたのは、参加者が楽しみながら取り組める研修。議論を繰り返してたどり着いたのが、アイデアソンでした。
Y:ICT本部内の壁を取り除き、メンバー間の距離を縮めるには、まず社員が自発的に参加し、問題意識を共有できる内容にする必要があると考えていました。そのためには、楽しみながら取り組めるものでなければなりません。さまざまな意見が出される中、最終的に選ばれたのが、IT技術をテーマに成果を競い合うイベントでした。
しかし、ICT本部にはシステムエンジニア以外のメンバーもいます。そこで、ハッカソンのようにアプリケーションやサービスなど開発の腕比べをするのではなく、新たな商品企画やビジネスモデルのアイデアを競うかたちに落ちつきました。
K:アイデアソンであれば、技術的なバックグラウンドの有無に関係なく自由に意見交換ができます。研修後も継続する人脈形成につながるコミュニケーションが生まれやすいと感じていました。
「Have FUN!」をコンセプトに掲げ、全力で楽しむことに振り切ったことが今回の研修の大きな特徴です。研修事務局のメンバーとして、また参加者のひとりとしても楽しめる研修づくりを心がけました。
O:チーム形式としたのも大きなポイントです。参加者が共通の目標を共有し、達成感を味わうことで連帯感が醸成され、それが継続的な関係構築につながると考えていました。
こうして出来上がったのが、「アイデアを共創する楽しさ」をチームで体感するプログラム。2日間にわたって実施し、1日目は参加者間の相互理解を促進しチームビルディングをめざし、2日目はアイデアづくりと発信の楽しさを体感できる内容で構成していきました。
共創と共有の喜びが紡ぐ絆。アイデアソンで花開いたチームワーク
40歳未満の社員全員と社歴が浅い45歳未満の社員を対象に、オフラインで実施された今回のアイデアソン研修。会場は想像を超える熱気に包まれました。
Y:1日目は、アイスブレイク後に事前に宿題として出されていた業務と課題を共有し、共通点を探った上でグループディスカッションを実施。その後、個人単位でアイデアを提案し合うという内容です。
今回の研修では、参加者が「研修後も続く新しい人脈を2人つくる」ことを目標に掲げていました。多くの方が前向きな姿勢で参加してくださったおかげで、期待していた以上に議論が盛り上がりました。
K:私がとくに印象的だったのが、作業製番に関して多くの参加者が問題意識を共有していたことです。作業製番では、作業の進行状況や所要時間、必要な材料、担当者など多くの情報を正確に記録しなくてはなりません。生産プロセスや作業工程を効率的に管理・整理する上で重要なプロセスですが、自分を含む多くのメンバーがこれに手を焼いていることがわかりました。
始まる前は会話が弾まないのではないかと不安でしたが、終わってみれば予想を遥かに超える白熱ぶり。いつもの顔ぶれではなく、普段はなかなか会えない人同士が顔を合わせることでマインドリセットが実現し、「将来のために自由にアイデアを出す」という設定が心理的安全性の確保につながったことが理由だと考えています。
O:私も同じ意見です。会場があれだけ熱を帯びたのは、参加者一人ひとりが互いの課題を自分ごととして捉えることができた結果です。職場での悩みや業務上の問題をオープンにして、それを自分の言葉で表現し発信することで、他のメンバーとの共感が生まれ、非常に良い循環が生まれていました。
作業製番が良い例ですが、これまで意義を深く理解しないまま取り組んでいた業務を、個人的な視点で捉え直す良い機会にもなったと感じています。
2日目は、チーム単位でアイデアをかたちにし、発信・共有する楽しさを体感するフェーズ。各チームが寸劇形式で発表し、投票によって最優秀アイデアが選出されました。
Y:生成AIを活用した新サービスについて、ロールプレイングを通じて発表するという難易度の高いテーマでした。開始直後から各チームが団結して取り組む姿が目立ったのは、1日目の終わりに懇親会を開催して親睦が深められていたからかもしれません。
私たちのチームは、部下役のメンバーが、聞き分けのない上司役である私に向けて、自ら考案した生成AIサービスの魅力をアピールするシーンを演じました。著名なテレビCMのスタイルを模倣して笑いを誘い、視聴者の共感を引き出す戦略が成功。上々の反響でした。
K:寸劇の経験者はおそらくいないはずなので、混乱が起きることを懸念していましたが、その心配は不要でした。アイデアをストーリーに仕立ててわかりやすく伝えることに参加者が真剣に取り組み、またそれを楽しんでいた様子が強く印象に残っています。
私のチームの発表では、業務に追われてなかなか休暇を取れない社員のために、AIがタスクを選別し、適任者に自動的に割り当てるサービスを提案しました。Yのチームほど票を獲得できませんでしたが、メンバーの強い意思をかたちにできたことに、大きな手ごたえを得ています。
また、2日目に外部の講師を招いてAIに関する講義を実施したところ、思いがけず好評を得ました。AIに対する高い関心があることを知れたのも、今回の研修の収穫のひとつです。
O:慣れない作業でしたが、各メンバーが適切にタスク管理し、限られた時間内に成果を出すことができました。皆さんの日頃の業務での経験が存分に発揮されたと感じています。
寸劇では、マイペースで仕事に取り組む部下と衝突するパワハラ上司に私が扮し、適材適所の人材配置を判断するAIサービスの導入により、反省を促されるシーンを演じました。
チームワークの先に描く未来。イノベーションを起こし続けられる組織づくりに向けて
アイデアソン研修を通じて仲間意識が育まれ、メンバー同士が円滑にコミュニケーションを取れるようになったと口をそろえる3人。DX推進をめざすチームづくりに向けて、確かな成果を感じていると言います。
Y:研修後、参加者を対象に実施したアンケートでは、93%の方が「新しい人脈が2人以上できた」と回答しました。さらに、研修での出会いを通じて、その後の業務のスムーズな連携につながっているとの声も多く寄せられています。
現在、DX推進部の業務を兼務しているOと研修で一緒だったメンバーとのあいだでチームビルディングが滞りなく進んだ例もありました。人脈形成の目標はほぼ達成されたと考えています。
また、今回の研修には、一部の管理職メンバーがオブザーバーとして参加していました。業務上の課題がオープンに共有される場に彼ら、彼女らが居合わせたことで、組織全体の課題を発見するという副次的な効果も得られています。
K:私の周囲では、互いの事業所を見学する話も持ち上がっています。今回の研修を通じて、当社には相手の意見を否定せずに傾聴できる方が多い一方、自分の意見をきちんと主張できる方もたくさんいることがわかりました。まだ企画段階ですが、今後も積極的に対面でコミュニケーションする機会を増やしていく予定です。
O:「これからも交流を続けましょう」とただ呼びかけるだけでは、人脈形成を維持するのは難しいものです。研修を通じて課題の共有が進んだことで連帯感が生まれ、継続的な関係性の構築につながったと感じています。
また、お互いの考えや仕事に対する葛藤を理解できたことで、自分たちが良いメンバーに恵まれているとあらためて実感できたことも大きな成果でした。
共創の楽しさを通じてつながりを醸成し、DX推進を担うチームとして第一歩を踏み出したICT本部。多種多様な人材が共創を通じて絶えずイノベーションを起こす組織づくりに向けて、3人はそれぞれ次のように抱負を述べます。
O:研修を通じて生まれたアイデアを具体化しながら、2024年の研修企画にも力を入れていく予定です。また私は現在、DX推進部でYらと共に各事業部に対してソリューションを提供する業務も担当しています。今回の研修で築いた人脈を活かし、社内のDX推進に貢献していきたいです。
K:ICT本部内の研修については私もOと同じ考えです。一方、人脈形成や人材交流の課題を抱えているのはICT本部だけではありません。住友重機械工業全社に対して、今回の研修と同様のアプローチを展開していくことが重要だと考えています。
Y:現在、アイデアソン研修で浮き彫りとなった課題について分析し、解決に向けてどう基盤づくりしていくかを含め検討を進めています。
また、活発なコミュニケーションを維持していくことも、私たちにとって重要な課題です。事業部門やお客様との共創を通じたイノベーションの実現に向けて、Kの言う工場見学をはじめ、つながりを深める場を提供し続けていきたいと思っています。
※ 記載内容は2024年4月時点のものです
