何も考えずに飛び込んだ世界。ただがむしゃらに働いた日々
2005年2月にアイベステクノに入社した吉岡の誘いを受け、その1カ月後に上田が、2006年2月に川田が入社しました。彼らもまた前職で同僚関係で、それぞれに新天地を求めて模索していたタイミングでの誘いでした。特段の下調べもせず、文字通り新たな世界に飛び込んだ2人は、当時の様子をこう語ります。
上田 「当初は営業職として入社したものの、いつの間にか設計職に従事していました。というのも、当時は今の1/3程度の規模の小さな会社だったこともあって、いろんな人がいろんな業務を掛け持ちしていました。また、私自身もまだ営業として一人前の仕事ができるわけではなかったので、設計職の手伝いをしているうちに、徐々に軸足が移っていったのです。大学時代は文系でしたし、電気の知識もゼロでしたが、もうやるしかなかったですね」
川田 「右も左も分からない中で、与えてもらった仕事に必死で向き合い、取り組んでいました。入社2年目のころ、非常に大きな設計を担当させてもらうことになったんです。今思えば無謀でしたし、今の私であれば経験の浅い部下にはとても任せられない仕事でした。
しかし当時のアイベステクノは、トップの号令一つで物事が決まり、それに対して一致団結してみんなが動く社風でした。先輩や周りの方々に助けてもらいつつ、ただただ目の前の仕事を精一杯こなす中で、仕事のおもしろさも感じるようになりましたし、大いに勉強させてもらった時期でした」
手厚い育成教育などがなかった当時は、まさに実務を通じてスキルを身に付けるOn the Job Trainingの日々。しかしそこで培われた力が、のちのアイベステクノの飛躍へとつながっていきます。
変化を実感。管理職としての想い
2023年現在、年間売上高や社員数は彼らの入社当時の約3倍となり、拠点拡大も推し進めて順調に成長してきたアイベステクノ。その一方で、さまざまな変化が表れるようになったと川田は言います。
川田 「社員数が増えるということは、多様な意見を持った人が増えることでもあります。また世代もさまざまなので、仕事に対する価値観そのものが大きく違う場合もあります。それゆえ、一致団結することも難しくなってきていると実感します。集団の規模が大きくなるにつれて起こり得る自然な現象ではありますが、考えさせられることも多いんです」
だからこそ、川田には心がけていることがあります。
川田 「『人は気持ちで動く。個人の力が発揮されるかどうかは、モチベーションで決まる』と私は考えています。しかし残念ながら、まだ力を最大限に発揮できていない部下がいて、私が彼ら、彼女らのモチベーションを上げきれていないんだと反省する日々です。
また、自分に成功体験があれば、その方法を押しつけてしまうことも私の悪いクセなんです。一方通行の発信では伝わらないし、結果に至るまでのプロセスは人それぞれの方法で良い。一人ひとりとコミュニケーションをとって人柄を知り、個々に合わせた方法でアプローチしていくことを心がけています。適材適所の人材配置や、力を発揮できる環境づくりをさらに進めていきたいですね」
上田もこのように語ります。
上田 「私も若い部下たちと接するときには、悩みを抱えていないか、どういう仕事を担当しているかなど、個々の状況を常に考えます。1対1で話ができる関係性を築いてこそ、彼ら、彼女らが耳を傾けてくれるアドバイスができますし、そのためには私自身がオープンな存在でいようと心がけています。
もう1点は、失敗を恐れずさまざまなことに挑戦し、経験を積んでほしいということ。しかしその一方で、会社規模が拡大するにつれて業務の分業化が進み、以前よりも就業時間の制約が厳しくなったという現実があります。限られた時間や業務の中でどのようにして経験値を増やし、成長へとつなげていくかが、私自身の課題でもあります」
時代の変化、会社の成長による変化、自身の立場の変化。「今」と「昔」が混在するさなかにおいて、ときに苦悩することも。それでも人材こそが成長の礎であるからこそ、2人は積極的に人に関わり続けます。
アイベステクノにおける今後のモノづくりとは
アイベステクノのすべての製品は、顧客の仕様にあわせたフルオーダーメイド。その特長を活かしてここまで成長してきましたが、技術職である2人は今後をどう見据えているのでしょうか。
川田 「さまざまな業界に飛び込み、顧客の要望に応えたモノづくりをする。1つの製品を作るためにすべての図面をイチから製図するスタイルは当社の強みでもありますが、効率をよく考えて取り組む必要があります。今のような会社規模となり、さらなる成長をめざすためには、今後も同じやり方を継続していくのは難しいと考えます。
また、すべてを顧客の仕様に合わせるということは、当社独自のモノづくり基準が確立しないということでもあります。当社のモノづくり基準をしっかりと定め、標準仕様を策定した上で顧客の要望を組み合わせるセミオーダーメイド方式であれば、顧客の要望にも応えつつ効率化や省力化、納期短縮や品質の安定化に大きく貢献します」
さらに標準仕様化の重要性をこう続けます。
川田 「盤に必要不可欠な板金筐体の製造は、複数の外部加工業者に委託しています。一つひとつの製品図面を都度板金業者に送り、その図面をもとにオーダーメイドで製造してもらっています。そのため、業者側は作り置きができず、繁忙期には製作に遅れが生じる可能性もあります。
また、業者によって独自の加工方法や得手不得手があり、塗装や溶接などの熟練した技術の継承も人材不足のため難しいと聞きます。これらの問題は当社の品質のバラつきにもつながりかねません。
そこで、当社が筐体構造の標準化や簡易化を進めることで、業者側は閑散期に作り置きが可能になり、安定した売上高を維持できますし、当社も筐体入荷までの期間短縮や、どの業者に委託しても安定した品質の筐体を入手できるなど双方にメリットが生まれるんです」
上田は次のように考えています。
上田 「当社には突出した技術力や設備はありませんが、チャレンジ精神は旺盛です。たとえば、当社で対応できるかどうか……という案件も、とりあえず受注してから対応を考えようという社風です。結果的に収支が合わず大赤字になる場合もあるのですが、それでも挑戦し、やりきることを重視しています。お金ではない何かは社内に残るので。
また、当社で前例がない新しい分野の案件や社内独自で研究開発している分野もあり、絶えず挑戦し、変化し続けています」
創業以来の強みも活かしつつ、現在直面する課題解決につなげる新たな試み。生みの苦しみもともないますが、さらなる成長のためには突破しなければならない壁があります。
価値ある会社で天職に出会えた
入社以来絶え間なく走り続けてきた2人は、今までとこれからをこのように語ります。
川田 「私自身は良い会社に入ることができたと思っています。共に働く社員は温かく、環境も申し分ない。当社製品の制御盤や高圧盤を一般の方に認知してもらうことは難しいですが、『姫路のアイベステクノ』がもっと広く認知されるようになってほしいんです。その価値がある会社だと思っています」
上田 「入社してから今も、ただ目の前の仕事に一生懸命に取り組み、製品が完成したときの達成感は何度経験しても薄れません。社員や顧客など周囲にも恵まれ、日々人間として学ばせてもらっています。転職したからこそ、天職にめぐりあったと思っています」
前職のころは想像もしなかった今の自分の姿。ただがむしゃらに働き続けてきた2人の足元にはしっかりとした道筋が刻まれ、次のアイベステクノへと続いています。
※ 記載内容は2023年5月時点のものです