挑戦を通じてコンサルタントの成長を支援。収益を人の育成に活かす「チャレンジ投資」
コンサルタントの挑戦と成長を支援する仕組みとして、2014年に創設された「チャレンジ投資」。当時、コンサルティング推進部の部長として制度の創設に携わり、現在はコンサルティング本部の特別顧問を務める廣崎は、創設の背景をこう語ります。
廣崎:私が当時感じていたのは、コンサルタントたちが高い収益目標の達成のための業務に注力する一方、自身や組織の成長に対する意欲はあるものの、そのための活動が十分にできていないという課題です。そのため頑張って生み出している収益の一部を自身の成長に活かせる制度をつくりたいという想いがありました。
そこでお客さまから受注するプロジェクトと同様の位置づけで社内から投資を受けてプロジェクトを立ち上げ、自分で発案した事業アイデアのために活動できる「チャレンジ投資」を創設しました。
投資と言っても計量面での回収計画は求めず、重視するのは成長のための活動です。お客さまからの受注ではないので失敗しながら学びやすい制度でもあります。すぐに事業化につながらないとしても、日々のコンサルティング業務から見えてくる次の課題に挑戦したり、異分野の専門家やコンサルタントと協働して新たな価値を追求したりするなど、創造的な活動に取り組んでほしいと考えました。
廣崎と同じく創設時から制度の企画・運営に携わり、「チャレンジ投資」の名づけ親でもあるコンサルティング推進部の江淵。その制度名には、若手コンサルタントの意識を変えたいという想いが込められていました。
江淵:優秀な若手コンサルタントがやりたいことを胸に秘めつつも、年長者に遠慮して行動に移せていないことにもどかしさを感じていました。また、コンサルタントが予算の中で新しいことに挑戦できる機会が、以前より減ってしまったという時代の変化も背景にはあります。そうした現状を打破し、コンサルタントの挑戦や成長に投資しようという想いで「チャレンジ投資」と名付けました。
制度のコンセプトとして掲げたのは、「チャレンジマインドの喚起と、コンサルタントとして実現したいことをビジネスにする動きの推進」です。制度の設計にあたっては、実はスポーツの大会が参考になっています。
若手選手による総当たりリーグ戦から着想を得て、若手コンサルタントが飛躍的に成長できるステージを会社で用意し、切磋琢磨してもらいたいと考えました。今では「チャレ投」という略称で親しまれ、制度として社内にすっかり浸透しています。
24年度から「チャレンジ投資」の企画・運営を担当するコンサルティング推進部の斉藤。以前は制度を活用したこともある立場として、制度への想いを次のように語ります。
斉藤:私はもともとシステムエンジニアで、2018年にコンサルタントに転身しました。そこで初めて「チャレンジ投資」について知り、収益の一部をコンサルタントの成長に還元する会社の度量の広さに驚いたのを覚えています。
私自身もこの制度を2回ほど活用し、自分で発案したプロジェクトに取り組みました。活動に対して資金が提供されることで、お客さまから受注する案件と同じように、責任を持って最後まで取り組む動機付けになりました。実際に制度を活用した立場としても、自己研鑽や組織の成長に確実につながる優れた制度だと感じています。
チャレンジ投資では一定の審査基準はありながらも、挑戦そのものに重きを置いています。人の成長に投資する懐の深さと、挑戦の中身を重視するバランスの良さが、この制度の魅力だと考えています。
時代とともに制度の内容や採択のポイントを変更。創設から10年で得られた多くの成果
若手コンサルタントの潜在的なニーズに合致した「チャレンジ投資」は、創設直後から大きな反響を呼びました。
江淵:初年度から何十件もの応募があり、若手の6~7割が「チャレンジ投資」を活用したプロジェクトに参加している状況でした。1年目に採択された案件は40件、さらに2年目は46件、3年目は54件と、件数は右肩上がりに増加しましたね。
ただ、4年目で投資対象を事業開発と能力開発で目的別に分け、採択も22件に絞るなど、時代の変化や会社の予算配分に応じて定期的に制度の在り方を見直してきました。
時代とともに、応募された案件を採択する際の評価ポイントも変化していったと廣崎は話します。
廣崎:たとえば、かつてのコンサルティングは調査・分析から施策の提言までが中心でしたが、最近は提言を実現するまでの役割も強く求められます。そのような変化に応じて評価ポイントも変えていて、現在は〈みずほ〉の金融機能とコンサルティング機能の連携によって提言から実装まで一貫したサービスの創出をめざす取り組みを重視しています。
当社とみずほ銀行は2026年4月の統合に向けて検討を開始しました。社会へのインパクトが大きな次の課題に関するコンサルティング力を磨くことに加えて、解決策の社会への実装までを視野に入れて統合後の未来を見据える。その上で、私たちが提供できる新しい価値とは何かを考えて取り組むテーマをとくに歓迎しています。
環境分野のコンサルティングに20年以上従事し、コンサルティング事業全体の統括担当として幅広い活動に取り組んできた廣崎。その経験を活かし、「チャレンジ投資」を活用する若手コンサルタントからの相談にも応じています。
廣崎:アドバイスをする上では、まず若手ならではの発想を大切にしたいと考えています。その上で、今より広い視野で考え大胆に行動してもらえるようにと考えて意見交換し、他分野の専門家とのつながりをサポートするぐらいで、成否は重視しません。失敗の中から自分の成長を自分で築いていくという経験を積み重ね、大きくステップアップできるようになってほしいと願っています。
挑戦できる機会をコンサルタントに与えてきた「チャレンジ投資」の創設から10年。その成果は、さまざまな形で表れていると江淵と廣崎は話します。
江淵:新たなテーマが開拓されてチームが新設されたり、組織の中に事業の新たな柱が生まれたりと、目に見える成果が生まれています。中でも特筆すべきは、コンサルタントの中でチャレンジ精神が着実に根付いてきているという点です。
お客さまに対してコンサルティングを提供する際は、仕様書に沿って対応することが求められますが、私たちが追求すべきは、お客さまの期待を超える価値を生むことです。こうした考えが、制度を通じて浸透してきたと感じます。
またこの制度では仕様書をつくるのはいわば自分なので、活動を続ける中で大きく方向転換することも可能です。当初の計画から大胆に変更して成功した事例もあるため、柔軟に突破口を探していく姿勢を私自身は歓迎したいと思っています。
金融グループである以上、リスクを考え安全策に力を入れることは重要ですが、それだけでは競合には勝てません。驚きや感動を生む提案こそが私たちの強みとなります。みずほ銀行との統合が検討されている今、こうした意識をより強めることが「チャレンジ投資」に求められていると考えています。
廣崎:私が当初想定していた以上に、「チャレンジ投資」で取り組まれた案件はビジネスにつながっています。多くの場合、アイデアの発端となっているのは日々のコンサルティング業務の中から見つけ出す新しい課題です。そのため取り組み自体がもともとビジネスに近いところからスタートしていることもあるのでしょう。
興味深いのは、まだ顕在化していない少し先の社会的課題を見出し、それに挑む人が出てきている点です。社会のニーズが高まる前に、先手を打って関係者を巻き込み、ネットワークを構築する。そうすることで未来の市場をリードできる可能性が広がっています。
もう1つ私が成果として感じるのは、コンサルタント自身の変化です。お客さまから依頼された課題に対応するという活動だけでなく、自ら課題を設定し、ソリューションを作り出して提供するという能動的で創造的なコンサルティングへと変化してきているのを感じています。
時代に先駆けた挑戦が大きな成功に。失敗が糧となり、コンサルティングに活きていく
創設から10年の間に約340件もの案件を支援してきた「チャレンジ投資」。大きな成果を残した事例が数多くある中、廣崎にとって印象に残っているプロジェクトがあります。
廣崎:創設当初で強い印象が残っているのですが、日本ではまだ本格的な議論が始まっていなかった「カーボンプライシング」にいち早く着目した案件です。入社7年目のコンサルタントと入社2年目の若手コンサルタントの2人が、それぞれ海外の有識者を訪ねて議論を交わし、ネットワークをつくりながら自分たちなりの知を構築していきました。翌年にはその成果をまとめたものを国際学会で発表して賞もいただいています。
国内でも情報発信を続けていましたが、数年後には「カーボンプライシング」への社会的な注目が高まり、環境省から相談があり受注するようになりました。その後は民間企業にも波及し、ビジネスが次々と拡大していきました。
一方の江淵は、同一労働・同一賃金制度の普及に向けた取り組みを印象的な事例として挙げます。
江淵:当時はまだ正規雇用労働者と非正規雇用労働者との待遇格差が激しく、格差の解消に向けた制度づくりが求められていました。こうしたケースでは、厚生労働省が予算を設け、有識者を集めて研究会を組成し、その事務局を当社が担当するのが従来のビジネスモデルです。
しかし「チャレンジ投資」を活用することで、当社で有識者を集め、独自に研究会を組成することが実現したのです。その研究会が基盤となり、後に厚生労働省から予算が設定され、ガイドブックの作成や格差解消に向けた制度の普及活動、人事制度導入の支援へと事業が広がっていきました。
さらに、この活動はアカデミックな世界でも注目を集め、学会での発表や大手企業からの講演依頼も増えていきました。当社が開いた研究会が発端で同一労働・同一賃金制度の普及に弾みがつき、社会的に大きな意義のある取り組みになったと感じています。
今年度から制度の運営に携わっている斉藤は、とくにサステナビリティ分野の成果を評価しています。
斉藤:当社では、脱炭素などサステナビリティ領域を専門とする部門が2つも設置されていますが、ここまでの組織になったのはチャレンジ投資が寄与している部分があるからだと感じています。これらの部門は、常に最新動向を把握しながら「チャレンジ投資」を活用して官公庁案件に先行投資し、成果を民間へ広げる流れを確立している点が印象的です。
さらに、宇宙など新しい分野への挑戦も始まっています。「チャレンジ投資」を通じて未開拓の領域に事業の種を巻き、常に未来に先駆けた活動に取り組んでいく。そうした姿勢が組織全体として醸成されていることは喜ばしい限りです。
人と組織の成長につながる「チャレンジ投資」。成功だけでなく失敗も含め、廣崎は制度を活用するコンサルタントに期待することを語ります。
廣崎:新しい課題はお客さまや社会との対話を通じて見えてくるものです。自ら次の課題を捉える意識を持ち、それをどう切り出せば解決策が考えられコンサルティングサービスとして提供できるかを、考え抜く力を養ってほしいと思います。それができれば、時代の大きな変化を先導できるコンサルタントになれるはずです。
また、社会実装をめざす場合、銀行との連携なども通じて多くの関係者を巻き込みながらプロジェクトを動かすスキルも重要になります。「チャレンジ投資」は受注事業とは異なり失敗から学ぶ場にしやすい制度です。この枠組みを活用し、課題の発見から解決策の社会実装までのさまざまな経験を積むことで、実際のコンサルティングに活かしてほしいと思います。
江淵も、失敗を恐れない姿勢の大切さを強調します。
江淵:私が制度への想いを語る際によく引用するのが、「迷わず行けよ、行けばわかるさ」というアントニオ猪木の言葉です。制度を活用する際は、殻を破って自分自身を変貌させていく姿勢が重要だと思います。自分が変われば、見える風景も思考も変わります。
それも含めて「チャレンジ」であり、挑戦によって自らが「チェンジ」する機会にもしてほしいと考えています。
「チャレンジ投資」を通じ、さらなる挑戦を。未来を担うコンサルタントへの想い
創設から10年が経った「チャレンジ投資」。今年度から運営に参画した斉藤は、あらためてその意義を考えるとともに、制度の内容について再検討を進めています。
斉藤:「チャレンジ投資」の意義は人材育成だと私は考えています。コンサルティングは個の力が重要ですが、それを組織としてスケールさせるには、技術やノウハウを後進に伝える仕組みが欠かせません。
そのため「チャレンジ投資」を活用するメンバーだけでなく、そのマネージャーや先輩コンサルタントが指導力を鍛える場としても活用してほしいと考え、現場にもその意識を持つように促しています。
また、みずほ銀行との統合を見据え、運営側で制度の狙いや重要性をあらためて検討することも重要です。廣崎や江淵がこれまで培った知見を吸収しながら「チャレンジ投資」の意義を再整理し、本部全体に周知していきたいと考えています。
制度の企画運営に携わる中で、「チャレンジ投資」が新事業の創造につながっているのを実感していると話す斉藤。一方で、新たな課題も見えてきました。
斉藤:コンサルティング本部は分野ごとに部署が分かれているのですが、部署によって制度の活用度に差が生じています。前述のサステナビリティ分野などは積極的に活用している一方で、ポテンシャルを活かしきれていない部署も存在しています。
この差を埋め、組織全体で活用度の底上げを図ることが今後の課題です。次の10年を見据え、活用が遅れている部門を支援する仕組みを構築し、組織全体のケイパビリティを高めていきたいと思います。
「チャレンジ投資」を通じ、人と組織の成長を支援し続けているみずほリサーチ&テクノロジーズ。これからともに未来を担うコンサルタントへ、3人がメッセージを送ります。
廣崎:みずほ銀行と統合することになれば、金融機能を始めとして銀行が持つ広範なネットワークやほとんどの産業の企業が直面している経営課題の蓄積、最新の産業知見、多様なデータなどを、これまで以上にコンサルティングと連携させることが可能になります。
すなわち、これまで培ってきたコンサルティング機能に加えて〈みずほ〉ならではの新しい独創的な価値を追求できる挑戦的なステージが広がります。
たとえば、多様な企業の経営課題や産業の課題を起点に、産業界、官公庁や学識者も巻き込んで新しい国の制度づくり、技術実証などを行う。その先に企業の経営戦略から事業戦略への展開といった連続的、具体的な社会変革の実現に貢献することも可能になると考えています。
「チャレンジ投資」をはじめ、当社には社会にインパクトを与える新しいコンサルティングを追求できる環境があります。この環境を活かし、自分を大きく成長させながら未来の社会を築いていく意欲を持つ方の参加を楽しみにしています。
江淵:「チャレンジ投資」で本人が思い描いたような成功に至るのは、感覚として10件に1件程度です。それでも私は、もっと「うまい失敗」の機会を増やすべきだと考えています。理由は2つあり、1つは新規事業の創造に失敗しても、携わった人材の能力開発には成功しているからです。新たな経験を積めば、必ず知見が増えて身につくスキルがあります。
もう1つは、AIの進化を見据えたコンサルタントの役割が挙げられます。将来、多くのコンサルティング業務がAIに代行されることが予測される中、人ならではの「失敗する能力」が鍵になると考えています。AIが棄却するような負ける手を選んで戦った先に、想像を超える大勝利が待っているかもしれません。だからこそ「うまい失敗」をたくさんしてほしい。「失敗は成功の母」とは、このことなのだと思います。
斉藤:当社では、「企業の源泉は個の力」という考えが浸透しています。そのため「チャレンジ投資」だけでなく、全社的な教育研修制度や、コンサルティング部門独自の制度など、個の成長を支援する仕組みが非常に充実しています。
これらの制度は、個人のやりたいことを尊重し、さらに予算も十分に確保している点が特長です。コンサルタントとして自ら学び、成長したいという意欲を持っている方は、ぜひ当社ならではのフィールドで新しいことに挑戦してほしいと思います。
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
