地域の食材を使って創意工夫。最高の料理とおもてなしでお客様を笑顔に
1929年に開業して以降、多くのお客様にご利用いただいてきた白良荘グランドホテルの特徴は、季節によって客層が変わること。夏は海が近いので海水浴を求めてファミリー層が多く、秋〜春は温泉や美味しい料理を求めてシニア層が多く宿泊。幅広い世代にご満足いただくため、料理には常に工夫が求められます。
「とくに意識しているのは、紀州黒潮の恵みで育った鮮魚や地元ならではの素材を活かした会席料理など、和歌山県らしいお料理をお出しすること。通年プランのほか季節会席もご用意し、和歌山県の四季を感じていただけるメニューにこだわっています。
基本的には和食ですが、前菜からデザートまでずっと和食が続くと飽きがくるかもしれないので、随所に洋のメニューを取り入れているのもこだわりのひとつ。和食の流れを崩さないよう、洋食風のソースに鰹だしやみそを入れるなど、味がつながるように意識しています」
おいしい料理を提供するために大切にしているのは、調理場からホールに出ることだと言います。
「お食事中のお客様の笑顔を見ると、料理人としてやるべきことが見えてくるものです。歩いて様子を見たり、ときにはお客様と会話をしながら料理のヒントをもらったり、頑張る活力をもらったり。創意工夫のヒントは、ほかにもいろいろなところにあります。
プライベートでも常にアンテナを張りめぐらせ、コンビニやサービスエリアなどで提供されている料理からアイデアをもらうことも多々ありますね」
現在、調理関連のキャストは、調理、配膳、調理補助を合わせて25名ほど。調理長としてキャストメンバーに働きかけていることがあります。
「調理場の中に入っていると、お客様の声が直に聞こえることはまずありません。そのため調理キャストにもホールに出て、お客様が召し上がっている姿を直接見てもらうようにしています。
お客様の笑顔や、楽しそうにお話している姿を見ると『そうか、自分が作った料理はこんなふうに食べられているし、こんなに喜んでいただけるんだ』ということを実感できるからです。
毎日調理場で同じものを作っていると、どうしても流れ作業になってしまうものです。しかし、来てくださるお客様は日々異なりますので、食を通して人を幸せにできるのだという喜びを胸に働けるよう、モチベーション作りを大事にしています」
「後のことは頼むぞ」今も胸に響く、先代調理長からもらった一言
古川は、2009年に白良荘グランドホテルに入社しています。きっかけは、白良荘グランドホテルの当時の調理長に誘われたことでした。
「入社後は、白良荘グランドホテルの調理場を覚えるところからスタート。ここの冷蔵庫には何が入っていて、このプランにはこの料理がつく…という基礎事項を覚えると、すぐに『煮方』という場所を任せてもらいました。
煮方は料理の味を付ける場所で、ホテルの料理の顔と言われるようなポジション。責任重大で背筋が伸びましたが、当時の調理長から、レシピを引き継ぎ挑戦しました。叱られることもありましたが、調理長をとても尊敬していたので、褒められたときは心からうれしかったですね。味をみてもらって『今日の味付けはうまいな』と言われたら、その一言で疲れが飛ぶくらいでした」
当時の調理長が退職するタイミングで、古川は調理長の立場を引き継ぐことに。
「そのときに言われた『後のことは頼むぞ』という一言が今でも心に残っています。難しさを感じることがあったときも、その言葉を思い出すと、『白良荘グランドホテルをなんとしても守っていこう』とパワーが湧いてきますね」
そんな古川の強みは、和食だけでなく洋食の知識もあること。当ホテルに来る以前のキャリアは和食中心でしたが、洋食のデザートやソースも勉強していました。
「和食の中に洋食の要素を柔軟に取り入れるという強みがあると思っています。経験豊富な料理人が多いこの調理場で自分が調理長を務められる理由、みんながついて来てくれている理由のひとつは、きっとそこにありますね。
実際、スイーツにもとてもこだわっていて、レストランだけでなくラウンジでも月替わりで考えて提供しています。月ごとに調理場内で2名のデザート担当者を決め、私も一緒に入ってレシピを考えます。和歌山県の特産物『三宝柑』や『あら川の桃』を使ったケーキなど、地元のフルーツを味わえるスイーツが好評です」
歴史を継承しつつ、自分ならではの新しい風を取り入れる
調理長を務めるようになった古川は、新たな試みを考え始めます。
「責任ある立場になって思うのは、先代の人たちが残してくれた料理を継承しつつ、そこに新しい風を取り入れて、もっと進化していく必要があるということです。そのために、自分なりに新しい取り組みを始めています」
代表的な取り組みの一つは、毎年コンセプトを決めて調理にのぞむことだと話します。
「2023年のコンセプトは『味の変化』でした。これは、先代の調理長から教わったレシピに、後から何かを入れて味に変化をつけるというもの。たとえば、鍋料理に生七味を入れることで、味を変えられるようにしたり、茶碗蒸しにすだちをしぼることで変化を味わえるようにしたり。お客様に、ひとつの料理で2つの味を楽しんでもらうというのがテーマでした。
今年は『おだし』をコンセプトに、プランを作っています。当ホテルが作っている鰹と昆布の一番だしは『ここのホテルはおだしがおいしい』とお客様からよく声をかけていただくほど、ご好評をいただいています。肉料理でも、まずは鰹と醤油ベースのおだしに漬け込むなど、ふんだんに『おだし』を使うようにしています。当ホテルの新たな強みとして、『おだし』の魅力をもっとお客様にアピールしていきたいですね」
若い料理人の育成にも注力。「一目置かれる料理人になってほしい」
調理場の年齢層が高くなっていることもあり、古川は、次の時代を担う若い料理人の育成にも力を入れています。
「一人ひとりが『やりたい』と思ったことがあれば、『まだ早い』と断るのではなく、『じゃあ明日からやってみよう』などチャレンジできる環境づくりを意識しています。たとえば本人が『今年はだし巻き卵を作れるようになりたい』や『魚をおろせるようになりたい』と言えば練習する機会を与えるなど、それぞれの目標に合わせた指導も行っています。
また、一緒に市場に買い出しに行って見つけた食材を、実際にお客様に提供してみたり、県内外でおこなわれる料理人の集まりに一緒に参加して横のつながりを作ったり。様々な経験を積んで成長してほしいですね」
チャレンジしやすく働きやすい環境にこだわりながら、料理人としてのレベルアップを促していきます。
「当ホテルで育った料理人が、将来的に他の場所に巣立ったり、自分でお店を持ったりしたときに、周囲から『白良荘グランドホテルから来た人は全然違うな』と一目置かれてほしいですね。白良荘グランドホテルという看板を背負って活躍できるような料理人を育てたいと思っています」
これからも調理長という立場から、白良荘グランドホテルを引っ張っていきます。
「今、私がここに来て15年ほどが経ちました。今ではリピーターのお客様に『古川さんの料理が食べたいから来ました』と言っていただくことが増えています。そんな声を、これからもたくさん聞いていけるように頑張っていきます。
まだ実現できていませんが、いずれ陶芸で作った器でお客様に料理を提供してみたいですね。私自身も今後いろんなチャレンジをしていきたいです。
描いている夢のひとつは、このエリアで一番料理評価が高いホテルになること。ぜひ、一緒に高い目標をめざして挑戦を続けられる方と出会いたいです」
お客様の期待と先代の想いを胸に、腕を振るってきた古川。そのこだわりが、お客様に特別なひとときをお届けしています。
※ 記載内容は2024年7月時点のものです

