新卒採用を担当した矢先、コロナ禍により痛感した現実
松井がアイベステクノに新卒で入社した2006年は、全従業員が120名ほどで、社屋も本社だけという、まさに「地元の中小企業」のころでした。取り扱っているものは、一般的な認知度がゼロの「制御盤」で、世間にはわかりにくい電気関係。社屋も古びてお世辞にもキレイとはいえない、華やかさとは無縁の会社でした。
そんなアイベステクノでしたが、徐々に売上高や従業員数が増加し、十数年後には大規模な製造工場を創設、各地に営業拠点を設けるなど順調に業績を拡大しました。
松井 「成長を肌で感じましたね。入社12~3年後には売上高も従業員数も当時の2倍以上になりました。その勢いには社員である私も驚くばかりでしたし、会社が活気に満ちていました」
入社後1年間はCADオペレーターとして、その後は営業事務や設計補助業務を経験しました。中小企業ゆえに、誰も経験したことのない分野も多く、その場その時にいる事務員が任されるのが常であるアイベステクノ。3年前から本格始動した新卒採用業務もその一つで、松井が担当することになりました。
松井 「以前から採用活動自体は会社として行っていましたが、専任の担当者はおらず、その時々で担当者が変わっていました。しかし、今後の事業拡大や一層深刻化する人材不足に対して、人材確保は本腰を入れるべき分野。右も左も分からないまま、新卒採用業務の専任担当となり、コンサルタントから教わりながらスタートしました」
業務を開始した半年後、コロナ禍で世の中が激変。それまで当たり前のように行っていた就職活動イベントや大学訪問など、ターゲットと対面する手法が一切封じられてしまいました。
松井 「コンサルからは、『とにかく人と接点を持つことが重要』と教えられていたので、学生と会えないのは道を断たれた気がしました。一方で、急速なオンライン化が進み、対面で行っていた会社説明や面談をWebで行うのが主流になったため、急いで資料を用意する必要がありました。
そこで気がついたことは、当社の訴求力不足とPR方法の無知さでした。Web資料を用意するにあたり、大手企業が作成している会社説明資料を参照しました。
すると、惹き込まれるようなスライドやキャッチーな動画など、『その会社をもっと見たい』と思える作りになっていたんです。これまで当社がしてきたことは、事業内容や自社製品などの情報を一方的に伝えることで終わっていて、学生が知りたがっていることや、それに対する答え、興味を持ってもらう工夫がまったくできていませんでした」
自ら背水の陣を敷き、最小限の費用で最大限の効果を狙う
打ち出し方のズレに気がついた松井。訴求力やPR力を上げるために、多方面から調べました。
松井 「まずは学生が知りたいことや、企業選びで重視している項目を探りました。すると、当社でも従来から実施している制度や風通しの良い社風など、既存のものがかなり使えることがわかりました。表現方法しだいで相手への受け止められ方は大きく変わるので、再発見した当社の良さを、言葉やデザインで輝かせることができればいいなと思ったんです 。
さらにわかったことは、『入社後の成長性の高さ』や『研修制度』、『20代から責任ある仕事を任せられるか』などを学生が重視しているということでした。反対に、当社が真っ先に挙げていた『事業内容』や『製品説明』の優先度は低い。
つまり事業や製品ではなく、どんな働き方やキャリアを積めるか、自分自身の将来像がイメージできるかを重視しているのだとわかりました。どんな人がどんな仕事をしているか、人にフォーカスした内容を打ち出す必要性に気づいたんです」
そんなときに出会ったのがtalentbookでした。
松井 「サービスの説明を聞きながら、私の頭の中には主役となる人材とストーリーがいくつか浮かんできました。メキメキと力をつけている中堅、他業界から飛び込んで努力を続ける若手、紆余曲折を経てしっかりと根を張る中途採用者など、彼ら、彼女らを紹介できると想像しただけでワクワクしましたね。もっと深く当社を知ってもらうきっかけになるはずだと確信し、すぐに上司に相談しました」
しかし、何をするにしても費用が発生するのは当然のこと。採用やPR活動は直接的には会社に利益をもたらす分野ではありません。そんな中で松井が心がけていることは常に一つだといいます。
松井 「最小限の費用で最大限の効果をもたらしたい。そのためには、できるだけ自分で動くこと。talentbookのサービスには当初漠然としたイメージしか持っていませんでしたが、とりあえず動き出すため、予算の承認をもらうべく、『私にお金を貸してください』とトップに切り出したんです(笑)。
当然失敗できませんし、多忙な他部署の方々を巻き込む以上は妥協したものにもしたくない。見切り発車でしたが、とにかく始めてみました」
背水の陣の覚悟で始めた原稿作成やインタビュー。初めての経験に戸惑うばかりだった松井。社員の協力を得て順調にリリースすることができました。
子育てをバックアップ。会社の想いに応えたい
ここからは二児の母としての視点から、アイベステクノを語ります。
アイベステクノの男女比は7:3、多いときは6:4となり、業界平均が8:2とされる中で女性社員が多いのが特徴です。産休・育休制度が完備されており、ほとんどの女性社員は制度を利用し、復職します。松井もその一人でした。
松井 「ママさん社員が多く、皆さんすんなりと復職されるので、制度の取得にあたって心配はなかったですね。二人目の育休期間は、育児にも慣れて少し時間的な余裕もあったので、たまに在宅ワークもしていました。
育休期間中の就業は私が初めてのケースで、2022年現在は他の育休社員も同様に就業しています。もちろん育児に専念したい人はそうすれば良いし、働きたければ働く。自分自身で選べるのが良いですね」
ワーママの一番の心配事ともいえる、保育園探しが不要だったこともとても助かったと松井はいいます。じつは、アイベステクノでは本社のすぐ近くに企業主導型保育園「アイランド」を運営しているのです。
松井 「これまでは、どうしても出産を機に辞めてしまう女性社員もいたんです。せっかくスキルを積み上げてきた大切な人材が辞めてしまうのはもったいない。何とかできないかと考えた末、2013年にアイランド保育園を創設しました。
社員の子どもだけでなく地域の子どもたちも受け入れつつ、小規模で細やかな保育をしてくれるので、安心して預けられます。何よりも、会社が運営しているので社員の事情にも理解があります。保育料の安さや給食提供なのでお弁当を持たせなくて良いことも大きなメリットですね。
もともと保育園運営のノウハウを何も持たない会社が、さまざまな申請や検査を経てようやく保育園の創設にいたりました。利益追求のためではなく、一途に社員のために。それには感謝しかないですし、報いるためには仕事を頑張ろうという気持ちになります」
社員に対する優しさや気配りが、社員を奮い立たせるきっかけとなり、とても良い循環ができていると松井は語ります。
変化する世の中に左右されずに選ばれる企業を目指して
目まぐるしく変化する世の中。とくにコロナ禍をきっかけに業務の難しさを痛感した松井は今後を次のように見据えます。
松井 「変化に柔軟に対応していかなければ、すぐに置いていかれてしまうことを採用の現場で目の当たりにしました。どんな状況でも選ばれる企業になるために変わらなければならないこと、守り続けるべきこと、相反することのバランスが難しいです。迎合することなく、素で勝負しても多くの学生に選ばれるような企業にするのが理想です。
当社は良い会社だし、少なくとも私は好きです。だからより広く多くの方に知ってほしいと思いますね」
業務時間は子どもの保育園のお迎え時間を考慮して、キッカリ定時まで。限られた貴重な時間だからこそ、一日一日の仕事を有意義なものにしたい。その一心で、松井は今日も会社の良いところ探しに明け暮れます。
