スマホ1つで処方されたお薬が受け取れる。他業種との協業の実績が社内の夢を動かした
2024年11月に開局した「クオールどこでも薬局」は、医師によるオンライン診療と連動し、オンラインでの服薬指導からお薬の配送までをワンストップで提供するオンライン専門薬局です。患者さまはご自宅や職場など、好きな場所からスマートフォンやパソコンで薬剤師とつながり、服薬指導を受けることができます。
このサービスの一番の特徴は、その名の通り「どこでも」医療アクセスを可能にすること。薬局での対面のやり取りが不要なため、患者さまは全国どこでも好きな場所から、365日いつでもサービスを受けられます。開局から1年近く経った現在は、日々多くの患者さまにご利用いただいており、クオールの中でも大きな店舗の1つに成長している手応えを感じています。
このプロジェクトが具体的に始動したのは、2024年初頭。私が所属するヘルスケア推進本部は、株式会社ローソンをはじめとする他業種の企業と協業し、薬局の新しい価値を創造する部署です。協業パートナーとして長年関係を築いてきたローソンの経営に、通信大手であるKDDI株式会社が参画したことをきっかけに、これまで以上のKDDIとのつながりが生まれました。
そして、もともと社内に構想としてあった、オンライン服薬指導を強化するプロジェクトが一気に本格化したのです。私たちは、協業の要となる部署として、どのような人財を配置し、どこに拠点を設けるかなど、サービス開始に向けた実質的な運営を社内協議してきました。
「クオールどこでも薬局」が提供する最大の価値は、「医療格差」をなくせることだと考えています。病院や薬局が近くにない地域にお住まいの方、生活リズムやさまざまな事情で医療サービスを受けづらい方、対面でのコミュニケーションが苦手な方など、さまざまな方がいらっしゃいます。誰もが平等に医療サービスへアクセスできる環境、いわば「医療へのフリーアクセス」を実現することが、私たちの使命です。
こうした前例のない挑戦ができたのは、ローソンをはじめ他社との協業について試行錯誤を重ねてきた土台がクオールにあったからこそ。新しい挑戦を共に創り上げていけるパートナーの存在は、当社ならではの大きな強みだと実感しています。
正解のない現場で、デスク環境から自作。「新しい薬局」をめざして全社一丸で挑む
オンライン服薬指導という仕組み自体は以前から存在していましたが、コロナ禍を経て、その必要性は一気に高まりました。非対面サービスの需要が拡大する社会情勢の中で、「いつかはオンライン専門薬局を作らなければならない」という想いは、社内の誰もが抱いていたと思います。
オンラインサービスには通信インフラが不可欠です。先ほどお話ししたように、ローソンを介して、通信事業を手がけるKDDIと連携できる地盤が整ったことで、「クオールどこでも薬局」開局に向けて具体的な準備が始まりました。
しかし、プロジェクトの道のりは決して平坦ではありませんでした。最も大きな壁となったのは、前例のない「オンライン服薬指導に特化した環境構築」でした。
たとえば、服薬指導を行うデスク周り。何百人もの患者さまにオンラインで対応しないといけないため、通常の薬局の設備と同じというわけにはいきません。患者さまと対話するためのパソコン、薬を映すための手元カメラ、薬歴を確認するパソコンなど、1人の薬剤師が一度に複数台ものパソコンを操作します。
当然、既存のデスクではスペースが足りません。さらに、ヘッドセットなどの周辺機材も必要です。コールセンター事業の知見が豊富なKDDIにアドバイスをもらいながら、本社の薬局事業推進室のメンバーが必要な設備を一つひとつそろえ、投薬カウンターに設置。まさにDIYでオリジナルのデスクを自作しました。しかも前例のない取り組みですから、正解はありません。「こうすればもっと使いやすくなるんじゃないか」など、何度も試行錯誤しながら調整を重ねました。
オンライン診療を行う医師との連携も手探りの連続でした。疑義照会や情報共有など、先生とのやり取りもすべてオンラインで完結させなければなりません。「どのチャットツールが最適か?」など、効率的なコミュニケーションを行うためのシステム活用には労力を費やしました。とくに、オンライン服薬指導は基本的に予約制です。患者さまをお待たせしたり、不安にさせたりすることなく、決められた時間内に問題なく対応できるフローを構築することが大きな課題でした。
この未知の挑戦を乗り越えられた原動力は、何より会社一丸となって取り組めたことに尽きます。現場の薬剤師、私たちヘルスケア推進本部、そして本社のさまざまな部署のメンバーが、それぞれの立場で「新しい薬局の形を創るんだ」という誇りを持ち、積極的に意見を出し合いました。クオールには困難に共に立ち向かえる仲間がたくさんいる。その心強さを実感した瞬間でしたね。
患者さまに安心をもたらし、薬剤師の働き方も変える。現場で見えたオンラインの価値
「クオールどこでも薬局」開局後、患者さまから多くの喜びの声をいただきました。忙しいビジネスパーソンの方からは「移動中など仕事の合間にスマホだけで完結できるのは本当に助かる」という声をいただいています。
とくに印象的だったのは、心療内科に通院されている患者さまからの反響でした。「外出することが難しい時でも、自分の部屋から安心して服薬指導を受けられた」「自分の好きな時間に、優しい薬剤師さんと話せて本当に救われました」といった感謝の言葉が多く寄せられました。
対面では緊張してうまく話せない方でも、ご自宅などリラックスできる環境だからこそ、これまで以上に深い悩みを打ち明けることができる。医療を諦めていたかもしれない方々に、継続的なサポートを届けられる。これこそ、私たちがめざした医療の形です。このサービスは、医療を受けるためのハードルを、物理的にも心理的にも大きく下げることができたと実感しています。
さらに、変化は薬剤師の働き方にも表れました。オンライン服薬指導は予約制なので、対応する薬剤師も1日のスケジュールが立てやすくなります。いつ患者さまが来るかわからないという状況がなくなり、時間管理がしやすくなったという声が上がっています。
また、「患者さまが深い心の内を話してくださることで、薬剤師としてより本質的なサポートができる」というのも嬉しい反響の1つ。患者さまの背景を深く理解し、専門知識を最大限に活かせる環境は、薬剤師としての成長ややりがいを提供することにもつながっています。
将来的には、子育て中の方や、障がいがあって通勤が難しい方などが、在宅で専門性を発揮するといった可能性も広がります。「クオールどこでも薬局」は、薬剤師の新しい働き方を切り拓く挑戦でもあるのです。
未病ケアからオンラインで。「クオールどこでも薬局」から広がる次世代の医療アクセス
「クオールどこでも薬局」の挑戦は、ほかにも多くの貴重な学びをもたらしてくれました。その1つが、患者さまの体験、つまりUX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性です。たとえばアプリの操作が少しでもわかりにくいと、患者さまはすぐにサービスから離れてしまいます。誰でも直感的にアクセスでき、安心して相談できる。そんな「ずっと使ってもらえるサービス」を設計することがいかに大切かを実感しました。
同時に、オンラインだけで完結しない、既存の対面薬局との連携の必要性も感じています。たとえば「通常はオンライン、月に1度は対面で」といったご利用法が、患者さまにとってベストな医療提供につながるケースもあるはずです。さらに、画面越しのコミュニケーションだからこそ、より高い対話能力やICTスキルを磨いていく必要もあります。
現場で生まれた課題や学びを活かし、ヘルスケア推進本部では、新たな挑戦を始めています。2025年6月には、KDDIが提供し、ローソン店舗に設置された「次世代リモート接客プラットフォーム」という個室ブースを活用し「クオールどこでも薬局」をつなぐ取り組みをスタート。これにより、ご自宅にインターネット環境がない方でも、近所のローソンに行けばオンライン服薬指導が受けられます。医療過疎地域の課題解決にも貢献できると期待しています。
私個人としては、このオンラインという仕組みを使って、未病ケアや健康相談、OTC医薬品(一般用医薬品)販売といったセルフメディケーション領域にも挑戦していきたいと考えています。病気になってから薬をお渡しするだけでなく、病気になる前の段階から薬剤師が「生活のパートナー」として関わることで、人々の健康寿命を延ばしていく。住む場所や生活スタイルにとらわれない「医療へのフリーアクセス」をさらに一歩推し進めることこそ、私たちの使命だと確信しています。
クオールはこういった「挑戦できる環境」が整っている会社です。今回のプロジェクトでも、部署を超えてたくさんの人たちが協力してくれました。挑戦したいという想いがあれば、必ず誰かが味方になり、支えてくれる。そんな温かい土壌があります。
当社のスローガン「あなたの、いちばん近くにある安心」の実現のために、患者さまのために何ができるかを考え、仲間と共に新しい価値を創り上げていく。薬剤師、総合職、医療事務、販売職……職種を問わず、これからの医療・薬局業界の未来を担う皆さんには、そのやりがいを、ぜひクオールで感じてほしいと願っています。
※ 記載内容は2025年9月時点のものです
