PdMやCPOの出現とfreeeにおける役割

COO(Chief Operating Officer)、CFO(Chief Financial Officer)を経て、2022年、CFOからCPO(Chief Product Officer)となった東後。freeeにおけるCPOの役割を語ります。
「お客さまにマジ価値(ユーザーにとっての本質的な価値)を届け切ることに責任を持っています。噛み砕くと、お客さまがどんな課題やどんなペインを持っていて、それを解消するためにプロダクトとしてどんな価値を提供するのかを考え、やり切ることに対する責任者です」
CPOというポジションは、まだあまり一般的ではありません。それでも、世の中で少しずつ認識されてきている背景には、インターネット業界の急速な発達と、PdMの出現があったと話す東後。
「CFOやCTO(Chief Technology Officer)と比べると、CPOの知名度や浸透度はまだまだ低いと感じています。
その理由として、とくに日本ではそもそもPdM自体が少ないことが挙げられます。もっとも近いのは商品企画などの役割だと思いますが、ソフトウェア開発におけるPdMは10年前くらいまではほとんど存在していませんでした。
それからインターネット業界を中心にいろんなサービスが生まれてきて、プロダクトをマネジメントする必要性が生まれ、PdMの役割が急速に認識されるようになりました。となると、より大きなビジョンを実現するために、プロダクト全体を見渡し、PdMの組織全体をまとめる人が必要になりCPOも徐々に増えてきているんだと思います」
freeeでもCPOを作ることになった理由を、東後はこう語ります。
「PdMはもう5年以上前から存在していますが、とくにこの2、3年、プロダクトの数が増え、複雑性も増しています。開発組織の規模が大きくなり、それに伴ってプロダクト戦略組織も拡大してきました。戦略を描くことの重要性が増しているからです。
freeeはミッション『スモールビジネスを、世界の主役に。』を実現するための手段として統合型経営プラットフォームを提供することをめざしています。freee全体のプロダクトとしてどんなユーザー体験を届けるのか、どんな統合体験を届けるのかというのがすごく大事なわけです。
とくに次の数年には、統合型経営プラットフォームを提供する企業として突き抜けた存在になれるかどうかが懸かる重要なフェーズです。いろいろな角度から統合体験を作っていこうとしている中で、freeeのプロダクトチーム全体がワンチームとして同じゴールをめざして動くことが今まで以上に重要になり、難しくなってきているからこそ、CPOという役割が作られました。
とは言っても、私ひとりがすべてをリードするわけではなく、同じ目的意識を持ったメンバーが同じチームにいるということに意義があると考えています。PdMとプロダクトデザイナーはそれぞれ担当のプロダクトがありますが、究極的に全員がめざすのはfreee全体のプロダクトを通して最高の体験をお客さまに届けることなんです」
freeeをPdMが育つ組織にするために

長年、freeeでCFOを勤めてきた東後がCPOとなったのには、次のような理由がありました。
「CFO時代の数年間、いろいろなことを考え、投資家ともコミュニケーションを取りながら、お金をどこにどれだけ投資するか意思決定してきました。
その中で、これから数年間のfreee全体の成長を考えると、やはり今はプロダクトに投資をしないと、めざしているミッションやプロダクトのビジョンを実現できないという考えに至りました。
プロダクトをより良くする──そんな課題に対して、これまで投資判断をしてきた自分が責任を持って、実行する側に回りたいと考えるようになりました。最終的には他の経営メンバーとも議論して決めました。
CPOとなって仕事内容がガラッと変わるかもしれないなと思いましたが、プロダクトに投資判断をしてきたという意味では、CFOの延長線上にあるんです」
そんな中で、CPOとして具体的に行っていること、意識していることについて、東後は語ります。
「CPOとはいえ、当然私ひとりで全プロダクトの詳細を理解できるわけはありません。
そもそも私のバックグラウンド的にも、プロダクトのエキスパートでもなければ、開発経験もないのです。なので、それぞれのプロダクトに関して、具体的にどんな機能を作るかについては基本的にメンバーに任せています。
それを前提として、私はfreee全体が同じ方向に向かえるようにすることや、欠けている視点がないか補完することを意識しています。また、日本にPdMの経験を持つ人が少ない中で、freeeはPdMやUXデザイナーがどんどん育つ組織になるといいなと考えています」
PdMが育つ組織にするために実際に行っている取り組みには次のようなものがありました。
「まず新しいメンバーのオンボーディングのために、オンボーディングパートナーを設置したり、コンテンツの準備をしたりしています。
それから一人前のPdMになる上で必要な要件を設定して、チームとしてサポートする体制を整えています。社外の人からインプットを受ける機会を作ったり、プロダクトの企画をまとめたドキュメントをどのように改善していくべきか整理したりするなど、さまざまな角度でアプローチを行っています」
プロダクトのエキスパートでもなければ、開発経験もない。そう語る東後には、CPOとして知見を高め、成長していくための心構えがあります。
「座学ではなく、とにかく人の話を聞くことを徹底しています。freeeにはPdMの経験のあるメンバーもたくさんいるので、実際の経験がある人から学べることは多いですね。
PdMだけでなくfreeeのメンバー全員に期待したいのは、経験がなくても、新しい領域でも、自分の成長や新しい気づきになりそうなら、成長意欲と好奇心を持って積極的にチャレンジしてほしいということ。そして、私自身もその一員でありたいんです」
求められるのは、「ドメインエキスパート」と「タケノコ人材」

PdM組織を作っていく上で、新しくfreeeに入ってくる人材に求められる経験とは。
「PdMのど真ん中の経験がある人はもちろんすばらしいし、一番フィットすると思います。
ただ、PdMの経験が浅くても、自分が取り組んでいることを深く探求したり、業務やお客さまの課題について深く考え、具体的なアクションに結び付けてきたりした経験があれば、素質は十分にあると思います。また、結果に基づいてさらなる変化を起こした経験や、組織横断的にプロジェクトを動かした経験があれば、素養は揃っているはずです。
もちろんエンジニアと仕事する機会も多いので、開発の経験もプラスになります。
私は、PdMはいろいろな業務の交差点にあると考えているんです。エンジニアとも関わるし、事業側とも関わるし、お客さまの課題や業務も知らなきゃいけないし、プロダクトのことも知らなきゃいけない。すべてに横断的に関わって詳しく知っていなくても、その中のどれかについて造詣が深く、強みがあれば、それを生かして活躍できると思います。
今のfreeeのPdM組織を見ても、実にさまざまなバックグラウンドを持ったメンバーが集まっています」
そんな各領域のエキスパートをfreeeでは「ドメインエキスパート」と呼んでいます。意識的にそのようなメンバーで組織を構成してきたのには理由がありました。
「お客さまの課題解決は簡単ではなく、freeeのプロダクトが扱う領域も広いので、さまざまな武器を持った人が集まることこそが組織を強くすると考えています。
大切なのはその知見の角度。本当に良いプロダクト作りや解像度の高い課題解決につなげるには、各領域で自分の経験に基づいた深い理解が必要です。
たとえば、新しくPdMとして入社する人が今のfreeeには蓄積されていない業界や業務の知見を持っていたら、その課題を共有してもらうことで、プロダクトの届けられる価値は広がります。知見を直接プロダクトに反映させるというより顧客理解のスピードが早まることに期待しています」
さらにfreeeでは、入社後、圧倒的なスピードで成長するメンバーのことを「タケノコ人材」と呼んでいます。
「タケノコっておもしろいんですよ。成長スピードが速いのはもちろん、一つひとつの節が同時に伸びるんです。しかも真っすぐ。そして竹にまで成長すると、素材として強い上に柔軟性もあります。
『タケノコ人材』というネーミングにも、そんなふうに真っすぐ強く柔軟に成長してほしいという思いが込められています。
皆さんこれまでいろんな経験をしてきていますが、成功体験にとらわれず、一度はじめに戻って、好奇心と貪欲さを持って凄まじいスピードで成長していく。PDCAサイクルがすごく早いスタートアップだからこそ、一つひとつの節を軌道修正しながら、真っすぐ急成長していくイメージです。
新しく生まれる事業課題やプロダクトによって環境や求められることがどんどん変わっていく中で、芯をぶれさせずに柔軟に対応できる。そんな人材が活躍し、集まる組織をめざしています」
世の中を変え得るスタートラインに立ったfreeeを、さらに成長させるために

チームは、みんなで一つの同じゴールをめざして団結している状態が圧倒的に強いと考えているという東後。
「PdM組織も、freee全体としてもそうありたいです。反対にゴールが違うと、どんなにコミュニケーションを取っても噛み合わない。
そのためにはやはり原点に立ち戻って、お客さまの課題と、それに対してfreeeが提供する価値が何かというところを一緒に探っていくに尽きます。
今何が問題かということを共有したときに、メンバー全員が同じ解像度で『そこだね!』って言い合うことができ、ワクワクしながら、腹の底から『次はこれをやりたいね!』と思える。それができれば、自然と向かうべき方向性は一緒になっていくと思います」
freeeでPdMとして働くことで得られる経験があると、東後は言います。
「freeeはまだスタートアップで成長過程にあるとはいえ、少なくとも世の中を変え得るスタートラインには立っていると考えています。これからの成果に責任を持ちながらプロダクトマネジメントをする経験は、非常に貴重なものになるはずです。
お客さまの業務や課題を深く掘り下げ、それを解決するためにプロダクトや新機能を作り、その価値で社会を変えていく。変化の激しい環境で、自分が考えたプロダクトが世の中にインパクトを生み出す。そんな経験をワクワクしながらできる、数少ない環境であることは確かです」
freeeは既存のプロダクトと新規プロダクト、どちらもバランスよく成長させることをめざしています。
「既存のプロダクトにもまだまだ改善するべきところがたくさんあるし、既存だからこそ抱えている課題もたくさんあります。同時に新規プロダクトの開発は統合型経営プラットフォームを作る上ですごく大事なので、片方だけじゃなく、どちらにも注力することが大事です。
そのバランスをどう決めるかは、まさに重要な投資配分の意思決定になります。いろいろな要素を考慮しながら、どちらかに偏りすぎず、次の成長のための種をちゃんとまくことが大切だと考えています」
最後に、これから入社する人や、freeeを転職・就職の選択肢に入れている人に向けて、東後からメッセージがあります。
「世の中に新しい価値を提供するプロダクト作りに携わることはすごく楽しい仕事です。
そして、せっかくプロダクトを作るなら、本当に価値があると信じられて、本当に世の中を良い方向に進化させることができるものに携わるのが良いんじゃないかと。freeeにはそれが実現できる環境が整っています。
われわれのプロダクト作りに少しでも興味がある人はチャレンジしてほしいですね。一緒に働けることを心から楽しみにしています」
※ 記載内容は2024年3月時点のものです