成長する力を現場で育む。10カ月の新入社員研修でめざす前田建設工業の“人づくり”
人的資本経営の実現に向けて、人材育成に力を入れてきた前田建設工業。ビジネス共通スキル、それぞれの職種で必要となる専門スキルや知識を幅広く学ぶことを目的に、約10カ月間に及ぶ新入社員研修を実施しています。
芳賀:4月にインフロニアグループ合同入社式・研修を経て、前田建設の新入社員全職種合同で導入研修を行い、会社の制度、コンプライアンス、情報リテラシーなどについて学びます。その後、職種別研修を経て、6月初旬から実地研修ステージに移行し、現場の実務を経験します。
実地研修ステージの合間となる8月と翌年1月末の配属直前に再度約1週間の全職種合同研修を行い、2月1日に本配属を迎えるというのが大まかな流れです。
森本:長い時間をかけて実地研修を交えながら段階的に知識を身につけることで、入社前の仕事に対するイメージと本配属後のギャップを小さくすることにつながります。また、新入社員同士のコミュニケーションの機会も豊富で、チームワークが醸成されやすいことも、この研修の大きなメリットのひとつです。
今田:実地研修では全国各地の複数の部署を経験するため、ある程度の人脈が形成されます。研修時にお世話になった先輩や上司と、ジョブローテーションで再び一緒に働くことになるケースもあり、早い段階で全国の本支店で知り合いができることも、この研修の大きな利点だと考えています。
前田建設工業の人材育成の根底にあるのは、「個の力」の向上。当事者意識を持ち、現場に甘んじることなく挑戦を続け、継続的に成長できる力を養うために、人事部では試行錯誤を重ねてきました。
芳賀:社長をはじめとする経営層からは、専門的な知識にとどまらず、研修を通じて広い視野を身につけてほしいという意図があります。また、人材育成の視点を持った人材がやがて上司・先輩となり、現場や若手に良い影響を与えていくことも、この研修プログラムの狙いのひとつです。
社内では「もっと早く現場に出すべきではないか」という意見もある中、新入社員が将来活躍できるためにはどのように社会や仕事の厳しさを伝えるべきかを常に検討しながら進めています。
森本:当社には、「ものづくりの原点は“人づくり”」という考え方があります。社員の成長が会社の成長につながるという信念のもと、自ら成長できる人材の育成をめざしています。
今田:会計や人事などのコーポレート部門の業務においてBPO・BPRが進む中、事務系社員はさらなる付加価値を生み出す仕事が求められ、新たなキャリアパスの模索が課題となっています。新入社員がどのような経験を積むべきかについて常に検討を重ね、土木や建築部門とも協力しながら取り組んでいる状況です。
実地研修で養われる現場力。座学×実践が成長の足がかりに
新入社員研修では、土木・建築・事務の3つの分野に分かれて専門研修と実地研修が実施されます。このうち土木分野では、教育長の芳賀が中心となって、土木事業本部と連携しながら研修内容の企画と運営を行っています。
芳賀:土木の実地研修では、出身地や出身大学の所在地とは異なる地域で、2つの現場を経験します。各現場では先輩職員(ほとんどが10年次以下の職員)がトレーナーを務め、OJTを通じて現場業務を学びます。
安全や品質などに関する座学が中心ですが、「実践的な内容をもっと経験したい」という新入社員の声を受け、今期からはU字溝の設置やコンクリートの打設といった実際に自分達が手を動かす業務を新たに取り入れました。
さらに、実際の現場で使用している図面や写真を活用したり、書類の作成を実践してもらったりと、座学においてもリアリティのある現場に直結した内容の研修を心がけています。
積極的に新しいことに取り組もうとする新入社員もいれば、そうでない新入社員もいます。個別指導も適宜取り入れながら、全体最適をめざしているところです。
建築分野の教育長を務める森本。施工管理業務の経験をしっかり積んだ6人のインストラクターと共に研修での指導に当たっています。
森本:座学だけでは知識が定着しにくいため、私たちも実地研修に力を入れてきました。たとえば鉄筋工事について学ぶときは、鉄筋の種類や組み方を学ぶだけでなく、図面を持って現場に出て、実際に目で確かめてもらうようにしています。
建築の分野でも実践的な研修へのニーズは高く、2024年は昨年よりも実地研修の期間を延ばしました。実際に現場へ配属される研修ステージでは、新入社員が担当業務を任され、責任ある立場で職務に携わります。主体的に行動し、発注者や協力会社の職人さんと関わることが、新入社員にとって大きな学びにつながっていると感じます。
また、3カ月に1回のペースで個人面談を取り入れてきました。アドバイスしたり相談に乗ったりしながら、新入社員それぞれの特性に合わせたサポートに努めています。
そして、事務分野の教育長を務める今田。知識やスキルの拡充だけでなく、新入社員が新しい環境にスムーズに適応するための準備にも注力してきました。
今田:事務系新入社員は、6月下旬から約1カ月間、土木系新入社員と共に現場業務を担当します。ものづくりの最前線でどのように事業が行われ、何が起きているのかを知らなければ、会社全体をマネジメントしていく立場として最適な施策の立案や技術者が活躍できる環境をどのように構築すべきかイメージがもてません。新入社員研修で厳しい環境に実際に身を置き、現場感覚を掴むことは重要なプロセスだと考えています。
続く8月からの第1タームと11月からの第2タームでは、2班に分かれて本店の各部署と各支店の業務を経験します。インフロニア・ホールディングスの各部門や前田建設本店のコーポレート部門、営業部門等でそれぞれの役割や仕事内容を学び、全国の各支店においては地域特性を感じつつ支店における管理、現場施工支援部門の仕事の進め方を学びます。
会社組織全体とその役割を広く体感し、人脈や知見を広げることが主な目的ですが、全国への仮配属に当たっては一度も実家を離れたことのない新入社員もいるため、さまざまな拠点や部署において業務を経験することは、不慣れな環境下における適応力を身につける上でも非常に有益だと感じています。
分野を超えた絆が財産に。10年に及ぶ継続的な支援で成長をサポート
教育長に就任する以前、それぞれ長年にわたって現場を経験してきた3人。新入社員研修に取り組む上で、それぞれ大切にしていることがあります。
芳賀:新入社員研修では、短い期間に複数の現場を経験することができます。これは、配属後にはなかなかできない貴重な体験です。自分なりの気づきや学びを得てほしいと伝えています。
森本:どの現場に配属されても即戦力として対応できるスキルを身につけてもらうことをめざしています。また、これまでに培った経験を共有したり相談に応じたりして、本配属前の不安を払拭することも心がけている点です。
今田:私は、この会社が土木や建築の現場によって支えられていることを、繰り返し伝えています。事務系社員は現場に携わる機会が限られている為、ものづくりの最前線で汗を流して働く人々の存在を常に感じながら、仕事に取り組んでほしいと考えています。
新入社員研修では、同期入社者の絆を深め、一体感を育むことにも力を入れてきました。分野を超えた交流は、以前もいまも盛んだと言います。
芳賀:全職種合同研修のグループワークは、職種混合で実施してきました。また、合同研修の際には毎回懇親会を開催するなど、異なる職種の同期と関わる機会も設けています。
森本:私自身も関東近辺で働く同期入社の仲間とは忘年会を行いながら、分野の垣根を越えて交流を深めています。働く場所が離れていても連絡を取り合う仲間もいて、業務で関わることも少なくありません。こうして助け合える関係があるのは職業生活において非常に心強いですね。
今田:私は当社に入社後、現場事務担当として関東や九州で都市部の現場、地方の現場を共に経験してきた中で、職種に関係なく横のつながりができました。数年後に同じ部署や現場で同期と再会することもありました。
私たちの時代の新入社員研修は短期間でしたが、いまの新入社員たちは私たち以上に太いつながりを築けていると思います。
また、前田建設工業では、新入社員研修後も定期的に年次研修を実施しています。
芳賀:私は10年次までの研修の主担当しています。3年次、4年次、5年次、10年次に1週間の集合研修を計画しています。2年次以降の社員のフォローアップは土木事業本部が行っているため、全員と面談することはありませんが、必要に応じて個別に対応しています。実際に連絡をくれる人は多いです。
森本:建築系も同様です。とくに、4年次や6年次の支店間ローテーションを控えた社員に連絡を入れるなど、必要に応じてサポートしています。
今田:事務系社員は比較的少人数のため、年次研修ごとに全員と個別面談を実施しています。また、キャリアパスを考えるきっかけになればと、2024年は業務内容の相互理解を深める目的で、全員が現在の担当業務について発表する取り組みを行いました。
人間力を育み、より強い組織に。より「個」を活かした育成の実現に向けて
現場経験を強みに、前田建設工業の明日を担う新入社員の育成に携わる3人。そのやりがいに触れながら、将来を次のように展望します。
芳賀:人事部に配属されてから、社内でのコミュニケーションの幅が大きく広がりました。役員クラスと直接話す機会もあり、自分の研修に対する考えを説明します。前向きな考えは快く受け入れてもらえます。現場とは異なる責任とやりがいを感じています。
実践的な研修内容が受け入れられやすい一方で、一般教養を通じて幅広い視野を育むことも新入社員研修の重要な役割です。専門知識だけでなく、社会人としての素養や当社の歴史なども自分ごととして受け入れてもらえるようなプログラムを実践していきたいと考えています。
森本:私は、人材育成の重要性を以前にも増して感じるようになりました。部下が成長すれば自分の助けにもなり、それが会社全体の成長にもつながることを実感しています。
また、土木系と同様に、建築系においても一般教養の必要性を理解してもらうことが課題です。一般教養を学ぶ重要性をしっかり伝え、納得した上で積極的に取り組んでもらえる流れをつくっていきたいと思います。
今田:人材育成に正解はなく、10人いれば10通りの教え方があります。手間はかかりますが、新入社員や若手職員との面談を通じてこちらが教えられることも多く、非常に学びが多い環境です。
今後の研修では、仮配属先でも確実に貢献できるよう、新入社員が積極的に業務に取り組む姿勢を後押ししていきたいと考えています。とくに、先輩や上司に限らず共に働く仲間に対する敬意のあるコミュニケーションができるようになるなど、社会人としての基本スキルの向上に力を入れていくつもりです。
そして最後に、教育長として新入社員研修をリードする立場から、未来の仲間に向けてこう呼びかけます。
芳賀:当社では一人ひとりを手厚くサポートする体制が整っています。ものづくりをしたい方、新しいことに挑戦したいと思っている方は、臆することなく飛び込んできてほしいですね。
森本:当社の新入社員研修は非常に長く、各年代の研修も含め充実しているのが特徴です。当社は、成長機会をたくさん提供しますので、努力した分だけ成長が実感でき、見返りもある会社だと思います。ぜひ当社でご自身の力を発揮してください。
今田:充実した研修やサポートがあることに加えて、コンセッション事業をはじめ、当社には他の建設会社にはないさまざまな分野の業務に携われるチャンスがあります。幅広い業務に挑戦したい人にとって、またとない環境です。共に成長できる方と出会えることを楽しみにしています。
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
