境界線をつくらず、誰もが交われる場へ。多様な人が集うオープンイノベーション拠点
10年以上にわたる富士通のオープンイノベーションの取り組みを進化させるべく、2025年7月に誕生した「Uvance Innovation Studio(UiS/ウィス)」。同拠点でコミュニケーションストラテジストを務める高橋は、UiSに集う人々の挑戦やストーリーを発信しながら、新たな出会いや価値創出につながる共創プログラムの企画を通じて、アイデアと人が交わる場づくりに取り組んでいます。
高橋:施設名に冠している「Uvance」とは、社会課題を起点とする富士通の新事業モデルであり、「Universal」と「Advance」を組み合わせた言葉です。あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させるという想いが込められています。
UiSが大切にしているコンセプト「Borderless Innovation Gateway」を体現するため、施設名にはあえて「富士通」を入れていませんが、自社の色を強く出さずに、その理念はUiSにもちゃんと受け継がれているんです。
JR川崎駅直結という利便性の高い立地もUiSの特徴です。富士通の本社機能が入るFujitsu Uvance Kawasaki Tower 26階に位置するUiSの施設内には、イベントスペース、ソロワーク席、会議室など多様な空間を設計。都心や空港からのアクセスも良いことから、世界中の人々が集まり、スタートアップのエコシステムを形成しています。
高橋:先日もカナダ大使館と連携し、製造業の課題解決にAIで挑むカナダのスタートアップ8社をUiSにお招きしました。スタートアップの皆さまによるピッチだけでなく、富士通社員やUiS会員の皆さまとの活発な意見交換が行われ、新たな接点や気づきが数多く生まれました。
また最近では、フィリピン・マニラの大学生団体約70名が社会見学でUiSを訪れました。その日たまたまUiSに来ていた会員の方々の取り組みを熱心に聞いて学びを得たり、UiSに置いてある実証中のサービスを体験していかれました。こうした国や世代、業界を越えた交流が自然に生まれ、お互いが学び合える環境こそがUiSの魅力だと思っています。実際に、そうした出会いや対話の中から新しいアイデアやビジネスの種が生まれる場面も増えており、日常的にイノベーションが生まれる土壌が育ちつつあることをうれしく感じています。
こうした内外の活性化を支えているのが、UiS Crewやコミュニティマネージャーです。高橋のような富士通社員だけでなく、社内外の多様なバックグラウンドを持つメンバーが中心となり、「この人とあの人がつながったら、何かが始まるかもしれない」と日々アンテナを張りながら、会員同士をつなぎ交流や共創を後押ししています。
富士通のアルムナイでありコミュニティマネージャーを担う西舘は、株式会社Weaventの代表としてさまざまな企業・コミュニティの支援を通じて培ったイベントやコミュニティの専門的な知見を活かし、UiSの運営をリードしています。
西舘:私のミッションは、外部のインキュベーション施設との連携や異なる専門分野を持つ会員さま同士の接続を通じ、UiSをさらに発展させていくことです。HR(人事)領域や経営、キャリア開発、教育など、さまざまな分野での活動経験を活かし、新しい学びやコンテンツから共創を生み出すための企画を提案・実施しています。
高橋:西舘さんは、オープンイノベーションに欠かせないキーパーソンを次々とUiSへ招き入れてくださっています。そうして多様な人材が集まることで、会議室での商談だけでなく、会員さまが利用できる社員食堂での会話など、よりカジュアルな交流も生まれています。
偶然の対話から新しい共創のアイデアが広がるようになったのは、西舘さんのネットワークとコミュニティ運営の力によるものだと感じています。
高橋が語るように、大型イベントの誘致などを通じてコミュニティの拡大をけん引してきた西舘。開設からわずか1年で多くの会員が集まり、共創の場として定着した要因について、施設自体の魅力と自身の活動の双方から振り返ります。
西舘:まずUiSは非常にオープンな施設で、無料で利用できる上に登録ルールも柔軟であることが挙げられます。それが多くの方に「使ってみたい」と思っていただける要因の1つだと考えています。そうした魅力に加えて私自身が注力してきたのは、自ら外のコミュニティへ足を運び、質の高いコンテンツをUiSへ持ち込むことです。社外に広がる接点をこの場でつないでいく活動を通じ、コミュニティの発展に貢献しています。
世界で磨いた「人を巻き込む力」を、共創の現場へ
UiSでボーダレスな共創の推進を担う高橋。その原点には、幼少期から学生時代にかけてアメリカで生活し、多様な文化や価値観に触れた経験があります。英語力や国際感覚を活かせるグローバルな環境を求め、新卒で富士通へ入社。以来、海外事業、グローバルマーケティング、スタートアップ連携と、キャリアの段階ごとに異なる領域へ挑戦してきました。
高橋:就職活動を行う中で、世界を舞台に事業を展開している点に魅力を感じて入社を決めました。実際に1年目から、アメリカやドイツのグループ会社に対するビジネス支援を担当する機会に恵まれました。現在に至るまでずっと自分がやりたい仕事に挑戦できているという実感が、富士通で働き続ける原動力になっています。
キャリアの中で高橋が長く携わってきたのが、UNIXサーバーなどの製品を海外へ展開するグローバルマーケティングの業務です。米国オラクル社との協業を通じ、多岐にわたるプロモーション施策や市場拡大のプロジェクトを主導してきました。
高橋:当時、オラクル社と共同開発していたSPARCサーバーの拡販に向けて、ウェブサイトの立ち上げから専門誌への広告掲載まで幅広い業務を担いました。とくに印象深いのは、かつてはサンフランシスコで開催されていた大規模なカンファレンス「Oracle OpenWorld(現・Oracle AI World)」でのプロジェクトマネジメントです。
寝不足になりながらも現地で社内外の多くの関係者を巻き込みながら施策を進める経験を通じて、立場や専門性の異なる人たちをつなぎ、一つの目標へ向かってプロジェクトを動かす力を培いました。
米国のみならず、高橋はアジア圏における事業拡大にも注力。各国の現地パートナーと連携し、市場開拓に向けたイベントやプロモーションを企画。その土地の文化や商習慣を理解しながら、国境を越えて関係を築いてきました。
高橋:インドネシア、タイ、韓国など、アジア各国の市場拡大をめざし、海外パートナーとのイベント企画や運営にも携わりました。実際に現地へ赴き、多様な背景を持つ人々と一緒に仕事をした経験は、現在のUiSにおいて海外からのお客さまや会員さまをお迎えする際にも、大いに活かされています。
共通の前提を持たない相手とも、まず目的を共有し、対話を重ねながら関係を築いていく。この姿勢は、業種や立場を越えた共創を進める上でも欠かせないものだと感じます。
業務に邁進する一方、高橋は富士通のチアリーダー部「フロンティアレッツ」でも活躍。入社から5年間にわたり、スポーツチームの応援や地域社会との交流活動に情熱を注いできました。
高橋:業務と両立しながらチアリーダーとして活動し、自社の女子バスケットボール部やアメリカンフットボール部などの応援のほか、地域のイベントに参加したり子どもたちにチアを教えたりしていました。
活動範囲が非常に広く、多様な方々と交流できる機会を与えてくれた会社にはとても感謝しています。初対面の方とも距離を縮め、周囲を巻き込みながら場の熱量を高める経験は、現在のUiSの運営にもつながっています。
その後、高橋は2度の育児休業を取得。2024年の復職の際には、コロナ禍を経て柔軟な働き方が浸透したことにも後押しされ、新たな挑戦に踏み出します。
高橋:復職にあたって打診されたのが、「FUJITSU ACCELERATOR」事務局への参画です。このプログラムは、スタートアップとの共創による新事業の創出をめざし、2015年に発足しました。すでに多くの知見を持つチームに新入りとして飛び込むことには勇気がいりましたが、これまで経験したことのない領域に挑戦しようと考えました。その翌年の2025年、発足から10周年の節目にUiS設立の話が舞い込み、立ち上げから携わることになったのです。
グローバルマーケティングで培った、市場や顧客を捉える力。海外パートナーとの協業を通じて磨いた、多様な関係者を巻き込む力。そして、FUJITSU ACCELERATORで得た、スタートアップと事業をつくる視点。これらの経験を掛け合わせ、現在、高橋はコミュニケーションストラテジストとしてUiSの運営をリードしています。
高橋:新しいビジネスを創出する上で何より重要なのは、人と人のつながりです。いかに多くの人を巻き込み、一対一ではなく多対多の関係構築ができるかが鍵となり、アイデアや技術を事業へ発展させる可能性が高まります。
そのためにも、コンセプトで掲げている通り、境界線をつくらないことが重要です。一見すると現在の業務に直接関係がないように見える分野や肩書の方でも、まずは受け入れ、歓迎する。そこから思いがけない接点を見つけ、次の共創へつないでいく姿勢を大切にしています。
偶発的な出会いを、具体的な成果へ。領域を越えた共創から、新たな価値を生み出す
高橋と共に、UiSの運営を担当している西舘。コミュニティマネージャーとして大切にしているのは、自ら外とつながり、新たな価値を生み出す存在になることです。その役割を果たす中で、西舘は川崎という立地に独自の可能性を見出しています。
西舘:地元の企業さまや横浜エリアの方、川崎市議会議員の方など、都心のど真ん中ではなく、川崎だからこそ出会えた方々も数多く来訪されているのが印象的です。こうした偶発的な出会いを、さらに逆輸入的に都内のインキュベーション施設につなげるなど、今後もおもしろい展開が期待できます。UiS内に閉じず、社会とつながっていけることがUiSの魅力だと感じています。
西舘は自身の知見やノウハウを活かし、ターゲットを絞った大型イベントをUiSで開催。社外で関わりのある団体を誘致し、施設の認知拡大と新たな会員獲得につなげています。
西舘:大学院で経営戦略について研究する中で、組織の育成を担う人事担当者の方々にUiSを活用してもらう重要性を感じていました。そこで、人事関係者の関心が高いキャリア開発支援団体の周年イベントをUiSに誘致しました。結果的に150名近くが集まり、UiSの認知向上に寄与できたと感じています。
また、自身の研究領域でもあるウェルビーイングをテーマとして、シニア向けサービスを展開するUiS会員さまをはじめ、AI企業や税理士法人、老年学の研究者らを結びつけたイベントも手掛けました。業界や世代を超えて多様な参加者が集まり、熱量の高いイベントが実現しました。今後もテーマごとのコミュニティ拡大に加え、他のインキュベーション施設との連携などをいっそう加速させていきたいと考えています。
一方の高橋は、富士通が10年以上にわたり「FUJITSU ACCELERATOR」で培ってきたスタートアップ共創の知見を活かし、UiSを舞台とした事業創出に取り組んでいます。UiSがめざしているのは、人が集まること自体ではなく、出会いを具体的なビジネスや実証実験へとつなげること。その実践の場として、スポーツやフィジカルAIなどの領域でさまざまな挑戦が始まっています。
高橋:昨年12月、スポーツビジネスに特化した共創プログラム「Fujitsu Accelerator Program for SPORTS」を立ち上げました。UiSを活用して約100社のスタートアップから応募を集め、スポーツチームや競技現場が抱える課題の解決に向けた新たな挑戦をスタートさせました。
現在はファイナリスト6社による実証実験が進んでおり、ビジネス化に向けた具体的な検討が始まっています。
こうした動きはスポーツ領域にとどまらず、フィジカルAIや防衛、宇宙といったディープテック領域においても、コミュニティ形成から事業創出までを見据えた活動を推進しています。
高橋:その代表的な取り組みの一つが「Physical AI Nexus Japan」シリーズです。フィジカルAIのトップランナーやスタートアップ、研究者、事業会社の皆さまにお集まりいただき、最新技術や現場課題について議論しています。単なる勉強会ではなく、参加者同士の対話を通じて実際のビジネスや実証実験につながることを重視しています。
宇宙飛行士の若田 光一氏をスペシャルゲストとしてお迎えした企画など、最先端のテーマも積極的に扱っています。UiSで生まれる出会いを一過性のものにせず、そこで示された課題や技術、集まった人々の関心を、次の対話や連携へつなげていくことが私や西舘さんの役割だと考えています。
共創を次のステージへ。日本から世界へ広がる拠点をめざして
発足から1年を経て共創の基盤が整い、着実に成果が生まれつつあるUiS。UiS Crewの一員であるLOVOT(ペットロボット)の「ういっしー」も、人と人との距離を自然に縮めるUiSの人気者として交流を後押ししています。さらなる価値の創出をめざし、西舘は内と外の越境を促すアプローチに力を注いでいます。
西舘:まず富士通社内においては、UiSをきっかけに外に踏み出す社員をもっと増やすことが目標です。アルムナイとして富士通の可能性や社員の挑戦する力を信じているからこそ、このオープンな場で学びや仕事の種を見つけてほしいと考えています。そうして生まれた熱量がまた次の人を動かすような、良い循環をつくっていきたいですね。
一方で社外にも、UiSが持つ共創の可能性や価値をさらに伝えていくことも大切です。そのためには実際に体験してもらうことが一番なので、ランチミーティングをご提案するなど心理的なハードルを下げる工夫も意識しています。UiSの会員さまは富士通の社員食堂が使えるのですが、これが非常に好評です。UiSそのものにプラスして、施設自体が持つ魅力でも利用が促進されていると考えています。
こうして参加の裾野を広げつつ、UiSは富士通の枠を超えた展開に向け、進化を続けていきます。
高橋:この1年でUiSは、偶発的な出会いを通じて人が学び、成長できる場としての土台はできたと感じています。次にめざすのは、富士通にとどまらず日本全国、そして世界へと展開できる共創拠点になることです。共創活動から得られるデータをAIで分析・活用しながら持続的な経済モデルを確立し、連鎖的にイノベーションが生まれる社会の実現に貢献していく未来を描いています。
また、UiSには顧客企業の経営層や幹部クラスの方々も数多く登録されており、フロアに入った瞬間に肩書が外れてフラットな会話ができる環境があります。組織や役職の垣根を越えて対話が生まれやすく、経営層を含むさまざまな立場の方々と会話でき、そこからスピーディーにビジネスを動かすことが可能です。
対面だからこそ拾い上げられる相手の真の課題感やアイデアの種もたくさん見つけられます。ぜひ、私「あっきー」と「にっしー」こと西舘さんに会いに、UiSへ遊びに来てください。思いがけない出会いや、新しい挑戦のきっかけが待っているかもしれません。
※ 記載内容は2026年10月時点のものです
