ユーザーの声を設計者自ら聞き、反映させる。製品開発の全工程に関わる醍醐味
前田製作所 技術本部 技術部 設計グループに所属する中園は、自社製品の設計業務を担っています。入社後に携わった建設機械のクローラクレーンの設計を経て、2021年からは当社初の機械である林業用運材車フォワーダの開発に取り組んでいます。
設計グループは20名程度のメンバーで構成され、それぞれ機械設計、電気設計、ソフトウェア担当や試験担当など得意分野を活かしチームで開発を行います。企画が立ち上がってから発売までには、新製品の場合は通常3年ほど、モデルチェンジの場合は1年ほどの年月を要します。
「フォワーダの主担当として設計もしつつ、電気やソフトウェア担当者に検討に必要な情報を共有したり、試験担当者と試験工程や方法などを相談したりといった調整業務も行います。機械設計者は部署間の橋渡しとしての役割も必要になります。
また、インドのエンジニアに設計や図面の指示を出したり海外のサプライヤーとやり取りをしたりなど、グローバルな環境での業務もあります」
そのほかにも主担当の日々の業務内容は多岐にわたります。ユーザーヒアリングから製品への落とし込み、計画設計、詳細設計、図面作成、部品表作成、試験、量産立ち上げ、不具合対応まで。1日の中でも、作業に集中する時間と、いろいろな調整業務をこなす時間とを使い分けながら進めていると中園は言います。
「まったく同じことをやる日は二度とないです。本当は1つのことに集中する方が効率は良いのですが、日々何かしらの納期に追われているので、なかなかそうもいきません。ただし、製品開発の最初から最後までのすべてに関われることが、この仕事の醍醐味です」
中園が仕事でとくに大切にしているのは、お客さまの声に耳を傾けることです。
「設計という業務はジグソーパズルに例えることができると思っていて、ユーザーの声は無数にあるピースの中でもとくに、絵を描く上では欠かすことのできないピースだと思っています。とくにフォワーダという機械は、設計的に未知の部分が非常に多かったため、とにかく実際の機械の使われ方や現場を理解し、ユーザーの生の声を聞いてユーザーが求めていることを知ることが重要だと考えました。
開発当初、展示会、デモ現場などできるだけお客さまと実際に話ができる機会をいただくようにしました。現場でお話を伺う時は、『ユーザーに共感すること』と『設計的に解決できること』の両輪をできるだけ意識しています。ユーザーは本質的に何に悩んでおり、それは本来どうあるべきなのかその場で答えを探します。
最終的に100%満足できる形での改善は難しい場合も多いですが、普段『ここがちょっと使いにくいんだよな』といったストレスを抱えながら作業されている状況を自分事としてとらえると、できるだけすぐになんとかしないといけないと感じられます」
ロボコンで味わったものづくりの光と闇。かにクレーンに惹かれ前田製作所へ
子どもの頃からものづくりが好きだった中園。段ボール工作に始まりホビー系のプラモデルに夢中になりました。工業高校時代は部活動としてロボットコンテストに参加し、2年生の時には長野県大会で優勝し、全国大会にも出場した経験を持ちます。
「課題は開催地だった宮崎県の『鬼の洗濯岩』にちなんだ段差を越えていき、遠くにあるポールに輪を引っ掛けるというもの。私は5人ほどのチームでクレーン型のロボットを製作し、設計を担当しました。
ロボット製作やものづくりの活動のほとんどは、真っ暗なトンネルの中で苦労している状態です。でもそんな中で、時々見える光、つまり機械が完成した時や大会で優勝できた時の高揚感を味わえる瞬間が楽しみでしたね」
大学でもその情熱は続き、サークル活動としてNHK大学ロボコンに参加。就職活動では、地元である長野県内で設計関係の仕事に就きたいと、企業を探していきました。
「その中で前田製作所に出会えたことは、今思えばすごく運が良かったなと。就活を始める前に、当社の『かにクレーン』を見かけたことがあって、おもしろい機械があるなあと思っていたんです。それまで、建設機械は自分からはどこか遠い存在に感じていたのですが、長野県にもこのような機械を作っている企業があるんだと驚きました。
最後まで別の企業と悩みましたが、このかにクレーンが今まで作ってきたロボットとも少し似たものを感じ、親しみを感じられたことが入社の決め手になりました」
こうして2013年に前田製作所に入社した中園。設計グループに配属され、2年目という早い段階で重要な設計業務を任されます。
「当社の建設機械の主要製品であるクローラクレーンのフルモデルチェンジプロジェクトで、キャビンの内装やエンジンのクーリング周りなどの設計を担当しました。私のほかに上司1人と先輩2人くらいのチーム体制で、先輩に相談しながらも、主体的に設計を進めることができました」
このプロジェクトで経験を積み、5年目に手がけた当社最大級のクローラクレーンの新規設計プロジェクトでは、主担当に。
「上司と後輩1~2人のチームで、後輩への指示出しや確認作業も行うようになりました。この機械は、フルモデルチェンジを行った時の課題をもとに改善に取り組みました。サラウンドビューカメラやラジコン、フック水平移動機能など、クローラクレーンとしては新しい機能を多く盛り込んだんです。大きな不具合もなく、良い製品になったと自負しています」
林業機械フォワーダ開発への挑戦──長いトンネルを共に歩み、つかんだ喜びの光
約7年間のクローラクレーン開発に従事したのちに、中園は新たな領域に挑みます。それは、前田製作所初の機械である林業用運材車であるフォワーダの開発でした。担当に抜擢された時のことについて、中園は正直な気持ちを吐露します。
「実は、当初はそこまでプロジェクト遂行に自信を持てませんでした。走行速度が速い林業機械ということでクレーンとは異なる過酷な使用環境が予想され、さまざまな故障や問題が発生するだろうと思ったからです。評価方法なども未経験の領域が多く、具体的なイメージを描くことが難しい状況でした」
しかし、会社がこの先めざすビジョンについて考えた中園は、自身の役割の重要性に気づいたと言います。
「以前、当時の産業機械本部の本部長が、自身が設計したクレーンの形が当初のものから今でも変わっていない、それくらい永く使ってもらえる製品を設計することができたと誇らしげに話しているのを聞いて、すごく羨ましく感じたんです。
今回の取り組みによって、前田製作所としてまったく新しい形の機械を、私が設計できる──林業機械が会社の新しい事業の柱になれば、将来、自身にとって誇れるものになるのではないかと思いました」
こうして、林業機械という未知の世界に足を踏み入れた中園。新規参入という立場から、まず行ったのは他社製品の調査と分析でした。
「他社製品がどう使われているのか、どこが壊れやすいのかなどを徹底的に調査し、それを未然に防ぐ設計を心がけました。他社の良いところは取り入れ、悪いところは改善する。
そして、クローラクレーンの設計思想もできるだけ取り入れました。私たちの“当たり前”をそのまま受け継いだのですが、林業機械にとっては新しい視点だったようで、結果的にそこがお客さまにも評価していただけるポイントになりました」
試作機の段階では、通常のメンバーに加え、建設機械本部からも専門家を招いて詳細な評価を受けました。
「社内の知見を早い段階で取り入れ、形状を見直すことができました。また、インドのエンジニアとも開発初期の3Dモデル段階から密接に協働しました。そのほか、工場担当者に度重なる改造に付き合ってもらったり、営業担当者にさまざまな現場に連れていってもらったり、共に進む仲間の存在がありがたかったです」
完成したフォワーダは、とくに整備性の面で高い評価を得ることができました。
「フィルター類など日常的なメンテナンスが必要な箇所を1カ所に集中させる設計を採用し、効率的なメンテナンスを可能にしました。キャビンや運転席の設計も、品質や使いやすさの面で従来の林業機械より優れていると評価していただけました」
ものづくりは真っ暗な長いトンネルの中をひたすら歩くようなもの──学生時代のロボコンと同様、設計業務についても中園はそう考えています。
「部品が干渉して配置できない、試験に合格できない、現場で機械が動かなくなったなど、進むべき方向がわからなくなる状況が次から次へと起こります。そこで重要な指針になるのは、ユーザーの声。お客さまが本当に求めているものを直接聞くことで、根拠や納得感を持って設計できたり、新機能の提案につながったりします。その機会を多く与えてくれる当社の環境は、設計者にとって非常に魅力的です」
さらに中園は、前田製作所での設計業務についてこう続けます。
「開発を支援してくれる仲間のおかげで、設計者は孤独にならずにトンネルの出口までたどり着けます。その先でユーザーの『劇的に仕事が楽になる』『こういうものを待っていた』など、喜びの声という光を浴びることで、それまでの苦労がすべて報われます。またそのすぐ後でトンネルに入りますが」
林業機械の設計開発を通して、ユーザーの期待に応え、社会課題にも貢献する
新規開発を手がけたフォワーダについて、中園はさらなる改善を見据え、開発の手を緩めません。
「いったん形にはできましたが、まだ多くの課題が残っています。最終的に私の設計したものが残っていくか、それとも消えてしまうのかは、これからの取り組み方次第だと感じています。
お客さまに実際に使っていただく中で、良い点も改善を重ねていくべき点も出てきます。それらを1つずつ解決して、より良いものにしていくことが今の一番の課題です。ユーザーの期待を裏切ることがないよう、スピード感を持って対処していきます」
あらためて、中園は林業という新しい分野に挑戦したことで、社会課題への意識も高まったと話します。
「林業の課題を漠然と認識していましたが、今回の開発を経験してからは、積極的に情報を集めるようになりました。地球温暖化対策、山林の維持管理、担い手不足、収益構造などの問題は、個人で解決することが困難です。
ですが、いろんな人がそれぞれ努力してより良くしていこうとしている中で、機械はとても重要な役割を担っています。社会課題に対して大きな貢献ができる可能性を持っているからこそ、私たちは真摯に対処していくべきと思うんです」
そんな前田製作所という環境で働く魅力について、中園は次のように語ります。
「フレックスタイムやテレワークなどの制度があるので、子どもが体調を崩したときなどにも助かっています。同じ部署の仲間の支援をいただき育休も取得させていただく予定です。
また、英会話学習の支援制度も利用しています。自己研鑽や実際の海外のエンジニアやサプライヤーとのやり取りなどを通して、英語に対する苦手意識も軽減されました」
最後に、設計者にとっての会社の魅力と求める人材について、中園は自身の想いとともにこう強調します。
「当社の設計者は、1つの機械が世に出るまでの全工程に携わることができます。実際に操作して動かしたり、現場に行ってユーザーの声を直接聞いたりと、機械全体をいろいろな角度から見られるのが特徴です。
そういった視点で幅広く機械に関わりたい人には理想的な環境だと思います。ぜひそのような方とともに、この先のものづくりをできれば嬉しいです」
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
