手探り状態だった初期から製図ができるようになるまでの1年
20台のパソコンが整然と並び、女性社員が画面を注視しながらキ―ボ―ドをたたく──。
制御盤や高圧盤などの盤メ―カ―であるアイベステクノでは、全拠点合計で35名のCADオペレ―タ―が盤の外形図や回路図を製図しています。
電気関係を扱う企業ながらも、この部署のほとんどは文系出身の女性で構成されており、見たこともない図面や記号にはじめはとまどいながらも、徐々にスキルや知識を身につけ、順調に成長してきたメンバーが多く存在します。
高梨は2021年4月に入社し、実配属まで3カ月の研修期間を過ごしました。将来どの部署に配属されたとしても、考え方の基本となるのは製品そのものであるため、研修期間に生産部での軽作業を通じて、しっかりと製品や部品現物に向き合いました。そして7月、生産設計課CADグル―プに配属。
高梨 「初めのうちは、日々、自分が何をしているのかさえさっぱり分かりませんでした。製品図面を製図するとはいえ、製品自体が身近なものではありませんし、分野としては苦手な電気ですし……。毎日手探り状態でした」
先輩の指示をこなすだけで精いっぱいでしたが、徐々に、小さく簡易な盤の製図を任されるようになり、2年目の2022年10月現在は比較的大きく複雑な盤を担当することもあります。
高梨 「何のための図面か、何をするための盤か、どんな部品が必要なのかをわからないなりにも考えて、仕事に取り組むようにしていました。ただただ先輩からの指示に従うだけでも作業はできますが、それでは自分自身が納得できないので、考えたり質問したりすることを習慣としていました。そのためか、少しずつですが物事の関係性が理解できるようになってきたんです」
持ち前の探求心や、疑問に感じたことをすぐに質問する素直さが、成長へとつながっていきます。
思いがけず出会った設計職。父と仕事の話を分かち合える喜びも
大学で英語を専攻していた高梨は、そのスキルを航空業界やホテル業界で活かしたいと思い、就職活動に挑んでいました。
ところが活動期間である2020年は、コロナ禍により高梨の志望業界は採用中止が相次ぎました。そのため、志望していなかった業界にも視野を広げ、大学の卒業生が多い企業を調べたところ、アイベステクノにたどりついたというわけです。
高梨 「アイベステクノの業界や業種に興味はなかったのですが、大学のOGが複数名いるとのことだったので、軽い気持ちで会社見学に行きました。会社の説明や見学をひと通り終えて、人事担当者や代表と話をしたのですが、他社とは良い意味で、まったく違った印象を受けました。
他社の面接では、試されるような質問や物言いが多く、就職活動の厳しさを痛感していたので。面接である以上は当たり前かもしれませんが、評価する側とされる側の隔たりがあまりにも大きいと感じていました。
しかしアイベステクノでは、まず私がどういう人物で、何をしてきたかに興味を持って質問し、私自身を知ろうとしてくれているのが、とても伝わってきました。萎縮したり、かしこまったりせずに、私自身の言葉で話すことができたと思ったんです。その後、他の大手企業からも内定をいただきましたが、気持ちはアイベステクノに向いていたので、内定承諾しました」
また、高梨がアイベステクノを選んだのには、もう一つ理由がありました。
高梨 「私の父も制御設計の仕事に携わっていたことがあったんです。父のことは仕事人として憧れてきましたが、父は理系、私は文系なので、仕事が共通の話題になることはないだろうと思っていました。しかし、今それが実現していることが嬉しく、誇らしい気持ちにもなりますね」
当初の希望とは遠く離れた決断でしたが、結果的に良い点に着地したようです。
仕事を大事にしたいから。一大決心して職場の近くへと転居
入社前の高梨は、仕事に対する情熱や考えもなかったと言います。
高梨 「普通でいいや、と思っていました。指示されたことをソツなくこなし、無難に過ごしてお給料をもらえればそれで良しと。もともと好きなことに対しては一直線に突き進む性格ですが、仕事に打ち込む自分は想像できませんでした。
しかし、自分でも不思議なんですが、いつの間にか仕事にのめり込むようになっていて、無難にこなすよりも、もっと入り込みたい、もっと楽しく仕事をしたい!という欲や、任せてもらったことに応えたい、その上を目指したいと強く思うようになったんです。自分に起きたギャップに、自分が一番驚いている状態です(笑)」
仕事に集中したい一方で、弊害も生じました。自宅から職場までが遠く、アクセスの悪さも相まって、片道2時間かけて通勤しているのが常でした。さらに残業すると帰宅時間が大幅に遅くなることもあったといいます。
高梨 「帰宅時間を理由に仕事をセ―ブしたくないものの、気持ちに余裕がなくなり仕事自体をつらく感じることも避けたかったです。どうすべきか、ジレンマを抱いていましたね」
そんな状況が半年ほど続いたある日、同期の社員と高梨のどちらか1人を、自宅近くの事業所へ転勤させる話が持ち上がりました。願ってもないチャンスであり、高梨はすぐさま家族に相談しました。
高梨 「家族も当初は、今住む自宅に近い転勤の話自体には賛成だったと思いますが、もっと今の仕事を継続して極めていきたい、という私の考えを尊重してくれました。転勤してももちろん仕事はできますが、より確かなものを身につけるためには現在所属させてもらっている本社での環境がベストです。
なので、思い切って自分が会社の近くへ引っ越そうと考えたんです。進学の際には自宅から通える学校でなければ認めてもらえませんでしたが、社会人として自立した今、私の気持ちを最優先に考え後押ししてくれました」
それから数カ月後、高梨は会社の近くに転居し、ますます仕事に情熱を注いでいます。
CADグループで成長し、今後はこれまでのスキルも活かす未来へ
ときに失敗することもありますが、今の仕事や職場環境が好きだと高梨は言います。
高梨 「CADグル―プはほぼ女性しかいませんが、皆、責任を持って自分の仕事をこなしています。補助的な業務に留まるだけでなく、自らが主役として堂々としているんですね。中には子育てと両立しながらの方もいますが、かっこいいなと憧れます。
また、私が思うアイベステクノのいいところは、どんな状況でも絶対にやり遂げるという社風。一人ひとりの仕事に影響力があって、それが見えやすいのも、中小企業ならではの良さですし、その一員として誇らしく思えます」
まだ2年目ながらも、仕事や会社について高梨は真摯にとらえています。そんな高梨に今後のビジョンを聞いてみました。
高梨 「CADで仕事を続け、スキルアップしたいと思っています。今はまだまだ先輩に教えてもらう側ですが、数年後後輩に教える側になることもあるでしょう。
かつての自分と同じように、右も左も分からない状態で入社して、自分が抱いていたような疑問を投げかけられたときに、的確に答えられるよう知識を蓄えないといけませんし、『わからない感覚』も忘れないようにと思います。初心忘るべからず、を心がけています」
さらにこうも続けます。
高梨 「この仕事を選んだと同時に、英語を使う仕事に就くことはあきらめていました。現在も英語を使う機会はほとんどありません。しかし、当社の製品は海外へも輸出されますし、海外の顧客もいます。
そこに私も携わり、いつかはメインで任せてもらえるようになりたいです。新たにビジネス英語も習得しなければなりませんが、目標が増えることでモチベ―ションもあがりますし、大学まで行かせてくれた両親も喜んでくれると思うんです」
働くことへの前向きさ──高梨の言葉は、人が働くうえで社歴の長さは関係ないのだと教えてくれます。
内に秘めた芯の強さを大切に、高梨のさらなる成長を期待せずにはいられません。
