目に見えないものをつくりあげて、今と未来の産業を支える
アイベステクノは兵庫県姫路市に本社を構える制御盤メーカーです。盤製造だけにとどまらず、FA(=Factory Automation)という分野のソフトプログラミングにおいても、業界で存在感を示しています。
FAとは「コンピュータ制御技術を用いた工場の自動化」を意味し、効率的で安定的な生産性の向上や、人手不足対策としての省力化を実現するために、すべての製造業界にとって不可欠な要素です。
当社のFA部門は、主に工場で機械そのものを操るプログラムを製作する「FA設計課」と、工場全体の状態を俯瞰的に可視化するシステムを構築する「FAシステム課」に分かれており、後者に所属する二人に、自身の仕事や価値観について語ってもらいました。
高橋 「仕事は大きく分けて、社内に対するものと顧客に対するものがあります。社内に対する仕事は、社内の通信設備やサーバーの管理、各事業所などの拠点との社内運用システムの統一化などがあります。細かいものでは、社内用の個人パソコンや携帯電話の設定も行います。ザックリ言えば、通信設備の環境を整えたり、より良くしたりすることですね。
一方、顧客に対する仕事を一言で表すと『工場の稼働状態を見える化する』ということです。たとえば、コンクリートの製造工場があったとします。コンクリートを作るために、どんな材料がどのくらいの量必要かという資料や情報を得て、それらをシステムに登録しておきます。
その後、機械を動かして調合する際、センサーなどで常に状態を監視し、機械をコントロールします。材料の特性(粘り気、混ざりやすさなど千差万別!)や、経年劣化など機械そのものの状態によって、ものの状態は絶えず変化するため、人の感覚では判別しきれない状態をセンサーや計器で測定するためです。
異常があれば、その情報を機械に知らせて自動調整させたり、人に知らせたりします。製造工場の映像を見ると、機械が自動で動いているように見えますが、『こうなればこうする、この場合はこう動かす』など、実はすべては組み込まれたプログラムに従って動いているんです」
機械は自分自身で考え、動くことはできません。工場が安定して稼働しているのは、人がコツコツと作りあげた複雑なプログラムによるものだからです。
学生時代の学びや個々のスキルを活かせる環境
専門的な分野であることは間違いありませんが、どのような人がこの仕事に向いているのか、二人の経験も交えて語ります。
馬場 「大学では電気電子情報工学科に所属していました。多くの場合、電気は電気、情報は情報と学科が分かれていることが多いですが、幸いにも僕の大学では統合されていたので、さまざまなことを学べました」
高橋 「僕は情報システム工学を専攻していました」
馬場 「FAシステム課では、情報系の知識が活きていると感じることが多いです。もちろん電気の知識も広い意味では役に立ってはいますが、この部署で仕事をする上では、情報系の授業で学んだことが延長線上にあるのかなと思います」
高橋 「たしかに。一方のFA設計課は、理系の素養がある人や、文系であっても数字に強い人であれば向いていると思います。理系出身者が多いのは事実ですが、入社の時点では専門の知識を履修している必要はないし、数年間しっかりと取り組めば、複雑なプログラムも作り上げられるようになります 」
また、職場環境についてはこう語ります。
馬場 「会社の中でも、ある意味特殊な部署かもしれませんね。他部署からは話し声や笑い声も聞こえてきますが、僕たちは一人ひとりが黙々と仕事に向かっている感じです」
高橋 「どんな仕事をしているか、社内でも知らない人が多いかも(笑)。チームで仕事をするというよりは、個々人がまったく違った案件を担当しているので、一概にこの仕事をしています!とも言えないんですよね。出張で不在がちなこともあって、さらに個が強くなってしまうのかもしれません。その分、好きなようにのびのびと仕事ができるというメリットもありますが」
馬場 「僕はまだ下っ端なので重大な仕事は任せてもらえないですが、上司が個人のスキルを的確に把握していて、こなせる範囲の仕事を割り振ってくれます。なので、仕事の成功体験が積み重なりますし、モチベーションも上がりますね」
チームワークではなく時間を共有する機会も少ない部署ですが、仕事をする上ではメリットがあり、個人の成長につながりやすい環境だと言えます。
自分が仕事を楽しむため──資格取得でスキルと自信を得る
2022年、馬場は国家資格である「ITパスポート」「情報セキュリティマネジメント」「基本情報技術者試験」をほぼ同時に取得しました。実務をこなしながらも、資格取得に挑戦した理由をこう振り返ります。
馬場 「理由は二つあります。一つめは知識を広げるため。僕はまだ仕事らしい仕事を始めたばかりですが、ただやみくもに日々の業務をこなすのではなく、その業務が何にあたるのかを考え、少しでも理解しながら進めたいと思ったんです。
二つめは、勉強習慣を身につけるため。その場限りの意思ではなく、習慣として自分自身に定着させたかったんです。就業後には一日一時間は必ず集中して取り組む、15分でもいいので、とにかく毎日続けることです」
約半年間コツコツと努力を重ねた結果、すべて見事一発合格となりました。馬場は取得後の自身の変化をこう語ります。
馬場 「これが仕事で役だった!と実感することはまだないのですが、少し自信はついたと思います。知識が増えたこと、計画的に物事が進められたこと、意志を継続できたことなど、僕もやればできるんだと思いました。と同時に、思っている以上に自分の無知さも痛感しました。これからもまだまだ勉強を続けます!」
努力の末に多くのものを得た馬場は、生き生きとした笑顔を見せてくれました。
先々を見つめて最適解を導き出すために、これからも自己研鑽に励む二人
目に見えないものをつくる、縁の下の力持ちのような仕事。専門性が高く、一般的には理解されにくいことも。
しかし、彼らは仕事への想いをこう語ります。
高橋 「当社の事業の基本は盤製作なのですが、昨今の半導体不足により、盤に組み込む電機部品の多くが入手困難な状況が続いています。ほぼ完成しているのに、残り数個の部品が入荷しないために、盤として出荷できない案件が多くあります。そのことを考えると、必ずしも盤を必要としない装置のソフトウェア製作も重要になってくるのではないかと思うんです。
たとえば、小さなシステムであればパソコンが1台あれば構築できるので、パソコンさえ入手できれば、あとは中身であるソフトウェアを製作するだけで済みます。また、この分野で使用するパソコンは汎用のものよりも耐久性が高いため、ソフトウェアの更新だけで新しいシステムに切り替えることも可能です。何かが滞ったときに、ただなりゆきに任せるのではなく、どうすれば切り抜けられるかを考えたいんですよね」
馬場 「僕はもっともっと経験を積むことが必要ですが、ゆくゆくはランクアップもしたいですね。日々の業務を着実にこなし、引き続き自己研鑽にも力を入れます。その結果を評価してもらえたら嬉しいですね」
自分自身の仕事に誇りを抱き、今日も黙々とプログラミングに没頭します。