物流の品質を守ることが私たちの役目。監査での気づきが品質向上につながっていく。
磯野は、日産自動車のTCSX(トータルカスタマーサティスファクション本部)品質監査室で物流品質監査と役員のテクニカルアシスタントを兼務しています。
「物流品質監査とは、完成車が工場を出てから、販売会社(ディーラー) に届くまでの物流過程における品質を監査する業務です。物流監査グループで、私はアシスタントマネージャーを務めています。またTCSXの役員のテクニカルアシスタントも兼務しており、そこでは役員の現場訪問時のアジェンダ調整や事前の情報収集等のサポートを行っています」
現地で監査を行う必要があるため、全国だけでなく海外にも足を運んでいます。
「私たちの監査のスコープは広く、工場を出荷後の輸送時のトラック、船舶、貨車などの輸送手段における環境や車両の取り扱いをはじめ、一時的に車を保管しておく車両プール、港や車両専用貨車の駅などの中継拠点、車両の保管や納整作業を行う物流拠点も対象です。
それらの場所の路面の状態を含む作業場所の環境、車両の保管状態、オプション部品等の架装部品(アクセサリー)の取り付け作業など細部にわたってチェックを行います。各物流拠点で基準書に従ったオペレーションが行われているかどうかの確認や、品質に関わるリスクがないか、現場や品質管理に対する帳票類に抜け漏れや改善の余地がないかも見ていきます。
物流拠点の現場で働く作業者に対しては服装や装飾品に関する規定もあり、ブレスレットなど車両が傷つく恐れのあるものは着用が禁止されています。車の取り扱いや架装部品の取り扱い、保管時の車間距離やドアや窓の開閉状態なども基準があり、それらが遵守されているかを現場で確認しています。現地で監査を行うため、国内出張は多い月で月に2、3回程度、海外は年に2、3回ほど訪問しています」
監査基準は約100項目にも及びます。そんな中、磯野には心がけていることがあると言います。
「監査と聞くと、受ける側からすると正直あまり歓迎されません。私自身も受ける立場になったことがあるので、その気持ちはよくわかります。ですから一緒に改善策を話し合いながら、改善の余地があれば検討してもらい、明らかな基準違反の場合は即時対応を求めるなど、指摘事項に応じて対応するよう心がけています」
国や地域によって品質管理に対する意識や環境は大きく異なり、監査の重要性を実感すると言います。
「とくに海外では、自動車の運転方法も管理状態も、人々の習慣や感覚も違います。そのなかで基準書は国際的に統一されています。基準を遵守し、気象条件や環境などの条件で適用が難しい部分については、基準の要求事項と車両の品質を満たした上で、現地独自の追加の管理方法を規定するよう要請しています。
最初は、現地の現地監査員の方に、監査の細かい手法や基準を理解してもらうのに苦労しますが、現地に足を運び【日産自動車が目指す品質】、【お客さまが求めているクルマ】についての研修を実施していくと、理解し賛同して頂けます。定期的に現地に行き、研修を繰り返し実施していくことにより、文章や手順書だければ伝えきれない日産自動車の思いを共有でき、ワンチームで品質を支えることができていると感じます」
海外で培った強いメンタルと広い視野。監査という仕事の奥深さに惹かれて入社を決意。
学生時代は理学部で素粒子物理学と地球環境科学を学んでいた磯野。
「もともと地球物理に興味があり、身の回りの自然現象が物理学で説明できることや、身近な雪や氷も物理学的に研究できるところに興味を持ちました。地球物理学からの流れで、前職はインドネシアにあるエネルギー開発サービス会社に入社しました」
海外で社会人スタートを切った磯野は、そこで石油や天然ガス資源の探査に携わります。
「日本人がいないタフな現場でしたから、そこで強いメンタルを培うことができました。コミュニケーションは英語または現地の言葉のみの環境の中で、さまざまな考え方や視点が身につき、グローバルな経験を当たり前のようにできたのは今に活きていると感じています。その後は日本の製造開発部署に異動となり、フィールドサポートとOEM開発を担当しました」
そして2013年、磯野は同社の品質統括部に異動し、初めて品質管理の仕事に携わることになります。
「いろんな部署の方とやり取りをしながら、監査担当として内部監査の主導と外部の監査対応を行っていました。人とコミュニケーションを取ることは好きなため、社内のすべての部署、現場のオペレーターの方から各部署のマネージャーまでと、ぼぼ全ての人と関われる仕事がとても楽しくて自分に向いていると感じました」
品質管理の仕事に興味を持った磯野は、新たなチャレンジを求めて転職を決意します。日産自動車を選んだ理由をこう話します。
「長年世界からも信頼され続けている日本の製造技術 。その技術の合体の一つである自動車の品質管理に興味を持ちました。日産自動車を希望したのは、何点か理由があります。ひとつめは、【クルマ=日産自動車】のイメージが強くあったためです。免許を取得して初めて乗った車が日産車だったので、強く印象に残っていました。
ふたつめは、子育てとの両立がしやすい環境があったためです。日産自動車はフレックス制度をはじめとするさまざまな子育てサポート制度があり、子育てしながら仕事に従事する従業員に対して最適な職場環境をづくりをしている印象を受けました。また個人的には職場が自宅から近く、子育てとの両立がしやすいことも入社を決める上で重要なポイントでした」
2018年に日産自動車に入社した磯野は、最初はTCSXの感性品質グループに配属されました。
「感性品質グループ では、お客さまにチープで低品質な印象を持たれないよう、スタイリングチームと連携しながら車が実車になる前の段階から、感性品質のバリデーションを進めていきました」
恵まれた環境で仕事ができる喜び──育休経験を経たからこそ見出せた新たな価値観
入社から現在までを振り返り、印象に残っている出来事について磯野はこう話します。
「感性品質グループ にいた頃、ヨーロッパで発売された『ジューク』の開発に携わりました。そこで自分が関わったクルマが、初めて世に出た瞬間というのは感慨深いものがありました。
また、新車の市場調査でお客さまの声を直接聞く機会もあり、そこで新たな気づきが数多くあることも興味深い経験でした。お客さまの声を私たちTCSXが代弁し、お客さまに少しでも満足いただける車をお届けすることを心掛けて日々の業務を行っています」
その後、磯野は産休・育休を取得し、職場復帰したタイミングで物流監査グループに異動します。
「他のチームに同じように産休・育休取得を経験されている方がいたのと、日産自動車は福利厚生も充実していますから、復帰後の不安はそれほどありませんでした。私の場合は11月に産休に入り、翌年5月に復帰したので育休期間は半年間です。保育園入園の関係から1歳未満で預けることになりましたが、仕事を通じて社会とつながりがあることに、あらためてやりがいを感じました」
しかし、異動に関しては懸念点があったと言います。
「当時は物流監査とテクニカルアシスタント業務が兼務であり、加えて出張が増えてしまうことを懸念していました。仕事と子育ての両立は容易ではありませんが、家族の全面的なサポートのおかげで、好きな仕事を続けることができています。
また、当社のスーパーフレックス制度を活用すれば、子どもの行事や急な病気の際も柔軟に対応できます。たとえば1時間だけも私用外出をすることもできるため、急用ではなくても普段から時間調整がしやすくて本当に助かっています。ファミリーサポート休暇や在宅勤務も可能なので、家族との時間も大切にできます」
こうした経験を通して、磯野は仕事を続ける価値を見出しています。
「私は仕事をしている方が性に合っていますし、自分の母親も働いていたため、仕事を辞めるという選択はありませんでした。この選択は、家族の協力と職場の理解があって初めて成り立つものだと思います。常に感謝を忘れず、受けてきたサポートを仕事に変換して応えていきたいと日々邁進しています。家族には出張で寂しい思いをさせることもありますが、仕事を通じてさまざまな刺激を受け、それを子どもたちに伝えられるのは大きな魅力です。
出張中は必ず電話をして、3歳と7歳の娘ふたりに街の様子を見せてあげたり、ともに働く同僚を紹介してみたり、私の身の回りで起こっていることを伝えています。チームのメンバーもサポートしてくれますし、本当に恵まれた環境で仕事ができていると実感する日々です」
お客さまに品質のよいクルマを届けたい──双方が前向きになれる監査をめざす
磯野は今後のビジョンについて次のように話します。
「現場と協力しながら、品質向上に向けた取り組みをさらに強化したいと考えています。感謝されて頼ってもらえるような関係性を構築すると共に、グローバルな横のつながりも強くしていきたいです。ただ指摘するのではなく、きちんとリスクなどを納得した上で改善に努めてもらう。そんな双方が前向きになれる監査をめざしています」
監査という仕事にやりがいやおもしろさも感じています。
「現場から感謝の言葉をもらった時にやりがいを感じます。たとえば作業員の方に、ヘルメットが汚れないようカバーの装着を提案したことがありました。自分ではなかなか気づかないような細かな部分にも目を向けることで、『前向きに検討してみます』と感謝され、そういう時に『やってて良かったな』と思いますね。
また、海外の方々と意見交換をする中で、他の拠点にも共有できそうな取り組みを見つけられるのも嬉しいです。物流拠点では自動車専用の運搬船に乗れたり、海外だと車両を積む列車の中を見れたりと、工場とは異なるオペレーションを見られるなど、貴重な経験が出来ます。国内だけでなく、さまざまな国の人々と話をすることで、新しい発見や気づきがあるのは監査の魅力だと感じています」
最後に、監査の本質的な目的について磯野はこう話します。
「物流監査の主な目的は、現場でのルールや基準が守られ、車両の品質が維持されているかを確認することです。ですが、発見された問題に対して、監査を受ける側が自ら品質改善のPDCAサイクルを回せるようサポートすることも重要なミッション。監査をして終わりではなく、その改善まで見届ける気持ちで臨んでいます。
品質監査の仕事はお客さまと直接関われる仕事ではありませんが、お客さまに良いものを届けたいという想いは私たちも同じ。監査からの新たな気づきを品質向上につなげていければと考えています」
多様な経験を積み重ね、品質管理のプロフェッショナルとして成長を続ける磯野。その姿勢は、日産自動車の品質向上に大きく貢献しています。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
