日本との橋渡し役を務め、売上に貢献することが使命
2021年3月、M.H.は不二越 西日本支社油圧営業部から、油圧部門の営業技術としてNachi America Inc.へ異動しました。赴任先はアメリカのインディアナ州。M.H.にとって初めての海外赴任でした。
M.H. 「Nachi America Inc.のインディアナに在籍する日本人駐在員は11人ほどで、全体の約2割を占めます。中でも油圧部門は、15人ほどいるメンバーのうち日本人が3人。基本的なコミュニケーションは英語で行っています」
現地アメリカ人の営業員に対する技術的なサポートや、日本の技術部との連携が主な仕事だと言うM.H.。お客様から頼まれた仕事への対応や、現地の営業員による質問への回答、頼まれた資料の作成などを行っています。
M.H. 「不二越は、日本の油圧関連メーカーとして大手に入るため、国内ではほとんどのお客様が当社の名前を知っています。一方、アメリカは大手海外メーカーが大きなシェアを持っており、Nachiの知名度はそれほど高くないため、当社の製品がどのような特徴をもっているかさえ知られていない場合があります。
現地の営業担当のサポートを通して売上に貢献することが、私に課された使命。製品を使って何ができるのかなど、情報提供の面で営業担当のフォローをしています」
使命を果たす上で、それまでに対応したことのないニーズがあった場合でも、むやみに「できない」と判断しないことを大切にしていると言うM.H.。
M.H. 「アメリカの市場は大きいので、どこで何が大きな受注に化けるかわかりません。そのため、営業担当が獲得してきた引き合いに対して『そんなことはできない』と突っぱねるのではなく、『これであればできる』といった具合に、可能な限り別の選択肢を提供するよう心がけています。お客様の要望を受けて、『アメリカ向けにこんな商品を開発してほしい』と本社に連絡をすることもありますね」
自ら希望して設計から営業へ。お客様の声を直接聞けることが醍醐味
M.H.が不二越の一員となったのは2012年のこと。機械工学科を卒業した後、設計開発として新卒で入社しました。
M.H. 「油圧事業部の配属となり、1年目は現場研修や先輩の補助などを行いました。設計の図面を書いたりもしていましたね」
不二越では、入社した年の9月から2カ月間の語学留学が始まるのが慣例です。同期と共に海外へ渡り、アメリカとカナダの約10都市に分散して英語を学びました。
M.H. 「私が向かったのはアメリカのボストン。現地でホームステイをしながら語学学校に通いました。現在では、イギリスなどさらに留学先が増えているようです」
※2022年10月現在は、感染症対策の関係で実施時期を見合わせ中
留学を終えて帰国した後、M.H.には新商品設計のミッションが与えられました。苦労はあったものの、多くを学んだと振り返ります。
M.H. 「主担当として産業機械向け新製品の設計を行うことになり、2年半ほど携わりました。社内の設計基準を満たしながら商品としてつくりあげていく難しさに直面しながらも、安全な製品として世の中に送り出すための設計ノウハウが身についたと思っています。いろいろなアイデアを好きなだけ試すことができましたし、山ほど経験した失敗も含めて、非常に勉強になりました」
不二越では、入社から3年が経過すると、その後のキャリア形成についての面談を行います。M.H.はそこで、営業への異動を希望しました。
M.H. 「設計の経験しかない状態では、営業担当から連絡をもらっても、実際にお客様がどのようなことで困っているのか、どの程度のスピードが求められているのか、実際に使ってみての感想はどうだったのかなど、手触り感のある情報が伝わってきません。だから、営業としてお客様の雰囲気を間近で感じたいと思ったんです。
また、営業の経験を積むことで、将来的には自分が設計担当として新製品を開発し、それを自ら売りに行ってお客様の声を拾い、それを設計に活かすというかたちで、製品をより良いものにしていければという想いもありました」
その後、実際に営業担当として配属されたM.H.。設計にはない、営業ならではのおもしろさを実感したと言います。
M.H. 「たとえば、生産ラインが止まったり、思うように製造できなかったりしてお客様が困っているケースでも、設計開発の知識や経験があるので、現場ですぐに状況を判断し対応できることが多いです。
すると、その場で『ありがとう』と声をかけていただけるんです。設計をしていたときは、お客様の声を聞く機会はほとんどありませんでした。そうやってお客様からダイレクトに感謝の言葉をいただけるところに営業の醍醐味があると感じています」
商習慣の違いに戸惑いながらも、大きな裁量を与えられることがやりがいに
学生時代の恩師から「エンジニアはいずれ海外に出ていくことになる」と聞かされていたと言うM.H.。海外で働く自分の姿を想像していたと言います。
M.H. 「会社の上位職の方から、『海外で働くことに興味はないか』と尋ねられるたび、意欲があることを伝えていました。というのも、海外で働いている技術者はごく少数。チャンスがあればぜひ挑戦してみたいという気持ちがありました」
海外赴任の推薦を獲得するため、社内の誰もが納得するような成果を出す努力をしたと言うM.H.。念願叶って、2021年にNachi America Inc.への異動が決定します。実際に赴任してみて、もっとも苦労したのは商習慣の違いに慣れることでした。
M.H. 「アメリカでは、日本以上にスピーディーに仕事が進んでいきます。『すぐに見積りがほしい』『すぐに製品がほしい』『製品がないのであれば、それに代わるものを』という具合です。しかも、お客様の質問には即座に答えなくてはなりません。会社の認知度を上げる必要もあり、日本とは仕事の進め方が全然違うところに苦労しましたね」
また、マイナーメーカーとして認知を広げる一方で、すでにNachi America Inc.の製品を使用してくれているお客様への対応も大事な仕事のひとつ。赴任早々、ある既存のお客様の対応を任されたことが印象に残っているとM.H.は言います。
M.H. 「Nachiの製品を信頼してくださっているお客様でしたが、仕様についての誤解がありました。たとえて言うなら、こちらが『100までしか使えません』とお伝えしている商品について、『Nachiの製品なら110まで使っても大丈夫だろう』と認識されていたんです。
もちろん、お客様が想定されている使い方では安全を保証することができません。そこで、量産が目前に迫る中、現地採用の営業担当やエンジニア同席のもとでやりとりを重ね、最終的になんとかご納得いただいて受注に至りました。もし私に設計開発の知識がなければ、都度日本に回答を求め、その度にタイムラグが生じてしまっていたはずです。自分で回答の道筋をつくれたことで、スピーディーに進められたと思っています」
海外駐在ならではのやりがいもあると言うM.H.。次のように続けます。
M.H. 「日本にいたときと比べて大きな裁量が与えられていると思います。アメリカでの大まかな営業戦略は日本人駐在員が考えるため、日本であれば部長クラスが携わるような戦略の立案に参画したり、自分でやりたいと思うことが実行できたりと、意思決定に関わる場面が増えました。
また、自分たちのやりたいことを実現してくれる本社との交渉役として、現地のスタッフから頼られるところにもやりがいを感じています」
大切なのは、自ら発信し行動を起こすマインド。市場に適合した新たな商品開発を目指す
今後は、アメリカのお客様の要望に正確に応えられる市場特徴に適合した商品をつくり、売っていきたいと言うM.H.。
M.H. 「日本で売れている商品がすべてアメリカで通用するかというと、必ずしもそうではありません。反対に、日本では求められないけれど、アメリカでは売れるという商品もあります。お客様のニーズを拾いあげながら、新たな商品開発につなげていきたいと思っています。いずれ、『自分がこれをつくった』と胸を張って言える商品を手がけてみたいですね」
海外に赴任して約1年半になるM.H.。自身の経験から、海外赴任を希望する人に伝えたいことがあると話します。
M.H. 「英語力を基準となる水準にまで高めることもさることながら、まずはいま取り組んでいる仕事で結果を出すことが大事だと思います。数字を伸ばしたり、おもしろい案件を獲得してきたり。好奇心をもって仕事に取り組み、それを成果に結びつけられる人材が海外では重宝されるように感じています」
また、海外では一歩踏み出すこと、自ら行動することが欠かせないと言うM.H.。
M.H. 「アメリカ人は、日本人に正確な英語を求めてはいません。語学よりも分野の知識、ノウハウを持っているかを重視していると思います。たとえ拙い英語だとしても、伝える努力さえすれば『こんなことを言いたいのだろう』と噛み砕いて理解しようとしてくれるものです。とにかく自分から発信すること、恐れずにアクションを起こすことを癖づけることが大事だと思います」

