CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)の両輪でめざすのは「働きやすい」環境作り
札幌グランドホテル・札幌パークホテルの管理統括副支配人を務める金森。管理統括部門は、総務、人事、経理、調達購買、施設管理の5つの課で構成されています。
「管理統括部門は、統括支配人のもと私は総務、人事、経理、調達購買の4つの課を、もう1名の副支配人は施設管理を中心にサポート業務を担っております」
5つの課のうち、総務は、ホテル内外の交渉や食品衛生対策、契約書の確認など、多岐にわたる業務を担当。一方、人事は採用から退職まで、在籍中の人事関連業務を行うほか、社内制度や地域イベントを実施するための推進役も担っています。
「人事には私も長く関わってきたのですが、難しい反面、やりがいのある業務だと思っています。サービスの提供という『目に見えないものを売る』ことがわれわれの仕事であり、そのために必要な教育や採用方針を明確にすることが人事の根幹です。キャストが目標を持って働けるような環境作りを進めていきたいと考えています」
購買管理は、ホテルの大きな経費項目である材料費(さまざまな資材)を管理する重要な役割を果たします。
「ホテル運営に必要なモノを仕入れる際に、見積もりを取りながら適正な価格で購入することに加えて、単に安ければいいという話ではなく品質もしっかりと担保する必要があります。
たとえば主催者から『北海道らしい料理をお願いします』との要望があれば、調理人は北海道ならではの料理メニューをデザインするわけですが、そのために最適な季節の食材を適切な価格とタイミングで(つまりは、鮮度の良い安全で安心して使用できる材料を適正な価格で)仕入れる必要があります。
そこが購買管理の腕の見せどころです。人件費とともに経費の中で大きなシェアを占める材料にかかる経費コントロールは、企業の利益に大きく貢献する重要な仕事の1つです」
施設管理は、24時間365日稼働するホテルの設備を支えています。
「建物の安全管理や環境維持のための日常の運転管理を行います。ホテルは24時間365日利用されるお客様がいらっしゃる限り、心地よい環境を提供する必要があるため、ボイラーなどが問題なく稼働しているか、室温は最適か等といった快適で、安全・安心なホテル空間を管理しています。ですから、長く運営するほどさまざまな物の入れ替えも定期的に必要になりますので、そうした時期の見極めを含めた維持管理を担っています。
また、客室等をリニューアルする際にも、日頃の人脈や取引先との関係を活かして適切なパートナーに依頼するなど、建築設備を含め幅広い専門知識が求められます。
さらに火事などの緊急時に備え、利用者の安全確保に欠かせない防災設備の点検、維持・管理も担っております。このように施設管理の仕事は、多岐に渡りますが、ホテルのスムーズな運営や、お客様にとって快適なご滞在の為に欠かせない存在です」
ホテルの運営における重要な部門の一役を担う金森。これまでの経験を活かし、札幌グランドホテルと札幌パークホテルの両施設の橋渡し的な部分も担っていきたいと話します。
「キャストメンバーがパフォーマンスを最大限に発揮できるようサポートするのが、管理部門の役割だと認識しています。サービス業では、よくCS(顧客満足度)の話になりますが、われわれの仕事はキャストのパフォーマンスを高めるためのサポート、つまりES(従業員満足度)の向上に重点を置いています。
CSとESは両輪であり、ESをしっかりと達成することで、営業部門も効果的に機能すると考えています」
レストラン、フロント、総務、人事……異動のたびに広がった視野と培われたマネジメント力
金森は1995年、三井観光開発株式会社(現株式会社グランビスタ ホテル&リゾート)に入社します。最初の配属は当時仙台で営業していたホテルでした。
「就職活動時はとくにホテル業界を志望していたわけではありませんでした。ただ、学生時代に配膳会社に所属しアルバイトをしており、ホテルでの仕事にある程度の理解はありました。就職氷河期で会社選択の余地が限られる中、人事担当者との出会いや仕事のやりがいに魅力を感じて入社を決めました。
仙台では約5年間、レストランやフロント、宴会でのサービス、客室清掃など、さまざまな業務を経験しました。入社3〜4年目で客室販売も担うことになり、ここでの経験が現在の仕事の理解に大きく役立っています」
そして2000年に札幌パークホテルへ異動となり、総務として管理部門での業務をスタート。ISOの取得準備から車の運転手など、ありとあらゆる業務を3〜4年務めたと言います。その後、「人事をやらないか」と当時の人事マネージャーの誘いを受け短い事業所での人事業務を経た後、本社人事部へ異動となり、約10年にわたって人事業務に携わります。
「本社人事部では3,000人以上の従業員の給与計算や社会保険関連の手続き、採用業務などを担当しました。良い出会いもあれば1日で退職するケースもあり、責任の重さを実感する日々でした」
2009年には開発事業部に異動。MC(マネジメントコントラクト)という形態のホテル運営に携わった後、本社でのマーケティングやCS関連の業務、事業所全体を見る事業管理など、さまざまな経験を重ねます。
「現在は管理部門に戻っていますが、常にさまざまな仕事にチャレンジしたいという想いを持ちながら今に至っています。職場の同僚・仲間、上司の支えがあり、共に積み重ねてきた懸命な取り組みのおかげで成し得たことも多いのですが、これまで経験してきたことのすべてが今の仕事に活きていると感じています」
採用改革からチームの育成へ。管理職としての苦労とやりがい、そして次世代へのバトン
金森は、札幌パークホテルの管理副支配人時代に、前任者から「採用活動の見直し」という課題を受け取ります。
「それまでの採用活動には偏りがあり、当時は特定の専門学校にしか採用の話が回っていなかったのが現状でした。また会社の事情として正規雇用が難しい環境もありました」
そこで金森は採用活動の幅を大きく広げることを決意します。
「大学や短大、高校にも足を運び、求人を出していることを伝えていきました。物を買う時でも『この人から買おう』と思うように、『この会社ならうちの学生を紹介しよう』と思ってもらえる関係性を築くことが大切だと考えたんです」
本社人事時代の全国採用の経験を活かしながら地道な活動を続けた結果、コロナ後の厳しい採用目標も達成することができました。
「お声がけした学校の中には、あまり良い返事をいただけないところもありました。この仕事には専門性が必要だったり、そもそもホテル業を希望しない学生がいたりするからです。そのような状況下でも、年によっては1人か2人は来てくれることがあります。一回やってみて駄目でも継続して取り組んだり挑戦し続けたりすることで、初めて出る結果もあると実感しましたね。
現在では、この採用活動を継続し引き継いでくれている仲間がいます。最初は1人で始めた取り組みが、今のホテルの現場で働く方々に必要な価値として提供できているところにつながっている。それはすごく良かったと思っています」
そんな金森は、管理職としての苦労や大事にしていることを次のように語ります。
「どんな状況でも成果を出さなければいけない、ということが大変だったこともありました。特に開発事業部時代に担当するホテルで目の当たりにしたのは、新しい環境で且つ誰も知らない中で成果を出さなければならない、いわばアウェイでの戦いだったんです。その中で重要だと感じたのは、コミュニケーションです。
当時の支配人の方々が皆さん実践していたことでもありますが、相手のことを理解し、同じ目標に向かって進むためのチーム作りが必要不可欠だと、あらためて感じることができた期間でしたね」
行動し、現場を見ることが変革への道。働く人の幸せを支え、企業の成長につなげたい
金森は、管理部門としてめざすべき姿について、次のように語ります。
「必要とされ、感謝され、応援されるチーム作りをめざしたいと考えています。われわれから何か新しいことを始めようと発信すると、時に抵抗を感じ中々受け入れてもらえないこともあります。
でも、会社やホテルにとって必要なことを進めていくためには、チームの信頼関係とコミュニケーションが不可欠ですし、それは私だけではなく、他の同僚も仲間も、他のマネジメント職の方々も同じような想いで働いていると思います」
管理部門は、キャストをお客さまとして捉え、サービスを提供する側面があります。そのため、人間関係作りや何かコミュニケーションを取る際、メールで済ますのではなく出来るだけ直接伝えることを特に大切にしています。
「表のキャストがお客様に接するのと同じように、私たちもキャストをお客様として接していく必要があります。人それぞれに『幸せ』、『豊かさ』の価値観は異なると思いますが、一人一人が豊かな生活を送れるために、そして安定的な雇用を生み出すために何をすべきかを考え続けていきたいです。
現在、中途入社の方々も増えている中で、それぞれが持つ経験や知識を活かせる環境作りが重要です。また、昨今、非正規雇用から正規雇用が進んでいます。フルタイマーは相対的に経験値が高く、業務効率の向上に直結します。安定した職場になることが、企業の成⻑、観光事業者としての成⻑にもつながると考えています」
さらに今後、挑戦しようとしている取り組みについて「女性管理職の環境整備、能力に応じ要職に登用したい」と語ります。
「近年、企業においても女性の幹部登用が経営の持続可能性を高める重要な課題として認識されています。しかし、女性が管理職としての経験を積むには、ライフイベントによるキャリアの中断を防ぐ仕組みが必要です。
働き方改革により環境は改善されつつあるものの、女性が管理職や役員をめざしたいと思える環境整備が不可欠です。サポートできる環境を今後も取り組んでいきたいですね」
最後に金森は、行動し続けることの重要性を強調します。
「現場を見て確認し、直接話すことは、電話やメールだけではわからない問題解決につながります。たとえば採用活動では、すぐに結果が出ない学校でも継続して訪問することで、少しずつ成果が出てくることがあります。
険しい道だと思いますが、私たちが歩んできた道は、必ず後に続く人の道標となります。まずは一歩踏み出し、行動を起こし、継続することが大切です。管理部門は机に座っているばかりではなく、会社の運営を担う大事な仕事。そう皆さんにも認識していただけるような活動を、これからも続けていきたいと思います」
※ 記載内容は2025年1月時点のものです

