AMEDのプロジェクトに参加し、AIを使って外科手術を支援するシステム開発を担当
──2023年2月現在の業務内容について教えてください。
外科手術の均質化・安全性の担保・手術室運営の効率化を実現するために、内視鏡外科手術を支援するためのシステム開発を行っています。 内視鏡外科手術を行う熟練の医師は、“暗黙知”と呼ばれる、経験に基づくコツやノウハウといった言語化できない知識を持っています。その知識をAI解析によってデータ化することで、外科手術のデジタルトランスフォーメーションを目指しています。
このプロジェクトの特徴は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の補助事業に採択された、大規模な開発体制のもとに推進しているテーマであること。国立がん研究センター東病院、大分大学医学部、福岡工業大学情報工学部、東京大学大学院工学系研究科との協業のもと、2019年から開発を進めています(医薬品医療機器等法未承認段階の技術開発となります) 。
──どんなところに仕事の魅力を感じていますか
医療機器にAIを活用するという、まったく新しい取り組みであることに魅力を感じています。これまでの製品開発と異なり、10年先の未来で活用されるような製品を生み出そうとしているため、前例もなければノウハウもないのが現状です。答えを見つけるというよりは、“答えをつくっていく”仕事。そこに難しさとやりがいがあります。
また、関係者が多いため、刺激を受ける機会も多いです。所属する会社はもちろん、分野が異なるだけでも、使用する言葉や考え方などがまったく違ってくるもの。医師や研究者など、さまざまなプロフェッショナルと議論をしながら、未来の医療のカタチをともにつくっています。
ものづくりがしたい、夢や誇りが持てる仕事がしたい──技術者として貫いてきた想い
──入社前、どんなことを学び、どんな仕事をしてきましたか?
工学、とくに動くものをつくることに関心がありました。大学では精密機械工学を専攻しましたが、実際に取り組んでいたのは、メカトロニクスと呼ばれる領域。マイクロコンピュータやLSIといった部品を搭載する高性能機器の開発を目指す学問分野で、中でも私は触覚ディスプレイと呼ばれるものを研究・制作していました。
大学卒業後は、おもしろそうなものづくりに関わりたくて、映像機器やデジタルマルチメディア機器の大手メーカーに就職。製品の自動組立システムを担当し、AIやロボットなどを使って工場の作業を自動化する仕組みづくりに携わりました。
──オリンパス入社の経緯と、入社後に携わった仕事について教えてください。
前の会社には6年ほど勤めましたが、ある程度全体像をつかんだころから、定年までずっと同じ仕事をするんだろうかという気持ちが湧いてきたんです。もっとおもしろいことがしたい、より社会にインパクトを与えられるような仕事がしたいと考えるようになったため、転職を決意しました。オリンパスの事業は社会的な影響力があること、将来的にますます需要の高まりが期待される医療機器を取り扱っていること、それまで自分が関わってきたAIやロボットの技術も手がけていることに惹かれ、入社を決めました。
2016年の入社後、最初に配属されたのは医療要素開発部。医療機器の要素技術開発を担当し、外科手術用エネルギーデバイスなど手術機器の開発に関わりました。その後、2019年にシステムイノベーションへ異動になり、現在に至るまで、外科手術のデジタルトランスフォーメーションに関わっています。担当するシステムのスケールが少しずつ大きくなり、入社4年目にはロボットの制御システムに携われるようになりました。
転職してきた当初から、夢や意義のある医療機器のシステムを自分で企画して、立ち上げて製品化するところまでやっていきたいと伝えていたため、その展望に沿ってステップを踏んできた形ですね。オリンパスでは条件次第で畑違いの仕事に就くこともできるため、仕事やキャリアの幅が広がりやすいです。一定の条件を満たせば希望部署への異動を志願できる社内公募制度“オリンパス・チャレンジ・システム”があるなど、大胆な挑戦を歓迎する自由度の高い環境だと感じています。
先端技術開発に取り組む上で欠かせない、コミュニケーションの大切さ
──現在の仕事の中では、具体的にどのような役割を担っていますか。
AIを活用し、安全で均質な手術に必要な情報を適切に提供するための、情報支援内視鏡外科手術システムを開発しています。
プロジェクトは、“情報支援内視鏡外科手術プラットフォーム”、“自律制御内視鏡システム”、“自動制御処置具システム”の3つの開発からなり、そのうち私は、各手術の進行状況や術野画像の状況に合わせて、AIなどを活用して内視鏡を自律的に制御し、外科医が手術を進めやすい視野を確保する“自律制御内視鏡システム”の開発を担当し、リーダーを務めています。ユニットに所属する5人をマネジメントするかたわら、事業化に向けて営業やマーケティングといったビジネス部門と意見を交わすことも、リーダーである私の仕事です。
──仕事をする上で大事にしていることは?
プロジェクトに関わるメンバーとのコミュニケーションです。社内はもちろん、社外のメンバーと密に連携を取りながら開発を進めています。
特に重要なのは、熟練医師の知識のデータ化の要となる医師とのコミュニケーションですね。これまで蓄積されてきた手術のノウハウを言語化していく作業となるのですが「感覚だからこそ、教えるのは難しい」とお話されるケースが多々あります。求める情報を適切に表現していただけているか、かつ私たちが適切に受け取れているのが、判断に悩むことも少なくありません。言葉をそのまま受け止めるのではなく、真意をできるだけ正確に汲み取るよう心がけています。
開発行為そのものにも、これまでなかったような壁があります。まだ世の中に存在していない、新しいコンセプトに基づくデバイスなので、ユーザーである医師の方々に、システムの価値をお伝えし、納得していただく必要があるんです。あらゆる点でスタンダードをつくっているからこそ、コミュニケーションが欠かせないと感じています。
ものづくりを通して、医療の現場に還元。より社会貢献度の高い仕事を目指して
──今後の目標を教えてください。
いままさにAIやDXといった技術革新が起きている中、医療機器の開発に携わる技術者として、医療の現場にどのような貢献ができるかを考えていきたいと思っています。そのためにもまずは、現在関わっている情報支援内視鏡外科手術システムの技術開発を完遂し、プロジェクトを成功へと導くことが目標です。
また、製品開発のプロジェクトの旗振り役となり、コンセプトづくりから製品化までをトータルで手がけてみたいと考えています。機械の分野だけでなく電気やソフトウェア、さらに営業やマーケティング、医療現場のニーズなど、広い視野を持って多角的に考えながら仕事の質をさらに高め、より良いものづくりができたらいいですね。
また、60歳を超えても働くことが当たり前の時代になってきました。年を重ねても精力的に取り組めるようなライフワークと呼べるようなものを見つけたいとも思っています。

