内視鏡のリプロセス性評価やその改善業務を担当。製品の価値向上への貢献がやりがいに
──現在の仕事の内容について教えてください。
軟性内視鏡を中心に、リユース内視鏡のリプロセス(洗浄、消毒、滅菌)性の評価やより安全な内視鏡開発のための改善業務を担当しています。
内視鏡の多くは再利用されるリユース品です。リユース品は、取扱説明書に示された製品ごとのリプロセス手順に従って適切に洗浄、消毒、滅菌できることを、確認試験で示す必要があります。たとえば、洗浄効果の確認試験では洗浄をした後に残っている残留物が基準値以下になっているかを確認します。また、消毒効果の確認試験では、消毒をした後に残っている指標となる微生物数をカウントして確認します。
私の所属する部門では、こうした確認試験を実施する前段階で、リプロセス性に大きな課題がないかどうかを効率的に確認するための評価を実施しています。
その効率的に確認するための評価技術そのものの開発にも携わっています。仮に確認試験において基準を満たせなかった場合、なぜ基準を満たさなかったか検証し、可及的速やかに課題を明確化して対策を講じなくてはいけません。これらの課題を明らかにするために検出系の感度を高めたり、評価の日数を短縮したりする新しい評価技術の確立に取り組んでいます。
──リプロセス性評価の仕事の意義ややりがいをどんなところに感じていますか?
医療機器開発の一端を担えていることを誇りに思っています。安全確保に向けた活動を通じて、世界の人々の健康の維持に役立てていることは大きなやりがいです。
リプロセス性評価の立場から製品開発に参加し、他分野のエンジニアと協力して製品の価値向上に貢献できるのもこの仕事の魅力のひとつです。とくに、自分が開発した評価技術によって得た生物学的エビデンスから内視鏡の改善点が見つかり、設計に反映されたときには大きな達成感を感じます。
専門分野を超えた連携がイノベーションの原動力に
──入社前のキャリアと、転職に至った経緯について教えてください。
私は大学で、分子細胞生物学を専攻していました。アカデミアで研究を続けることも検討しましたが、学生時代に培った生物学の知識や経験を活かして社会に貢献したいと思うようになり、体外診断薬を開発する企業に就職しました。
入社後は血糖値などを計測する体外診断薬用の酵素の開発に携わり、技術営業を含む幅広い業務にやりがいを持って取り組んでいましたが、事業譲渡にともなう転籍のタイミングで、転職を考えるように。体外診断薬用酵素の研究開発は主に生物学的な分野のみで研究が成立するため少し物足りなさがあり、もっと異分野の人たちと関わりながら開発をしてみたいと感じるようになりました。
さまざまな技術を融合させながら、より良いものづくりができる環境を求めて就職活動する中で出会ったのがオリンパスです。
──入社後の仕事内容や、環境を変えたことで得られた学びについて教えてください。
入社後は、一貫して内視鏡のリプロセス性評価と評価技術の開発に従事してきました。思い描いていた通り、多様な専門分野のエンジニアと連携しながら業務を進めることができています。
他分野のエンジニアと開発を進める中で気づいたことは、工学系、物理系、生物系といった分野ごとに考え方が異なるということです。ときに価値観の違いで苦労することはあるものの、異なる分野の仲間たちとの交流から生まれる気づきが多く、とても刺激的です。実際に、今までにない思考プロセスや解析法に触れたことが「常識」を見直すきっかけとなり、新たな試験体系の構築につながったこともありました。
チームワークの力が切り開いた、新しい技術開発への道
──入社後、とくに印象に残っている出来事はありますか?
入社後まもなく参加した開発で、内視鏡のリプロセス性に関する課題に直面したときのことが、印象に残っています。開発過程で大きな課題が生じ、早急な対応が求められていました。
内視鏡開発の担当者たちと一緒に洗浄試験や消毒試験に連日臨んだ結果、解決策を見つけることができたのですが、無事に試験をパスできただけでなく、新しい技術開発にもつながり、非常に有意義な経験となりました。
前職ではひとり黙々と開発していた私にとって、チームメンバーと同じ課題を共有し、一丸となって解決に向けて取り組めたことはとても新鮮でした。転職したからこそ得られた経験だと感じましたね。
──年々強化されていく法規制について、どのように考えていますか?
高品質な医療機器を市場に提供するためには、医療機器に対する規制の強化は必然です。医療機器の安全を確保する上で重要な役割を担う立場にある者として、私たちは安全マージン(安全を確保する際の余裕やあそび)の最大化をめざして取り組む必要があると考えています。
一方で、患者さんのもとに製品を少しでも早く届けるためには、開発スピードを加速させることも重要です。今後はより効率的な評価技術の開発の実現に向けて注力していくつもりです。
エンジニアが開発に集中できる環境をつくり、安全で高品質な内視鏡を患者さんのもとへ
──今後の展望を聞かせてください。
リプロセスの専門家として製品開発に参加することで他分野のエンジニアの方々が洗浄性や消毒性を気にせず開発に集中できる、そんな状態をめざしてリプロセス性向上に貢献できる評価技術を開発することが私の目標です。内視鏡の技術にはまだまだ伸びしろがありますが、洗浄性や消毒性の課題がその妨げになってはならないと考えています。
技術が進化し内視鏡がより複雑な構造を持つようになっても、高い安全性を確保できるリプロセス方法を開発していきたいです。
──そうした展望の根底には、どのような想いがあるのでしょうか。
私は、みんながハッピーであることにやりがいを感じるんです。
オリンパスの社員は、全員が患者さんの健康の維持に貢献したいという強い想いを持っていて、その上でより良いものを生み出そうと努力しています。そう考えると、自身の仕事のミッションを分断して考えるのでなく、みんなで良いものを作っていこうと考えることが重要だと思うのです。
厳しいリプロセス性の評価基準に合わせ、凝り固まった開発しかできない環境をつくるよりも、評価技術を向上させることで、開発の後押しをしたい。それが開発者の幸福にもなり、その先で待つ患者さんやドクター、ひいては社会の幸福にもつながると考えています。
※取材内容は2024年1月時点のものです。

