リニア中央新幹線のトンネル掘削工事の施工計画と管理を担当
前田建設工業の東京土木支店梶ヶ谷シールド作業所に所属する井澤。2022年からリニア中央新幹線が通るトンネルの施工計画と管理業務を担当しています。
「リニア中央新幹線のルートは、東京と名古屋を結ぶ286kmのうち約9割がトンネルで、当社はそのうち12kmのトンネル施工を担当しています。シールドマシンと呼ばれる大型の掘削機で土を掘ると同時にトンネルの壁を覆工するシールド工法と呼ばれる工法で進めており、私は主にその施工計画を行っています。
設計図をもとに、どのタイミングでどの機械や設備を使ってどの協力会社の人たちに施工を依頼するかを決めるのが施工計画です。資材や設備の調達、工程作成、予算算出といったマネジメント業務にも取り組んでいます」
リニア中央新幹線の施工プロジェクトは、前田建設工業でも過去に類を見ないほどの大規模案件です。工事が始まってから5年以上が経過しましたが、いまもチームは拡大し続けています。
「私はこのプロジェクトに2年前からアサインされましたが、チーム規模は当時よりもさらに大きくなっています。現在は施工管理メンバーだけでも40人ほどで、今後もさらに増員する予定。施工計画のほか、設計、施工管理、事務など、各分野から集まっています」
あらゆる専門性を持つメンバーが集まる中、井澤はシールドマシンに関わる領域を任されています。
「トンネルを掘る工法はさまざまですが、シールド工法は都市部で採用されるケースが増えています。ダイナマイトや重機による掘削に比べ、道路が真上を通っている土地や、陥没リスクが高い場所、土がゆるい場所でも、周辺環境に悪影響を与えずにトンネルを掘れる利点があるからです。
私は入社以来10年間でシールド工法の現場を3カ所経験しました。シールドマシンに関わる特殊な施工計画を得意としているので、シールドマシンに関わる計画はなるべく私が担うようにしています」
機械工学出身ながら、世界にひとつだけのものをつくりたいとゼネコンへ
もとは数学教師を志して大学へ進学した井澤。機械工学を学ぶ中でものづくりへの情熱が芽生えますが、興味の矛先は同期たちと少し違っていました。
「機械工学部の同期の多くが自動車メーカーを志望していましたが、私は世の中にひとつしかないものをつくりたいと思っていたんです。インフラ施設なら完成後も自分の目で確かめることができ、地図に長く残る。そんなところに惹かれ、土木工事を手がけるゼネコンを志しました」
中でも、社員の人柄の良さを感じたことが前田建設を選ぶ決め手になりました。
「就職活動ではゼネコンの社員とたくさん会い、いろいろな現場を見学しましたが、どの現場に行っても人柄の良さを感じたのが前田建設でした。入社後も当時の印象は変わっておらず、コミュニケーションが活発で、会議で対面したり一緒に食事したりする機会も少なくありません。若いメンバーも多いですし、フラットでとても良い関係性が築けています」
現場で機械や電気の配置や計画を担う「機電職」として入社した井澤。土木の知識がなく、工具の名前から土木工事の考え方まで、最初の現場で一から学ぶ必要がありました。
「最初の現場となったのは北海道支店白川シールド作業所です。定山渓(じょうざんけい)の浄水場から札幌市内に水道水を送る水道管が老朽化していたことから、新しい水道管を通すトンネルを新設する工事でした。
『土木は経験工学』という言葉がある通り、教科書で勉強する以上に、現場で実際に土を触りながら経験することが大切だと言われています。知識ゼロからのスタートでしたが、現場で学びながら、ひと通りの仕事ができるようになりました。土木を専攻していない人でも、当社には充分に学べる環境があると感じます」
2年目には早くも独り立ちを経験。着実に成長を重ねてきました。
「2年目に機電職の先輩が異動して、その現場の機電職が私ひとりになってしまったんです。自分ひとりで施工計画を立てることに不安もありましたが、結果的に大きく成長するきかっけとなりました。
また、入社5年目には、東北支店石巻シールド作業所で工事の前段階からシールド工法の施工計画に携わりました。失敗も多く経験しましたが、現場が私を大きくしてくれたと思っています」
シールド工法はおもしろい。裁量が大きいからこそ、得られる達成感がある
知識と技術を地道に積み上げ、現在ではシールド工法のスペシャリストとして頼られる存在へと成長した井澤。シールド工法の魅力を次のように語ります。
「シールド工法では、シールドマシンを搬入したり地上へ土を搬出するために縦穴を掘ったりする必要があるほか、堀り出した土を処理する大規模な地上設備など多くの仮設備も必要です。その縦穴や仮設備をどう構築していくかに正解はなく、独自のアイデアで施工計画を策定できるところにおもしろさを感じています。
また、予算規模が大きいため、大きな金額を動かせる機会があるのも貴重であり、この仕事の醍醐味です」
一方で、現場は常にトラブルや危険と隣り合わせ。井澤に与えられる裁量が大きい分、責任も重大です。
「施工計画が不十分だと、多くのトラブルにつながります。土を掘りすぎて地上の道路が陥没してしまったり、掘り進めた先でほかの物体と干渉して施工をストップさせてしまったり。さらには、使い勝手が悪い機械の配置のやり直しや、作業員の方の怪我に至ってしまう事態にも。現場では、命の危険と隣り合わせであることを常に肝に銘じながら、計画と管理に注意を払っています」
しかし、緊張感があるからこそ、達成感も大きいと言います。
「トラブルやリスクを乗り越えてプロジェクトを成功させたときの達成感は、ゼネコンだからこそ味わえるものです。この仕事のやりがいは、ほかのどの仕事と比べても格別だと思います」
何事も決して投げ出さず、唯一無二の挑戦を追い求めて
キャリアを通じて幾多の難題も乗り越えてきた井澤。仕事をする上で、確固たる信念があります。
「自分でやると決めたものは最後まで投げ出さない。これが私のモットーです。いままでトラブルも数多く経験し、何度も心が折れそうになりましたが、完成したときの達成感が私を支えてくれました。『世界にひとつだけの構造物をつくりたい』という入社当時の想いは、いまも変わらず私の心の中にあります」
一方、転勤が多いものの、「苦に感じていない」と井澤。それぞれ転勤先での住環境は、この10年で大きく改善してきていると話します。
「私が入社した10年前、現場の宿泊施設が相部屋のときもありましたが、最近はどの現場でも個室を用意してもらえるようになりました。とくに住環境では会社のサポートが進んだと痛感しています。
また、私は釣りが趣味で、転勤先である北海道、東北、関東各地で釣りポイントを開拓してきました。いろいろな場所に行く仕事だからこそ、その土地ならではのプライベートライフも楽しめています」
これからもシールド工法の現場で経験を活かしていきたいと話す井澤ですが、こんな目標も。
「40歳くらいまでに作業所の所長になることをめざしています。理想は、いまの現場の所長のような存在になることなんです。40人のメンバーを束ねながら、協力会社への働きかけだけでなく、新規案件獲得の営業活動や、別の現場の統括までひとりでこなしているから驚かされます。
私もそんな所長のように、一作業所の所長を超えて頼られる存在になりたいと考えています。そのためにも、シールド工法の経験を積み上げるだけでなく、知識を幅広く学べるようどんなことにも積極的に挑戦していきたいです」
人々の暮らしを支え、世界にひとつしかない構造物をひとつでも多く世に送り出すために。井澤は今日も現場と向き合い続けます。
※ 記載内容は2024年1月時点のものです
