時代にフィットした鉄道事業を行うために。信号通信課が発信する新しい取り組み
私は工務部信号通信課に所属し、列車の信号通信設備に関わる仕事をしています。この部署は30人ほどのメンバーで九州島内全域の信号通信設備を守り、より良くしていく、いわば列車を安全に運行させる要の部分を担っています。列車の安全に直接的に関わる部署だからこそ、一人で物事を決めていくというよりはチーム全体で考えながら一つひとつの物事を決定し、行動していくことが特徴です。
信号通信課は信号通信のメンテナンスの計画や管理を行うチーム、工事を計画や管理するチーム、新たな鉄道に関するプロジェクトを検討するチームなどさまざまなチームに分かれています。
中でも私が現在在籍しているのは、列車の制御に関わるプロジェクトを検討するチーム。コロナ禍や人口減少などさまざまな時代の影響を受け、より安全に少ない人員でも列車が稼働するよう、さまざまな施策が練られています。ここでは現在動いている大きな3つのプロジェクトについてご紹介します。
1つめは「自動列車停止装置(以下、ATS-DK)」の設置。ATS-DKとは九州島内各所に設置されている装置で、列車が何らかの危険な状況に陥ったとき自動的にブレーキがかかる装置。すでに実用化されており、現在は導入区間の拡大計画の調整や線路の形状が変わったときにデータを書き換えるなど保守・設計作業を行うことがあります。
2つめは列車の自動運転の開発。ATS-DKの機能を用いて運転士なしで列車を運行する取り組みです。こちらはすでに一部区間で実証運転を行い、2024年3月に実運用が開始されました。
実証運転では必ず運転士が乗った状態で列車を運行していましたが、実運用後は運転免許を持っていない係員が添乗した上で列車が走ります。前例がないため難しい取り組みでしたが、これまで何度も国土交通省とも打ち合わせを行いながら開発を進めてきました。この度、遂に実運用化まで漕ぎ着けることができ、開発に携わったメンバーとして誇らしく思います。
3つめは現在ATS-DKを用いて行なっている列車の制御を、無線で行う「無線式列車制御」。これはATS-DKという装置を使うのではなく、無線を使って同じ役割を果たすことによって設備を減らしメンテナンスの手間を省く目的で開発が進んでいます。まだまだ検討段階ですが、これから試作品を制作し、実際の線路を使った試験などがスタートする予定です。
仕事にいつでもやりがいを。現場の点検作業から工事の監督業務まで幅広い業務を経験
私が仕事をする上で大切にしていることは、いつでもやりがいを持ち、楽しんで業務に臨むこと。工学部で情報システムについて学んだ後、「成果物が目に見えてわかるものを作ってみたい」という思いから、JR九州の電気系統へ進みました。そして入社以来、ずっと信号通信に関わる業務に携わっています。
入社後最初に任されたのは信号通信の保守。最終列車が通過した後の線路に入ってデータを測ったり、信号の状態を検査したりする業務です。入社当時は正直なところ、お客さまの目につくことのない信号通信のお仕事がどんなものか想像もつきませんでした。
しかし、実際に業務が始まってみると自身が鉄道業務に携われること、一般の人が立ち入れないような場所に入って作業することに高揚感を覚えました。夜間勤務や不規則な労働時間など大変な部分もありましたが、新しいことに純粋に感動しながら、楽しんで仕事をしていましたね。
また、装置の故障など何かトラブルがあったときには、それに対応するのも保守の仕事。現場業務として鉄道の安全を直に守っている緊張感がありました。
次に任されたのは鹿児島県の駅の高架化事業。工事を設計し、施工会社に発注。完成したものを最終列車通過後に検査する業務でした。あくまで通常の列車の運行がある中で工事を進めていくので、最終列車から始発までの夜中の限られた時間で区間を区切りながら作業を進めていくことに苦労しました。開業日は決まっていたので、安全を意識しつつもそれに間に合わせることがミッションでしたね。
また当然のことですが高架化工事は信号通信だけでなく、線路を作る部隊、電線を張る部隊などさまざまな部隊が動きます。施工監督として他の部署とも連携しながら、スケジュールを調整するのがとくに大変だったことを覚えています。
しかし実際工事が完了し、今まで地面を走っていた列車が高架上を走るようになったときはとても感動しました。開業の際は自分自身列車に乗って、高架上から景色を眺めたのが感慨深かったです。
産休・育休を経て価値観も新たに。新しいプロジェクトに挑戦する楽しさ
鹿児島県の駅の高架化事業を見届けた後、妊娠が発覚し、2年ほど産休・育休を取得することに。JR九州では以前から産休・育休を取得する先輩社員が多くいたこともあり、私が取得するときも自然な流れでスムーズに送り出してくれたことはありがたかったです。
産休・育休復帰後は夜間勤務が難しくなったため、現在の列車の制御に関わるプロジェクトを検討するチームへと配属。新しい技術に触れ、新しいものを作っていくことを素直におもしろいと思いながら、楽しく仕事をしています。
鉄道の安全にも関わる大きなプロジェクトなので、1つのプロジェクトを達成させるには、数年単位で長いスパンがかかります。その間大変なこともありますが、今回の自動運転の実運用化のように実際に検討していたことが実用されるようになると、強いやりがいを感じます。
また出産を経験し、子育てに追われるようになったことで、働き方にも大きな変化が生まれました。それまでは「仕事が楽しい」という気持ちが先行して、仕事中心の毎日を送っていましたが、生活の中に子育てが加わったことで、仕事だけでなく家庭も大切にしたいと思うように。どちらもうまく両立できるように効率的な時間の使い方を意識するようになりました。
たとえばたくさんのタスクに囲まれてしまった時は、自分がやる必要のあるものを取捨選択して取り組み、他のメンバーにお願いできそうな部分はお願いするなど、一人で仕事を抱え込まなくなりましたね。
一方で入社から10年ほどが経ち、後輩もできるなど、これまで以上に積極的に自分が動かなければならないと思う側面もあります。自分が動くところ、誰かにお願いするところの判断をきちんと行いながら、積極的に業務に取り組んでいきたいです。
人生を充実させたい。数少ない電気系統の女性社員として思い描くビジョン
JR九州では、従業員がより働きやすくなるよう、さまざまな取り組みが行われていると感じます。前述の産休・育休制度に関しても、以前からスムーズな取得ができていました。加えて昨今、私のような本社勤務のメンバーはテレワーク制度やフレックス制度も導入。業務内容にもよりますが、誰もが自由な時間に自由な場所で柔軟に働ける環境が整いつつあります。
一方、設備の点検など現場のお仕事をしている方は、仕事の内容上どうしても現地へ決まった時間に行かなければならないので、本社勤務とは少し働き方が異なる点もあります。それでも新しい技術の導入などによって業務をより円滑に進めていけるようにするなど、「働きやすさ」に対する配慮が伺えると感じています。
また昨今は女性の活躍にも注目が集まっています。女性の駅長、運転士などが次々と生まれ、これまで男性しかいなかった部署でも女性が見られるようになってきました。ただし私が在籍する信号通信課では、女性が30人中2人とまだまだ少ない印象。今後男性だけでなく女性にもこの分野に興味を持っていただけるようになったらうれしいと思っています。
またこの分野に進む女性が少ないからこそ、自身がこれからも頑張って仕事を続けていくことによって、「女性でも活躍できる分野」であることをアピールしていきたいですね。今はまだプレイヤー的な仕事が多いですが、いずれはチームを管理するような立場になり、後進の育成にも力を入れていきたいです。
大学を卒業してから就職、出産・育児とさまざまなライフイベントを経験してきた私が今めざしているのは、ワークライフバランスをとりながら、どの分野にも偏ることなく人生を充実させること。
長年続けてきた信号通信の仕事も力を入れていきたいですし、母親としても頑張りたい。そして自分の時間も大切にしたいと思っています。すべてを完璧にこなすのではなく、バランス良く楽しくやっていけるよう、適度に肩の力を抜いて人生を楽しんでいきたいと思います。
※ 記載内容は2024年5月時点のものです

