Division長として、海外リージョン全体を最適化。「公正」「信頼」「楽しさ」を大切に
財務経理本部のInternational FP&A Divisionは、海外リージョンであるヨーロッパ、アメリカ、APAC、東アジア地域の事業をファイナンスパートナーとして支援する役割を担っています。
「地域ごとにビジネスの規模や財務基盤の強さは異なります。日々の業務を支援することに加え、経営状況に応じて資金調達を支援したり、事業の構造改革やM&Aを行う際に本社との連携をサポートしたりと、ファイナンス面におけるソリューションを提供するのが私たちのミッションです。
そして、フロント組織のガバナンス強化とグローバル横断でお客様とのビジネス拡大をリードする副社長の大西が適切な経営判断ができるよう、必要な情報を適宜共有し、課題を抽出して施策を提案・実施する部隊でもあります。
ビジネスに対する高い感度が求められる上、データで立証された施策を提案できなければなりません。海外リージョンの経営状況を正確に把握するため、グローバル共通の情報基盤を運用することも重要な任務となります」
Division長を務める諸橋は、地域別に分かれているチームの統括を担当。海外リージョン全体の最適化を図っています。
「異なるリージョン間に共通した課題の抽出、データやプロセスの標準化など、全体を俯瞰して管理することで施策の効率化を推進しています。とはいえDivision長に就任してまだ約2カ月なので、本格的な取り組みはまだまだこれからです。
マネジメントの立場としては、真のグローバル人材を育成するとともに、その人材を事業戦略に基づいてデザインした組織の各ポジションにアサインする。「適所適材」を実現したいという目標があります。それがひいては、富士通グループ全体のファイナンス部門において、最適なグローバル人材の育成につながると考えています」
そんな諸橋が「My Value(私が大切にするもの)」として掲げているのは、「公正」「信頼」「楽しさ」という3つの価値観です。
「私たちのチームは、言語も文化圏も異なる人たちと仕事をしています。しかも物理的な距離がある中で、関係性を築かなければなりません。だからこそグローバルビジネスでとくに大事だと感じることが、『公正』であることです。特定の文化的価値観を押し付けず、誰に対しても『公正』に接すること。そこから『信頼』が生まれると思います。
私は幼少のころから海外に対する憧れが強く、いつかグローバルな仕事がしたいという想いがありました。夢がかなった今、やはり根底にはいろいろな国の人たちと働く『楽しさ』があります。大変なときでも、地球の裏側に自分を頼りにしてくれる仲間がいると思うとワクワクし、前に進む力が湧きます」
ハワイでの留学とマイアミでのインターンシップ。若手時代の経験が大きな刺激に
学生時代は経営学部に在籍し、学友の影響で会計学に興味を持った諸橋。勉学と並行して情熱を注いだのが、極度なあがり症を克服するために始めたアルバイトでした。
「何事も追い込まれないとできない性格なので、強制的に人前に立つ経験を積もうとテーマパークを選んだのです。そこで4年間、『歌って踊れるホールスタッフ』を担当しました。その中で気づいたことは、数をこなせば緊張の中でも良いパフォーマンスが出せるようになるということです。苦手でも継続すれば克服できるという自信は、今も私を支えています」
就職活動は、テーマパークの運営企業1社に絞って実施したものの、最終面接で不合格に。失意から立ち上がった諸橋が選んだのが、富士通でした。
「会計の知識を活かすことができ、グローバルビジネスに関われる大手企業を条件に選びました。その中でご縁があったのが富士通だったのですが、入社後は挑戦の機会をたくさん与えてもらい、結果的に良い企業に巡り合えたと感謝しています」
2000年4月に入社した諸橋は、保守ビジネスのサポートに関連する原価計算や課題の分析を担当。当時はマニュアルの作業も多く、多忙を極めたと振り返ります。
「新入社員なので、任される業務範囲が限定されるのは当然なのですが、自分の時間がそこだけに投下されることに危機感を抱きました。3年が経ったころ、このままだと視野が広がらないと考え、会社が提供してくれる英会話の授業を受け始めたんです。
身につけた英語力がどれほど通用するかを試したくなり、休暇を利用して海外の語学学校に通ったり、ホームステイをしたりと新しい挑戦も始めました」
そして2004年3月。英会話の授業で出会った仲間に誘われ、諸橋は7カ月間のJAIMS留学に挑戦します。
「『JAIMS』は1972年、当時の富士通社長・高羅 芳光の構想をもとにハワイに設立された教育機関です。最初の5カ月は座学により、真の国際ビジネスパーソンに求められるスキルを習得しました。
授業はクロスカルチュラルな課題の解決力を養成することを目的としていて、世界各国から集まったクラスメイトと共に学びました。
残り2カ月はマイアミでのインターンシップに参加し、濃密な異文化体験を味わいました。南米や欧州から働きに来ていた約20人の同僚は、全員国籍が違ったのです。文化や宗教、母国語も異なるさまざまな国の人々が、経営会議では同じ目的に向かって団結している。その光景は、若き日の自分の心に熱く迫るものがありました。
留学から20年近く経った今も、当時の仲間とは交流が続いていて、仕事だけでなく人生にも大きな影響を与えた経験となっています」
イギリス駐在で一大プロジェクトに挑戦。難題を乗り越える最後の鍵は、情熱と信念
留学から帰国した諸橋は、本社で約2年にわたり一般会計を担当。実務に邁進しながら今後のキャリアを考える中で、海外ビジネスに挑戦したいという想いが募っていきます。
「ちょうど30代になるタイミングで、この先どういう経験を積むかが非常に重要だと考えました。一度きりの人生、やりたいことに挑戦しよう──そう考え、社内公募制度を利用し、海外拠点の事業管理を担う部署に異動したのです。
そこでは海外で最大規模を誇るドイツの拠点や、シェアードサービスを提供する北米の拠点、事業再編を控えたインドの拠点などを担当しました。それぞれ経営手法もファイナンスパートナーとしての役割もまったく異なるため、さまざまな経験ができ、グローバルな知見が広がりました」
さらに諸橋にとって大きな成長の機会となったのが、約3年間に及ぶイギリスでの駐在。海外ビジネス全体の情報が把握できるよう、グローバル共通のシステムを整備するという重大なミッションを一任されました。
「当時は欧州大陸、イギリス、北米、オセアニア、アジアなどで、それぞれに異なる事業ポートフォリオや組織構造に合わせて、経理関連のデータが作成されていました。それだと海外ビジネスの全体像が見えず、横串を通すことができません。
そこで共通のシステムにデータを集約し、適切な経営判断ができる仕組みをつくることになったのです。私はシステムオーナーとして構造設計や定義書の作成を行い、イギリスのエンジニアやポーランドのオフショアチームと協力しながら巨大プロジェクトを進行しました」
各国の事情を考慮した最善策として、既存のデータを残しつつ、新規のデータを追加する方法を選択。そうして完成させたシステムは、今もなお海外の経営情報管理を支えています。
「プロジェクトを振り返り、あらためて重要だと感じたことは目的や要件の明確化です。意思決定に際し、誰が何を必要としていて、なぜそれをやるのかをまず明らかにしなければなりません。
そしてプロジェクトの必要性を、トップマネジメントに理解してもらうことも大切です。スタートした当初は各国のCFOに協力を依頼しても、当然ながら会ったこともない日本人の話など取り合ってもらえませんでした。そこで私はレポートラインを押さえ、全世界にプロジェクトの意義を発信してもらったのです」
さらに諸橋は、各国の言葉の定義を統一するガイドラインも作成しました。
「グローバルビジネスを行う上で、文化や言葉の違いは難しい課題です。たとえば『ファイナンス』という言葉は、国や人によって業務範囲の解釈が異なります。そのため目的を達成するには、言葉の定義を明文化することが求められるのです」
目的を達成する上で、現実的であることと柔軟であることも大切だと諸橋は続けます。
「プロジェクトには決められた期間や予算、リソースがあります。理想論にこだわりすぎず、現実的な勝ち筋を考えて妥協点も持っておくこと。とくにこのプロジェクトにおいては、物事の優先順位を明確にし、100点をめざすより80点でも良いからシステムを導入して稼働させることが大事でした。
そして最後は、自分がプロジェクトに情熱を持ち、本気で取り組めるかどうかにかかっています。各国の協力を得るために、苦しい想いもたくさんしました。それでも私が3年間やり通せたのは、富士通の海外ビジネスに絶対に必要な取り組みだと信じていたからです。目的に対する納得感や信念がなければ、決して達成できなかったと思います」
新たな環境を求め、自ら変化させてきたキャリア。夢を描き、挑戦し続けるために
2023年4月、富士通にFP&A部門が新設されてから約1年。海外ビジネスを担当してきた諸橋は、組織の変化に対する想いをこう語ります。
「欧米では一般的なFP&Aが日本でも導入され、実績管理と計画策定の機能が一つの組織に集約されたのは、個人的に前進だと思っています。
ただ富士通において過去数十年の業績を比較すると、FP&A組織がなかった日本のほうが海外より高い利益を出していたという事実があります。組織を変えれば、自ずと利益が最大化されるわけではなく、形を変えたのは第一歩であり、これからいかに価値を提供できるか。それを考え、実行していくのが私たちの責務です」
Division長として今後の展望を描く中で、諸橋が取り組みたいことが二つあると話します。
「まず一つは、グローバルで活躍できるファイナンス人材を育成していくこと。社内では海外ビジネスを担当する人材が不足しており、ポスティングでメンバーを募集してもなかなか手が挙がらない状況です。
この状況を変えるため、海外ビジネスのやりがいや魅力を経験者として発信していきたいと思います。そして一緒に挑戦してくれるメンバーには、成長の機会を十分に与えたい。それはこれまで私が会社にしてもらったことへの、恩返しでもあると考えています。
そしてもう一つは、人材育成の推進を通じて財務経理本部を真のグローバル組織にすることです。国を超えてコミュニケーションができるグローバル人材を各部門に配置できれば、日本と海外をつなぐ役割を担う私たちの部署は、いつか不要になると考えています」
グローバル人材にとって重要となるコミュニケーションスキル。「英語に自信がなくても問題ない」と、諸橋は背中を押します。
「たとえば英語が流暢でファイナンスの専門知識がない人と、英語は片言でもファイナンスに関する深い知見を持っている人がいたら、現地の人は後者を頼ります。最初から英語がうまくなくても、業務の中で伸ばしていけばいいのです」
英語はあくまでツールで、重要なのは自分の専門領域を磨くこと。そのためには、幅広い経験が必要になります。
「これまで私は、専門性を深めながら新たな経験を積むべく、3~4年の周期で自ら大きく環境を変えてきました。10年先の夢を描くのは難しくても、少し先の夢なら見つけられたからです。そうして培った海外ビジネスの知見は、今の業務に大いに活かされています。
自分から動かなければ、環境は延々と変わらないかもしれません。人生の多くを費やす仕事で、変化を求めて夢を描き、挑戦してやり抜くこと。そんな姿を、組織で体現していきたいと思います」
※ 記載内容は2024年8月時点のものです
