広島の食材を積極的に朝食メニューに採用。料理を通して伝える地域の魅力
ホテルインターゲート広島で調理長を務める藤田。料理・食材・品質原価管理・人材育成の4領域を統括しています。
「まず料理については、朝食や夜食の準備、発注、そして地域の食材を取り入れたメニューの開発がおもな仕事。食材に関しては、各メーカーから共有されるトレンドやリサーチデータをもとに来季の展開を検討しています。
品質原価管理については、売上管理や原価管理が中心です。人材育成では、私の不在時でも自走できるチームづくりやキャストが長く働き続けられるようなマネジメントをめざしています」
ホテルインターゲート広島で調理に携わるキャストは、藤田を含めて計8名というチーム構成で、毎日4~5名が出社して調理に当たっています。
50種類以上のメニューを取り揃えたホテルインターゲート広島の朝食は、「焼きたてパンとごちそう野菜の朝ごはん」がコンセプト。調理長として、地域の食材を取り入れることを大切にしてきました。
「地元の素材を通じて広島県の魅力を全国のお客様に発信したいと考え、地域のメーカーや学校と連携した取り組みも進めています。たとえば、三島食品さんの『ゆかり®』を唐揚げのフレーバーに使用したり、広島の名産品であるレモンを用いたメニューを積極的に開発したりと。広島ならではのメニュー開発を心がけています。
2023年12月には開業5周年を記念し、『食を通した広島の魅力発信』を目的とした産学連携プロジェクトを実施しました。学生の皆さんが試作や改善を繰り返して開発した、レモンを使用したメニューを期間限定で朝食として提供しています」
地域の食材を使ったメニュー開発や、地域との連携に積極的に取り組んできた藤田。背景には、お客様へのおもてなしの心、そして「食を通して地域の魅力を伝えたい」という強い想いがあります。
「ホテルインターゲート広島に宿泊されるお客様のなかには、ホテルでの朝食が広島を出発する前の最後の思い出になる方も少なくありません。とりわけ出張の場合は、観光せずに広島を離れる方も多いはず。朝食を通して広島の魅力を感じ、『広島に来てよかった』『また広島に来たい』と思っていただきたいと考えています。それが、私が朝食にとくにこだわっている理由です」
働きぶりが認められアルバイトから社員に。厳しい環境で磨かれた料理人としての基礎
2011年にグランビスタ ホテル&リゾートが運営する札幌パークホテルに入社した藤田。調理師専門学校に通っていた時、当ホテルでアルバイトを経験したことがきっかけでした。
「10〜20年のキャリアがあるベテラン料理人たちのなかに飛び込み、自分に務まるだろうかと不安を抱えながらも、仕事を頼まれて走り回るなど、とにかくがむしゃらに働いていたのを覚えています。札幌パークホテルは名門だけあって、厨房には道内の料理コンテストで優勝した方や世界料理オリンピックでメダルを獲得した方もいました」
優秀な料理人の仕事ぶりを間近で見ることができて、非常に刺激的だったと言います。
「これが料理の世界だと感じましたね。スピードとスキルの高さに加えて、厳しく、熱心に料理に向き合う。一方で、休憩時間などのオフは力を抜いて楽しく過ごしていて、メリハリがありました。当時の札幌の料理長がうまくコントロールして引き締まった雰囲気をつくっていたのだと思います」
まわりから良い影響を受け、知識や技術を積極的に吸収しようとした藤田は、その姿勢が評価され、ホテル側から入社を打診されました。
「自分は猪突猛進型で、忙しく働くことが好きなタイプ。なおかつ、自分がどこまで通用するかを試し、その後のキャリアに活かせる何かを掴もうと必死でした。そんな貪欲な姿を評価してくれたのかもしれませんね。
仕事に対して熱量を持った方たちのなかでなら、料理人としてのスキルアップや成長ができそうだと思って、入社を決めました」
入社後、藤田は洋食調理担当に。当時10歳年上の先輩社員とタッグを組み、その指導のもとで現在のキャリアの基盤を築きました。
「その先輩は職人気質で、たとえば食材を切る際も驚くほど仕事が丁寧で、いっさいの妥協を許さない人でした。
新入社員がそんな方と肩を並べて働くのは容易なことではありません。実践を重ねながら技を自分のものにしようと奮闘する毎日でした。
当時はただ仕事をこなすので精一杯でしたが、振り返ってみれば、1年目にその先輩の厳しい教えを受けられたことが糧となり、現在の自分に繋がっていると確信しています。いまでも私の『師匠』と呼べる存在です」
11年目に訪れた転機。異例の抜擢によって調理長としてホテルインターゲート広島へ
入社2〜3年目から、責任ある仕事を任されていった藤田。フレンチレストランでは休みの兼ね合いから二番手を務めることが多い一方、宴会部門ではお正月のおせちづくりの現場指揮を担当し、30〜40名のキャストを率いるなど、多くの経験を積み重ねてきました。
なかでもとくに藤田の印象に残っていることがあります。1000名以上が参加する宴会準備に参加したときのこと。
「3日前の段取りから決められていたのですが、日々の宴会・会食等に加えて、規模がとても大きいため、すべてが順調に進んだわけではありませんでした。印象的だったのは、作業に遅れが出た際に、即座に体制を立て直し、リスケジュールして周囲に的確に指示を出す調理長の姿。調整しながらプロジェクトを進行していく様子は圧巻でした。
札幌パークホテルが世界で通用するシェフを輩出できるのは、これほどの大規模な宴会にも対応できるからこそ。その凄みを垣間見た瞬間でした」
2021年3月、札幌パークホテルで約10年にわたってキャリアを築いた藤田に大きな転機が訪れます。ホテルインターゲート広島から調理長のポジションを打診されたのです。前例のない大抜擢でした。
「20代での調理長就任は当社ではめずらしいこと。私の当時のポジションから見れば3段階の昇格に相当したため、とても驚きました。コロナ禍ということもあり、そのころホテルインターゲート広島の宿泊者数は現在の1/3〜1/4ほどに落ち込んでいました。私が起用された背景には、新しい風を吹かせたいという会社側の思惑があったのかもしれません」
挑戦を後押ししてくれる雰囲気のなか、食を通じてホテルを起点とした地方創生を
異動後、新しい取り組みに積極的に挑戦してきた藤田。その成果のひとつが、朝食でのカレーの採用です。
「以前、インターゲートホテルズでは朝食にカレーを提供していませんでしたが、家族で訪れたお客様に喜んでいただけるようなカレーをお出ししたいと考えていました。そこで、広島名産のレモンや酒麹を使用したカレーを開発。朝食メニューに取り入れたところ、好評を得ました。
この取り組みは全国のインターゲートホテルズに波及。現在は各ホテルでご当地食材を使ったカレーを提供しています」
前例のないことに一歩踏み出すことを常に意識してきた藤田ですが、それを支えたのが理解者の存在でした。
「ホテルインターゲート広島の支配人は、『やってみたらいい。試してみることに価値がある』という考えの持ち主です。コロナ禍が明けて客足が戻ってきたいま、トップが挑戦に寛容なおかげで、予算をかけた新しい取り組みにも挑戦できています。
そうした取り組みが成功して多くのお客様にご満足いただけたときは、大きなやりがいを感じます」
地域の魅力を料理に込め、ホテルインターゲート広島のブランド価値向上、そして地方創生に寄与することが藤田の願い。ホテルと自身の将来を重ね合わせながら、未来をこう展望します。
「お客様から『広島でナンバーワンのホテル』として真っ先に挙げられる存在になれるよう、今後も新たなメニュー開発などに積極的に挑戦していきたいと思っています。広島県内のさまざまな企業とのネットワークも生まれているので、発案した企画を一つひとつかたちにして、広島の活性化に貢献していきたいです」
調理長に就任以来、ホテルインターゲート広島に新しい風を吹かせ続けてきた藤田。グランビスタ ホテル&リゾートで同じ料理人として働く新しい仲間に、次のように呼びかけます。
「グランビスタ ホテル&リゾートではさまざまな形態のホテルを運営していますが、私がそうであったように、強い想いがあれば、やりたいことを実現できる職場ばかりです。情熱を持った人たちとともに刺激を受け合いながらキャリアアップしていくことができると思います。料理が好きで、活力に溢れる方々を心から歓迎します」
想いとこだわりと、地方の魅力を料理に込めて。藤田はこれからも、豊かな食体験の提供に挑み続けます。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです

