テクノロジーの進化に応じた「コト売り」ビジネスを構想

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大内は、ナノテクノロジーソリューション事業統括本部 デジタルサービス本部のソリューション企画推進部に所属しています。部長として、専任4名、兼務19名のチームを率いる立場です。

 「営業、エンジニア、マーケティングなど、さまざまなスキルを持ったメンバーが集まり、新規事業を練っています。

軸に据えているのは、現在日立が掲げている『Lumada』という概念。illuminateとdata をかけ合わせた造語で『データに光をあてて価値を生み出す』というビジョンを示しています」

テクノロジーが進化し、お客様の生活スタイルも多様化する中、ビジネスも「モノ売り」から「コト売り」に。サービスを通じた体験価値の提供などをめざし、新しい事業を創造しようという流れが起きています。

「このような事業環境の変化にいち早く対応するために、データ分析やAIといったデジタル技術を活用し、新たな価値の創出をするのが、ソリューション企画推進部のミッション。半導体装置に関連するニーズとアイデアをかけ合わせ、お客様ビジネスの成長をサポートします」

日立ハイテクは、30年以上にわたり半導体装置を世界の企業に提供しています。従来は、装置を販売し、アフターサービスも行うことが業務の基本形でした。しかし、「Lumada」のビジョンのもと、最近では半導体装置から大量のデータを抽出し、生産性や歩留まり率の向上に役立てています。

「これまでも、日立ハイテクではデータを用いた解析を一部で行っていました。歩留まり率が低いなどの課題をお客さまが自覚した時に、当社のエンジニアがデータ解析し、問題の所在を探っていたのです。

しかし、従来のままでは問題発生を防げないし、解決までに時間がかかってしまう。そこで、今回の新事業ではデータを常々活用する体制を敷くことで、問題の出どころをいち早く把握し、手を入れるべきところに早急に着手できるようにしました。

半導体業界では、ここ10年ほどでDXへの意識が格段に向上しています。お客様からも、日立の経営層からもニーズが明確化されているので、まさにこのタイミングで必要な変革だと考えています」

技術畑出身の社員とタッグを組み、部長として新規事業を推進

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じつは、大内は2006年に一度日立グループを離れ、別会社で勤務していました。その会社が日立グループに買収されたことで、再び日立のメンバーになったという経緯があります。

 「まったくの偶然ですが、めずらしい経歴ですよね。

当時、転職を決意したのは規模が小さめの会社に入り、いろいろな経験を積んでみたいと思ったから。そういった環境に身を置いたことで貴重な経験もできましたが、同時に日立という企業の魅力を再発見した時期でもありました。

小規模の会社は、小回りが利く一方で社内のルールが未確立であったり、生産ラインなどを大掛かりに一気に動かしたりすることが難しかったんです」

そんな中、奇しくも日立グループに戻ってくることになった大内。それでも別会社にいた時には、現在の動きにつながる数多くの経験をしました。

日立時代に扱った半導体製造の前工程の装置とは異なるオフラインの解析装置やマスクリペア装置、そしてEDAツールなどの商材を取り扱ったことは貴重な経験でした。中でも、EDAツールの販売、半導体設計支援システムを販売したことは、現在の業務に通ずるものがあったと話します。

「半導体設計の支援ツールなどをお客さまに売る仕事をしていました。半導体の世界で、ソフトウェアやソリューション提案の仕事があるということを体験できた時期でしたね。ビジネスのかたちや具体的な売り方を学べたことは、今の仕事に直結しています」

現在、新事業でコアとなってチームを率いる社員が大内の他にもう一人おり、ソフトウェアアーキテクトなどの技術面はそのメンバーが担当し、大内はフロントに立ちビジネスサイドのモデラーを務めています。

「最初は、何を求められているのか、どんなやり方で進めていけばよいものか、暗中模索でした。コンサルティング会社にも入ってもらい、アドバイスをいただきつつ、海外の現地法人を巻き込みながら、あるべき組織のかたちや人材の配置を考えていきました。

半導体関連装置の販売を長くやってきた自分の営業経験は、現在の新規事業企画業務において確実に役立っています。かといって、装置の売り方とサービスの提案はまるで異なるもの。机上の空論にならないよう、当社のデジタルサービス事業ならではのシナリオを作るよう心がけています」

新事業を進める上で苦労したのは、コミュニケーションです。

「新しいことを実現しようとする時は、暗黙知として共有されているものがないので、当然コミュニケーションが不可欠です。海外のメンバーを巻き込むことも多いので、語学力は必須。成功の法則などなく何が正解かわからない中、自分で意見を言い他の人とぶつかり合うのはタフな作業ではありますが、欠かせないステップです。

今後は、さらに全社各部門や、バックオフィスの方々も巻き込みながら進めていく必要があると思っています。私は、一人ひとりに合わせたコミュニケーションをとるのが得意なので、これまでに養ってきた強みを生かし、乗り越えていきたいです」

新事業を社内に広げる活動中。「時代は進んでいるからこそ、今あがく」

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大内は、社内における新規事業への反響を徐々に感じ始めています。

「2020年に始めたころ、社内の反応はまだまだ『Lumadaって何?』という感じで、正直なところほとんどの人がピンときていませんでした。そこから、自身がまずはエヴァンジェリスト的に、幹部の皆さんの力も借りながらどんどん活動を広めて、今に至ります。結果、今はそんなことを言う人もいなくて、むしろ前向きに提案や普及活動をしてくれています」

ある程度のチュートリアルを自分たちで作りつつ、兼務メンバーも巻き込みながらじわじわと広げていきました。

「Lumadaの概念はわかっても、そこからさらに一歩進んで自分のとるべき行動が具体的にピンとこない場合、現場には浸透していかないものです。日々の実務レベルに落とし込んで、3つくらいのステップにわけながら、きめ細やかに作戦を立てて伝えています」

円滑な実行のために、社内教育にも力を入れています。

「日立アカデミーというオンライン教育システムがあり、デジタルの基本や半導体についてはもちろん、企画のフレームワークなども学べます。今後、キャリア採用で新しく入ってきてくれる方にはそういったことも仕組み化したいと思っているところです。

もちろん、実務の中で学んでいくことも重要です。ワークショップ系の講座などを開いて、社内の知識を全体でアップデートしていきたいですね。

長年半導体の仕事をやってきた人からすれば、新しい動きに抵抗を感じることもあるでしょう。でも、それで何もせず過ごしてしまったら、いつかデジタルが当たり前になった時代に、当社は取り残されてしまう。

時代は急速に進んでいますから、今できる限りあがく覚悟が必要です。早く結果を出すためにも、既存のビジネスユニットの皆さんの協力も、さらにほしいところ。社内で仲間を増やして、拡大していければうれしいですね」

この新しい取り組みが、いつか日立の中で大きな歯車となるように

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そんな大内が、大切にしている価値観とは。

「日立グループは、クールやスマートというよりは、働きかけ次第でついてきてくれる方が多いと感じます。だからこそ私は、自分の想いや挑戦したいことは随時口にして、行動で示すようにしています。

一生懸命考えて、とにかく熱量を持って動けば共感してもらえるもの。物事を上手に説明すること以上に、大前提として必要なことだと思うんですよね。うまくいかず心が折れそうになる瞬間もありますが、振り返ってみると、いつも情熱をパワーに乗り越えてきたなと思います」

これからも、熱い想いで業務と向き合います。

「当社は3カ年で中期経営計画を立てており、2024年度の中計が終わるまでにはビジネスとしての成功のユースケースをいくつか作りたいです。そして、2027年度の中計では売上規模を拡大し、ディベロップメントステージから次のステージへと進みたい。

まずは、成功事例をひとつ作ってそれを他の地域に広げていったり、お客様にソリューションとして持っていったり。情熱と同時に冷静さも持ちながら、ビジネスにおける目標達成を追求していきたいと思います。

自分が考えた施策に共感してくれる人が増えて、最終的には組織の中でその新しい施策が大きな歯車として動くようになっている……そんな経験ができたらうれしいですね。日立の中でそれが叶えば、かなりの規模で世の中に価値を生めることになります。実現するために、今後も頑張ります」

やりがいを胸に業務に取り組む大内。そのタフさを生かして、これからも世界規模で新しい価値を生み出していきます。

※ 取材内容は2024年1月時点のものです