大好きなテレビに関わりたいとPR会社へ入社し、PRのおもしろさに目覚める
子どもの頃からテレビをはじめとするエンターテインメント領域に興味がありました。大学卒業後はテレビに関わる仕事がしたいと考えて、グループ会社に番組制作会社を持つPR会社に新卒で入社しました。
テレビ関係を中心に、お菓子メーカーやインテリア会社など、さまざまな業種のPR業務を担当し、パブリシティやイベント運営などを行っていました。
私は0から1を作り出すのはあまり向いてないものの、誰かがつくった1を10にしていくことには向いていたようで、PRの仕事のおもしろさに目覚めたんです。見せ方を考えて、広く伝えていくことは、とてもやりがいのある仕事でした。
その後、よりテレビに関わる仕事がしたいと考え、総合映像会社に転職しました。入社後はメディア事業部に配属されて、BSやCS放送のプロモーションを担当し、エンタメ畑一筋で15年間、広報・PRの仕事に没頭しました。
そんな私に転機が訪れました。私が社会課題に興味を持つきっかけとなったひとしずく代表のこくぼ ひろしとの出会いです。
当時、私は総合映像会社でPRプロモーションのチームリーダーになっていて、転職してきたこくぼがそのチームに入社研修で来たんです。研修後は別の事業部に在籍になったので、一緒に働いた期間は1カ月程度しかありませんでした。ただ、研修をきっかけに、時々一緒にごはんを食べに行って、いろいろな話をするようになりました。
月日は流れ、こくぼはその後に独立してひとしずくを立ち上げ、私は15年間勤めた2021年に地元の高知へ帰るために退職と、一度別々の道を歩むことになります。
退職する少し前にこくぼから、食を通して「生きるとは何か」を考える食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」が実施するセミナーに「おもしろい企画があるので、参加してみませんか?」と誘われたんです。
社会課題に関する活動に参加することは初めての経験で、セミナーには食や環境に対する意識を高く持つ人がたくさんいました。最後には自由研究の課題発表があり、私は詳しくないなりに独自に調査をして発表をすることにしました。当時はコロナ禍で、テイクアウト需要の増加によりプラスチックごみが増えるので、それについて私なりに調べたものでした。
その経験を通して私が強く感じたことは、社会課題への取り組みは素晴らしいと思うと同時に、「正しいことは広く一般にはなかなか伝わりづらい」ということでした。
エンタメ領域のPRを長年やってきたので、人に伝えるためにはそれがおもしろかったり、楽しかったりすることが重要だと身に染みてわかっていたんです。社会課題も同様に、関心の高くない人たちに認知してもらい、裾野を広げていくためにはエンタメ的な要素が必要だと思いました。
その経験から、私がもし社会課題に関わることがあれば、自分なりにおもしろく伝える手法を工夫して、それまでの自分のキャリアを生かすことができたらいいなと、当時はぼんやりと思っていました。
地元・高知を盛り上げる活動をきっかけにひとしずくの鹿児島県大崎町のPR業務に携わる
私の実家がある高知西部の中土佐町久礼は小さな漁師町ながら、かつおの一本釣りは400年の歴史がある町です。そこで地域おこし協力隊の一員として、久礼大正町市場で商店街の活性施策に3年間取り組む人材を募集していたので応募したところ採用されました。
そのことをこくぼに話したところ、「ひとしずくで鹿児島県大崎町のPRや広報支援の話があるのでやってみませんか?」と誘われたんです。
大崎町は20年以上にわたりリサイクルに取り組み続け、日本一のリサイクル率を14回も獲得している町です。もともとゴミの焼却処理場がなく、埋立処分場が満杯になってしまう可能性が出てきた場合、住民と行政の総意で焼却炉は作らず、ゴミを減らして埋立処分場を延命させようと決めたそうです。
私が話を聞いた2021年度に大崎町SDGS推進協議会が立ち上がり、SDGs推進や循環型のまちづくり「OSAKINI プロジェクト ~リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ~」をスタートして、その取り組みを世の中にも伝えようとしているところでした。
ただ、運営の方達は広報畑の方がいなかったので、ひとしずくが伴走支援の形で広報を担うことになり、こくぼから話を聞き強く興味を持った私が担当することに。地域おこし協力隊は副業が認められているので、普段は高知で働きながら、週に1日だけひとしずくで働く業務委託契約の形で参画しました。
通常PR会社が支援するような「メディア露出を高めるための施策を考える」というよりも、未経験のメンバーに広報の基本を伝えるほか、社内で企画がスムーズに通りやすくなるアプローチの方法や、ステークホルダーとの関係性のつくり方など、広報の効果が出るための基盤づくりをOJTのような形でサポートを始めました。
このような取り組み方ができるのは、ひとしずくの大きな特徴ですね。私自身は前職で広報チームのリーダーを担い、未経験の新入社員への教育やマネジメントなども長年やってきたので得意な領域であり、その経験を生かせたかなと思っています。
また、最初に社会課題を体験した時に必要性を実感した「おもしろい切り口」も意識していました。伴走支援だったので施策を自らが考えることはありませんでしたが、相談を受けた時は変わった視点でアドバイスするなど、自分なりの色は出せたと感じています。
地域PR×エンタメ要素を実現。実物50倍のかつおのオブジェで全国メディアから取材
ひとしずくの大崎町の仕事と同時期に、私個人で高知の地域おこし協力隊の仕事を始めました。同じ地域PRの仕事ですが、こちらは伴走支援ではなく、PR施策も私が考えるので、毛色はまったく異なります。この2つの地域PRに携わったことで、私はますます地域の仕事に興味を持つようになりました。
中土佐町久礼のかつおは日本で一番おいしいと言われており、高知の人も食べにくるような町です。私は中土佐町久礼のPRと、高知全体のかつお漁業を盛り上げたいと考えて、2023年に実寸大タタキ皿鉢とトロ箱入りかつおオブジェを制作し、高知龍馬空港の手荷物ターンテーブルに設置するという企画を立てたんです。
それが反響を呼んで空港に来た多くの人が笑顔になってくれたので、翌年2024年はさらにスケールアップして、かつお愛でお出迎えしようと、実物の約50倍の大きさがある「巨大!土佐久礼かつおのタタキ」を制作して再びターンテーブルに設置する企画を考えました。
これはまさに「おもしろくなければリーチしない」という発想です。「カツオをもっとみんなで食べよう」と真面目に伝えても届かないんですよね。でも、美味しそうな巨大かつおが空港で回っていたら、何か響くものがあると思ったんです。
クラウドファンディングを利用して100万円を目標に実施したところ、193%の達成率となり、無事に実現することができました。オブジェを作るのは本当に大変でしたけれど。
実施後はテレビをはじめ多くの全国メディアで取り上げられ、反響を生みました。企画した私も「地域で活動する人」のようなテーマで日本経済新聞からインタビュー取材依頼があって。こういう機会は東京だとなかなかないと思いますが、地域でがんばると目立ちやすく、今後もいろいろなことができる可能性を感じています。
観光客や空港サイドからも好評で、久礼はもちろん高知全体を盛り上げることに一役買うことができたと思います。
地域にどっぷり浸かっている自分だからこそ伝えられることがある
大崎町と中土佐町久礼、それぞれの地域PRの仕事を経験して、そのおもしろさを実感しました。
地域PRの魅力は、その土地の人にとっては当たり前のことであっても、外の視点から見たらおもしろかったり、財産になったりすることがあって、魅力的な資源がたくさん埋まっているところです。
それをPR視点でピックアップして、世の中にもっと知ってもらうことは発掘をするような楽しさがあります。エンタメと掛け合わせることで、自分らしさも出すことができます。
私のこれまでの経験を生かすという観点で言えば、ひとしずくでは地域の広報サポートを今後もやりたいですね。地域の課題は場所こそ違えど共通点があるので、そこに対して私自身の経験を伝えることや、どっぷりローカルに浸かって生きている人間だからこそ言えることもあるかなと。
ひとしずくは私だけでなく、生まれ育った自分の地元など地域で活動しながら仕事をしている人が多いですよね。
私はいくつかの会社や地域で仕事をしてきた経験から「ひとしずくが他と圧倒的に違う」と感じるのは、「メンバー全員がみんな本当にいい人」ということです。気持ちがいい人、機嫌がいい人ばかりなんですよね。
会社員は働く相手を選べないというリスクがある中で、そもそも仕事は「何をするか」より「誰とするか」のほうが大事だと思っています。だから、一緒に働く人がいい人たちというのはひとしずくの大きな強み。
これからも気持ちのいい人たちと、楽しみながらおもしろい視点を探して、地域を盛り上げるための活動をしていきたいと思います。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
